参加した時間を「ムダだった」と久しぶりに感じた、意識が低いフォーラムでした
本日、桜木町の横浜市社会福祉センターにて、神奈川県教育委員会教育局インクルーシブ教育推進課による『平成27年度インクルーシブ教育推進フォーラム』が開かれました。
結論から先に書きたいのですが、「何も得ることが無い、ひどいフォーラム」でした。
神奈川県(知事部局)が悪いのか?
神奈川県教育委員会が悪いのか?
どちらにしても、県と県教委の『インクルーシブ教育』に対する意識レベルがよく分かりました。
プログラムや登壇メンバーは下の通りです。
第1回地域と共につくるインクルーシブな学校―地域の子ども―
共生社会の実現に向けて、地域の子どもを地域で育てていくことの意義について考えます
- 趣旨説明
「神奈川県のインクルーシブ教育推進の取組」(インクルーシブ教育推進課) - パネルディスカッション
「地域と共につくるインクルーシブな学校 ―地域の子ども―」
コーディネーター:
滝坂 信一氏(元帝京科学大学生命環境学部教授)パネリスト:
鈴木 文治氏(田園調布学園大学心理福祉学科教授)
渡辺 智興氏(相模原市立療育センター陽光園主査)
石井 千尋氏(ののはな文京保育園支援保育コーディネーター)
浦 美佳氏(県PTA協議会副会長)
まず、県教育委員会から現在の取り組みのご説明がありました。
これから実施する取り組みは、どれも「できるかぎり」という言い訳が全て文章の頭についていました。
つまり「できなくてもしかたがない」ことを前提にしたものばかりでした。
次に、コーディネーターとパネリストによる10〜15分間ほどのミニ講演でした。
この内容があまりにもひどくて、率直に驚きました。
何故このような方々を人選したのか、県と県教委の意図がフジノには全く理解できませんでした(鈴木文治教授だけは違います。鈴木教授はいつもどおり素晴らしかった)。
登壇した方々がどんなにえらい教授やえらい肩書がある方々であろうとカンケーありません。
まず、コーディネーターの発する言葉の数々が不快でした。
それからパネリストのみなさんは、ふだんは障がい福祉の現場で働いておられるのかもしれません。しかし『共生社会』実現の為の『インクルーシブ教育』という取り組みを理解しておられるとはフジノにはどうしても感じられませんでした。
パネルディスカッションの冒頭で、コーディネーターは
「このフォーラムの後すぐに地元で実践できることを1つでも2つでも持って帰って下さい」
と述べました。
しかし、何も持って帰れるような内容はありませんでした。フジノの心に残ったのは『くだらない話を聞かさせられた怒りだけ』です。
続いて、登壇者同士のパネルディスカッション(といえるのか分からないもの)が行われました。
そして休憩に入りました。
徒労感でいっぱいになり、フジノはここまでで帰ろうかと思いました。
実際、帰った方もいらっしゃいました。
顔見知りのあるまちの市議会議員(障がい福祉がメインの政策の方です)が偶然にもフジノの隣の席に座っておられたのですが、お帰りになりました。「そりゃあ帰るのも当然だよな」と感じました。
しかし、休憩後には『会場との質疑応答』だったので、そこまで残ってフジノが感じた怒りを発言しようと思い、そのまま残ることにしました。
唯一の救いは、会場を埋め尽くした当事者ご家族のみなさんたちでした
『会場との質疑応答』まで、ガマンして残って良かったです。
フジノと同じように、このフォーラムに強い怒りを感じた方々が会場にたくさんいらっしゃったことが分かりました。
まず、会場の最前列におられた車いすにのった当事者の方が口火を切りました。フジノは全く同感だと感じました。
コーディネーターは質問には答えようとせずに「ご意見として承ります」と流しました。
まともに応えようとしない姿勢に、フジノはさらに怒りを感じました。
次に、ご家族であろう方々から連続して厳しい批判の声があがりました。
下の記述は、その方のご発言をフジノが忠実にメモしたものです。
どうして、前に座っている方々の中に当事者が何故1人もいないのか。それが全く分かりません。
障害者権利条約は『私たち抜きに私たちのことを決めないで』という理念で当事者の声をちゃんと受け止めようということで作られていったものなんですね。
そこ(ステージ)に最低半分は当事者がいなくちゃいけない。半分はいなくちゃいけない。
だけど、(ステージ上は)みんな健常者。
で、お話する内容はやっぱり健常者視点からしかお話していない。
当事者側の分けられたり、排除されたり、そのへんの痛みとかつらさとか苦しさだが1つも伝わってきていない。
確かに今日は『インクルーシブ教育推進課』の企画であり、インクルーシブな社会を創っていくという企画であるはずなのに、すごく違和感を感じます。
このフォーラムでどうやってインクルーシブな社会を創っていくのか全く分からない。
そもそも、インクルーシブな社会というのは別け隔てが無い社会であって、小さい頃から分けちゃいけないんですよ。
だけどお話は「特別支援学校を作って、それが地域に理解を深めていく」といったもの。
違うでしょう?
