歴史的な前進、横須賀市の「自殺対策連絡会」の新たな正式な委員として「自死遺族」が加わりました
午後から『自殺対策連絡会』が開かれました。
フジノにとって、今回の『自殺対策連絡会』は大きな意味を持つ場でした。
何故ならば、13年前からずっと提案し続けてきたことがついに今日から実現したからです。
それは、横須賀市の自殺対策の司令塔である『自殺対策連絡会』の委員に、正式に『自死遺族』が新たに委員として加わったのです。
沢田市長、蒲谷市長、吉田市長と、3代にわたって提案を粘り強く続けてきました。
そもそも『自殺対策連絡会』の前身である『自殺対策連絡協議会』自体がフジノの提案で設立されたものです。
沢田市長時代から提案し、蒲谷市長がその提案を受け入れました。
横須賀市による『自殺対策連絡協議会』の設置は、都道府県・政令指定都市以外での設置は、全国で初めてのことでした。
それは全国的にも大きな成果で、当時はメディアでも大々的に報じられたものでした。
けれども、そのメンバー構成はフジノが目指したものとはかなり異なりました。
特に残念だったのが、相談機関側だけをメンバーにしたことです。
フジノは「自死遺族を委員に加えなければダメだ」ということを、設立前からずっと訴え続けてきました。
その3代の市長との質疑を以下にご紹介します。
沢田市長への提案
フジノが政治家に転職した理由は、自殺を無くしたいからです。
初当選直後から現在まで13年間にわたって政治家として働いてきましたが、全ての本会議・委員会で必ず質疑という形で政策を提案してきました。
フジノが初当選をした時の市長は、沢田市長でした。
2003年12月8日・12月議会・市長への質疑
フジノの質問
横須賀市がより積極的に自殺予防を進めていくには、総合的な自殺予防ネットワークづくりが必要だと僕は考えております。
これは僕の試案なのですが、市長をトップに、『自殺予防対策本部』を設置いたします。市役所内部は、健康福祉部を初め7部の連携を行ないます。
市役所の外部は、神奈川県警、県労働局、商工会議所、市医師会の協力を要請し、また民間の相談機関、社会福祉協議会、遺族会、NPOなどの協力も得ていくのです。自殺の現場に最も近いのは、神奈川県警と消防局の救急と、そしていのちの電話です。
また、中小企業の経営者にとって、商工会議所や労働局の存在はとても身近です。かかりつけの内科医に、よりメンタルヘルスに関心を持ってもらうには、医師会の協力も欠かすことができません。
このような形で公式なネットワークをつくり、自殺予防という目的のもとで情報を共有し、対策をともに練り、危機介入時には速やかな連携をとれるようにすることが、自殺予防対策の上でより有効ではないでしょうか。
この提案について市長はどのようにお考えでしょうか。
市長の答弁
「市で『自殺対策本部』を設立し、関係機関とともに総合的なネットワーク体制をつくるべき」との御提案がありました。
『自殺対策本部』の設置は考えておりません。
必要に応じての関係機関の間のネットワークを進めていきたいと思います。
フジノの再質問
総合的なネットワークは必要がない、というお答えでした。
しかしながら、実感として感じている思いとしては、もし何か精神的な問題を抱えたときに、保健所を念頭に置く人間が果たして何人いるでしょうか。
メンタルクリニックや、あるいはカウンセラーという存在を考えることはあっても、保健所の相談窓口、あるいはその電話番号を意識することができる人が果たして何人いるでしょうか。
その意味で、私は、打って出るべきであるというふうに質問でその思いを話させていただきました。
ぜひ打って出るという体制、打って出るという姿勢を保健所にはとっていただきたいと思っております。
当時は沢田市長が頑固だった訳でも何でも無く、全国的に自殺対策そのものが存在していない時代でした。
フジノは、私人としてはNPO法人自殺対策支援センターライフリンクの一員として、公人としては市議会議員として、国に自殺対策基本法を新たに策定するように訴えました(2006年に自殺対策基本法は成立しました)。
フジノの私案である『自殺対策本部』は、沢田市長に「考えておりません」と一蹴されました。
けれども絶対に必要だとフジノは考えていました。
