華やかな「表彰式」の前に、地味で苦しい「選考作業」があります
先月お知らせしたとおり、今年も3月に『リリー賞』が開催されます。
『表彰式』には芸能人のプレゼンテーターやたくさんのマスメディアも訪れて、とても華やかで盛大に行われるのですが、その前に、地味で地道な作業が待っています。
そう、『選考』です!
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フジノは2010年から6回連続で選考委員会のメンバーに就任しています。
しかし、フジノにとって、この選考作業ほどつらいものはありません。
委員を経験して何年経ってもそのつらさは全く変わりません。
『選考委員の責任の重さ』は繰り返し書いてきたとおりですが、まさにリリー賞は『受賞した人のその後の人生』を変えてしまうのです。
受賞とともにたくさんのメディアの取材が殺到します。しかも、直後だけでなく、その後も何年にもわたって取材が来ます。
賞金100万円が出るのですが、それを元手にして過去の受賞者のみなさんは大学院に進学したり、資格を取ったり、新しい会社を起こしたり、大きく人生が変わります。
だから、全員を選びたい。
でも、20候補の中からわずか4組だけしか選べないのです。
フジノは他の賞でも選考委員になったことがあるのですが、リリー賞は他の賞とは全く異なるのです。
事務局から選考の為の資料が送られてくると、正直なところ、吐き気がしてきます。
それでも何十回も書類を読みこんで、インターネットも嫌というほど検索しまくります。
そして、自分なりに20候補それぞれに採点をします。
その後、『選考委員会』のみんなで集まって、議論をして決定をするのです。
今回は92件もの応募がありました
今回は、全国から92件(当事者部門53件、支援者部門39件)もの応募がありました。
これを事務局(NPO法人地域精神保健福祉機構コンボ)が第1次審査を行なって、それぞれの部門ごとに10候補に絞ってくれました。
この20候補について、フジノたち選考委員は事前に大量の書類を読み込んで、採点をします。
申請資料だけではなくて、さらに活動を深く知る為にインターネットで検索したり、事務局と意見交換をしたりしながら、全候補に採点を行ないます。
そして、採点の集計結果だけではなく、実際に委員メンバーみんなが集まって『選考委員会』を開いて議論をします。
こうして、最終的に受賞者を決めるのです。
今年も「リリー賞選考委員会」が開かれました
今日、ついに『選考委員会』が開かれました。
会場は、日本イーライリリー株式会社(港区赤坂)です。
会場に到着。
事務局であるコンボのみなさんと、イーライリリーの広報担当のみなさんも含めて20人くらい集まります。
選考委員メンバーは、以下の8名です。
- 伊藤順一郎さん(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・社会復帰研究部・部長)
- 宇田川健さん(NPO法人地域精神保健福祉機構・共同代表)
- 大島巌さん(日本社会事業大学・学長)
- 佐藤光源さん(財団法人こころのバリアフリー研究会・理事長)
- 高橋清久さん(公益財団法人精神・神経科学振興財団・理事長)
- 寺谷隆子さん(山梨県立大学人間福祉学部・特任教授)
- 中村純さん(産業医科大学医学部・教授)
- フジノ
- 執行泉さん(前回受賞者)
今回もフジノは、精神保健医療福祉の先達の中で、最年少…(涙)
選考委員のみなさんにご挨拶をしてまわりながら、改めて「みんなすごい先輩方ばかりだけれど、それでも絶対に気後れしてはいけない」と思い直して、気合いを入れました。
佐藤光源先生の世界精神医学会JeanDelay賞受賞をお祝いしました
ところで、選考に入る前に、今年3月、佐藤光源先生が世界精神医学会から大変栄誉ある『Jean Delay賞』を贈られたことを、みんなでお祝いしました。
かつて精神分裂病と呼ばれていた疾患を統合失調症という名前に変えることができたのは、佐藤先生の大きな功績です。
インターネット上には現役の精神科医が「名称変更は大した効果が無かった」と批判的な人がいます。佐藤先生の受賞にも文句を言っている人がいるのも知っています。
実際、今でも『統合失調症』に対する大きな差別・偏見・スティグマが存在していることは、フジノ自身、痛いほど理解しています。
しかし、それでもこの名称変更によってどれほど多くの人々が救われたかも、同時にフジノは知っています。
佐藤先生の功績は、単に名前を変えたことではありません。
差別・偏見・スティグマを無くす為に人生を捧げて来られたことそのものを、世界精神医学会は評価したのだとフジノは考えています。
佐藤先生、『WPA JeanDelay賞』の受賞、本当におめでとうございます。
白熱した議論がスタートしました
さて、選考委員長である大島巌さん(日本社会事業大学・学長)のご挨拶から、委員会がスタートしました。
みなさん、本当に穏やかな優しい人ばかりなのです。
それでも精神保健医療福祉とリカバリーを深く愛している方々ばかりなので、それぞれの候補に対する思い入れもハンパではありません。
穏やかながらもとても白熱した意見交換と議論が続きました。
まずは『当事者部門』の審査です。
ひとりずつ、推薦する候補への想いを語っていきます。
長い意見交換の末に、やがて、ある候補へみんなの意見が一致していきそうな流れができてきました。
しかし、それをくつがえして別の候補を推薦する熱心な意見が述べられると、場の空気が一変しました。
こうして、どなたを受賞者として選ぶかの議論は本当に白熱して行われました。
今年からリリー賞の担当者になられた新しい広報課長さんが
「ここまで熱心に議論がなされていることを、社内にいながら私自身、知りませんでした。来年からはぜひ社内の人間を傍聴させていただけませんか。リリー賞がどれほどの重みのある賞でどれほどの想いがこめられているものなのか、社員自身がもっと知るべきだと思います」
と、閉会後におっしゃったほどです。
途中にある委員の方から
「受賞者ひとりあたり賞金100万円、4名の受賞者で400万円の予算だけれど、今年は受賞者を増やしてひとりあたりの賞金を減らしてはどうか」
というご意見が出ました(それくらいに多くの候補が良かったのです)。
それでもフジノからは
「先生のおっしゃることは痛いほど分かるのですが、それでも『リリー賞』の賞金100万円という重みを変えることはおかしいと思います」
と反論しました。
こんなやりとりがたびたび続く中、タイムリミットがやってきました。
『当事者部門』の受賞者は、やはり募集要綱どおり、2組のままとしました。
そして、最終的には選考委員会のみんなで合意した2組の受賞者を決定したのでした。
こうして受賞者4組が決定しました
ここまでですでにクタクタなのですが、続いて『支援者部門』の議論がスタートしました。
そして再び、穏やかながらも熱い議論が繰り広げられたのです。
こうして、当初の予定時間を大幅に上回ってしまったものの、みんなが全ての意見を言い尽くし、語りつくし、最後には納得しあって『支援者部門』の受賞者を決定しました。
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この後、横須賀にとんぼ返りして防衛大学校まで行かねばならないフジノなのですが、ヘトヘトにはなってしまったのですが、充実感でいっぱいでした。
さあ、次は、3月20日の『表彰式』です。
ぜひたくさんの方々にお越しいただきたいです。
こころからお待ちしております!