「反貧困全国キャラバン2013」は現在、神奈川です
今年も『反貧困全国キャラバン』がスタートしています。
8月23日に北海道を出発したキャラバンカー(東ルート)は、現在、神奈川県にやってきました。
11月24日の大阪でのゴールまで、全国を回りながら各地でイベントの開催などを通して、反貧困の活動を推進していきます。
そして今夜、『反貧困全国キャラバン2013 in神奈川・横浜シンポジウム』が開催され、フジノは参加してきました。
横浜シンポジウムに参加しました
会場は、横浜市中区日本大通にある横浜弁護士会館でした。
主催が『反貧困ネットワーク神奈川』ですが、『横浜弁護士会』が共催していることから会場がこちらになったとのことでした。フジノは弁護士会館には初めて来ました。
さて、今夜のプログラムは下の通りです。
- 基調講演 田部 知江子氏(弁護士)
- リレートーク
- 田部 知江子氏(日弁連貧困対策本部事務局次長)
- 東 玲子氏(弁護士・NPO子どもセンターてんぽ理事)
- 芦田 正博氏(社会福祉士・スクールソーシャルワーカー)
- 高沢 幸男氏(寿支援者交流会事務局長)
- 質疑応答
はじめに、弁護士として長年にわたってこの問題に取り組んできた田部知江子さんから基調講演が行なわれました。
次にリレートークとして、子どもの貧困と関わる複数の立場の方々から報告が成されました。
独立型社会福祉士事務所を開業して活躍しておられる芦田正博さんのお話を伺うのが、今夜のフジノのメインの目的でした。
芦田さんは、フジノにとってソーシャルワーカーとして大先輩にあたります。そして、横須賀市教育委員会のスクールソーシャルワーカーとして市内小中学校の現場に入っていただいており、子どもの貧困対策を推進する上での重要なキーパーソンでもあります。
とても意義のあるお話を伺うことができました。
日本のこどもは厳しい貧困の状態にある
複数の方々のお話を通して、子どもたちの置かれている状況の厳しさを示す基本的なデータを改めて観ました。
例えば、下のグラフは厚生労働省の「国民生活基礎調査」からです。
最新の調査では、日本の子どもの貧困率は過去最高(最悪)の状態です。子どもの7人に1人が貧困線以下の生活水準で暮らしている現実があります。
また、政策の失敗を顕著に示しているのが下のグラフです。
政府が税金をもとに社会保障・社会福祉などの取り組みを行なうことで格差を減らすことを『所得の再分配』と呼ぶのですが、むしろ日本では子どもの貧困率が上昇してしまっています。
どちらもフジノら貧困問題に取り組む関係者にとって何千回と目にしたことがあるデータなのですが、見るたびに本当に情けなくなります。
こどもの貧困を無くすことは、社会の貧困を無くすこと
一方で、イギリスのように子どもの貧困対策に積極的に取り組んで、成果をあげている国もあります。
1999年、ブレア首相の「子どもの貧困根絶宣言」を発しました。
子どもの貧困を撲滅することは、本人や親の責任ではなく、社会の責任であるということが当たり前の認識となりました。
2007年には『子ども学校家庭省』を新たに設置し、2010年には『子ども貧困法』を成立させて「2020年に子どもの貧困を撲滅することを政府と地方自治体に義務付ける」としました。
そして日本でもようやく『子どもの貧困対策法』が今年6月に成立しました。
法律によって、国の責務・地方公共団体の責務・国民の責務が規定されました。
子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることが無いように、貧困の状況にある子どもたちが健やかに育つことができる環境を整備して教育の機会均等を図る為に、総合的な対策をとらねばなりません。
また、法律は成立・公布されたのですが、まだ施行(効力が発行すること)はされていません。
一刻も早い施行とともに、実効性のある対策をしっかりと実行していかねばなりません。
政治家としてフジノは、政策の重要課題として子どもの貧困対策と毎日向き合っているのですが、今夜のシンポジウムでも改めてその想いを強くしました。
横須賀市教育委員会によって高校生の生活の実態把握が来年度スタートします
『子どもの貧困対策法』を策定することはフジノたち関係者にとっては、長年の悲願でした。
けれども、国の法律ができなくても地方議員として実現できることは今すぐやるべきだと考えてあらゆる取り組みを進めてきました。
その取り組みの1つを紹介します。