このはじめの提案から、そもそも「メンバーにも自死遺族会が入るべきだ」と訴えました。
蒲谷市長への提案
沢田市長の後継者として立候補したのが、蒲谷副市長でした。
当選した蒲谷市長に対して、フジノは『自殺対策基本法』に位置付けられた『自殺連絡協議会』(かつてのフジノの『自殺対策本部』と同じ発想です)を提案し続けました。
すると蒲谷市長はその提案を受け入れて、法律で設置が義務付けられた都道府県・政令指定都市を除いて、全国で初めて横須賀市が『自殺対策連絡協議会』の設置を決定しました。
これは蒲谷市長による大英断でした。
けれども、メンバーに自死遺族を入れるべきだというフジノの提案までは、受け入れてもらえませんでした。
2006年9月28日・決算議会・市長への質疑
フジノの質問
2、自殺予防総合対策のさらなる積極的な推進のために。
(1)年内に設置予定の『自殺対策連絡協議会』のあり方について。
すでに新聞報道で明らかですが、『自殺対策連絡協議会』を都道府県・政令市を除く自治体としては全国で本市が初めて設置する方針とのこと、市長の英断を高く評価いたします。
さて、全国が注目する本市の取り組みの実際のあり方について質問します。
第1に、メンバーの人選についてです。
自殺に追い込まれる心理、社会的な要因は複雑で、それらを医療、保健、福祉、教育、労働、経済など、官民問わずあらゆる分野の方々の参加によって、実態把握、分析及び総合的な対策を打ち出していくネットワークがこの『協議会』です。
したがって、メンバーは実態に詳しく、熱意にあふれた者であるべきです。
例えば、長く多重債務問題の解決の相談に乗ってきた方や自死遺族御本人などの参加も不可欠です。
そこで、市長に伺います。メンバーはどのような人選を行う予定でしょうか。
市長の答弁
『(仮称)自殺対策連絡協議会』のあり方について、メンバーをどのような人選にするのか、(略)等についてお尋ねでございます。
本市の『健康増進計画』である『よこすか元気アップ21』では、自殺者数の減少を掲げており、その目標に向けて、この『協議会』を年内には設立したいと考えております。
協議会の構成でありますが、官民を問わず幅広く関係機関に入ってもらうように調整中であります。
(略)
フジノはしつこく提案を繰り返しました。
2006年11月29日・12月議会・市長への質疑
フジノの質問
4、実態に即した自殺予防総合対策の推進のために。
本市が12月から開催予定の『(仮称)自殺対策連絡協議会』のメンバーについて伺います。
事前に健康福祉部長に伺った際には「遺族の方々はメンバーとして予定していない」とのことでした。
他の自治体では『分かち合いの場』を定期的に持つなど、団体として活動している遺族の方々にメンバーとして参加してもらっています。
確かに本市には、僕の知る限りではそういった団体として活動していらっしゃる自死遺族の方々はいらっしゃいません。
しかし、これは本市に限らず全国的に非常に少ないのが現状です。
僕自身も3年前から本市で遺族の分かち合いの場をつくろうと活動してきました。
けれども、大きな悲しみの中を生きながら、何とか毎日を暮らすことに精いっぱいの中で、団体として何かの活動を行なっていくということは本当に難しいものがあります。
しかし、団体は存在しなくとも、行政や関係機関だけでなく、当事者である遺族の方々の生の声が反映されてこそ、充実した自殺予防対策につながるのではないでしょうか。
そこでまず、メンバーに自死遺族の方々が入るのかどうか、この点についてお答えください。
もし加わらないのであれば、その理由についても具体的にお答えください。
仮に第1回の協議会に遺族がメンバーとならなくとも、自死遺族が置かれている状況への理解を深め、実態に即した遺族ケアを行うためには、遺族の生の声を聞く機会を必ず設けるべきだと思いますが、市長の考えをお聞かせください。
市長の答弁
仮称でありますが、『自殺対策連絡協議会』のメンバーに自死遺族は加わるのか、また遺族支援を行うために遺族の生の声を聞く機会を設けるべきという点の御質問です。
『(仮称)横須賀市自殺対策連絡協議会』には法の趣旨に沿って労働基準監督署、横須賀商工会議所、医療機関の代表や学識者など幅広い関係機関に入ってもらい、その中で必要な対策、連携を協議してまいりますが、まずは行政上の課題や連携について取り組んでいくということから、この中には自死遺族を代表とした方のメンバーの参加は考えておりません。
