横須賀独自の「スクールランチ」
横須賀市の中学校には『給食』がありません。
市内の中学生は『お弁当』を持って行かねばなりません。
だから、保護者の方々は毎日早起きをしてお弁当を作っています。
では、『お弁当』を持っていくことができない時はどうするか?
中学校を通して民間業者に『パン』『お弁当』を注文します。
これを横須賀の独自の呼び方で『スクールランチ』と呼んでいます。
変な呼び方ですね。
また、お昼になると『牛乳』が配られます。
これも横須賀独自の呼び方で『ミルク給食』と呼んでいます。
もしも横須賀市民が他県を訪れて
「ミルク給食って知ってる?」
「スクールランチって知ってる?」
と尋ねても、誰も知りません。
「それは、ただの『弁当注文』でしょ?」
と笑われてしまいます。
全国では「中学校給食」が当たり前
こちらのグラフをご覧ください。
このまちだけに暮らしていると当たり前に感じてしまう、中学校のお弁当。
でも、他のまちから引っ越してきた方々にとってはショックなのです。
何故なら、全国では中学校給食が圧倒的に多いからです。
神奈川県は、中学校給食が実現率がわずか16%!
中学校給食を導入していないのは、全国的にみると極めて少数派です。
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そんな現状を受けて、市民の方から
「横須賀市でも中学校給食を導入してほしい!」
という請願が出されました。
教育委員会へのフジノの質疑
この請願に対して、横須賀市教育委員会としてはどのように考えるか、その所見を教育長が述べました。
その一部を抜粋します。
したがいまして、当面は現在の『スクールランチ』をより充実したものにしていく為、栄養バランスや食材の調達、価格の設定などについて、事業者と協議・調整を図りながら、安心してご利用いただけるものにしていきたいと考えております。
併せて、『スクールランチ』という方式自体についても、改めて生徒や保護者の方々はもとより、小学生以下の保護者の方々にも広く周知を図り、利用しやすい環境を整えていきたいと考えています。
つまり、教育長の見解は『財源』が無いから実施できない、というものでした。
- 初期経費(イニシャルコスト)2億5000万円
- 運営経費(ランニングコスト)4億5000万円
けれども、こうした試算に対しても、「財源はある」とフジノは考えています。
そこで教育長の見解に対して、フジノは下のような質疑を行いました。
フジノの質問
今回所見の中で、選択制でのデリバリー方式、お弁当方式を採用している他都市の実績を参考にして、初期経費・年間運営経費を出していただきました。
初期経費が約2億5000万円、年間運営経費が約4億5000万円ということです。
「イニシャルコストおよびランニングコストがこれだけかかる」という金額ばかりが先行していますが、
確かに、市全体に一気に導入すれば、確かにこれだけかかってしまうとは思うんです。
けれども、例えば、ある中学校だけ『モデル校』的に試行する、ある学区だけ試行する、ということは、考える中に入ってこないのでしょうか?
「やるならば絶対に全ての学校に導入しなければならない」というものでも無いと思うのですけれども、いかがでしょうか?
学校保健課長の答弁
当然、『一部の学校で試行』ということもあると思います。
けれども『試行する』ということは、当然『全体にやった時のことを想定した上での試行』という判断になるという風に考えております。
フジノの質問
何らかの『研究委託校』ですとか、『モデル校』という形である教科に特に力を入れる、という学校教育の取り組みを教育委員会ではやっていると思うんです。
それは「最終的に市内全校に広めていくのを目途としてやっていること」とは思うんですが、特に『給食の重要性』というのはみなさん共通認識で持っておられる以上、『将来的な全市導入を目指してまず一部で試行していくこと』ということは、決してそんなに非現実的なことではないというふうに思うのです。
改めてその点についてはいかがお考えでしょうか。
学校保健課長の答弁
先ほど申し上げたとおり、施設に関する整備費も必要になってきたりしますので、例えばモデルでやって、ある程度そこの設備も整えた上で『試行』という形をやって、「やっぱりやらない」ということはなかなか無いのかなとということも考えますと
「やる時には全校でやっていく」という前提で『試行』をやってみて、課題を抽出しながら修正をしながら広げていくという形になるというふうに考えております。
フジノの質問
最後にお聞きしたいのは、イニシャルコストとランニングコストがいくらだったらやれるという判断になるのか?。
これをとても伺いたい理由が、市長にしても教育長にしても『財源論』を重ねておっしゃいます。
こどもたちの教育や食育を進めていくのに「財源論が先に経つのはいかがか」という想いがまずあります。
加えて、教育長は教育委員会の責任者ですから教育委員会の予算のことをいちばんに考えるとは思うのですが、
今回、僕が市長と一般質問でやりとりをした中で『長井海の手公園ソレイユの丘』、現在は毎年4億円も指定管理料を払っているのを「次の契約からいくらに減らせるのか」というのを質問した時に
「必ず半分以下にしてみせます」と市長は答弁しました。
2億円、浮くんですね。
ならばその2億円を教育委員会に!
