ゲイの当事者である高校生が横須賀で講演をしてくれました(その2)/横須賀市エイズ予防・普及事業の講演会

前の記事から続いています)

ゲイの当事者である高校生が横須賀で講演をしてくれました(その2)

保健所長によるはじめのあいさつの後、さっそく講演が始まりました。

高校3年生のソウイチくんが語ってくれました。

ソウイチくん

ソウイチくん


講演内容をフジノのメモをもとに紹介します(あくまでもメモをもとにしたものなので、文責は全てフジノにあります)。

ソウイチと言います。
 
『横浜CRUISEネットワーク』に所属しています。

現在、高校3年生です。

大学進学をひかえていますが、実は無事に推薦入学が決まりましたので、今日はここに来ることができました。

『かながわレインボーセンターSHIP』のボランティアを1年間してきました。

今日の講演のテーマとして『若者に何故HIVが広がっているか』についてをお話しすると共に、ぜひセクシャルマイノリティについて知ってほしいと思います。

そこで、1例としての僕のライフヒストリーをお話させて頂きます。

小学生の頃、僕は男女問わず、友達が多かったです。

小学生の頃は男女別々につるむ年頃だと思うのですが、僕は、男子・女子とわけることなく、両方の友達と遊んでいました。

まわりの男子に比べると女子の友達が多かったので、「おまえオカマだろ」と言われたりしたこともありました。

でも、自分が男を好きという自覚は無かったです。

初めてその感覚に気付いたのは中2、13歳の時でした。

英会話の授業の時に「外国流のあいさつをしよう」という時がありました。

クラスのいろんな友達と英語であいさつして、握手をして最後にハグをするというものでした。

そのハグを、ある男子とした時に、今まで感じた事のない変な感覚がわきあがってきたことがありました。

自分でもその感覚がよく分からなくて「これは何なのだろう?」と思いました。

授業が終わってもその子のことがとても気になりました。

やがて、「ああ、好きなのかな」と気がつきました。

「これが人を好きになるということなのか」と初めて気づいたのです。

この好きになった相手が、たまたま僕の場合は同級生の男子だったということなのです。

この時に「自分は男性を好きになるのだなあ」ということは分かったのでが、

「自分はゲイだ」と言う自覚は全くありませんでした。

そもそも自分の中に『ゲイ』という人たちの概念が存在していなかったのです。

たまたま、自分が男性を好きになったということだけなのです。

けれども、中学生の当時の自分には友達やまわりの人には言えない感情だということは分かりました。

友達と話していても本音で話せない感覚です。

思春期のこどもたちにとって、恋愛や性について語ることは頻度が多いということだけでなくものすごく大きなことで

その話題そのものだけでなく、その話題を通して自分のことを知ってもらったりすると思うのです。

そこで本音を話すことがみんなはできるのに、自分には本音を話すことができなかったのです。

だから、友達には分かってもらえないというずっともやもやした感情を抱えていました。

高校1年の冬、17才の時に家でパソコンを使ってインターネットをしていました。

その時、ゲイの生活を描いたマンガを見つけて読んでみました。

そのマンガでは、友達と飲み会に行ったりして恋愛して、傷ついたり泣いたり喜んだりという生活が描かれていました。

ああ、自分はそこに今まで自分が見えていなかったゲイの人のふつうの人生というのが見えた、と感じました。

「自分はこれから先、ゲイとして生きていくんだ」と、「楽しそうな人生を送ることができるのだ」というのが見えたのです。

この時から少しずつゲイというアイデンティティを獲得することができました。

その直後に僕もブログをつくって、今までまわりの人には言えなかった、たまっていた想いを吐き出していきました。

それを読んでくれる同年代の子たちがたくさんいて、自分と同じ思いだという人がたくさん連絡をくれました。

「自分もゲイで良いのだ」と思えるようになれました。

やがて、ブログで出会った友人と実際に会ってみることになりました。

初めて仲間に会う時にはすごく心配でした。

でも、待ち合わせ場所に来た人はすごくふつうの人だったです。

今となってはそんなことは当たり前のことなのですが、自分の学校の同級生にいるような、まちなかにいるような人たちばかりでした。

いわゆるテレビに出てくるような人たちとは違いました。

テレビに出てくる人たちはエンターティメントとしてのふるまいをしているのですが、そういうイメージが知らずのうちに自分にも植え付けられていたのです。

実際に出会った仲間たちの誰1人としてそんなイメージの人はいませんでした。

みんな、ふつうの人たちばかりでした。