自死遺族の生の声を聞くことに関して、現在自死遺族の悲しみ相談については、いつでも保健所等で受けられるようにしているところでございます。
自死遺族を含め、自殺に関する行為については、できるだけ集め、それを『自殺対策連絡協議会』へも報告していきたい、このように考えております。
フジノの再質問
再質問ですが、『自殺対策連絡協議会』に自死遺族を入れるべきではないかという点については、「まずは行政課題としての自殺予防対策をやっていきたい。保健所で遺族の生の声を聞く機会を設けており、これを『協議会』へ報告していきたい」というふうにお答えになりました。
しかし、やはり生の声を今後も聞いていただきたいのです。
何故ならば、遺族の声、遺族の状況というのは、ほとんど理解されていない状況があります。
遺族ケアというのは重要な三次予防の一つです。遺族の方が自殺に陥るというケースが非常に多くあります。
個人的な話を公の場で語るのは非常に問題を感じることではありますが、自分自身が政治家に立候補したきっかけというのをお話しすれば、非常に大切な存在を自殺によって亡くしたことがきっかけであります。
それを今年の6月1日に全国紙で発表してから、遺族である自分に対して非常に多くの誹謗中傷が舞い込んできております。「大切な人一人守れないのかよ」というような誹謗中傷が毎日のようにやってくるわけです。
加えて本当に信じられない現象ですが、亡くなってからもう4年もたつのに、命日のある11月になると本当に息をするのも苦しくなるというような出来事が起こる訳です(命日反応)。
自死遺族の身に何が起こっているのかというのは、保健所の相談員の方を通して『協議会』に上げるというようなことでは伝わり切らないものがあるのです。
確かに横須賀には遺族の団体はありません。
けれども、遺族の生の声を聞くのだということをぜひ確約をしていただきたい。
行政課題をまずやるというのは、オーケーです。やってください。
けれども、今後、遺族の生の声を聞くということをぜひ市長に確約していただきたいと思います。
この点についていかがお考えか、これを再質問としたいと思います。
市長の再答弁
『自殺対策連絡協議会』のメンバーについては、先ほどお答えしたとおりです。
まずは行政上の課題や連携について取り組んでいくということで、自死遺族のメンバーの参加は考えておりません。
おっしゃるとおり、市内にNPO等の団体がないわけで、いろいろな原因による自死遺族のお立場を、どういう方から聞いたらいいかということに非常に難しい点がございます。
そのような団体がたとえば設立された時には、これからつくる『協議会』の中でも参加していただくような方法もあるかもしれません。
その場合にはそういうことで検討させていただきます。
フジノの再質問
最後に1つだけ市長に質問をいたしたいと思います。
「『自殺対策連絡協議会』に遺族を入れるべきではないか」という質問を2回繰り返して、御答弁はかなり踏み込んでお答えをいただきました。
何らかの遺族による団体ができたときには、メンバーになる可能性も否定はしない、と。大きな前進かなと思います。
ただ、先ほど言葉が足りなくて伝わり切らなかったかもしれないのですが、僕が申し上げたかったのは、仮に団体ができなかったり、あるいは現状で団体がない中で、行政課題について取り組んでいくということなのですけれども、ぜひとも『協議会』の場に、言い方をかえますが、参考人のような形で、何らかの形で遺族を呼んでその声を、生の声を聞く場を持ってほしい。
それがいつになるかわからないとしても、ぜひ確約をしていただきたいという質問を第1回目の質問からさせていただきました。
これについて市長の御意見、御答弁をいただいて、僕の今回の質問を終わりにしたいと思います。
市長の再答弁
『自殺対策連絡協議会』に自死遺族のメンバーを加えるなり、あるいはオブザーバーなりという形で参加させることについて、今私に「確約しろ」と言われますと、残念ながら否定的な回答になります。
さっきもお話ししたように、生の声は今いつでも保健所等で受けられる体制を整えております。
