亡くなる場所を「選べる」ということの大切さ
かつては『病院』で看取りを迎えることが全てであった日本が、ようやく変わりつつあります。
本人の意思で、どのように生きて、どこで最期の瞬間を過ごすのかを選べることがとても大切です。
それが『地域包括ケア・在宅療養』を進めていく、1つのゴールです。
下の2つのグラフをご覧下さい。
自宅で亡くなった方々の数が増えていっています。
上のグラフの通り、わが横須賀市では、亡くなる方々の場所が『病院』から『自宅』へと少しずつシフトしています。
全国的に見ると、いまだ選択肢が『病院』しか無い現状の中で、横須賀では『自宅』での看取りを選んだ方も増えています。
これは、とても素晴らしいことです。
本人の希望や意思があっても、それを実現する為には医療・福祉の連携が不可欠です。
今、横須賀では、在宅での看取りを希望する方々の想いを実現する取り組みが少しずつ実を結んでいます。
うわまち病院へ「出前」セミナー
『地域包括ケア・在宅療養』を実現して、この方向をさらに進めていく必要があります。
その為には、今以上に『病院』で働く方々(医師・看護師をはじめとするみなさん)の理解も不可欠です。
けれども、多忙極まる病院勤務の方々に市が開催するセミナーに参加してもらうのは、なかなか難しい現状があります。
そこで、こちら側が『病院』に打って出て、『病院』を会場にして、セミナーを開催すれば『病院』で働く方々も参加できるのではないか、というのがこの企画の趣旨です。
そして今夜、第1回目を横須賀市立うわまち病院で開催しました。
主催は、横須賀市・横須賀市医師会・市立うわまち病院の3者です。
テーマは『病院から在宅へ〜それはキュアからケアへのパラダイムシフト〜』です。
市の政策を知っていただきました
まず最初に、横須賀市の地域医療推進課による講義です。
データで見る横須賀市の現状と今後、これまで行なってきた政策、今回のセミナーの位置づけなどをお伝えしました。
例えば、今夜の出前セミナーは『人材育成』の課題を解決する、13の取り組みの中の9番目に位置づけられています。
『地域包括ケア・在宅療養』を実現する為の横須賀市の政策を、病院関係者のみなさまにも知っていただくことは、とても貴重な機会です。
横須賀の「赤ひげ」野村先生による講義
続いて、野村内科クリニックの野村良彦先生による講義が行なわれました。
野村先生は、横須賀市民病院に13年勤務した後、地域医療を推進する為に診療所を開業しました。野村先生の取り組みは高く評価されています。
生活を支える視点への転換が進みつつあります。
在宅で行なわれる医療は患者の『生活の場』で行われる為、キュアよりケアが優先される。
- 病院で行なわれている医療=キュア志向の医療
- 在宅でおこなわれている医療=ケア志向の医療
- 在宅医療は、最期まで寄り添うケアを目指している
- キュアとして何もすることが無くなった状態でも、ケアとしてはすることがある
野村先生のパワーポイントより。
- 私の在宅医療(ケア)の基本的考え方
- 「日常生活」を最優先する
- 患者、家族の納得を得る
- 慢性疾患のみを対象とする
- 「自然」経過にゆだねる
- 「安全」に終了する
- 私が実践している在宅医療
- 患者の生活面まで診る全人的な医療
- 入院医療・看護の出前ではなく、生活に即した医療
- 介護も含めたチームケアに参加出来る医療
- 「24時間つながっている」安心を提供出来る医療
- 看取りまで出来る在宅医療
- 看取った後もつながる医療(在宅から外来ヘ)
実際にうわまち病院から野村先生のクリニックへ紹介されて自宅で看取りを迎えた方の事例が紹介されました。
がんの診断から手術・化学療法・再発を経て4年が過ぎ、野村内科クリニックでの在宅ホスピスケアとなった方です。
在宅での医療、在宅での看取り。
現実的にご本人にもご家族にも大変な部分はいくつもあります。
しかし、大変な部分を上回る「自宅で良かった」という想いを実感することも多いとのことです。
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フジノとしては、繰り返しになりますが、本人の選択として「自宅に戻りたい」という本人の意思があった時に、それを実現できる体制を横須賀につくりたいです。
病院はダメ、自宅じゃなきゃダメ、という決め付けをするつもりは全くありません。
熱のこもった質疑応答ののち、閉会
野村先生の熱のこもった講義が終わり、全体を通しての質疑応答に入りました。
はじめは少しずつ手が挙がり、やがて次々と手が挙がりました。
最終的には熱心な質疑応答が続いて、閉会が30分間延長されました。
そうした医療関係者のみなさんの姿に、改めてフジノは感謝の気持ちが強くなりました。
うわまち病院で勤務するドクターをはじめとする70名もの方々が参加して下さった今夜のセミナー。
大成功だったと思います。
病院への『出前』セミナーは、あと2回開催されます。共済病院、市民病院へと向かいます。
こうして、病院と診療所と市とお互いの理解が深まっていくことで、共通の認識をもって、さらに前へ進んでいくことができるはずです。
参加して下さったうわまち病院のみなさま、病院管理者の沼田さん、野村先生、ありがとうございました!