みなと舎の「ゆう」を見学しました!/重症心身障がいのある方々のショートステイ

やっと『ゆう』を見学することができました!

3月の予算議会で可決された、ある素晴らしい障がい福祉政策があります。

それは

『重症心身障がい児者・単独型短期入所事業』1081万5000円 (定員3人)

です。

つまり、『ショートステイ』のことですね。

今回10月から新たにスタートする横須賀市を含めて、神奈川県内でこれを行っているのは、わずか2ヶ所。

本当に大切な福祉サービスです。

これを引き受けて下さったのが『社会福祉法人みなと舎』さんです。

『みなと舎』さんが運営している『ゆう』は、福祉業界では全国的にすごく有名です。

横須賀が全国に誇れる重度の心身障がいのある方々の為の非常に素晴らしい活動をしているのが『みなと舎』なのですね。

『日本グループホーム学会』が学会誌を発行した、その第1号の最初に載っているのが『ゆう』なのですから。

横須賀って、こういう誇れる活動が実はたくさんあるのですね。

本当は『電子入札』なんかよりも誇れるものがいろいろとあるのですよ。

さて、前置きが長くなりましたが、この『ゆう』を見学したいとずっと思っていました。

「市長選挙が終わったら、自分へのご褒美として絶対に見学に行くぞ!」

と固く決心をしていたのですが、ついに21日に実現しました!

『ゆう』はこんな所です

林から佐島方面へ向かって進んでいって京急ストアのある『大楠山入り口』で右折すると、あとは300mくらいで到着します。

道沿いに『ゆう』を案内する看板が出ています。

芦名2丁目、このまちの美しさが残されているとても自然の多い場所に『ゆう』はあります。

ゆう全景
(ゆう全景)

やわらかなピンク色の2階建て、ここが『ゆう』です。

利用者の定員は40名。

対象は、原則として18才以上の、重度・重複障がいのある方です。

法的には『知的障がい者通所更正施設』となっていますが、フジノにとっての位置づけは違います。

とても障がいの重い方々で身体と知的と障がいが共にある方々を『重症心身障がい』と呼ぶことがありますが、『ゆう』はフジノにとっては重症心身障がいのある方の為の場です。

重症心身障がいのある方も地域で暮らしていくことが当然できるのです。

それは『理想』を語っているのではなくて、人として生きていく誰もが持つ当たり前の『権利』のことです。

しかし、この国ではその当たり前のことをやろうとすると、重症心身障がいのある方ご本人をはじめ、ご家族の方々の苦労には、すさまじいものがあります。

それはこの国の福祉が貧しく、当たり前のことが当たり前になされていないからです。

つまり、地域での暮らしを支える体制が無いに等しいのです。

そんな状況の中だからこそ、『ゆう』が存在していることはとても大きな意味があります。

ここに通って、たくさんの活動をして、みんなでお昼ご飯を食べて、いろいろな人々と交流をして、そして夕方には帰っていく。

文章で書くとこれだけのことですが、これだけのことを実現するのはこの国ではとても大変です。

それを『ゆう』は実現しています。

『ゆう』の1日はこんな感じです(リーフレットより抜粋・一部改変)

9:00 職員さんが出勤
9:30 利用者の方々が出勤
10:00 朝の集会、リハビリ、散歩など
12:00 昼食、休憩
13:30 作業、個別活動、音楽活動など
15:00 帰りの集会、水分補給、整理
15:15 利用者の方々が退勤
16:00 職員さんの打ち合わせ、退勤

ゆうの職員室
(職員室)

オープンからまもなく丸7年間を迎える『ゆう』ですが、全景の写真と同じく、中に入ってもその印象は変わりません。

とても清潔感あふれる素敵な雰囲気です。

上の写真は職員さんたちのスペースですね。

玄関を入るとすぐあるのですが、太陽の光がたくさん入ってきて開放感あふれるつくりですね。

今日は1人の市民の方と一緒に見学をさせていただきました。

瀧川理事長と飯野施設長が迎えてくださいました。

施設長室兼会議室で1時間ほど施設の成り立ちをうかがったり、『障がい者自立支援法案』についての意見交換をしました。

そして、ついに内部の見学です。

*ちなみに、当事者の方々の写真は撮っていません。近年は、当事者の方々の写真を掲載しないのはおかしい、という動きもあります。障がいのある方々のことを知っていただくには当然ながらもっと多くの情報に接してほしいのですけれど、今回の見学では止めました。理由はものすごく単純で、フジノのスケジュール的な忙しさの問題で撮影させて頂いた方々全員に『掲載の確認』を取る時間が取れなかったからです。