ぜひそこに訴えて話をしてほしいと思います。
そして必要に応じて『協議会』へ報告もいたしますし、また、先ほど申し上げたように、そういう全体の団体ができるようなことがあれば、そういう方のメンバーとしての参加も検討させていただく、こういうことでございます。
なかなか前向きな答弁は得られませんでした。
2006年12月に初めての会合が開催されて、フジノの考えはむしろ確信に変わりました。
だからこそ、フジノは諦めませんでした。
2007年3月5日・予算議会・市長への質疑
フジノの質問
(2)『自殺対策連絡協議会』の今後のあり方について。
昨年12月、本市は全国に先駆けて『自殺対策連絡協議会』を設置しました。
ここから先は結果を出していくために、やれることは今すぐすべてやるという強い姿勢を打ち出していくべきです。そこで、6点にわたって質問します。
(第1から第4、略)
第5に、自死遺族の方々及び未遂者の方の声を聞く場を積極的に設けていくべきではないか。
要綱の第5条2項に、必要に応じて委員以外の意見を聞くことを認めています。
これを活用して、実態に即した取り組みに近づけるために、積極的に自死遺族の方々及び未遂者の方の声を聞く場を設けていくべきではないでしょうか。
(第6、略)
市長のお考えをお聞かせください。
健康部長の答弁
自死遺族などの声を聞く場を『協議会』の中に設けるべきではないかについてです。
昨年12月に開催しました第1回協議会において、自死遺族を講師とした講演会の開催について合意を得ておりますので、開催に向けて準備を進めてまいります。
この後、2009年、吉田市長へと市長が交代します。
吉田市長への提案
これまではあえて毎年繰り返し提案をしてきたフジノですが、戦略を変えました。
『自殺対策連絡協議会』が少しずつ軌道に乗ってきたこともあり、闇雲に繰り返し提案を続けるのではなく、必ず事業を3年もしくは5年ごとに見直すという行政の在り方をもとに、『見直し案』として提案を行ないました。
2012年3月1日・予算議会・市長への質疑
フジノの質問
(2)『自殺対策連絡協議会』のあり方を見直すべきではないか。
関係機関の連携強化と対策の協議を目的とする『自殺対策連絡協議会』は、設立から丸5年が経過しましたが、より効果の高い対策を推進するためにあり方を見直すべきです。
(ア、略)
イ、『協議会』に以下の新たなメンバーを加えるべきではないか。
①自死遺族。
「GKB47宣言!」というキャッチコピー問題などは、自死遺族の声を全く聞こうとしないために起こったものです。
善意であるはずの自殺対策が持つ副作用について、自死遺族の声に耳を傾けるべきです。
(②以降、略)
市長の答弁
『自殺対策連絡協議会』のあり方について御質問をいただきました。
(アへの答弁、略)
次に、『協議会』に新たなメンバーを加えるべきではないかという御提案をいただきました。
現在の『自殺対策連絡協議会』は、相談機関等を中心としたメンバーで構成しています。
御提案いただきました方々をメンバーに加えることについては、どのような方々にかかわっていただくことが効果的な自殺対策につながるか検討していきたいと考えています。
フジノの再質問
『自殺対策連絡協議会』の新たなメンバーの配置について、どのような方を選任するのが効果が高いか検討する、という御答弁をいただきました。
5年くらい前でしょうか、『自殺対策連絡協議会』を設立する時に、当時の蒲谷市長にも御遺族を入れていただきたいですとかいろいろ提案したのですけれども、当時は提案したものの、具体的に浮かぶ最適な方というのが浮かびませんでした。
自死遺族の社会的立場が非常に厳しかったこともあり、とても顔を出して委員として出席するなど誰もできない、という状況でした。
ただ、それからかなり大きく社会状況が変わりまして、「新たな段階に自殺対策は来た」と申し上げたとおりで、横須賀の御遺族の方が全国の団体でファシリテーターをやるまでに回復されたり、また報道関係でも、例えば地元紙である神奈川新聞は常に自殺対策について追い続けてくれる。『自殺対策元年』と呼ばれた2006年には全紙が報道するような中で、どんどんブームとともに消え去っていた中でも、一生懸命報道してくれている方がいる。
(中略)
