最新のデータが公表されました
最新の統計データが内閣府から発表されました。
2013年9月の横須賀市の自殺による犠牲者は8名でした。
これにより、今年9ヶ月間の合計は49名です。
前月の2倍に自殺が急増してしまった9月
今回の発表で特に注目すべきことは、前月2013年8月が4名でしたので、一気に2倍へ急増してしまったことです。
みなさまもご存知のとおり、わが国では9月10日の世界自殺予防デーから1週間を自殺予防週間に定めています。
横須賀市においても、毎年恒例の街頭キャンペーンをはじめ、いくつもの取り組みを9月に開催しました。
けれどもこの結果をみる限りにおいては、そうした取り組みは自殺へと追い込まれている状態の方々に届いていなかったと言えるでしょう…。
本当に無念です。
横須賀市が取るべき対策は何か?
極めて限られたデータしかフジノには与えられていませんが、犠牲者の方々の置かれた状況を考えてみたいと思います。
年代別では、10代・40代・60代の犠牲者は、ありませんでした。
亡くなられたのは、20代・30代・50代・70代・80代以上の方々でした。
一緒に暮らしている方がおられるかどうかは、下の通りでした。
職業に就いていらしたかどうかは、下の通りでした。
現場の警察官の方が遺書などをもとに判断した「原因・動機別」は、下の通りでした。
「過去の自殺未遂歴の有無」は、下の通りでした。
公表されているデータからだけでは、詳細な分析はとても難しいです…。
今こそ「心理学的剖検」を行なうべきだ
フジノは、やはり『心理学的剖検』(ご遺族やご友人をはじめ、同級生や同僚などの方々に、亡くなられる1年くらい前から当日に至るまでのお話をインタビューさせていただくこと)が必要だと考えています。
『心理学的剖検』とは何か、2007年の『自殺対策白書』より引用します。
心理学的剖検と遺族ケア
心理学的剖検(psychological autopsy)とは、自殺者遺族へのケアを前提として、自殺者の遺族や故人をよく知る人から故人の生前の状況を詳しく聞き取り、自殺が起こった原因や動機を明らかにしていくことです。心理学的剖検は1958年にロサンゼルス自殺予防センターの共同創設者であるシュナイドマンとファーブロウによって提唱されました。
自殺が起こった後の周囲の人へのケアを意味する「ポストベンション」ということばと考え方は、心理学的剖検を通してシュナイドマンが提唱したものです。シュナイドマンは心理学的剖検において、自殺者の遺族と話をしていく中で、遺族の心理的苦痛に気づき、自殺者遺族へのケアの必要性を認識したといわれています。
欧米では、自殺によって衝撃を受けた人を「サバイバー(survivor)」と呼びますが、ここには遺族だけでなく、職場の同僚や主治医など、ご本人の関係者や支援者なども全て含まれます。心理学的剖検は、単に自殺が起こった原因や動機を明らかにしていくことだけではなく、様々な立場の人が、時には見つめたくないことにも直面しながらも、自分の経験を振り返り、自分自身を回復していく重要なプロセスでもあります。
「遺族のこころの傷がいえるのには時間が必要だから、そんな調査はせずにそっとしておいた方がよい」と考える方も少なくありませんが、本当に時間だけで解決するのでしょうか。
また、人口動態統計や警察庁統計の数字だけで、血の通った対策は立てうるのでしょうか。
心理学的剖検を通して、遺族の方々とともに自殺という現実にじかに向き合うこと、自殺対策は、そのような一歩一歩の積み重ねから進んでいくように思えてなりません。
(自殺予防総合対策センター)
フジノはこの『心理学的剖検』を横須賀で行なうべき必要性を、今から8年前(2005年予算議会)に提案をしています。
自殺予防対策について、『自死遺族への呼びかけ』ということを質問したいと思います。
今後、個人情報保護法の施行に伴って、自死遺族を把握することは完全に難しくなっていくと思います。ただ、一番ケアが遅れている部分でありながらも、この部分をケアしていくことで自死を減らせるという研究結果も出ております。 例えばフィンランドでは、1987年4月から1年間をかけて、国内で自死をしてしまった方1,397人全ての家族を対象に面接調査(心理学的剖検)を行っています。その結果、最終的に自死を30%も減らすことに成功しています。 国レベルでは、今、日本でも民主党が自殺対策法案を策定しようとしていたり、あるいは国会議員が超党派で議員連盟をつくる動きもあります。本市もこの問題については非常に積極的に取り組んできてくれていると思います。そこで、やはり最後に残された部分、自死遺族へのケアというのが取り残されている気がして、この質問をしています。 今までの御答弁では、相談に来てくれたならば受ける体制は十分に整っている、ということでした。僕もそれは大丈夫だと確信をしております。 ただ、これが質問ですが、もっと相談に来やすい体制というものを周知の広報啓発の方法を進めていただきたい。先日、福島県の精神保健福祉センターの取り組みの中でも掲げられていましたが、自死遺族がすぐに相談にはなかなか行きづらいというのが現実であると思います。そんな中で「これは相談に来てもいい問題である」と啓発をしていって頂けたらと思っております。 |
