高齢者の「住まい」の重要性
夜からフジノは大学院の聴講でした。
けれども体調が悪くて、横須賀中央駅の改札を入ってホームまで行って引き返してしまいました(涙)。
欠席した人の為のインターネット聴講のシステムがあるので、事務所のパソコンで講義を観ました。
今夜の講師は、(株)高齢者福祉新聞社の網谷敏数さんでした。
タイトルは『高齢者の住まいを考える』でした。
フジノが強い関心を持っている「サービス付き高齢者向け住宅」についてが講義のメインとなりました。
県が作る「高齢者居住安定確保計画」と市が作る「介護保険事業計画」
『今後の課題』として網谷さんが挙げたことの中に、『高齢者居住安定確保計画』との各自治体の関係という項目がありました。
この問題はフジノもとても強く心配しています。
具体的に言うと、県と市の連携が全くできていない現状があります。
『高齢者居住安定確保計画』は都道府県が作ります。
そこに、『サービス付き高齢者向け住宅』をいつまでにいくつ整備していくか、という『数値目標』を『都道府県』が記します。
けれども、実際に『サービス付き高齢者向け住宅』を作る際に『登録』を受けるのは『市区町村』なのです。
『市区町村』は、自ら策定した『介護保険事業計画』にもとづいて『サービス付き高齢者向け住宅』を登録するかしないかを決めていきます。
現場である『市区町村』が作った『介護保険事業計画』に記されている『サービス付き高齢者向け住宅』の整備目標値とは全く関係なく、『都道府県』の『高齢者居住安定確保計画』は作られています。
例えば、神奈川県は『高齢者居住安定確保計画』の中で、神奈川県としては平成26年度までの目標戸数を4,500戸としています。
けれどもこの目標戸数は、県内の『市町村』の『介護保険事業計画』を1つずつ積み上げて作ったものではありません。
(画像:神奈川県高齢者居住確保安定化計画より)
横須賀市は今年4月からスタートした『第5期介護保険事業計画』の中で、横須賀市としては平成26年度までの整備計画として『サービス付き高齢者向け住宅』を1,605戸としています。
フジノは、あらゆる『県の計画』と『市の計画』と整合性が無いことに対して、問題提起を続けています。
例えば、今作られている県の医療計画に対して、市が関与できる余地はほとんどありません。これでは実効性のある計画にはなりません。
同じように、高齢者の住まいについても、県と市の整合性が無いのです。すでに県は計画を作ってしまった為にしばらくは改訂がありません。それならば、横須賀市が独自の高齢者向けの住まいの計画を作るべきだと考えました。
そこで、フジノは6月議会の一般質問で、市長と下のようなやりとりをしました。
(フジノ) ア、本市は「高齢者居住安定確保計画」を定めるべきではないか。 2025年に向けて、高齢者向けの住まいをいつまでに、どれぐらい整備するという計画的な取り組みが不可欠です。 高齢者の居住の安定の確保に関する基本的な方針(2009年8月19日、厚生労働省・国土交通省告示第1号)において、高齢者の居住の安定確保を図るため、市町村においても(中略)計画を定めることが望ましいとされています。 既に、神奈川県では『高齢者居住安定化計画』を策定していますが、本市では策定していません。 地域包括ケアの実現には、日常生活圏域などの地域の実情に応じた取り組みが必要です。 本市では、各行政センターが所管する地域を日常生活圏域としていますが、県の計画では、決して地域の実情を細やかにくみ上げたものにはなっていません。あるべき姿は、日常生活圏域ごとの高齢者向けの住まいや保健・医療・福祉サービスの需要と供給の現況や将来の見通しなどを細やかにとらえた計画です。 本市の都市計画マスタープランや介護保険事業計画などともしっかりと整合を持つ具体的な整備目標などを考慮した本市独自の計画づくりが必要です。 そこで市長に伺います。 本市は、高齢者居住安定確保計画を策定すべきではないでしょうか、お答えください。 |
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(吉田市長) 次に、具体的な整備目標などを考慮した横須賀市高齢者居住安定確保計画を定めるべきという御指摘をいただきました。 具体的な整備目標については、既に横須賀高齢者保健福祉計画において、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の供給目標を定めていますので、その必要性は余りないと考えています。 |
ここからは一問一答方式での質疑応答になります。
それから、都市部長が御答弁された「2014年の供給量と割合について、パーセントはお答えできない」という理由はなぜかといえば、次の質問にもつながりますが、やはり、本市が高齢者居住安定確保計画を自前で持っていないからだと申し上げざるを得ません。
