「子宮頸がんワクチンの定期接種化と副反応」について過去の記事はこちらです
そもそも、ワクチンをはじめとする全ての医薬品は、副反応が起こりうるものです。
『デメリット(副反応)』を圧倒的に上回る確率で『メリット(予防)』があるが故に、予防接種は実施されてきました。
子宮頸がんワクチンの定期接種化も同じです。
けれども、確率論的にはどれだけ低くても、ひとたび健康被害が起これば、大きな問題です。重篤な被害が起これば、その人の人生が大きく変わってしまうこともあります。
ですから、健康被害は国の責任において必ず『救済』が成されなければなりません。
前回(その2)は、その為の『国の救済のしくみ』をご紹介しました。
今回(その3)は、健康被害について『市の調査のしくみ』である『予防接種健康被害調査委員会』をご紹介します。
2005年に「健康被害調査委員会」を設置
横須賀市では、2005年に『予防接種健康被害調査委員会』を設置しました。
予防接種を受けた方や医療機関から、市に通報があると設置します。健康被害と予防接種との因果関係について、調査を行ないます。
メンバーは、医師・学識経験者・市職員(合計9名)で構成されています。
2005年から2013年4月現在まで、健康被害と認定されたのは1件でした。
2013年4月、新たに「条例」で位置づけ
これまで『調査委員会』は、『横須賀市予防接種健康被害調査委員会設置要綱』という『要綱(行政の内部のルール)』に基いて、設置されてきました。
それを、新たに『条例(市の法律)』によって位置づけることが、先日の予算議会で提案されました。
条例で規定することで、より正式な位置づけとなります。
最終的に無事に可決され、3月29日に公布、4月1日から施行されました。
健康被害調査委員会の役割
この『調査委員会』の役割について、市民のみなさまに具体的なイメージを持っていただきたいと思います。
そこで、フジノが先日の予算議会(3月8日の教育福祉常任委員会)で行なった質疑をご覧下さい。
『議案第39号・予防接種健康被害調査委員会制定条例』への質疑より
フジノの質問
『健康被害調査委員会』について具体的なイメージを持ちたいと思いますので、質問いたします。
まず、具体的にどのような時にこの委員会を開催するのか。少し具体例を挙げて教えていただけないでしょうか?
こども健康課長の答弁
委員会の機能としましては、「予防接種を受けて健康被害を受けた」という通報を受けた場合に
『疾病の状況』および『診療内容の調査』を行ない、ならびに『必要と考えられる検査』だとか『剖検の実施』についての助言を行なう、というものになっております。
具体的には、正規の予防接種としまして、こども健康課が乳幼児から未成年者の予防接種を行なっていることと、健康部の健康づくり課が高齢者のインフルエンザを行なっております。
これらの予防接種について、先ほどお伝えしたような健康被害が起きた時に、その予防接種を取り扱う部が委員会を開催するという形になります。
フジノの質問
具体例として、けさの新聞報道に出ていた事例を1つ挙げたいのですが
子宮頸がんの予防ワクチンで、杉並区で副反応が出たと認められる
といった話が出ていました。
このような、予防接種を受けた時に何らかの副反応が出た時に健康被害が出たということをこの委員会が調査をするのでしょうか?
こども健康課長の答弁
この委員会が調査をするという形になります。
フジノの質問
横須賀市の『被害調査委員会』の委員9名というのは、医師や学識経験者の方々や市の職員の方々になっていただく訳ですが、どの程度分かるものなのでしょうか。
国の方でも、子宮頸がんのワクチンであれば副反応を調査する委員会というものがあって、そちらで専門的に調査をしていらっしゃると思うのです。
横須賀市のこの『被害調査委員会』で、例えば今まで健康被害が出ていなかった予防接種を市民の方から訴えがあったら独自に調べて、新たな対応を求めるように国に言っていくというようなことも果たしてできるのか。
どの程度まで役割が求められているものなのか。それをお聞かせ下さい。
こども健康課長の答弁
どの程度分かるかということなのですけれども、
予防接種を受けた後、副反応が起こり、医師の診断を受け、通告をした場合に、
副反応が起きるまでの間の本人のあらゆる状況、受診状況、それからすでに受診していればカルテを含めた医療的な情報、そういったものを全部必要な情報として集め、
この審査委員会の中で専門の先生たちにご審議いただくという形になると思います。
その中で審議をした中で「予防接種との関係が疑わしい」ということになれば、「予防接種健康被害に値するものである」ということで、必要な手続きをするということになろうかと思います。
フジノの質問
集められる情報をとにかく集めて、他の因果関係を除いて予防接種によるものだと推測される場合に、被害救済を行なっていく為の情報を提供する、というような位置づけでよろしいのでしょうか。
こども健康課長の答弁
その通りです。
(質疑の引用は以上です)
現在大きく報道されている杉並区での健康被害ですが、杉並区議会でのやりとりを読むと、この『健康被害調査委員会』を設置しなかった(?)ようです。
行政側が取るべき対応をすぐに取らなかったことは、大きな問題です。
しつこく何度も書きますが、ワクチンに限らず、全ての医薬品には副反応が起こりうるものです。
だからこそ、政治・行政ではあらかじめ被害を調査する委員会や救済制度をつくって、セーフティネットをひろげているのです。
こうしたセーフティネットをいざという時に迅速に利用できなければ、市民のみなさまが守られません。
さらには、今回の杉並区のように、ワクチンそのものへの不信感をひろげることにもつながっていきます。
子宮頸がんを撲滅する為に予防ワクチンの日本での承認を求めてきた政治家の1人として、機能するセーフティネットであるように改善を重ねていきたいとフジノは考えています。
ここ1ヶ月の国の動き
最後に、ここ1ヶ月の国の動きを2つ報告します。
第1に、3月11日に『平成24年度第7回医薬品等安全対策部会(第3回子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会)』が開催されました。
複数のワクチンについて安全対策を検討しています。子宮頸がんワクチンの予防接種後副反応についてもここで検討されました。
日程的に杉並区の報道の直後だったので、フジノはとても注目していたのですが、特に新たな動きはありませんでした。
第2に、格上げされた新しい『予防接種・ワクチン分科会』がスタートします。
4月1日から改正予防接種法によって強化された健康被害対策ですが、国の審議会の扱いも新たに変わりました。
これまでは『厚生科学審議会』の下の『感染症分科会』のさらに下の『予防接種部会』という扱いでした。
それが新たに『厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会』として、4月22日に第1回会合が開催される予定です。
予防接種の基本方針、研究開発、生産、流通、副反応を検討していくことになります。
フジノとしては、引き続き国の動きにも注目しながら、その情報を市民のみなさまにしっかりとお伝えしていきたいと考えています。