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答弁者=健康福祉部長 自殺が多いということは大きな社会問題になっておりまして、国も自殺予防にはかなり力を入れてきているという感想を持っております。本市におきましても、やはり心の健康づくりということで、この必要性につきましては強く感じて、電話相談等を進めてきているところではございます。 そういった中で、御質問にありました、自殺をされた御家族の方々も非常につらいものがおありになって、第二次といったようなこともあろうから、その予防をする意味で、相談体制ということであろうと思っております。 自殺をされた当事者の方が既に保健所等に御相談をいただいていて、御家族の方ともある程度のつながりを持っていた場合であれば、そういったことがあったということの状況の中ででも、接触ということはある程度できるかと思いますが、全く接触がないような状況の方に対しましてアプローチをするということは、そういった衝撃を受けている御家族の心を考えてみても、行政がアプローチするということはなかなか難しい部分があろうかと思っております。 そういう中で、では、ある程度連鎖的にならないような対策としてはどうかという部分では、やはり心の健康づくりという観点での講演会の実施やあるいは広報活動等に力を入れて、市民の方がどなたでも相談しやすい体制づくりといったようなことを考えたいと思っておりまして、御家族の方への直接的なアプローチはまだ踏み込めない部分であろうと思います。 |
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今、健康福祉部長がおっしゃったことは非常によく理解できます。
全市民が相談しやすい体制になれば相談も非常にしやすくなるとは思いますが、先ほど申し上げたように、フィンランドは、国、つまり行政としてアプローチをしている。しかも、全遺族に対しての面談調査ということで行なっている。 非常に難しい問題であって、しかも本市のいくつもの取り組みというのは他の町に比べたら先進的で、まだ機は熟さないのかもしれませんが、この残された分野は必ず解決されるべき行政課題だと僕は考えています。 ぜひ自死遺族への呼びかけというのを行っていただけたらと思っております。 |
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フィンランドの取り組み等は勉強してみたいと思いますが、やはりこれは情の部分のものであろう。感情、情の部分の心の動きといった機微に触れる部分でありまして、そういった部分に行政が積極的に関与するという部分は、これはある意味では私の感じ方ではありますが、国民全体の心の持ちよう、あるいは情のありようといったような流れの中で関与ができるようになるのかとらえておりまして、横須賀市民のそれぞれの心の持ちようの中で、亡くなられた御家族に行政が積極的にかかわりを持つという全体の状況にはまだ至っていないと感じております。
繰り返しになりますが、横須賀市民の皆様方の心の健康づくりということを主眼とした事業の展開を今後も続ける中で、心の健康のレベルをアップしていきたい。まずはそこを持ちたいと思います。 そういう流れの中で、先進国の例なども勉強はしたいと思います。 |
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わかりました。フィンランド報告は、まだ邦訳はされていませんが、NPO法人等で200ページぐらいある報告書を翻訳する動きもありますし、英訳ではありますが、ホームページで掲載されているところもございます。
フィンランド人と日本人の気質は非常に似ている。やはりフィンランドでも、10年ぐらい前は自死一つを報道することは非常に忌避されるような、日本と同じような傾向があったと聞いております。 現在の段階では非常に難しいという健康福祉部長の答弁もよく理解できるところです。ぜひ国全体での取り組みの中や先進的な地方自治体の動きの中でその機をとらえて、機が熟すというのは変ですが、その熟成されてきたものがあったときには、機を逃さずに、このケアに取り組んでいただけたらと思います。 |
自殺による犠牲者を限りなくゼロに近づける為に、もう一段深い取り組みが必要です。それが『心理学的剖検』だとフジノは考えています。
横須賀がすでに行なっている『自殺未遂者支援』とともに、『心理学的剖検』をもう1つの柱にすべきです。
8年前に提案した時は、部長の答弁を聴いて「まだ機が熟していないのかもしれない」と感じました。
けれども、翌2006年には自殺対策基本法も成立し、昨年は14年間にわたって続いた自殺犠牲者数3万人台をようやく下回ることができました。
すでに、機は熟しているはずです。
2万人を1万人に、1万人を5000人に、5000人を1000人に、そして限りなくゼロへと近づけていく為には、より一層の強い取り組みが必要です。
既遂で亡くなられた方々の心理的な状況と経済社会的な変化が与えた影響をもっときめ細やかに調査して、同様な状況に追い込まれないように対策を取る基礎データとすべきです。