「ボランティアで理解を深めていく」じゃないでしょう?
小さい頃から一緒に居ることで、お互いを理解していく。
まして『合理的配慮』っていうのは一緒に居る中で必要なものであって、今までの配慮とは観点が違うんですよ。
今までの配慮と同じような観点とは違うんですよ、『合理的配慮』っていうのは!
一緒に生きていく中でそこで弊害となるものをちゃんと捉えていこう。だから普通級の中で一緒に勉強していく中で、本人にとって不利益になることを乗り越えていくべく配慮していこうというのが『合理的配慮』であって、単なる障がい者に対する配慮っていうのと混同しないで下さい。
それからもう1つ。
今日、インクルーシブ教育推進課の企画ですが、どう捉えても『インクルーシブ教育』じゃなくて『インクルーシブ教育システムづくり』、仕組みづくりをどうするかということに終始している感じがします。
それで『インクルーシブ教育システム』で県が言っていることは、「障がい者が精神的および身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能にするという目的のもと」と書いてあるんですね。
これは今までのよく言われている(旧来の)『医学的モデル』です。
要するに、障がい者個人の責任、「障がい者が障がいを乗り越えて、可能な限り発達させ能力を伸ばして健常者に近づいていけ」というところとどこが違うんですか?
やっぱりこういう『システムづくり』だから『みんなの教室』とか考えちゃってる。それは違う。
さっきから県の文章をみると「できるだけ」「できるだけ」ばかりで、どこに責任があるんだろうと思います。
どこがインクルーシブ教育なんですか?
本当今日はね、フォーラム聴いていて何の為のフォーラムなのかって。
インクルーシブ社会をみんなで考えてもらおうっていうのかということが分からなくて、はじめからさいごまで聞いていました」
この方の発言が終わると、大きな拍手が起こりました。
しかしコーディネーターはまたも「ご意見として承ります」と流しました。
その後も、障がい当事者のご家族であろう方々から、想いのこもったご発言が続きました。
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神奈川県と神奈川県教育委員会は、本当に今日のこのフォーラムが大失敗であったことを深く反省して欲しいです。
フジノは政治家になって12年経ちますが、こんなにひどいフォーラムに出会ったのは今まで数えるほどしかありません。
あまりにも、ステージと運営者のみなさんと、参加している人々の切実さや想いがかけ離れすぎていました。
当事者のみなさまもご家族のみなさまも、毎日本当にいろいろな苦しみを体験しているんです。
だから、一生懸命に国の仕組みも学ぶし、障害者権利条約だって勉強会を開いたりして学んできたんです。
かたや、今日のこのフォーラムはフジノにとっては最低レベルの内容でした。
一言で言えば、県は勉強不足すぎると思います。
だから人選もミスするし、フォーラムそのものも失敗に終わったのです。
勉強不足の理由は、意識が低いからだと感じます。
今日あえて2つだけ良かったことがあるとすれば
第1に、神奈川県というお役所がまだこんなレベルなのだとハッキリと分かったこと。
第2に、お役所のレベルはこんなものでも、当事者ご本人とご家族はみんな本当にがんばっているということ。
質疑応答の時間に会場で挙手をして発言して下さった方々のご発言に、フジノはとても共感しました。フジノの想いを代弁して頂きました。
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神奈川県はさらに年度内にあと2回も同じフォーラムを開催する予定ですが、ぜひ改善して下さい。
今日のようなフォーラムならば、やるべきではありません。税金のムダ使いです。
障がいのある方々のもっと意味のある事業にその分の税金を充てて下さい。
県や県教委のみなさまは反論があれば、ぜひフジノにご連絡下さい。お待ちしております。
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たかが2時間半のフォーラムに参加して、こんなにもひどく疲労を感じて失望させられたのは久しぶりです。
障がい福祉への横須賀市役所の取り組みは決して全国レベルではありません。
しかし、今日のフォーラムのように失望させられた経験は、本当に今までありません。
それくらいに衝撃的な2時間半でした。
けれども、逆にフジノは闘志が湧いてきました。
絶対に諦めない。絶対に腐らない。
この現実からスタートして、マイナスをまずゼロに変えていくしか無い。
どうか、当事者ご本人のみなさま、ご家族のみなさま、一緒に変えていきましょう。
僕も絶対に諦めません。
フジノはいち市議に過ぎませんが、県に対してこれからはもっと強く働きかけていきたいです。
もちろん、横須賀市においてインクルーシブ教育が実現するように、さらに全力を尽くしていきたいです。