市民の方から「以前にフジノさんが取り上げていた母子生活支援施設の『建て替え』問題は、今どうなったのか?」とご質問を頂きました。
その後の状況も含めて、改めてここで報告したいと思います。
ひとり親家庭の住居の確保
フジノは『ひとり親家庭の支援』を大切な政策の1つとして取り組んできました。
いくつもの課題がありますが、とりわけ『住居』の確保は大切な課題の1つです。
ひとり親の住まいの1つとして、わが国には大正時代頃から『母子寮』と呼ばれてきた施設があります。
1998年に名前が変わり、現在では『母子生活支援施設』と呼びます。
シングルマザーの方がこどもと一緒に暮らし、こころと体と生活を安定する為の相談や援助を受けながら、自立に向けて生活していく場です。
神奈川県内には合計12ヶ所あって、横須賀市内には1ヶ所あります。
市内の母子生活支援施設
この施設について、フジノは2003年の初当選からずっと追いかけて来ました。
1971年に建てられた為、大変に老朽化が進んでいます。
しかも部屋はとても狭く、お風呂やトイレはいまだに共同です。
フジノの同級生が、施設職員としてそこで働いていました。
また、こども時代をそこで実際に暮らしていた方のお話も聴いたことがあります。
もちろん、フジノ自身も視察に伺いましたので、よく知っています。
いまだ耐震化も行なわれていない為、フジノは「『建て替え』すべきだ」と横須賀市に対して提案してきました。
2010年9月議会・決算特別委員会での質疑
フジノの質問
市内の『母子生活支援施設』の老朽化への対応を改めて御確認させていただきたいのです。
かなり老朽化が進んでいると思うのですが、民設民営とはいえ横須賀市としてはどんな対応を考えておられるのでしょうか。
こども青少年支援課長の答弁
『母子生活支援施設』が老朽化しているということは存じ上げております。
ただ今の時点で、運営者(=社会福祉法人)の方から建てかえの要望が出されていないということ。
あくまでも民設民営の施設であるということから、市として市が動くということは考えておりません。
フジノの質問
耐震化は済んでおりますか。
教育福祉常任委員長から
分かりますか、その辺の情報は。
こども青少年支援課長の答弁
耐震の工事については今把握しておりません。
申し訳ありません。
フジノの質問
大きな工事が行われた様子は特に無いので、耐震化もなされていないと思うのですね。
民設民営とはいえ、社会福祉法人と市でぜひ話し合いをしていただきたい。
課長も経緯は御存じと思いますが、かつて『ひとり親家庭等自立支援のあり方に関する検討会』の中で、横浜市の『母子生活支援施設』を視察に行っていただいて、その機能の違いに愕然とさせられたということもあったと思います。
全ての施設が新しい施設になる必要は無いとは思いつつも、あまりにも老朽化しているのでは生活の質としていかがかと思います。
1世帯当たりの面積も非常に少ないというのは承知しておられると思います。
「要望が上がってきていない」というのは法人から上がってきていないだけで、現場を実際に訪れてみると、かなり厳しい状況です。
そういった老朽化の対応も含めて、改めてぜひ現地で確認をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
こども育成部長の答弁
この施設につきましては、民設民営であるということで、事業者の御事情も伺わなければいけませんが、ただいま委員がおっしゃいました耐震化の点につきましては、恐らく書類を確認すれば確認が取れると思いますので、きちんと確認をいたしまして御報告をさせていただきます。
今後の施設の問題につきましては、事業者の声を聞きながら、できるだけそこに暮らしている方の安全のために、必要な手だてをとっていきたいと思います。
2014年3月で「廃止」へ
それから1年半が過ぎた昨年2012年3月の予算議会のことです。
教育福祉常任委員会において、こども育成部から「2014年3月をもって『廃止』すると社会福祉法人が決定した」との報告を受けました。
そこで、フジノは下のような質疑を委員会で行ないました。
2012年3月予算議会・教育福祉常任委員会での質疑
フジノの質問
こども育成部に、『母子生活支援施設』の廃止等について伺います。
今回の『母子生活支援施設』の廃止の理由というのは、社会福祉法人からどのように伺っているのでしょうか。
こども青少年支援課長の答弁
法人からの報告によりますと、まず、現在の施設が昭和46年に建てられた建物で、耐震診断の結果、耐震補強が必要であり、今の建物では補強だけでは済まないで、建てかえが必要だということがあるということ。
