意地でも向かったのは「尾道方式」を学ぶ為
持病であるパニック障がいが悪化して、フジノは最近すっかり外出できなくなってしまいました。
昨日も強い発作が出てしまい、途中下車。大門駅のトイレの個室にこもって、身体がうまく動かないことに自己嫌悪していました。
それでも今夜は意地で国際医療福祉大学院の聴講に向かいました。まさに必死でたどりつきました。
その理由は、今回の講師が『尾道方式』で知られる尾道市医師会の片山壽(ひさし)前会長だったからです。
『医療と福祉の連携・統合』を目指しているフジノには、学ばなければならないことが山積みです。
中でも、とても重要な成功している取り組みとして知られている『尾道方式』と呼ばれる『ケアカンファレンス』はぜひ現地を視察して学びたいと考えてきました。
5月に開かれた教育福祉常任委員会でも、『県外視察』の候補を4つ提案しました。実は、この時にも『尾道方式』を提案しました。
残念ながら、委員会の視察先としてフジノの提案は採用されませんでした。
しかし今夜は、その『尾道方式』を1994年から約20年にわたってリーダーとして実践してきた片山前会長ご本人からじかに伺うことができるのですから、どんなことがあっても休むわけにはいきませんでした。
教室も完全に満席でした。
尾道方式とは何か?
医療・福祉の世界でそんなに注目されている『尾道方式』って、一体どんな取り組みでしょうか?
あえてフジノ流にひとことで言うと
入院してしまった高齢者の方がいたら、退院が決まる前の時点から、医療・福祉の関係者たちが集まって、退院した後の暮らしの在り方を、本気で話しあうこと
です。
下の写真のように、本人、家族、ケアマネージャー、ドクター、看護師、歯科医、薬剤師、民生委員、社会福祉協議会などが集まって、退院してからの暮らしをプランしていきます。
全ての患者さんに対してこのケアカンファレンスを行ないます。そして、退院後はそのケアプランに基づいて、地域での暮らしを実践していきます。
「尾道方式」がすごいのは、誰もが当たり前と考えていながら実現できていないことを確実に実行していること
こうして説明を聞くと、『尾道方式』って特別な取り組みでも何でも無いですよね?
フジノは、知識としては『尾道方式』を理解していました。『地域包括ケア』について学ぼうとすると、どの文献でも必ず『すごい取り組み』として紹介されています。
でも「これが何故そんなに大きく取り上げられるべきすごい取り組みなのか?」ということを、フジノは正面からじっくりと考えたことがありませんでした。
何がすごいんだろう? こんなこと、どこでもやってなければおかしいはず。
今夜、片山先生のお話をじかにうかがってからも、その疑問は消えませんでした。むしろ、「当たり前のことに過ぎないのではないか?」という気持ちがどんどん強くなっていきました。
そこで、もう1度じっくり考えてみました。
フジノが考える『尾道方式』はこれです。
- 入院してしまった高齢者の方がいたら
- 退院・転院が決まる前の時点から
- 医療・福祉のあらゆる関係者たちが集まって
- 退院した後のその人の暮らしの在り方を
- 本気で話しあうこと
この『尾道方式』の全く逆のパターンを考えてみたら、答えが見えてきました!
今の日本の、一般的な『高齢者の入退院』がどんなふうに進んでいくかという現実を見てみると…。
今、高齢者が病気などで入院してしまうと、約3ヶ月が過ぎると、病院から「退院してほしい」と言われます。
いきなりのことに家族はどうしたらいいか分からなくて「別の病院?」「特別養護老人ホーム?」「老健?」「自宅?」と困り焦っているうちに3ヶ月が経ってしまいます。
病院の医療相談室に相談しても「うーん、どこの特養も待機者が何十人もいて1年待ちです」「とにかく入所の申請だけしてください」で、終わり。
その方がどうしたら以前のように再び元気に自立した暮らしができるかなんて、誰も考えることもできないままに、いきあたりばったりで見つかった次の行き場所へ移っていくしかありません。
たいていの場合、退院した後は、自宅と老健を行ったり来たりしながら、特養に入所できる日を待つ日々が続いていきます。
これが今の日本の典型的なパターンです。
そう、こんなメチャクチャな姿が目の前にある現実なのです。ケアカンファレンスなんて全く開かれていません。
だから『当たり前のこと』であるはずの『尾道方式』が特別にすごい取り組みとして評価されるのです。
しかも1994年に『尾道方式』がスタートしてから20年も経つのに、自分の暮らす地域ではそんなケアカンファレンスなんて、ほとんど行なわれていないのです。
だから、『尾道方式』がすごいすごいと全国で評価されている...。
2012年に生きている僕たちは、もはや『尾道方式』がすごいなんて言わない世の中にいなければいけないはず。それができていない。
『当たり前のこと』が当たり前として成されていない社会だから、『当たり前のこと』が20年経っても『特別なすごいこと』として評価されている。
早くこんな現実を変えなければ。早くこんな社会を変えなければ。
それが今日、フジノが最も強く学んだことでした。
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『尾道方式』についてもっと正確に知りたい方は、文献・論文・サイトはたくさんありますので、ぜひご参照ください(例えば、こちらやこちらやこちらやこちらやこちらやこちらやこちらなど)。