原子力空母の交代について質問された吉田市長と記者のやりとり
横須賀市の広報課が4月26日の定例記者会見の議事録を公表しました。
『原子力空母ジョージ・ワシントンがアメリカに帰り、新たに原子力空母ロナルド・レーガンが配備される問題』についての質疑応答もありました。
その部分を抜粋してご紹介します。
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記者
空母交代に際して、呉東弁護士の会が来月から住民説明会を5地区に分けて順次進めていくそうです。
市長は「すでに説明会はやらない」と言明されておりますが、まずこうした動きに対してどのような感想をお持ちでしょうか。
市長
「説明会をやらない」という立場は変わりませんけれども、市側に出席を求められていまして、そういったところには担当者を派遣して、安全対策について説明させていただこうと思っています。
そういった動きがあることを是とするか否とするかという立場ではなくて、そういうリクエストを受けたら市としても答えていこうという形です。
記者
それはもう決定されているのですか。
市長
基本的にはそう受け止めていただいて大丈夫です。
記者
関連ですが、空母交代について市としては説明会をやらないということはつまり、市長としては「この空母交代については同型艦での交代ということで、問題として認識されていない」ということですか。
市長
初めてのことですので、我々としては慎重な対応をしていかなければいけないと思っています。
ただ「出ていった船がまた入ってくる」という感覚では受け止めていません。
とは言いながら、国からは「まったくの同型艦である」という説明を受けていますし、「安全対策や乗組員などへの教育というものもこれまでと同様に行われる」という説明をしっかりと受けています。
また、市議会に対しても予算の議会の際には施政方針の中で触れさせていただいてもいますので、「市として説明責任は果たしているのではないか」と思っています。
ただ、私の口からは「まったく問題ないです」という発言は一度もしたことは無い、ということも受け止めていただきたいと思います。
記者
『線量基準の食い違い』の話というのは、多分まだ継続されていると思いますが、先般原子力規制委員会で指針の改定がまたあって「『SPEEDI』について活用せず」ということになってしまったと言うかなりましたが、この点については市の防災計画も多分『SPEEDI』というものを依拠してつくっているものだと思いますが、「特段『SPEEDI』を活用しない」という原子力規制委員会の決定、考え方について地元市としてはどのように考えていますか。
市長
専門的な見地からの判断であろうと思うので、あまり軽々に発言しづらいところではありますが、GNF-Jもある中で放射能被害がどういった方向にあるのかというのは、半島という地形を持つ中で我々としては『SPEEDI』とは直接的に申し上げませんが、気象情報などを含めて国からしっかりと情報提供いただかないと誤った避難行動につながる恐れはあると思っていますので、『SPEEDI』は使わないという考え方は我々も少し勉強させていただきたいとは思いますが、一方でどういった方向に飛散するのか、どういった量が飛散するのかといった情報提供がしっかりとなされるような形で国としても考えていただかなければいけないと思っています。
記者
原子力規制委員会も『SPEEDI』を活用しないということに理由はあったと思います。
要は「風向きがコロコロ変わるから信用できない」という言い方ですが、新潟県は泉田知事がこれに対しては「おかしいじゃないか」という言葉をパブリックコメントなどでも言っていますが、風向きがコロコロ変わるから信用できないということについてはどう思いますか。
市長
我々としては国から放射能被害がどのように広がっているのか、行くのかとかいう情報を得る必要があると思っています。
それが『SPEEDI』によらないということであれば代替の形で受け取っていかないと、適切な避難行動につながらない恐れがあると私も近い感覚を持っています。
とはいえ、専門的な見地というのを市が持っているわけではないので、新潟県知事ほどはっきりとは断言はできないですが、国から何らかの情報を得ていく必要は必ずあると思っています。
記者
市長は同型艦、つまり諸元が同じというところを根拠にしてきていると思いますが、7年前と比べて社会状況というのは一変して、原発と同列に語るのはどうかと思います。
それでも市民の放射能に対する考え方というのは一変したと思うのですよね。
その辺を踏まえてどのようにお考えですか。
市長
今回の東日本大震災の中で福島第一原発があのような状態になって、実際国民の放射能、放射線というものに対する理解というのは一定程度深まったのではないかと思っています。
ただ一方で、見えもしないし臭いもないし、そういう物質に対する不安感というのも高まったのではないかと思っていますので、我々としては正確な情報提供というのは引き続き同型艦とはいえ市民に対して行っていく必要があると思っていますし、その上で安全対策というのも、今『指針』の話が出たので国の考え方というのを待つところはありますけれども、市としてはできる体制整備は行っていく必要がこれからもあると思っています。
ですので、たとえ市民理解がその結果深まったとしても、安全対策は引き続き行っていく必要があると思っています。
記者
関連してですが、呉東弁護士たちは、原発事故が数年前に起きたことを経験した上での原子力空母の配備という点で、まったく異質のものであると言っています。
また、今は原発の再稼働の論議というのを川内など各地でやっていますが、横須賀の場合は船が入港するだけです。
ただ入港するだけですが、新しい船が来ることでまた長期に5年、10年とか固定化して、原子炉が1年のうち220日ぐらいですかねこう張り付く空母がそこにあるというようなところは、再稼働に匹敵するものではないのかというような問題提起をしている人たちもいます(注:フジノたちのことです)。
その点について、「諸元は同じ同型艦への交代だ」というのが市長の見解ですが、憂慮する市民が出てくるということと、社会情勢の変化ということについてどういうお考えですか。
市長
我々は「原子力艦船に積んでいる原子炉よりいわゆる民生用の原子炉というのはそもそものつくりが違う」という説明を受けています。
ですので、その福島第一原発となぞらえて危険性を発信するやり方というのは我々の立場ではないし、我々としてはその点については丁寧な説明を求められればしていきたいと思っています。
記者
ジョージ・ワシントンの出航の関係ですが、そろそろじゃないかと思いますが、市の方に何か情報と言いますか、見通しは立っていないのでしょうか。
市長
具体的な日付などは特に聞いていません。
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引用は以上です。
赤太文字にしたのはフジノです。
ダブルスタンダードの基準を政府に早期に一致させる為に、市長と市議会が共闘すべきだ
『原子力空母ジョージ・ワシントンがアメリカに帰り、新たに原子力空母ロナルド・レーガンが横須賀に配備される問題』を吉田市長がどのように捉えているかをぜひ市民のみなさまに知っていて頂きたいです。
残念ながら、原子力空母に対する吉田市長の考え方とフジノの考え方の間には、大きな溝があります。
けれども唯一、『市民のみなさまのいのちを守る為の災害対策を今後も継続していく』という点では全く同じ想いです。
せめてこの1点で、市長と市議会がともに政府に対して強くダブルスタンダードになっている基準を一致させるよう求めていくなどのアクションを起こせないか、そう願っています。
この問題は、イデオロギーではありません。
いのちを守る為の問題です。