横須賀市が高校生に給付している『奨学金』(毎月1万円、1学年60名)についてです。
フジノは
「この『奨学金』こそ横須賀市教育委員会がこどもたちに『学ぶ機会』を保障する姿勢をあらわしている大切な取り組みだ」
と訴えてきました。
そして、金額の増加・対象人数の増加を長年にわたって訴え続けてきました。
しかし、財政的な状況から『奨学金の増額』『対象人数の増加』がなかなか進まずにきました。
そこで、『子どもたちが置かれている生活の実態を把握をすることで、奨学金事業の改善につなげていくこと』をフジノは昨年9月に提案しました。
さらに今年3月の予算議会でも下のように教育長に提案しました。
次に、高校生に対する『横須賀市奨学金』について伺います。
高校には就学援助がありませんが、本市では、経済的な理由で就学困難な高校生180名に対して毎月1万円の奨学金を支給しています。 この金額の妥当性や、この制度で目指している成果が得られているのかを検証するために、高校生たちに生活状況のヒアリングを行うべきだと僕は昨年9月議会で提案しました。 経済的に厳しい為に生活の大部分をアルバイトが占めている現実はないか。アルバイトで稼いだお金を家計に入れなければ暮らせない家族もいる中で、社会見学や修学旅行の費用も納められない生徒がいるのではないか。そうした実態を把握する必要があります。 エ、奨学金を支給した高校生たちに生活状況のヒアリングや意見を伺うという取り組みは今年度行なっていくのでしょうか。 平成22年4月から高校の授業料は無償化されましたが、通学にかかる交通費、教材費、修学旅行費、PTA会費などの費用は変わらずに存在しています。部活を始めればユニホーム代、試合があれば交通費、合宿代などもばかにはなりません。 そこで僕は、これまでも「奨学金の金額を上げること」と「支給人数を増やすこと」を提案してきました。 新たに、昨年9月議会では、単なる拡大ではなく、「高校生に地域の行事へ積極的に参加してもらうことや、地域の高齢者のサポートに努めることなどを条件として課した上で、支給人数や金額の増を実施してはどうか」とも提案しました。 そこで伺います。 オ、奨学金の支給について新たなあり方は検討したのでしょうか。お答え下さい。 |
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答弁者=教育長 奨学金を支給した高校生の生活状況のヒアリングや意見を伺う取り組みを平成25年度行っていくのか、また奨学金の支給についての新たなあり方の検討について御質問をいただきました。 奨学金の申請者については年々増加していたため、平成20年度から第1学年の対象者を10人ふやして50人から60人に変更し、全受給者数を150人から180人に増員しました。 また、平成23年度から受給者の生活状況を把握し適正に支給できるよう、毎年申請を受け審査を行う認定方法に変更しました。 今後、奨学金を含む就学に関する経済的支援のあり方については、教育を受ける機会が損なわれることのないよう、御提案いただいた方法も参考に総合的に検討する必要があると考えています。 |
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(略)そんな中、目を高校生に転じてみたいと思います。
義務教育期間である小・中学校の児童・生徒に対して、横須賀市はできる限りの財政的な援助を行ってきました。そして、義務教育を外れてしまう中等高等教育であるところの高等学校については、改めて『横須賀市奨学金』という形で経済的な援助をしています。 ただ、一点腑に落ちないのは、やはり義務教育を離れてしまった後は、子どもたちの生活状況を追うことはなかなかできづらいのかと。それは非常に残念だというふうに思います。 先ほど、平成23年度からは生活状況の把握に努めておられるということでした。 ただ、実際にこの奨学金を受けている高校生たちに具体的にひと月にかかる、学校に通う、授業料は無償化されたとはいえいろいろな生活費がかかる、決してそれは遊ぶためのお金とかではなくて、普通の高校生活を送るのに幾らぐらいかかるのか。そして、親ももちろん働いて、自分もアルバイトをしている。そして、横須賀市から奨学金を1万円いただいている。 それで高校生活を、他の一般の家庭の子ほどにはいかないにしても、生活のほとんどがアルバイトに忙殺されてしまうというような状況にはなっていないのかとか、そういったことをきちんとヒアリングしていく必要があると思うのですが、いかがでしょうか。 |