それぞれの部屋には『そら』『だいち』『くも』『ひかり』『かぜ』と名前が付けられています。

ゆうの日常活動の場
(ゆうの日中活動の場)

上の写真、左右に1台ずつベットがあります。

音声に合わせて振動が体験できるようになっています。

心身に障がいのある方にとって、肌で体験する、という行動はとっても大切です。『感覚知覚活動』と呼びます。

また、どの部屋にも全て大きさや形が異なるイスがあります。これは、1人1人の体の状態が異なるからです。

あなたは、床ずれのひどくなった『じょくそう』というものをご存知ですか?

よく、介護慣れしていない方や、分かってるくせにダメなへっぽこ病院が寝たきりの方々の体位変換をこまめにしないと、体のある部分(特に出っ張っている部分、尾てい骨のあるお尻など)がえぐれて肉や骨まで見えてしまう、傷痕のようなものをつくってしまいます。

車いすをいつも使用している方もいつも同じ部位がイスに当たっていることになるので、よっぽど体型にきちんと合った車いすで無いと『じょくそう』ができてしまいます。

だから、イスも1つずつ大きさも形も違うのですね。

フジノたちが館内を見学しているうちにお昼ごはんの時間になりました。

ごはんを食べることができる方々は食堂に集まって、ヘルパーの方々の介助をうけながら、おいしそうにごはんタイム。

僕の父のように胃に管を通している経管栄養の方々は別の部屋に集まって、流動食みたいな感じのベージュ色の栄養を点滴を行なうみたいにして食事を摂っています。

よく何も知らない方々から言われるのですが、「胃に管で栄養を入れるなんてかわいそう」です。

でも、そんなこと無いんですよ。

鼻から管を入れて胃まで入れる方法もありますが、それは実は感染症の危険が高くなったりデメリットがあります。

加えて、胃への経管栄養も、実は味覚があるんですよ。

僕自身が体験した訳では無いのに断言するのは良くないですが、胃に直接に栄養を届けるという場合でも、味覚が機能して味が分かる、と言われています。

もちろん満腹感もあります。

『ゆう』の職員体制

さて、お昼ご飯の後は、みなさん少し休憩タイムでした。

お昼ごはんと休憩タイムをつかって、フジノたちはみなさんにいろいろお話を聞かせていただきました。

こうやってみなさんと一緒に過ごしている時間が、視察の最も意味がある時間だと思います。

そして同時にフジノ自身にとって、最も大好きな時間です。

いつか市議を辞めたらたぶん僕は現場に戻ってくるのだ、とつくづく感じる時間です。

よく他の方々と視察に行くとこうしてフジノは置いていかれてしまうのですね(笑)。

(今回もそうでした...)

そんなフジノを見て、飯野施設長がひとこと。

「今、うちは職員を募集してますから応募しますか?」

ありがとうございます(笑)。市議を辞めたら、ぜひヘルパーからスタートしたいです。

実は『ゆう』の職員育成システムは、これまでフジノが見てきた福祉施設の中ではかなり厳しいです(厳しいと言っても怒鳴るとかそういう話ではありません)。

スタッフは85名(2005年7月1日現在)。

障がいのある方々とスタッフはどんな場面でも必ず1対1での対応を取ること、としています。

ヘルパーとしてまず働いて、そこで優秀だと認められたら

過ごしやすい、暮らしやすい、当たり前の場所をめざして

2階にあがると、お風呂がありました。

名前は『ゆうの湯』。

ゆうのお風呂(お風呂入り口)

