自殺問題研究会へ/困難事例の検討をグループワーク
夜から横浜・関内のホテル横浜ガーデンへ。
『第5回自殺問題研究会~いのちを守る行動ネットワーク~』
に参加しました。
2009年に立ちあげられたこの研究会は、河西千秋先生(横浜市立大学・准教授)が中心となって
神奈川県全域の自殺対策に関わっているあらゆる立場・職種を超えた方々が集まり学びあう場です。
大滝先生(湘南病院副院長)に声をかけていただいて、フジノは2回目からずっと参加し続けてきました。
精神科ドクター、看護師、精神保健福祉士、保健師、ソーシャルワーカー、メディカルソーシャルワーカー、自治体の精神保健福祉担当、自殺対策担当、弁護士、司法書士、あらゆる立場の方々が参加しています。
(残念ながら政治家の参加はフジノのみ)
毎回50~100名の方々が集まって、毎日の自殺対策の現場で直面する問題を共有しあって、そして、明日からの取り組みに反映させていきます。
張賢徳先生(帝京大学附属溝口病院精神科科長)が自殺未遂へと追い込まれてしまった方の事例を提供して下さり、
会場に集まった50人のメンバーが6つのグループに分かれて『事例検討』を行ないました。
複雑に絡み合ったいくつもの困難を抱えた方が自殺未遂へと追い込まれていったその人生をたどっていきました。
フジノのテーブルは6人のメンバーで職種も立場もみんな様々です。
井出広幸先生(信愛クリニック)、河西先生のサポートのもと、「こうしたらどうだったのか」「次はこうすれば」と可能な限りたくさんの意見を自由に出しあって
(1)この方が抱えている課題を挙げて下さい。
(2)この方の想い、精神状態、自殺の危険性をどうみますか?
(3)この方にどのような支援が可能ですか?
の3点をあらゆる角度から検討しました。
1時間半にわたって、グループで話しあっては全体に向けて意見を発表、を繰り返しました。
グループワークによる『事例検討』は保健・医療・福祉の最重要な基本的取り組みなのですが
政治家に転職してからのフジノはふだん全く参加する機会がありません。
フジノ以外はみなさんが日常的に取り組んでいるので、とても緊張しましたし、チャレンジングな場でした。
しかも、フジノの座席のまうしろにはグループワークの様子を聴きながらメモをしている張賢徳先生が!
張先生は、わが国で『心理学的剖検』を本格的に導入した自殺対策の世界ではとてもリスペクトされている方です。
市議会での質疑でも『心理学的剖検』の重要性を訴えてきたフジノですから、当然、張先生の著作はほぼ全て読んでいますし、とても尊敬しています。
めちゃくちゃ緊張しました。
こうして、予定の1時間半を超えて、とても熱心なやりとりが全てのテーブルで行なわれました。
最後に、河西先生と張先生から講評がありました。
河西先生は
「みなさんの職場で今日のような困難事例に出会うとため息が出てしまう状況になっているのではないでしょうか。
けれども「難しいな」と言葉に出した瞬間にそれは本当に対応が難しくなってしまう。
多くの職種で集まってプロセスを踏んで議論をしていけば、必ず対策が出てきます。
必ず何らかの方向が見えてくるし、必ず支援の道筋は見えてきます。
事例検討を繰り返していけば、必ず進歩していきます。みんなの対応するスキルが上がっていきます。
だから、今日のような事例検討を日常的に何回も何回も繰り返していく必要があります」
と、ふだんからのグループワークの必要性を強く訴えられました。全く同感です。
張先生からは
「みなさんがいろいろディスカッションをしているのを聴いて、そのご意見に、私自身、ハッとさせられることもありました。
河西先生がおっしゃったように、自分たちの職種を超えて知恵を出し合うことが絶対に患者さんの為になるのですね。
必ずみなさんそれぞれのレベルアップにつながるのです。
精神科医は万能ではありません。
むしろ社会資源についてはそれぞれの専門職のみなさんの方がよくご存じです。
どうか、自信を持って連携を組んでいただきたいと思います。
今日のような多くの職種が集まる事例検討をぜひみなさんの地域で継続してやっていきたいのです。
これこそがまさに自殺予防なのです。
こういうケースを1つずつ多職種で地域で事例検討を継続し続けていくと必ず自殺予防につながりますし、みなさんの英知は高まって力がついていきます」
とお話がありました。
最後に、横浜市立大学のこころのケアチームとして河西先生が被災地の方々とむきあった日々についてお話がありました。
これから、あらゆる精神疾患の有病率が上昇するであろうこと。
かなり広汎の地域がダメージを受けているけれど、そもそもこの地域には社会資源が少なく、さらに既存の医療機関が崩壊しているので単に『復旧』して元に戻しても全く精神保健医療福祉が足りないこと。
今後も継続してこころのケアに取り組むとともに、新たな社会資源を生みだすなどの『復興』こそがテーマであること。
震災のような大災害が起これば自殺が増えることもやむを得ない、というような意見には絶対に与してはならないこと。
私たちが目の前の問題に1つずつ対応していくことで必ず自殺を減らすことができること。
フジノも「震災が起こったのだから自殺が増えるのは仕方ない」なんて、絶対に思わないで、こんな時だからこそもっと自殺を減らしたい。
河西先生のお話をうかがって、改めてそう感じました。
今日でいったん「休会」となりますが、自殺対策への想いは変わりません
2009年5月から2年間にわたって行なわれたこの『自殺問題研究会』ですが、なんと今回限りで休会とすることが発表されました。
とてもショックでした。
本当に、こんな素晴らしい機会をこれまでずっと提供してくださった河西先生をはじめとする『自殺問題研究会』の世話人のみなさまには、深く感謝しています。
そして、共催してくださったファイザー株式会社のみなさまにもこころから感謝を申し上げます。ありがとうございました。
張賢徳先生が声をかけてくださいました
今回をもって休会となることもあって『研究会』が終わった後、情報交換会をかねてお疲れさま会が開かれました。
なんと、張先生がフジノのいるテーブルにいらして声をかけてくださいました。
「グループワークを聴いて回っている時にあなたの意見を聴いていて、自殺対策をしっかり理解している若者がいるなと思ってあなたに話しかけたけど、政治家だったなんて!
お世辞じゃなくて、あなたすごくいいですよ」
と言って下さいました。
なんか神様に褒められたという感じ!
(この会話は川崎市精神保健福祉センターのみなさまも立ち会ってばっちり聴いていて下さいました。事実です!)
日本の自殺対策の最前線でずっと活動してこられた張先生とこうしてお話をできたこと自体がうれしいのに
僕自身の活動や想いを聴いて下さって、本当に感動的な時間でした。
こうした出会いがたくさんあった2年間でした。
神奈川県、川崎市、横浜市、相模原市などあらゆるまちの自殺対策担当の方々とざっくばらんに話し合えるようになったのも、この研究会への参加が大きかったです。
(そう言えばこの提案、この場でお話ししてきました!)
それが休会となってしまって本当に残念ですが、これからはフジノたちがそれぞれの地域でこうした取り組みをやっていかなければならないのだと思います。
ますますがんばっていきたいです。