昨年すでに成立していたかもしれない『自殺対策基本法の一部を改正する法律案』
超党派の国会議員によって2005年から活動が続けられてきた『自殺対策を推進する議員の会』が、数年前から法改正に向けて取り組みを行なってきました。
昨年2015年6月には、参議院厚生労働委員会で『自殺総合対策の更なる推進を求める決議』を決議しました。
自殺対策に取り組むあらゆる団体へのヒアリング活動を行ない、さらに2015年9月には改正法案に関するパブリックコメントも行ないました。
議員提出議案(議員立法)としては極めて珍しい、丁寧で慎重な活動がじっくりと行なわれてきたおかげで、国会に提出する前の段階で、全会派の想いが一致する形にまとまっていました。
下の毎日新聞の記事のように、昨年10月30日の時点ですでに改正法案の成立が確実視される記事も出ていました。
フジノ自身も、改正法案の成立を前提とした一般質問を市議会でも行なっていました。
超党派の想いは一致していたので、国会さえ開かれれば、成立は目の前でした。
しかし、昨年11月。
野党からの国会召集要求に応じず、政府は臨時国会を開きませんでした。
これによって、自殺対策関係者が期待していたスケジュールがいったん白紙に戻ってしまいました。
自殺対策基本法の改正に向けた第2ラウンドがスタート
年が明けて国会が招集されて、第2ラウンドが始まりました。
ふつう、法案は衆議院から審議されます。
けれども10年前と同じく、改正自殺対策基本法案もまた『参議院先議』となりました。
2月18日、参議院厚生労働委員会委員長を提出者とする『委員会提出の議案』としてスタートしました。
全議員が賛成している場合、委員長を提出者としてこのように議員提出議案を出すことができるのです。
自殺対策基本法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第1号)概要
本案は、自殺対策の一層の推進を図るため、自殺対策が生きることの包括的な支援として実施されるべきこと等を基本理念に明記するとともに、都道府県自殺対策計画及び市町村自殺対策計画の策定等について定めるほか、基本的施策を拡充し、自殺対策の推進につき必要な組織の整備を図る等の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
- 目的規定に「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていること」を加えること。
- 基本理念として、自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として、実施されなければならないこと等を加えること。
- 国は、地方公共団体に対し、自殺対策に関する地方公共団体の責務が十分に果たされるように必要な助言その他の援助を行うものとすること。
- 国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設けること。
- 国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校(学校教育法第一条に規定する学校をいい、幼稚園及び特別支援学校の幼稚部を除く。)、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者は、自殺対策の総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとすること。
- 都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、都道府県自殺対策計画を定めるものとすること。また、市町村は、自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画並びに地域の実情を勘案して、市町村自殺対策計画を定めるものとすること。
- 国は、都道府県自殺対策計画又は市町村自殺対策計画に基づいて地域の状況に応じた自殺対策のために必要な事業等を実施する都道府県又は市町村に対し、当該事業等の実施に要する経費に充てるため、予算の範囲内で、交付金を交付することができること。
- 調査研究等の推進及び体制の整備、人材の確保等、心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等、医療提供体制の整備等の基本的施策をそれぞれ拡充すること。
- 政府は、自殺対策を推進するにつき、必要な組織の整備を図るものとすること。
- この法律は、平成二十八年四月一日から施行すること。
2月24日に開かれた参議院・本会議では、『全会一致』で可決されました。
続いて、衆議院へと議論の場が移りました。
衆議院の厚生労働委員会でも、3月18日に可決されました。
そして本日、ついに衆議院・本会議が開催されました。
ついに改正自殺対策基本法が成立しました
本会議場では厚生労働委員長が法案の説明を行ないました。
「採決いたします。
本案の委員長の報告は可決でございます。
本案は委員長報告のとおりに決するにご異議はありませんか?」
議長の呼びかけに対して、本会議場の国会議員のみなさんによる
「異議なし」
の声によって可決され、成立しました。
●
その瞬間、フジノは京浜急行の電車内に居ました。
午後2時半から内閣府で開かれる『自殺対策官民連携協働会議』を傍聴する為に、都内へ向かっていたのです。
iPhoneの小さな画面に映る衆議院中継を観ながら、たぶん世間の多くの方々とは違って、フジノはとてもドキドキしていました。
10年前と同じで、成立する最後の最後のその瞬間までどうなるか分からない、そんな気持ちでいました。
けれども、無事に可決されました。本当にホッとしました。
●
NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表の清水康之さん、本日まで本当におつかれさまでした。
尾辻秀久議員をはじめとする超党派の国会議員による自殺対策議連のみなさま、ご尽力いただいたことを心から感謝しております。ありがとうございました。
そして、自殺対策に関わる全ての関係者のみなさま、自死遺族のみなさま、支援に携わるみなさま、おつかれさまでした。
内閣府主催としては最終回となった『自殺対策官民連携協働会議』が16時半頃に終わり、会議室から国会を眺めました。
つい3時間前にあの国会で改正法案が成立したのだと思うと、不思議な気持ちになりました。
今日の改正法案の成立は、たいへんな大改正でした。
けれどもその一方で、現場で自殺対策に向き合っている僕たちにとっては、実は『新たな道具』がひとつ手に入ったに過ぎません。
この道具をどれだけ使い倒すか、使いこなせるか、それこそが大切なことです。
命を守るというそのたった1つの目的の為に、これからもみんなで力を合わせていきましょうね。