それで、東日本大震災を受けまして、そこには保育園児等も通っておりますので、早急の耐震化、要するに建てかえが必要であるという判断をしたということ。
保育園がありますので、近隣における建てかえをということで検討しましたが、近隣に適地がなかったということで、現在地に建てかえるという方針になりました。
現在地に建てかえる場合ですが、母子生活支援施設は基準が大幅にあがり、バス・トイレつきの1居室30平方メートルという基準を設けますと、現在の4階建てではなくて、5階、6階建ての高層の建物になってしまうと。
その場合に、日影権の問題だとか道路の問題で、その場で5階、6階の高層の建物が建てられないということで、今回、横須賀グリーンハイムは廃止して、保育園の建てかえという結論に至ったと聞いております。
フジノの質問
今回お答えいただいた理由は、数年前から十分予想されていたことだと思うのです。
『ひとり親家庭等自立の在り方に関する検討会』でも、横浜市の新しい『母子生活支援施設』を実際に視察に行っていただいたりして、あり方というのは検討してこられたと思うのです。
今回、震災があって、より切迫した状況に追い込まれた法人から、建てかえはできないということでお話があったと思うのですが、これまでも議会で何度も、土地代の減免ですとか、耐震化のサポートをしてほしいということを僕は申し上げてきたのですが、そういった支援というのは、市としては行なってこなかったのでしょうか。
廃止に陥らなくてもいいように、本市としてサポートができたはずではないかという思いがあるのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
こども青少年支援課長の答弁
あくまでも民設民営の建物ということで、「近隣での土地を」ということで協会のほうから打診があったこともあります。
そういった時に私どもも探してはみましたが、近隣で適切な土地が無かったという経過もございます。
今回については、前々から耐震化の問題は言われておりましたが、今回、急なことになってしまって、こういう結論になってしまったことは大変残念なことだと思っております。
フジノの質問
本当に残念なことだという思いは同じ気持ちです。
これは資金的な問題もあって、法人に「意思決定を変えてくれ」ということはなかなか難しいと思いますので、どうか現在残っておられる8世帯、お母さんと子どもたちの支援をしっかり行っていただいて、何とか在宅で暮らしていかれるように支援をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
こども青少年支援課長の答弁
藤野委員がおっしゃられましたように、私どもも最初に申し上げましたように、今いる8世帯について最優先に、自立して地域に戻れるように支援をしていきたいと考えております。
その後についても、必要な家庭においては支援を継続していきたいと考えております。
こうして、2014年3月末をもって、市内唯一の母子生活支援施設が廃止されることが決定となりました。
フジノの考えについて
2003年の初当選直後には『建て替え』しか選択肢が無かったフジノですが、いろいろなことを学ぶ中で、2005年頃には考えが変化してきました。
そして、
- 市内に圧倒的多数ある『空き家』を母子生活支援施設として転用できないか
- ひとり親家庭を『市営住宅に優先的に入居させること』ができないか
など、他の提案も並行して行なってきました。
(こちらにまとめておりますのでご覧下さい)
つまり
『母子生活支援施設』だけが唯一の選択肢だ」
とは考えなくなりました。
けれども「市内に1つも無くて良い」とは全く考えていません。
『母子生活支援施設』の持つ重要性は今も変わらない、とフジノは考えています。
例えば、『母子生活支援施設』に入所する理由です。
現在は『ドメスティック・バイオレンス』が最大の理由です。
DV被害から立ち直るには、専門的な支援が不可欠です。
同じ状況にあるひとり親の方々がピア(=当事者)として共に暮らしながらリカバリーしていくことは、とても大切なことだとフジノは考えています。
今回、横須賀市内唯一の『母子生活支援施設』は廃止となってしまうことが決まりました。
けれども、何らかの形で新たに作り出すことができないか、と考えています。その想いを形にする為に、少しずつ取り組んでいこうと考えています。
市議会議員ですから市議会で訴えていくことは当然ですが、それだけではなく、別の在り方も考えて実践していくことができないか、と考えています。
近日中にまたご報告させていただきますので、しばらくお待ち下さいね。