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就学援助が義務教育期間ということで、高校生になりますとそういった援助が切れてしまいますので、各種奨学金等が経済的負担が大きい家庭に対して支援できる制度だと思っております。
本市の奨学金につきましても最近大変申請者が多くなっておりまして、平成24年度ぐらいですと2倍以下でおさまっていたのですけれども、平成25年度、来年度に向けては約3倍近い方の申請がございました。 そういう中では、議員がおっしゃっていますように、教育委員会としても教育の機会が損なわれることのないようということで、金額の面、それから人数の面というのを拡充したいのですが、やはりこれは限られた財源の中でございますので、どういった経済的支援ができるのか、先ほど申し上げましたように、就学援助のあり方、それから奨学金制度のあり方、そういったもの、総合的な、経済的支援のあり方というのは教育委員会としてそこが今、課題だと思っております。 そういったことも検討する中で、高校生に直接話を聞き、実態がどうなのかというのは、そういった今後のあり方を検討する上で大変参考になると思いますので、どのようなやり方ができるか研究して実施したいと思っております。 |
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義務教育ではない中で、横須賀市奨学金制度があること自体が非常にすばらしいことだと思います。そして、教育委員会の取り組みは評価したいと思います。
今回の質問というのは、そもそも教育委員会には味方をする質問でして、奨学金を増やしていく、あるいは対象人数を拡大していくというのをやはり財政に認めていただくにはそれなりの背景が必要だと思います。根拠も必要だと思います。 そのような時、やはり財政に、そして市長に査定を通すためには、高校生たちの『生の声』が必要だと思うのです。 民主党政権になってから高校の授業料無償化という動きがありました。 けれども、本当に焼け石に水と申しますか、学生生活、本当にお金がかかります。部活をやりたくてもやれない子というのは本当に多くいます。例えば、中学校時代までは一生懸命、吹奏楽部で頑張ってきた子たちが、高校に行ったら楽器を買いかえられない、楽器を買えないから吹奏楽部に入れない、そのような子はたくさんいるのです。 そういう生の声を皆さんは本当は知っていらっしゃる。ただ、公的な形で意見交換やヒアリングというのはしていない。 だから、公的な形で意見としてペーパーに残して、財政に出して、市長に出して、そしてやはり奨学金1万円というのは就学援助の費用よりも下がってしまっている。あるいは、180人というのは、今、一生懸命、出している金額ではあるけれども、申請が1年で2倍から3倍に増えている。こういう状況を説得力をもって財政を説得するにはやはり『生の声』を聞いていく。 研究していくという御答弁もいただきました。それは必ずやっていただきたいと思うのです。 教育長、いかがでしょうか。 |
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研究していくといいましたのは、高校生からのヒアリングの仕方につきまして、より多くの声を聞くにはどうしたらいいか、実態を把握するにはどういう方法が一番有効かということを研究していきたいと申した意味でございまして、直接、聞くということは必ずやってまいります。 |
昨年9月議会での初めての提案、そして上に記した今年3月議会を経て、今年の9月議会でのこと。
教育長から正式に
「来年度から、奨学金を受けている高校生に作文やアンケートに答えてもらう形で実態を把握していく」
と答弁がありました。
フジノの提案が実現することになりました。
現在、市が持つことのできる統計データには限りがあります。そこで、作文やアンケートなどで質的なデータを得ることでより現実を反映した実態把握が可能になります。
この実態把握の先にフジノが目指していることは、『奨学金の増額』という直接的な対策だけではありません。
こどもたちの教育の支援・生活の支援・経済的支援等の施策を講ずることで、生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されない社会を実現する
という『子どもの貧困対策法』の基本理念の実現を目指していきます!
後日追記
神奈川新聞がシンポジウムを報じてくれました。