申し出は「突然」だったが、問題そのものは「ずっと前」から分かっていた
市民病院の小児科の入院診療の廃止について、昨日のブログで記しました。
「わずか3ヶ月後(今年4月)に入院診療を廃止する」という地域医療振興協会による「突然」の申し出のやり方に、フジノは怒りをおぼえています。
けれども「この問題そのもの」は、フジノにとって「突然」ではありませんでした。
フジノだけでなく、医療関係者のあいだでは『小児科の集約化』は「ずっと前」から課題でした。
この課題がかねてから課題として認識されてきた事実を、報告します。
フジノは「医療は地域全体で対応すべき」という考えです
まず、フジノについてです。
昨年2013年11月28日、教育福祉常任委員会が開催されました。
そこで、市内の医療体制についての報告がありました。
横須賀市救急医療センターの移転にあわせて、横須賀市医師会と横須賀市が数年前に約束した『診療科』を増やすという覚書がありました。
しかし、2014年度の移転を目前にして、診療科を増やすことが実現できなくなった、という報告を受けました。
その報告に関する質疑で、フジノは次のように発言しました。
フジノの質問
救急医療センター単体で「診療科目が増えない」というと、とても残念なことに感じられます。
でも、横須賀市、あるいは横須賀・三浦2次保健医療圏域で考えれば、ここの1次救急が無くても、うわまち病院・湘南病院があるので、そこで診て頂くほうがドクターの限られた人数の中ではより効率が良く、患者にとっても良い。
そういった『包括的な観点』からの説明がもしあれば、市民の方々も安心されると思うのです。
(略)
小児科についても『集約』していくことで、身近には無くなったけれども地域全体ではかえって手厚くなってより専門性の高い安定した小児科勤務ができるようになるという形で、統合する地域も増えてきています。
(略)
地域全体で医療は行なっていくのだ、ということを市民の方々にも伝えていって頂きたいです。
産婦人科・小児科をはじめとする、医療人材の不足の現実があります。
そこでフジノは、医療資源を『集約化』することによってより専門性の高い安定した医療を実現する、という考えを持っています。
小児科医療についても『横須賀・三浦2次保健医療圏』全体で対応していくしかない、と考えてきました。
大切なことは、「医療は地域全体で行なっていくのだ」ということを市民のみなさまにきちんと理解していただくこと。
その為に、市は積極的に情報発信を行なっていかねばならないのです。
そこで、委員会でもそのように発言したのです。
現場の医師からはすでに2年前に問題提起されていた
続いて、医療の現場からの問題提起についてです。
年1回、市民病院とうわまち病院は、それぞれの取り組みを『病院年報』によって報告しています。
2年前(2013年2月)に発行された、市民病院の『病院年報』の中で、小児科の宮本診療部長は下のように問題提起をしています。
特に注目していただきたいのは『小児救急医療への考察』という一文です。全文を引用します。
小児救急医療への考察
22年度に横須賀市内の夜間・休日の2次医療をうわまち病院に集約した後も、横須賀市内の小児救急は安定した運営を行っている。共済病院も2次輪番は行っておらず、入院人数は半減している。集約化されたうわまち病院でさえ、入院患者がほとんどない期間も出てきている。
少子化に伴い、入院が必要な小児患者への対応は、当市の場合うわまち病院だけで十分であるということが明らかになってきている。
それでも、日曜日はやや入院ベッドに苦慮する場合があるため本年度から市民病院が2次輪番を担当させた。しかし、日曜日に入院する児は平均1名弱であった。
市民・うわまち両病院の小児科の運営をみるに、本市の小児人口で、今の小児入院管理料の額では2つの小児科を経営的に成り立たせるのは不可能である。
小児科学会の提唱する小児医療グランドデザインを参考にすると、当地域の小児医療は、市民・うわまちどちらかの病院の小児病棟を増床し集約化したほうが効率・質ともにさらに向上する、と思われる。
宮本診療部長の『考察』は「半分間違っていて、半分正しい」とフジノは考えています。
現在の小児人口と診療報酬の兼ね合いから経営が成立しない、という経営の観点から『集約』の必要性が語られています。
しかし、この観点は間違っています。
「民間病院が取り組めば不採算になってしまうからこそ、公立病院が取り組むのだ」という『公立病院の存在意義』を宮本部長は理解しておられないのではないか、と感じます。
ただ、小児科の入院ベットを1つの病院に集約することで効率と質が向上する、という点についてはフジノも同感です。
いずれにしても、現場の医師からはすでに2年前に問題提起がなされていたのです。
この問題を真正面から取り上げてこなかった横須賀市の姿勢こそ問題
小児科のドクター不足、それによる当直回数の増加、医師の疲弊。
全国で起きている現実に対して、医師会、日本小児科学会、厚生労働省などからあらゆる形で対策が提言されてきました。
厳しい現状は、横須賀市でも同じでした。
だからこそ、もっと早くから吉田市長をはじめ横須賀市は、市民のみなさまにその現実を真正面からお伝えしてくるべきでした。
これまで取られてきた対策は、地域医療振興協会に医師を増やすよう要請するだけでした。
本来であれば、計画的に「医師不足を解消すると共に医療の質を高める為に●年後に小児医療を1病院に集約化する」という手段を取るべきでした。
そうせずに後手に回った結果、今回の「突然」の廃止の申し出に至ったのだとフジノは考えています。
つまり、西地区をはじめとする多くの方々に不安を与えている原因は、そうした横須賀市の姿勢にあります。
市民のみなさまの不安と負担感の増加を拭う対策を市は今すぐ取り組むべき
課題を課題として認識していながら、後手に回った結果、より悪い状況に陥ったことを、市は深く反省すべきです。
フジノ自身も含めた横須賀市の医療政策に関係ある全ての者は、今から全身全霊をかけて市民のみなさまに現実をお伝えしていかねばなりません。
徹底的に説明を尽くすと共に、入院するこどもたちの看病をするご家族の負担感を少しでも少なくできる為に取ることができる対策を全て行なうべきです。
かねてからフジノは「医療環境に関するタウンミーティングを実施すべきだ」と提案してきましたが、今こそ吉田市長は西地区を回ってタウンミーティングを行なうべきです。
医療機能の分化や、地域全体で支える医療について、市民のみなさまの理解を求めるべきです。
また、医師会には診療所の積極的な協力をお願いすべきです。
この問題への対応は、医療にかかわる健康部の取り組みだけではダメです。
例えば、西地区の交通の悪さなどの改善には、都市部の積極的な取り組みが必要です。神奈川県にも道路整備のスピードアップを求めねばなりません。
市民のみなさまへ
市民のみなさまにも、ぜひこの問題についてはご意見を寄せて頂きたいと願っています。
医療については、社会の変化とともに『医療の在るべき姿』も大きく変わってきています。
市民のみなさまと対話を重ねることで、市と市民のみなさまのあいだに『医療の在るべき姿』とは何かを共有できるようになりたいとフジノは願っています。
市民のみなさまと少しでも多くの対話をさせて頂けますよう、どうかよろしくお願いします。