ワクチンの健康被害の原因究明は絶対に必要です
先日も書きましたが、改めて子宮頸がん予防ワクチンと検診についてフジノの考えを記します。
現在、子宮頸がんワクチン(サーバリックス・ガーダシル)の『副反応』について、マスメディアが大きく取り上げています。
そもそも、あらゆるワクチンには『副反応』が存在しています。
ですから、「『副反応』による重篤な健康被害が起こることも当然ある」と常に想定して、政府は素早い対応を取らなければいけません。
健康被害を受けた方々については、国の責任において、しっかりと事実関係を調べて、早急に補償を行ない、受けられる限りの治療を提供することが必要です。
また、今後は『副反応』の発生率を可能な限り引き下げられるように、さらなる研究が必要です。
これはフジノだけでなく、子宮頸がんワクチンの承認を目指してきた研究者をはじめ、真剣に活動に取り組んできた誰もが願っていることです。
一方で、現在、ワクチンの健康被害をとりあげているジャーナリストや政治家たちの中には、全く誤った情報を流している人々がいます。
悪意を持って意図的に流しているのか、不勉強な為に間違った知識を発信していることに気づいていないのか、それは分かりません。
けれども、ワクチンの健康被害の問題と、こうした誤った情報発信とは、切り離して行なわねばならないことです。
ジャーナリストや政治家であれば、市民のみなさまに正しい情報を提供していくのが義務であるはずです。
ここしばらくジャーナリストや政治家による誤った情報発信が多く、フジノは問題視しています。
誤った情報に対しては、健康被害の問題と切り離して、反論すべきです
フジノが「悪質な情報発信だ」と感じたのは、例えば、大熊由紀子さんによるこの記事です。
大熊由紀子さんは医療問題に強いジャーナリストとして尊敬していますし、聴講でお世話になっている国際医療福祉大学の教授でもあります。
さらには、フジノが理事を勤めているNPO法人のアドバイザリーボードにも就任していただいています。
したがって個人的に悪い感情は一切持っていません。
けれども、社会的に発信力の強い大熊さんがこの問題において無責任な発信をしていることに対して、フジノは極めて強い不快感を覚えています。
インターネットしか発信手段の無いフジノと比べて、すさまじい影響力を持つマスメディアでの大熊さんの発信は、看過することができません。
例えば、まずこのような記述を大熊さんはしています。
「子宮頸がんは死を招いたり、子宮を摘出したりすることになる怖い病気だが、ワクチンで防げるという。
5万円と高価だが、期日までに受ければ無料といわれ、それならわが子に受けさせよう、と考えてしまったのです」。
こう親たちは嘆きます。
フジノは5年にわたって、子宮頸がん撲滅の活動を続けてきました。
その際、常に訴えてきたことは
「予防ワクチンの接種をしても、必ず検診も受けなければならない」
ということです。
そもそも5年前には予防ワクチンは日本で承認さえされていませんでしたから、活動のスタートは
というお願いを続けることでした。
ワクチンが認可されてからも、子宮頸がんをワクチンで全て防げるなんてことは1度たりとも述べたことはありません。
それはフジノだけではありません。
専門的な知識がある方々ほどずっと『検診』の重要性を訴え続けて来ました。
大熊さんがお話を伺った方は実際にそのようにおっしゃったのかもしれません。
ワクチン接種をすすめた医療機関や保健所に、不十分な知識からそんなセリフを述べた無責任な人間がいたのかもしれません。
けれども、「ワクチンを打てば防げる」なんて発言をするのは、子宮頸がん撲滅に本気で取り組んできた人たちではありません。
また、このようなことも記しています。
子宮頸がんは、検診で早期発見すれば命も子宮も失わなくてすみます。
