横須賀つばさの会が上映会を行ないました
午後から神奈川県立保健福祉大学に向かいました。
横須賀市の精神障がいのある方々の家族会『NPO法人横須賀つばさの会』の主催で、映画『むかしMattoの町があった』上映会が開かれました。
神奈川新聞でも下のように大きく報じてくれました。
(2013年10月15日・神奈川新聞より)
精神障害考える教材に、横須賀のNPOが伊のドラマ27日上映
精神障害者の自立、就労支援などに取り組むNPO法人横須賀つばさの会が27日、イタリアの国営テレビで2010年2月に放送された映画「むかしMattoの町があった」の自主上映会を県立保健福祉大(横須賀市平成町)で開く。精神障害のある人たちを地域で支える仕組みを苦闘の末に構築したイタリア。実話に基づく映画を通じ「自由こそ治療だ!」の理念を訴えかける。
題名の「Matto」はイタリア語で「狂気を持つ人」の意。1960年代、精神疾患者が収容されている病院長として赴任した精神科医フランコ・バザーリア氏が「精神病院」で衝撃的状況に直面する。患者は外から隔離され、独房で縛り付けられたりしていた。その後、バザーリア氏が医師、看護師らと一緒に、障害者の自由への解放と精神保健改革のため精神病院の廃止を求めていく道のりが描かれている。
イタリアでは1978年に精神病院への新規入院を廃止する法律が制定され、1999年には国内から同病院はなくなった。現在は公立の地域精神保健センターが各地に設置され、外来や緊急診察に加え、訪問診療、就労支援などを包括するシステムが出来上がっている。
困難な改革運動の進展に沿い、医師と患者の交流などを描いた感動大作はイタリアで高視聴率を獲得。その後、世界各国で自主上映が始まり、日本でも昨年8月以降、全国各地に広まっている。横須賀で上映する「つばさの会」理事の水島和明さんは「日本ではまだ精神障害のある人への理解が足らないと思う。だからこそ(医療機関など)関係者だけでなく、一般の人にも見てほしい」と強調する。
日本の精神科病院には現在約32万人が入院。うち、1年以上の長期在院者は20万人超ともいわれる。病床を減らし、地域で医療、福祉を支える諸外国と比べ、「日本は(退院後に)面倒を見る人やグループホームなどの受け皿が少ない」(水島さん)。同会理事長の下江秀雄さんは「患者の入院期間が長くなることで、社会へ出づらくなる」と指摘する。
障害者も自由を求める同じ人間-。「テーマを通じ障害者を考える教材にしてほしい」と来場を呼び掛けている。
上映会は成功裏に終わりました。
「横須賀つばさの会」のみなさま、おつかれさまでした。上映会を開催して下さって、本当にありがとうございました。
そして、上映会にいらして下さった全てのみなさまに感謝しています。
映画「むかしMattoの町があった」の背景
映画『むかし、Mattoのまちがあった』(原題『C’era una volta la citta dei matti』、イタリア、2010年)は、実話です。
世界で唯一、イタリアは精神科病院を廃止しています。
1960年代から取り組みが始まり、1998年に精神科病院を全廃しました。精神科病院に隔離収容するのではなく、住み慣れた地域で暮らしてこそ精神疾患からの回復が実現するのだ、という壮大な改革は、今も続いています。
こうした取り組みは、精神科医のフランコ=バザーリア(1924〜1980)によって大きく前進しました。
イタリアでは「すでにある精神科病院は廃止し、新たな精神科病院の建設を禁止する」という趣旨の180号法(1978年5月施行)を制定したのですが、バザーリアの名前にちなんで『バザーリア法』の通称で世界中に知られています。
そのバザーリアの活動とイタリアの精神医療改革の初期20年を描いたのが、この作品です。
バザーリアの名前を冠した『フランコ=バザーリア学術賞』の第1回受賞者は、日本人ジャーナリストの大熊一夫さんです。
イタリアの精神保健医療福祉改革については、その大熊一夫さんが書いた『精神病院を捨てたイタリア、捨てない日本』をぜひ読んでいただきたいです。
ついにエンドロールに名前を発見できました
2年前、映画『むかしMattoの町があった』を日本で上映するにあたって、『バザーリア映画を自主上映する180人のMattoの会』という会が結成されました(フジノもそのメンバーの1人です)。
上映する為には日本語字幕を制作する必要がありますが、その為には数十万円もの資金が必要でした。
そこで資金を工面する為に募金活動を行なったのですが、募集にあたって「募金して下さった方々のお名前を映画の最後に流れるエンドロールに掲載します」という方法を取ったのです。
たくさんの方々にご協力して頂いて、字幕は無事に完成しました。
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フジノ自身も募金をしたのですが、実はまだエンドロールを観たことがありませんでした。
それが今日、初めて自分の名前が出てくるのを観ることができました。
とてもうれしかったです。
募金に協力して下さった方々のお名前を拝見して、改めて感謝の気持ちを持ちました。本当にありがとうございます。
進まない日本の精神医療改革、でも諦めてはいけない
「映画の感想をツイートしてください」
と、市民の方からご要望を頂きました。
ツイッターの140文字では記しきれないので、ここに書きますね。
映画で描かれているバザーリアの活躍を、フジノは大学時代(もう20年前です)に知りました。
初めて知った時は、素直に感動しました。
けれども感動したのは最初だけです。
それから20年間、感じているのは『怒り』と『あきらめに近い感情』です。
日本の精神科医療は、極めて立ち遅れています。そのことへの怒りと、遅々として進まない現状へのあきらめに近い感情です。
厚生労働省の審議会で改革案が報告書として打ち上げられて、それが数年後には立ち消えになって、また数年後に改革派の人々によって改革案が作られて、また改革が実現しなくて、という繰り返しを見せつけられてきました。
イタリアと日本では何が違うのだろうかと考え続けてきました。バザーリアのような存在が日本にいなかった訳ではありません。情熱をもって改革に取り組んできた人々は、現場にも、官僚にも、マスメディアにも、確かに存在していました。素晴らしい取り組みもいくつも知っています。
答えは、まだ見つかりません。
ひとつハッキリと分かるのは、「それでもあきらめてはいけない」ということです。
日本の歩みはとてもゆっくりですが、それでも確実に変化は起こっているのです。
だから、絶対にあきらめずに、現実を1つずつ変えていくことが大切なのだと信じています。
映画を観て、その決意を改めて強くしました。
これが僕の感想です。