お昼のカフェトークを今日だけ夜に開催した理由
土曜日のカフェトークはいつもはお昼に行なうのですが、今日は夜7時から開催しました。
というのも、カフェトークの会場である上町のカフェ『RRROOM』はなんと今日のお昼、テレビ番組の収録があったのです!
今夜8時55分から放送されたTVK(テレビ神奈川)の『あっぱれ!KANAGAWA大行進』という番組でどーんと紹介されました。
番組のラストは、『RRROOM』のマスターの乾杯のかけ声で、デビット伊藤さんと中村アナをはじめ、常連客のみなさんがビールをぐいっとやっていました。
自分の大好きなカフェがメディアで紹介されるのはものすごくうれしい半面、世間に紹介されすぎるのもさみしかったり、フクザツな気持ちですね~。でも、うれしかったです。
「わが家の母はビョーキです」by中村ユキさん
さてさて、そんな訳で、夜に開催したカフェトークですが、今日は『プロのマンガ家』の方が来てくれました。
プロのマンガ家の方が参加してくれたのは、今回で2人目です!
カフェトークって、いろいろな方が集まりますね。
フシギな磁場がいろいろな人を引き寄せるみたいで楽しいです。
主催しているフジノがいつも1番楽しんでいると思います。
さて、今日カフェトークに参加してくれたのは
です!
あさって月曜日に本屋さんに並ぶのでまだ店頭には1冊も出ていない新作のできたてほやほやを持ってきて下さいました。
中村さんのお母さまが統合失調症を発症してからの31年間をコミックエッセイ(マンガとエッセイですね)として描いたものです。
これは画期的な本です。
何故なら、
統合失調症(旧・精神分裂病)を真正面から描いたマンガがこれまで大手出版社から出版されたことは無かったのです。
もちろん、統合失調症について描いたマンガはこれまでもたくさんありましたが、そのほとんどが世間へのインパクトはそれほど大きくないミニコミ誌や家族会の会報や製薬会社のリーフレットなどだったのでした。
一方で、うつ病についてはこれまでにもかなり多くのコミックエッセイが出版されてきました。
特に、細川貂々さんが描いた『ツレがうつになりまして』や『その後のツレがうつになりまして』はうつ病への世間の理解をすごく高めてくれました。
(細川さんの功績は本当に素晴らしいと思います!)
一方、精神保健医療福祉の専門家にとって『精神疾患』といえば、やっぱりメインは『統合失調症』なのです。
統合失調症こそが、僕たちの『勝負』なのです。
僕にとっても、統合失調症こそが人生をかけた最大のテーマです。
それなのに、統合失調症が正しい姿でマスメディアの表舞台に出てくることはこれまでほとんどありませんでした。
それが今回、あのサンマーク出版から出版されるのです。
この点において、『わが母』は統合失調症の理解をすすめる大きな第一歩なのです!
統合失調症は100人に1人がかかる、当たり前の病気です
『わが母』を読み終えましたが、いい本ですね。分かりやすい。読みやすい。
そして、何よりもウソがない。
リアルです。でも、明るいです。
統合失調症のお母さまとの壮絶な日々がこどもからの目線でリアルに描かれています。
こどもからの目線、というのは、どれほど病気である母の状況に悩んだり苦しめられたりしつつも、どこかにいつも『生きる希望』『生きようという明るさ』があるのです。
それは、中途半端なドラマなんかではありません。
こどもにとって、生きるか死ぬかの体験でもあります。
僕も、統合失調症の親御さんを持つたくさんのこどもたちと出会ってきました。
多くの場合、こどもは児童養護施設に引き離されていて、親御さんは精神科病院に入院していたりしました。
親の養育能力が欠けている、あるいは親と一緒にいるとこどもが危険だ、といった理由の場合もあります。
けれども、こどもたちは、病気のせいで殺されそうになったまさにその親に「会いたい」「会いたい」と繰り返し、言うのです。
どれほど児童福祉司や職員が愛情を注いだとしても親御さんを大好きでたまらないのです。
どんなに福祉の専門家が愛情を注いだとしてもそれはしょせん他人であって、どんなに病気が重くて困らせられたとしても大切な、大好きな、お母さんであり、お父さんなのです。
包丁をつきつけられても、首をしめられても。
これが僕の知っているリアルです。
僕の感じる、『こどもたちの持つ、苦境であっても希望を持っている』というリアルさです。
そうしたリアルな明るさが描かれた統合失調症の本当のことが分かる本が『わが母』です。
著者である中村ユキさんは、表層的な意味ではなく、『本気』で、お母さまのことを愛しているのだと読み終えて感じました。
とても良い読後感でした。
本で描かれている姿よりももっとキュートな素敵な方です。
フジノは宣言したいのですが、絶対に中村さんはこの本で注目されるはずです。
マスメディアは絶対にこの大きな意義を持つ本を放っておくことはできないはずです。
この本が書評に載らないようなマスメディアはありえないとフジノは考えます。
ところで、統合失調症は、他のどの病気と同じく完全に全く同じ症状の人は誰1人として存在しません。
みんなが人それぞれに特有の症状を持っています。
だから、『わが母』だけで統合失調症の全ては理解することはできませんし、もっと別の症状もあります。
けれども、この本は統合失調症の症状や家族の体験を多くの方々が理解する上でとても役に立つはずです。
どうか、みなさま、ぜひ読んでみてくださいね。
統合失調症は誰もがかかる当たり前の病気です
統合失調症は100人に1人がかかる、当たり前の病気です。
そんなたくさんの方がかかる当たり前の病気が日本という国に生まれたというだけで早期発見も早期治療もされずに、たくさんの方々が苦しんでいます。
(例えば1978年から、日本では学校の保健体育教科書から完全に精神疾患の記述がカットされてしまいました。思春期こそ精神疾患にかかりやすいのに!)
僕の亡くなった元恋人も高校時代に統合失調症にかかりました。
学校で言えば、2クラスに1人は必ず統合失調症になる人がいるのです。よくある病気です。
それなのに、学校では教えもしない。
だから、早期発見・早期治療ができればかなりの人がもっとラクに治療を終えられるのに、元気いっぱいに暮らしていかれるのに、それがこの国ではできない。
サイテーな国だと僕は今も怒りでいっぱいです。
『日本精神医学界の父』と呼ばれる呉秀三先生はかつて1918年にこう書きました。
わが国の精神病者は、この病を受けたるの不幸のほかに、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし
90年が過ぎた今もわが国の精神保健医療福祉は、とても遅れている現状があります。
この怒りがいつも僕の中にあって、呉先生の言葉がいつも僕の中に炎のように燃えていて、絶対に変えてやる、こんな国を変えてやる、と怨念のように僕の中にいつも渦巻いています。
イタリアでは精神科病院を廃止しました。
本気を出せば、日本だってできるんです。
地域で誰もが暮らせるはずの、ふつうの病気なのです。
それをやらない日本という国が、憎くてたまりません。
それをやらない政治が、憎くてたまりません。
けれども、政府がダメならば、僕たちが変えていけばいいのです。
僕はそう信じています。
だから、僕はあきらめずに政治の力で現実を変えようとして闘っています。
僕のこころの師匠である大熊一夫さん(ジャーナリスト)もたった1人きりで、大きく日本の精神医療を変えたのですから。
そして、今回出版される中村ユキさんの『わが家の母はビョーキです』によって、きっと世間の理解はさらにすすんでいくはずです。
当たり前の病気が、もっと当たり前の治療が受けられるように、そして、もっと当たり前の暮らしができるように。