フジノにとって意外でありうれしい驚きだったのが、高齢者の施設には本当によくある『つりさげ』式の移動機器が無かったこと。

介護が大変だからとか腰痛を避ける為にということで、機械を使って身体をつりあげて湯船へ持っていく、というものがあるんです。

それがありませんでした。

ゆうの浴室(お風呂)

そして、お風呂もいい感じでした。

サポートの大変さでは認知症の高齢の方々よりも困難な方々もいらっしゃるけれど、それでも『QOL』(人として生きていく人生の質の高さ)を追求していくという『ゆう』の姿勢が強く感じられました。

大型の特別養護老人ホームに見学に行くと、ベルトコンベア式というか、職員側の効率重視のために高齢の方々をイモ洗いするかのごとくに入浴させている所が現実にあります(もちろん横須賀にもあります)。

けれどもフジノは人生の最後半にそんな扱いをされるのは、本当にイヤです。もちろん今、現在だってイヤです。

だから当然のこととして、障がいがあるというだけの理由で人としてイヤな想いをするのは絶対にイヤです。

施設の見学をどんどん重ねていくと、例えば、今そこで実際にお風呂に入っている人がいなくてもふだんはどんなかが分かるようになってくるのですね。

『ゆう』のお風呂はとても良さそうでした。

『ゆう』の日常活動

『ゆう』ではふだんいろいろな活動をしています。

例えば、こんなですね。

  • 感覚知覚活動(さっき上で紹介した部屋もそうですね)
  • 機織り
  • 印刷
  • 音楽活動
  • 入浴
  • リズム体操
  • 社会見学
  • 季節の行事
  • 地域の行事への参加

その他にも、屋上を使って、プランターで花や野菜を育てたりもしています。

見学の間に親しくなったKさんに育てているお花を見せていただきました。

屋上のプランター(とてもきれい)

屋上からの見晴らしは、最高でした。

芦名というのはフジノが育った武山のそばなのですが、本当に山の緑が美しい場所です。その緑が見渡せる素敵な屋上は風が気持ちよく吹いていました。

Kさん、お花を見せて下さってありがとうございました。

グループホーム『はなえみ』

そして、今回最大の見学ポイント!

どうしてもフジノが見たかったグループホーム『はなえみ』です。

障がいの重い人こそ地域で当たり前に暮らせるまち、これが現在の福祉の流れです。

それを実現しているのが『はなえみ』です。

はなえみ全景(全景)

グループホームの多くはアパートなどを改築して作ったものなので、見学に訪れて朝に最初に『はなえみ』を見た時にはふつうの『隣の家』かと思いました。

とてもきれいで、かつ生活感のあふれるふつうの家(これが大切)でした。

ふだんグループホームというのは内部をあまり見学できません。

何故ならば、ふつうの家ですから。

あなたの家を例に考えれば分かりやすいですよね。あなたが暮らしている家を「政治家だから」という理由があっても見学なんて許可しないですよね。それでなかなか見学はできません。

けれども今回は、入居している方のご好意で、特別に見学を許可していただきました。ありがとうございます。

はなえみのロビー(ロビー)

玄関を入るとロビー。

この共有スペースに面する形で4つの個室があります。

さらにお部屋も見させていただきました。ありがとうございました。

木製の車椅子(木製の車いす)

とてもいい感じでした。

こういうグループホームがどんどん増えていくといい、増やしていかなければ、と思いました。

障害者自立支援法案の中ではグループホームの扱いに納得がいかないことが多いので、ますますこの法案が廃案になればよいのに、と改めて思いました。

飯野施設長と瀧川理事長とフジノ(左から、飯野施設長、瀧川理事長、そしてフジノです)

お2人にはお忙しい中、見学させていただきまして本当にありがとうございました。

これだけ素晴らしい施設を作り、運営することは、本当に大変なことだと思います。

日常的に全国からたくさんの視察が訪れていて『みなと舎』さんの活動は、高い評価を受けています。

こういう素晴らしい活動があることを、どうかこのまちのみなさんにはぜひ知ってほしいと思います。

そして、応援して下さい。

フジノはここで学んだことを今後の障がいのある方の福祉の向上に活かしたいと思います。

『ゆう』のみなさん、本当にありがとうございました!

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