自傷行為を撮影し続けた写真家・岡原功祐さん
フジノがこころからリスペクトしている国際的な写真家に岡原功祐さんという方がいます。
2005年12月、様々なご縁があって実際にお会いすることができました。
いろいろな接点があり、撮影のお手伝いも少しだけさせていただきました。
撮影のテーマは
自傷行為をされた方々の写真
です。
セルフポートレート(自分で自分を撮影すること)として自傷行為をする自分自身を撮影する人が、最近はインターネット上では増えています。
けれども、岡原さんのようなプロの写真家が『撮られる側』との強い信頼関係のもとで全てしっかりと撮影した写真は、フジノの知る限り、日本で初めてだと思います。
目の前でのリストカット、オーバードーズ、さらには救急車に運ばれていく姿、救急救命センターでの治療の様子・・・。
悲しき自傷行為の一連の流れはフジノにとって見慣れた光景ではあります。
しかし、こうした凄まじい光景をご本人の了解のもとで全て撮影した、ということ自体が大きな衝撃でした。
ついに撮影された写真の全貌を見せていただきました
これまでも数枚の写真は見せていただいたことがありました。
しかし、岡原さんが数年間にわたって撮影し続けた写真は膨大な量にのぼります。その全体像には今まで触れたことがありませんでした。
それがついに今日、都内某所でスライドでの上映会が行なわれました。
本当に内輪のスタッフだけで集まりました。
フジノは『自殺予防対策に取り組む立場の人間』としてここに招かれました。
公開すべきか否か?フジノは「公開すべき」
上映が終わると、岡原さんは、
「そもそもこれらの写真を世間に公開すべきかどうか」
という議論を始めました。
撮影に本人の了解は得ている。
実際の写真も本人たちに見てもらっている。
しかし、広く世間に公開した時に、
「自傷行為をしてしまう方々にネガティブな影響を与えてしまわないか」
と岡原さんは心配したのです。
その心配自体はとてもよく理解できます。
世間にはすぐに「寝た子を起こすな」と叫ぶ人々が存在することをフジノもよくよく承知しています。
しかしフジノの意見は
「絶対に公開すべきだ」
というものでした。
セルフポートレートのような生易しい写真ではなく、『フジノが本当に見てきた現実の姿』が写真になっている訳です。
「このリアルな現実はむしろ広く世間に公開されるべきだ」
と、フジノは考えたのです。
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結論は、今日の時点では持ち越しとなりました。
ただ、フジノの考えは「公開すべきだ」で迷いはありません。
リストカット・オーバードーズなどの自傷行為は多くの誤解を受けています。
世間の持つ誤解を解いて、自傷の持つ意味を正確に理解してもらえるようになる為にも、こうした作品が公開されるべきだとフジノは信じています。