つまりこどもの暮らし、食生活を守る為にまわす財源に充てることだってできる。
今まっさらな状態で初期経費2億5000万円と年間運営経費4億5000万円と聞くと、今の教育委員会には財政部に要求するのは難しいとは思うのですが
『ソレイユの丘』から2億円を浮かせられるのであれば、その財源を充てられるのであれば、教育委員会の新たな負担というのは2億5000万円で済む。
こういったふうに他の財源を見込むことが全市的にみればできる訳ですね。
教育委員会は「いくらからだったら財政部に予算要求したい、言える」というふうにお考えなのでしょうか。
教育長の答弁
そこのところはずばり金額を申し上げるというのはなかなか難しいとは思うのですが
今、藤野議員がおっしゃられたように、教育委員会として予算立てを何とかお願いを財政当局にお願いしていく場合には、基本的には教育委員会が所管している予算の中からをどこを切り詰めてということをまずいちばん最初に考えます。
そうした中では今の状況では削るところはございません。
(フジノ注:これは『横須賀市版ペイ・アズ・ユー・ゴー原則』というもので、縦割り行政の予算づくりの最悪なものです)
ましてや学校の施設整備は、例えばトイレの改修をしなければいけない、それからその他にも施設の老朽化の問題、そしてまた学校のいじめ不登校等の対応を考えると教員を確保したい、市単独でなんとかしたいという想いも思っております。
そういうことがそれではどちらが大切でどちらが大切ではないという判断ではできませんけれども、より優先しなければいけない課題として、今私が申し上げたようなところを何としてもと思っておりますものですから
オール市全体で考えた中で、今ご提案があったように全体の中で削減をするところ、そこが経費として教育のこういったところに充てさせて頂けるという話があれば、それは願ってもないことでございますけれども
教育委員会としては今申し上げた通り、今の段階ではやらなければならないところがあるので、現状のやり方を工夫し、そして限りなくスクールランチを給食に近づけたいというのが取りうる選択肢かなという状況でございます。
フジノの質問
この請願審査に関わらず、教育長とは、上下水道局の話や他部局の予算と取り組みに目を向けてほしいということを重ねて申し上げてきました。
今回も全く同様です。
現在の教育委員会の予算の枠組みで何かを削減するというのは不可能です。むしろ需要は増える一方です。
そんな中、「何かをカットして何か新たなものをやる」というよりは、市全体で考えた時に、市長も全部局長とも子どもたちを優先して行きたいんだという想いは変わりが無いと思うんです。
ならば、どこかの部署で事業のスクラップが遭った場合に、その財源を使って教育委員会やこども育成部の新規事業をビルドしていくということしかないと思うんです。
絶対やって行かなければならないことだと思うんです。
他部局の動向もしっかり見ながら、そして今であればもう1つ言えば、『医療給付費』をとにかく削減する為に保健・予防に力を入れていく。
食育というのはものすごく重要で小中学校での食習慣がしっかり確立していれば、生活習慣病になることも減らせる。
これは将来の『医療給付費』を削減できる。さらに言えば『介護予防』につながるといっても過言ではない。
ならば、「その為にも全市的な課題として中学校給食導入してはいかがでしょうか」という説得の仕方もあると思うんですね。
その時に現在のシーリングの枠の中で「ムリですムリです」と言うのでは、こどもに希望も与えられないですし、
ぜひそういった観点を持った上で、市長とやりとりをしていただきたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
教育長の答弁
藤野議員のおっしゃられた中で、われわれ今の『スクールランチ』を拡充するにしろ、多少の財政負担はどうしても必要になります。
この部分につきましてはきちんと予算立てをしていかなければなりませんので、やはり今教育委員会としてこどもたちにできることについてはここまでだったらどうしてもやりたいという部分はございますので、それはきちんと市長に申していくつもりでございます。
それと今、委員が「こどもの為に税金を」という部分では、市役所全体でコンセンサスを取っていくということも大事でございますので、そういう部分も今頂いた意見を踏まえてしっかり対処してまいりたいと思っております。
(質問の文字起こしは以上です)
財源は必ず捻出することができる!
教育長への質疑で申し上げた通りで、フジノは絶対に財源を捻出することができると考えています。
現在の横須賀市の予算づくりは、各部局が自分の部局の予算の枠の中だけでしか物事を考えていません。
つまり、現在の予算の枠が100億円ならば、来年の予算も100億円だけしか使えないと思い込んでいます。
けれども、そんなことではこどもたちへの投資に予算を回せるはずがありません。
Aという部局がある事業をやめて予算10億円浮いたとしたら、Bという部局がその予算10億円を使って新しい取り組みを始めるということも考えるべきなのです。
横須賀市全体を見渡した予算組みをしていかねばなりません。
フジノはハコモノ行政による税金の無駄づかいをカットして、保健・医療・福祉・教育へ回すべきだと訴えてきました。
そして今回、6月議会でのフジノの一般質問によって
吉田市長は、現在は毎年4億円も税金を垂れ流している『長井海の手公園ソレイユの丘』を来年度以降は必ず2億円以下にしてみせる、と答弁しました。
つまり、『ソレイユの丘』の赤字の穴埋めに使われていた2億円が浮くのです。
この2億円を教育委員会に回せば良いのです。
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教育委員会は、教育委員会の予算にしか目が向かない。
だからこそ、市議会が存在しています。
縦割り行政に対して、市全体のことをチェックしている市議会議員として
「こっちの予算はムダだからカットすべきだ」
「この予算はこどもへの投資に向けるべきだ」
とフジノは提案していきます。
中学校給食の導入の『財源』は必ずあります!
教育委員会が自分たちでは予算を工面できないのであれば、フジノが見つけてみせます。
本来であれば、こうした市全体の予算を考えるのは『市長』の役目です。
しかし、現在の市長には全くそういった全部局を見渡すという発想ができていません。
けれども、政策集団として生まれ変わった今の横須賀市議会は、市長に対案を示していくことができます。
中学校給食の財源は、必ずあります。