これも事実ではありません。
大熊さんの言う『早期発見』というのは『前がん状態』を指しているのであれば、確かに『円錐切除術』のみで済んでそのまま子宮を残してこどもを産める・命も失わないという人もいらっしゃいます。
けれども、1人1人がんの進行状態は全く異なりますから、必ず『前がん状態』で発見できる訳ではありません。
すでにステージが進行しておられる方もたくさんいらっしゃる現実があります(だから毎年3500人もの女性が子宮頸がんで亡くなっているのです)。
どれだけ検診体制を強化したとしても、検診だけで子宮頸がんを完全に防ぐことはできません。
ましてや検診をした後に必要となる、手術・放射線・抗がん治療などについても一切触れていません。大熊さんの記述は事実をはしょり過ぎています。
まるで検診が万能であるかのような書き方は、正しい情報ではありません。むしろ、事実をねじ曲げています。
さらに、日本の検診受診率が低い理由について、このようなことも記しています。
ただ、日本のように、男性医師の前で足を広げねばならないことの多い検診法では、女性は検診をためらい、検診率は20%にとどまっています。
確かに、産婦人科ドクターに男性が多い日本では、検診の時に男性医師の前で検診台の上で下半身を丸出しにすることになります。
けれども、日本で検診の受診率が低い理由は、そんなことではありません。
検診を実際に終えた多くの女性にフジノがお話を伺ってきた中では、「ドクターが男性か女性か」については、単に個人の好みのに左右されています。
- 「検診に行く前にそのクリニックのドクターが男性か女性かなんて知らなかった」
- 「ドクターが男性か女性かは関係ない」
- 「女性ドクターの方が綿棒の扱いが強くて痛かった」
- 「検診台に座ってお腹のあたりにカーテンを引いてくれるけど、むしろ引かないでくれた方が安心」
- 「やっぱりカーテンで男性ドクターの顔が見えない方が恥ずかしくない」
むしろ、これまで検診に行かなかった/行きたくなかった理由は、
- 「そもそも検診の存在そのものを知らなかった」
- 「自分たちの年齢では子宮頸がんなんて関係ないと思っていた」
という、知識不足にこそあります。
大熊さんが記したような、「男性ドクターが検診をしているから受診率が低い」のでは全くありません。
実際に横須賀市では、検診を無料で受けられるクーポン券を対象者に郵送で送付したことで(つまり『金銭的なインセンティブ』と『周知啓発の効果』)によって大きく受診者数がアップしました。
2008年 | 2009年 |
---|---|
8,968人 | 1万3,735人 |
*2009年、無料クーポン券実施
正確な情報を直接にターゲットである年齢層の方々にお届けし、さらに無料で受診できるクーポン券をお送りするだけで、約2倍へと受診率をあげることができました。
何よりもまず『正確な情報の周知』です。
さらに、『経済的な負担を可能な限り負わせないこと』が大切です。
他にも、受診率を上げる為の手段はいくつもあります。
そのひとつには、大熊さんが提案するような『イギリス方式(看護師による検診)』もありかもしれません。
しかし、大熊さんの以下の主張は論理的にはおかしいです。
(受診率が)80%と高い英国では、訓練を受けた看護師が、診察所の普通のベッドの上で実施しています。
このような安全で確実な検診方法を検討すること無く、まだ臨床試験段階のものを、十分な説明もなく少女たちに接種するのは中止すべきだと考えます。
看護師が診療所の普通のベッドで検診を行なうことが、イコール「安全で確実な検診方法」だと大熊さんは記しています。
何故、看護師さんが検診をすると「安全で確実な検診方法」なのか全く理解できません。
大熊さんは子宮頸がん検診が実際にどのように行なわれているか知らないのでしょうか?
