(前の記事から続いています)
大楠幼稚園の設置を約束した「協定書」が新たに「再発見」されました!
まず請願第1号『大楠幼稚園の廃止の撤回と、大楠地区の子ども子育て環境の充実を求める請願』を出して下さった方々から、『陳述』が5分間行われました。
『陳述』というのは、請願書の文章だけでは伝えきれない想いを教育委員会定例会のその場で、じかに言葉で述べる機会のことです。
わずか5分間という限られた時間ではありましたが、とても切実な想いが語られました。
さらに驚愕の事実が語られました。
なんと、かつて昭和51年に横須賀市と地域が交わした『協定書』の中に大楠幼稚園創立の根拠が存在したという新たな事実が述べられました。
つまり、横須賀市が長坂に『ごみ埋立地』を作るにあたって、当時の横山和夫横須賀市長と長坂町内会長との間で『協定書』が交わされていました。
なんとその中に、大楠幼稚園の設置が約束されていたのです。
事実、この約束に基づいて大楠幼稚園は新設されたのです。
しかもこの『協定書』では、将来何らかの事態の変化があった場合には、しっかりと協議を行わねばならないことが記されていました。
つまり、廃園をするというならば、『協定書』に基づいて誠意をもって横須賀市は協議をしなければならなかったのです。
けれどもすでに請願にも記されているとおり、教育委員会は廃園の決定ありきで、地域住民のみなさまと丁寧な話し合い(協議)は行わずにきました。
これは『協定書違反』です。
もしも訴訟が起こされれば、横須賀市は確実に敗訴するでしょう。
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この『協定書』の存在は、歴代の教育委員会事務局のみなさんも全く知らされていなかったそうです。
『協定書』の存在を憶えておられたいち市民の方が、声をあげてくださったそうです。
署名活動をしておられたみなさんの熱意が、昭和51年当時に『協定書』を交わしたことを憶えておられた市民の方との出会いを生み出したのだと思います。
この『協定書』の中身は今までフジノも全く知らず、陳述によって初めて知らされて、正直なところ大きな衝撃を受けました。
「大楠幼稚園の廃止は先送りする必要がある」と画期的な所見が述べられました!
これを受けて、続いて教育委員会事務局の教育指導課長から所見が述べられました。
大楠幼稚園の廃止の撤回と大楠地区の子ども子育て環境の充実を求める請願に対する教育委員会としての所見
請願第1号の願意は、大楠幼稚園について、平成27年8月21日の教育委員会定例会で議決(議案第44号)された、市立幼稚園の廃園を撤回し、併せて大楠地区の子育て環境の今後の展望を示したうえで、保護者や地域と協議の場を設けることを求めるものです。
市立幼稚園は、その存在意義を、「私立幼稚園の補完的役割」及び「幼児教育の研究活動」、「支援を要する園児の受け入れ」として運営してきました。
まず、「私立幼稚園の補完的役割」については、子どもの増加に陰りが見え、また私立幼稚園数及び定員が増加し、民間での受け入れが充分となったことで、その役割を終えたと、平成9年、10年当時に、市立幼稚園の休園が検討された時点で判断しています。
「幼児教育の研究活動」については、市立幼稚園で行ってきた研究活動とは別に、横須賀市私立幼稚園協会へ研究委託を行っており、毎年、その研究成果をもとに、幼児教育の充実・改善に努めています。
今後も引き続き、横須賀市私立幼稚園協会との連携を深め、研究委託を行っていきたいと考えており、担当指導主事も関わりを持ちながら、研究成果の発信をしていくことができれば、横須賀市全体の幼児教育としては、より良いものになっていくと考えています。
また、「支援を要する園児の受け入れ」については、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の施行により、障害を理由とした不当な差別的取扱いが禁止されたことや、「子ども・子育て支援新制度」の施行により、新制度に移行した施設には、入園希望者の受け入れについて応諾義務が規定されたことで、その役割をお願いしていきます。
以上の理由から、市立幼稚園の存在意義が薄れていると判断し、教育委員会として廃園方針を決定しました。
しかし、大楠地区には私立幼稚園がないことへの不安などから、幼稚園の存続を望む保護者の要望は強く認識しております。
教育委員会として、市立幼稚園の存在意義が薄れたとの認識は変わりませんが、廃園時期を平成30年度末としていたことについては、その後の市立幼稚園を取り巻く状況の変化や、地域の現状を踏まえ、先送りする必要があると考えております。
あらためて地域の置かれている状況を分析し、大楠地区における、より良い幼児教育の在り方について、保護者をはじめ地域の皆様と協議していきたいと考えております。
所見が読み上げられました。
なんと「廃園は先送りする」と述べられたのです!
これまでの教育委員会の方針が覆されました。
教育委員会は昨年(2015年)8月の教育委員会定例会で廃園を議決していたからです。
傍聴席からも、喜びと戸惑い(本当に廃園は無くなるの?)とが混ざった驚きの声があがりました。
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その後、質疑応答に入り、教育委員から数点の質問があがりました。
やはり『協定書』の存在についての質疑も多く交わされました。
これは、完全に方針転換です。
市民のみなさまのがんばりが、教育委員会の方針転換につながったのです。素晴らしい市民力です。
後日談:翌日の神奈川新聞に大きく報道されました!
教育委員会定例会には、前回も今回も神奈川新聞S記者が取材に来て下さっていました。
そしてこの結果を受けて、翌日の神奈川新聞に大きく報じて下さいました。
フジノのブログでは大楠幼稚園にしか触れることができませんでしたが、神奈川新聞ではしっかりと諏訪幼稚園についても記して下さいました。
とても分かりやすい記事で、とても良い記事だと感じます。
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横須賀市は、市立幼稚園の廃止をはじめ、婦人会館の廃止、小学校の統廃合、あらゆる公共施設の廃止など、あまりにも拙速に進めすぎです。
今回の大楠幼稚園を守ろうという市民のみなさまの活躍は、こうした横須賀市の誤った方針に一石を投じたという大きな意義がありました。