精神疾患のある方が身体疾患を合併すると診てもらえない現実
夕方から、横浜市の日本大通りにある情報文化センターへ。
神奈川県が開催した
『第1回・神奈川県精神科救急医療調整会議部会』
を傍聴しました。
この部会は、今年12月まで5回開催予定で『搬送受入基準(案)』を作成します。
消防法の規定に基づいた基準があるのですが、『観察基準』『選定基準』『伝達基準』『受入医療機関確保基準』などを決めていきます。
今年、全国の都道府県が『医療計画』の改訂を行ないますが、精神保健医療福祉の改革を進める為にとても重要な動きです。
課題は山積みですが、特にフジノが重視している課題の1つが
『精神疾患のある方々が身体疾患を合併した時の救急医療』
です。
『精神疾患のある方』がケガや病気をする(=身体合併症を起こす)と、救急患者として病院が受け入れないことがとても多くあります。
もちろん119番をかければ、救急隊は来てくれて『搬送できる病院』を探します。
でも、照会をかけても、病院側から受け入れを拒否されてしまうのです。
理由は
「ベットに空きが無い」
「精神科医がいないので精神障がいのある方は診察できない」
といったものです。
これは一般の方々には知られていませんが、実は、精神疾患のある方々にとってはよくある身近な問題です。
しかも、命を落としかねない、深刻で切実な問題です。
例えば、単なる『腸閉そく』が起こっただけなのに、搬送先が見つからない為に亡くなってしまうということも実際に起こっています。
ガンや生活習慣病は誰にでも当然起こりますし、精神疾患があろうと無かろうと同じです。
さらに精神疾患のある方は長い間クスリを服み続けている影響で『身体合併症』を併発しやすいです。
それなのに精神疾患があるだけで、『ケガや病気になった(=身体疾患を合併した)時に受け入れ病院が無い』という現状は、絶対に変えなければいけません。
実際にあった「事例」は悲しいものばかりでした
今日の部会では、県の『精神科救急医療情報窓口』において、実際にあった事例の紹介がありました。
(こちらをご覧ください)
救急隊が現場についてからも、搬送できる病院が見つからない為に現場に滞在し続けた時間が30分以上になってしまったケースのうち、
『背景として精神疾患あり』が第1位(14.96%)となりました。
2位(6.16%)は『飲酒あり』でした。
横浜市の消防局・救急担当の方からはより具体的な話がありました。
『現場滞在時間』が245分間(約4時間)もかかったケースがありました。
『頭部打撲』で119番通報したのですが、受け入れてくれる病院が見つかるまでに4時間もかかったのです。
その方には統合失調症があったそうです。
フジノはこうした話を身の回りでよく聴きます。
そこで、現状をデータで確認する為に横須賀市の消防局・救急に『搬送困難事案』にはどのような背景があるのかを洗い出してもらっています。
改善に向けた神奈川県の取り組み
こうした状況に対応する為に、県も動きをスタートさせてはいます。
例えば、『地域医療再生計画』です。
おととし12月から1年間かけて作られた県の『地域医療再生計画』の『追加分』が昨年12月に発表されました。
ここでも救急受け入れ体制の整備がとりあげられています。
6.具体的な施策
(3)精神科医療体制の強化
ア.精神科的背景のある身体合併症救急患者の受入体制の整備
【目的】
精神科的背景のある身体合併症救急患者の受入体制を整備し、受入拠点病院を確保する。
【事業内容】
病院における身体合併症救急患者の受入体制を確保する取組みに対し補助し、支援を行う。
【総事業費】1億2000万円
イ.地域医療機関支援のための緊急相談窓口の設置
【目的】
精神科を設置していない地域の医療機関に対し、身体合併症救急患者への精神症状への対応を大学病院の精神科医が支援する。
【事業内容】
地域の医療機関が精神科的背景のある身体合併症救急患者を受け入れた場合の精神症状への対応について、電話等により北里大学東病院の精神科医等が支援を行なう緊急相談窓口の運営に対し補助し、支援する。
【総事業費】1億円
ウ.精神科救急基幹病院の再整備
【目的】
精神科救急医療や新たな精神科医療の充実を図り、精神科救急基幹病院の機能強化を図る。
【事業内容】
県立精神医療センター芹香病院及びせりがや病院を統合・再整備し、精神科救急医療の充実と、思春期医療やストレスケア等の新たな精神科医療への拡充を図る。
【総事業費】58億8084万円
(5)医療人材の養成
ア.精神科的背景のある身体合併症救急患者に対応できる専門医の養成
【目的】
精神科的背景のある身体合併症救急患者に対応できる専門医を養成するための卒後講座を開設し、各救命救急センターや地域の医療機関に専門医を供給し、精神科的背景のある身体合併症患者の対応の強化を図る。
【事業内容】
東海大学医学部及び北里大学医学部において、精神科的背景のある身体合併症救急患者に対応できる専門医を養成するための卒後講座の開設に伴う教授等の人件費、運営費等に対し寄附を行う
【総事業費】2億2000万円
この問題に日本で最初に取り組んだのは1973年、都立松沢病院がスタートです。
それからすでに約40年近くが経ちますが、いまだ解決には至っていません。
問題の根深さを考えるにつけても、すぐに解決するのは難しいのかもしれませんが、『精神疾患があろうと無かろうと、救急医療が差別なく誰もが受けられる体制』を作りたいです。
フジノは自分のテーマとして、これからもしっかりと関わり続けていきたいです。