とはいえ、悩んだ時期もありました。
 
かつては学校の中で友達に誰にも言えませんでした。

恋愛の話にもむりやりあわせていなければいけない苦痛がありました。

くりかえしになりますが、思春期のこどもにとって恋愛や性の話はどうでもよいことにみえて『重要なコミュニケーションツール』です。

話題にのぼる頻度も高いですから、そこで常にウソをつかなければならなかったりするのはすごく心理的にストレスがかかります。

また、教師や友達が何気なく言ったひとことに深く傷ついてしまうこともありました。

孤立している時は「自分みたいな存在は世界に1人ではないか」と思ってしまうのです。
 
「ホモってキモい」というような言葉を聴いてしまうと。。。

ゲイであることがばれていじめにつながることもあります。
 
それが原因で不登校や退学や自殺につながることもあります。

家庭内では家族にカミングアウトができずに、ウソをつき続けなければならない罪悪感もありました。

家族に言えなかった時期には『SHIP』のボランティアをしているのに「遊びに行っている」とウソをついていました。

また、カミングアウトをしてもすぐに理解がえられる訳ではありません。
 
家庭内で差別的な発言をされることもあります。

たまたま僕の場合はカミングアウトも成功して理解もえられたのですが、必ずしもみんながそうなる訳ではないのですね。

日本で理解がすすまない理由は、特にゲイの場合は、『家系』という問題が大きくからんでいるのではないかと思います。

男は家を守らなければならない、家系をひきつがなければならない、ということが大きいのかもしれません。

さて、これから私たちができることは一体どんなことがあるでしょうか?

それは一歩一歩なのですが、ひとりひとりの理解が進むことだと思います。

あなたにもしもゲイの友人がいない場合にはマツコデラックスさんや春名愛さんのようなイメージを思い浮かべるでしょう。

でも、それはある意味、メディアでエンターティメントとしてつくられたものであって、大多数は女装もしないし、女言葉もつかいません。

見た目だけでは全く分からないものなのです。
 
知り合いの中にも必ずいる可能性があります。

そういった知識を理解して広めてもらうことが1番根本的でやっていくべきことです。

また、もう1つは教育の場でできることがたくさんあります。
 
教育現場で『性的マイノリティ』の存在に触れることが必要です。

僕の場合には、社会科の先生がナチスなどの話の中で同性愛についても触れてくれるようになってとても励まされました。

先生が話題に触れてくれるだけで、こどもたちは大きくサポートされていると感じるのです。

最後になりましたが、3つ覚えてほしいことがあります。

  1. あなたのしりあいの中にはきっと同性愛者がいます。


    「統計的に人口の3~5%の方が『同性愛』だ」と言われています。
     
    ですから、あなたのしりあい20人に1人は確率的に必ず『同性愛』の方です。

    あなたが理解してくれれば、その方はより深い絆でつながることができるはずです。


  2. カミングアウトする理由は、『あなたに理解してほしいから』です。


    誰かれ構わずカミングアウトはしません。

    あなたに理解してほしいから、カミングアウトするのです。

    恐怖がある中で勇気をふりしぼってカミングアウトしたはずです。

    相手の気持ちをどうか酌んであげて下さい。

    「そっちの趣味はない」という言葉がありますが、僕たちは『同性愛』を『趣味』として選択している訳ではないので、だから、そういう言葉は言わないでほしいです。
     
    『趣味』という言葉は間違っています。


  3. ちょっとした理解を示してほしいです。


    同性愛者をバカにしている番組を見たら、「そういうバカにするような存在ではないのに」と発言して下さい。

    もしも当事者の方がそこにいれば「ああ、あなたにならば話してもいいのかもしれない」と感じられます。

    同性愛者はかなり細かく他人を観察しています。
     
    誰ならば信頼できるのか分からないので、ふとした瞬間の言葉にちょっとした理解の言葉を示して下さい。

この3つを今日から実践してみて下さい。
 
すごく身近な誰かからカミングアウトをされるかもしれません。

ありがとうございました。

ソウイチくんの講演はここまでです。

今日配られた資料の中で、とても分かりやすくてフジノがすごく好きな資料をこちらに載せておきますね。

ボクライフ!

ボクライフ!


『ボクライフ!』という冊子です。ぜひご覧ください。

次回へつづく)



ソウイチくん

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