有料老人ホームにも介護付きであるか、あるいは介護付きでない自立型であるとか、さまざまな類型があります。 今回、高齢者向けの住まいとして僕が申し上げたいのは、介護がついているようなものではなくて、見守りなどのサービスはあるけれども、住まいとケアを分離して、ケアは外から受ける。そして、住まいはバリアフリーであって、人感センサーや緊急通報などがある。それ以外は自立して生活していかれる。そういうような「良質な住まいを大量に供給にしていくことが必要なのではないか」というふうに申し上げてきたわけです。 そういった数字が、現時点では横須賀市には無い訳です。 そして、先ほどの答弁にあったように、現状では0.13%しかない。 これを何とか2020年までには3,000戸から6,000戸ぐらいまで増やしていかなければならない。 ここには、やはり、計画的な取り組みが必要になってくるのではないでしょうか。 自立型であれば、有料老人ホームであってもいいと思います。 ただ、それをどの程度、整備していくのか。横須賀市として、どの日常生活圏域ごとに、どれぐらい配置が必要なのか。せめて、そういった観点だけでも持たなければ、それは足りないのではないでしょうか。 そこには、介護保険事業計画だけでは足りない。都市政策や住宅政策の観点が抜けている。高齢者保健福祉計画、介護保険事業計画だけでは足りないという思いが私には強くあります。 そこで、改めて伺いたいと思うのですが、本市も、やはり、『高齢者居住安定確保計画』を策定すべきではないでしょうか。お答えください。 |
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(市長) 高齢者居住安定確保計画について、その必要性ですけれども、おっしゃるようなハードの整備、特にサービス付きということを藤野議員はおっしゃられているわけですが、このハードの整備については、ほとんど高齢者保健福祉計画の中で見込んでいるというふうに私は認識しています。 今、手元に、神奈川県の『高齢者居住安定確保計画』があるのですが、こちらで供給目標というのを定めています。 それを見てみると、例えば、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、有料老人ホーム、認知症型グループホーム、そういったものが含まれていて、それぞれ横須賀高齢者保健福祉計画の中でほぼ書かれていること。 唯一あるとしたら、サービス付き高齢者向け賃貸住宅について、単独で4,500戸整備するという目標が掲げられている、その違いぐらいだというふうに認識しています。 もちろん、この計画の中には、福祉的な視点で住宅政策をとらなければいけないとか、そういった地域包括センターに対していろいろな期待をされていたりしていますけれども、そういった観点についても、福祉政策の中に住宅政策の観点を盛り込んでいれば、決して、実現できないことではない。計画がなければ、前に進まないことではないというふうに私は認識しています。 |
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(フジノ) 県の計画は、僕は何度も読みましたけれども、あれは、余りにも大ざっぱで、地域包括ケアの実現にはとても足りない。 市長は、地域包括ケアは御存じですよね。何度も答弁しておられますから、当然、日常生活圏域、横須賀市で言えば、13の地域包括支援センターが行政センター管内ごとに必要なサービス、必要な住まい、そこで歩いて暮らせるような、それが地域包括ケアの実現だと思うのです。 日常生活圏域の実情が県の計画から読みとれますか。 日常生活圏域の充実をしていくことが地域包括ケアの実現につながりますが、県の計画で横須賀市の日常生活圏域ごとの地域包括ケアの実現に寄与できると思いますか。 やはり、市独自の計画が必要だと思いませんか。 |
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(市長) 私も、この県の計画からは読みとれません。 実際、この計画は、ほかの自治体のものを見ても、やはり、このレベルというのが正直なところです。 もちろん、地域包括支援センターごとに、それぞれの地域包括ケアのあり方というのを考えていただきたいと思っていますが、それは、高齢者居住安定確保計画に盛り込まれるべきものではないというふうに認識しています。 |
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(フジノ) 『高齢者住まい法』第2条には、文章では地方公共団体と出ていますが、『地方政府の責務、努力義務』として、「優良な良質な高齢者向けの住まいを供給しなければならない」とされています。 それを果たす1つのあらわれが、僕は計画的な供給ではないかというふうに考えました。 ぜひ、今後、その点を検討していっていただきたいというふうに思います。 |
結局、市長は「市単独の計画は作らない」という答弁だったのですが、一方で、「県の計画では不十分だ」ということも認めています。
問題意識は市長もフジノも共有できていると感じています。
大切なことは、すでに今も特別養護老人ホームの待機者が多数存在していて、その中には本来は特養ではなくて、もっと別の形の高齢者向けの住まい(サービス付き高齢者向け住宅)に暮らしていくべき方々がたくさんいらっしゃるということ。
そうした方々に対してサービス付き高齢者向け住宅を供給していかなければならないにも関わらず、県と市とが連携できていない現状では必ず「不足してしまう」ことが目に見えている訳です。
これを絶対に変えなければいけない。
今夜の講義を受けて、改めてフジノは自分の問題意識はまちがっていないことを確信しましたので、これからもしつこく粘り強く市にも県にも働きかけていきます。