フジノたちのように検診を受ける方々を増やしたいと願って活動をしてきた人間にとって、看護師の方々が検査をやるべきか否かだけが大切な問題ではありません。
むしろ、現在の検診である『細胞診』という方法を、さらに『HPV検査』という方法と併用することによって『精度』を高めることの方がフジノには重要です。
例えば、市議会ではこうした提案を行なってきました。
2012年9月6日・教育福祉常任委員会でのフジノの質疑
フジノの質問
まず、子宮頸がん検診について伺います。
現在、横須賀市が子宮頸がん検診を無料クーポン券によって保健所健診センターや市内の実施医療機関の協力を得ながら、『細胞診』で検査を行っております。
実際には『問診』と『内診』と『細胞診』によるものですが、一方で、以前も申し上げましたが、ヒトパピローマウイルスに感染しているかどうかを調べる上で、より精度の高い『HPV検査』というものもございます。
『細胞診』だけでは見落としが多いという指摘もありますが、『細胞診』と『HPV検査』を組み合わせると、子宮頸がん検診の精度はほぼ100%近いものになるということで、非常に有効である。
これを既に導入している自治体も全国にはいくつかある。
ただ、自己負担しなければならないと5,000円〜8,000円程度と、非常に負担が高くなってしまいます。
そんな中で、ちょうど9月5日に厚生労働省が発表した来年度予算の概算要求では、この『HPV検査』の普及のために116億円を要求している。
これは新規事業として、まだ一部の自治体での実施にとどまっている『HPV検査』を広く普及していくのがねらいとのことです。
横須賀市でもこうした財源を利用して、『細胞診』に加えて『HPV検査』を組み合わせて行えるように、ぜひ調査研究をして頂きたい。
そして、もしモデル事業として手を挙げる機会があれば、率先して手を挙げていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
保健所長の答弁
子宮頸がんの検診ですけれども、今、委員に御指摘いただいたように、新しいHPV抗原の検査を組み合わせた検診が非常に効果的だということは、特に外国の研究で明らかになってきているところです。
現在、将来的に、内々ですが、研究を進めているところですので、国の推移を見ながら検討していきたいと思っています。
フジノの質問
昨日、市長が来年度予算の要求の指針を出して、昨年同様、国や県や使える補助金、財源が得られるものはどんどん活用しようと記されておりました。
すでに内部で研究も進めておられるということですので、ぜひ情報を早く取り入れて、手を挙げられるようにしていただければと思っておりますが、いかがでしょうか。
健康部長の答弁
今、藤野委員がおっしゃいましたように、我々のほうもよくそういうところにアンテナを張りながら、取り組めるものに一生懸命取り組んでいきたいと思っています。
このことについては、よく最近でも新聞報道でもたくさん載っておりますし、私も関心は持っているところでございます。
(質疑の引用は以上です)
フジノは大熊さんの「看護師に検診をさせろ」という主張よりも、こうした取り組みの方が大切だと考えています。
ジャーナリストや政治家こそ正確な情報を発信すべきです
さて、いくつもの反論をしてきました。
『検診万能論』は、間違いです。
検診だけでは子宮頸がんを完全に防ぐことはできません。
そして、「だからといってワクチンを打て」という主張をフジノはしていません。
ワクチンの問題と、検診の問題は、分けて考えるべきです。
ワクチン反対派のジャーナリストや政治家が検診を万能扱いするのは完全に間違いです。
ワクチンの問題はワクチンの問題として、政府がしっかりと原因究明と被害者の補償に取り組むべきです。
ワクチンの問題と、検診の精度を高めること・検診の受診率をあげることなどは『全く別の問題』として取り組まなければなりません。
フジノがとても危惧しているのは、ジャーナリストや政治家が本当に苦しんでいる人々のことを無視して、そのときそのときの時流にのった発言を安易にすることです。
子宮頸がんで苦しんでいる女性がたくさんいます。
そして、ワクチン接種による健康被害に苦しんでいる方々もいらっしゃる。
まず何よりもこうした苦しんでいる方々のことを1番に考えるべきです。
それを大熊さんのように
それが政治主導と社会的なキャンペーンの中で押し切られたのでした。
『政治家』+『製薬会社』=『薬害よりも利権をとった』みたいな陰謀論を発信することに何の意味があるのでしょうか。
3.11以降、陰謀論に振り回される市民の方々は、子宮頸がんワクチンについてもジャーナリストのこうした発信をうのみにしてしまうことでしょう。
しかし、何よりも大切なことがジャーナリストや政治家たちにおろそかにされています。
被害者を救うことをまず最優先すべきです。
今は「子宮頸がんワクチンは薬害だ」と発言すればジャーナリストや政治家は人気が取れる、と思っている人が多いのではないでしょうか。
そういう風潮は間違っています。
ワクチンの問題を追うことは大切です。
だからといって、正確な情報も調べないのはおかしいですし、誤った情報を発信し続けるのも間違いです。
ジャーナリストや政治家こそ、冷静で正しい判断をできるように毎日努力し続けるべきです。