ですから、ぜひそういった方々を保健所や自殺対策連絡協議会のメンバーにヒアリングなどをして、対象になれるような方がいるのかどうかも研究の過程で一度ぜひ御検討いただきたいと思うのです。その点についてはいかがでしょうか。
市長の答弁
今回御提案いただきました新たなメンバーについては、今までの『自殺対策連絡協議会』は、基本は相談を受ける機関の方々という形で、市の職員も含めて入っている訳ですが、どういった方に入っていただくのが一番いいのか。
特に内容についても御提案いただきました。
ケースの内容によっては、こういう方に来ていただくとか、そういった考え方もあるかもしれませんので、ぜひいろいろな方に御意見を聞いて、新たなメンバーを加えた実りある『自殺対策連絡協議会』にしていきたいと思っています。
ここで初めて前向きな答弁が出ました。初めての質問から丸十年が経っていました。
メンバー構成については、他にフジノが提案した職種はかなり実現して正式に委員となってきていました。
けれども、自死遺族を正式に委員に就任させることに関してだけは、毎年ゼロ回答でした。
2013年3月5日・予算議会・教育福祉常任委員会での質疑
フジノの質問
『自殺対策連絡協議会』について伺います。
今回、新たな委員として弁護士、司法書士の方々などを加えていただきました。
かねてから、こちらの『協議会』は『支援をする側』を委員として選任している、というお話でした。
僕としては、自死遺族の方々など実際に体験したことのある方々もぜひ加えていただきたい。
それによっていろいろな意味でのそごがなくなったり、支援活動に実感がこもっていくのではないか、ということを申し上げてまいりました。
今回、委員の任期が終わって、新たなメンバーになるわけですが、自死遺族の方々や未遂者の方々を加えるというのはやはり難しいと判断されたのでしょうか。
保健所健康づくり課長の答弁
今の時点では、市民の方が相談に来るような、そういった施設や個人やそういう方を中心に委員を選任させていただいております。
また、それ以外のジャンルについてはまた引き続き検討させていただきたいと思います。
フジノの質問
国の『自殺総合対策推進会議』のメンバーにも御遺族が入っておられますし、それから『かながわ自殺対策会議』のメンバーにも自死遺族の方が入っておられる。
横須賀市の『自殺対策連絡協議会』にメンバーとして加えて不都合が生じるということは決して無いと思うのです。
ぜひまたこの点については御検討いただければと思います。
国・県の自殺対策の会議には、すでに自死遺族が当然のこととして委員に就任しています。
国・県がやっているのに何故わがまちではできないのか、その矛盾やおかしさを問題提起する形の質疑へとシフトしました。
さらに、『自殺対策連絡協議会』にも少しずつマンネリ化が起こっていることをフジノは感じていました。
そこで、より効果的な対策を打ち出すという観点から、改めて自死遺族を委員とすべきだという提案も行なっていきました。
2014年3月4日・予算議会・教育福祉常任委員会での質疑
フジノの質問
『自殺対策連絡会』の構成メンバーについて伺います。
かねてから新たな職種、具体的にはメディア関係の方、それから、自死遺族の方などを加えていただけないかと提案をしてきました。
2014年度の『連絡会』というのは、そういった構成メンバーの変更というのはあるのでしょうか。
保健所健康づくり課長の答弁
特に今年度と比べて追加は考えておりません。
フジノの質問
できれば『自殺対策連絡会』の場に諮っていただけないかと思うのです。
例えば同じ健康部の中の『在宅療養連携会議』では、「この場で求められるメンバー、新たに必要だと思うことがありますか」と皆さんに諮って、例えば「グループホーム関係者が必要だ」ということになれば、「では皆さんの同意が得られたら増やしていきましょう」というような形で柔軟に取り組んでおられる。
自殺対策に話を戻すと、神奈川県の『自殺対策会議』を見ても、やはりメディア関係の方の存在というのはものすごく大きいですね。
実際の報道がすぐに変わるかというのはともかく、やはりそういう方に参加していただくというのはすごく重要だと思うのです。
最近でも市内で高齢のお母様が病気で亡くなった後、息子さんが自殺をした、そういう報道が流れ、しかもこの報道を載せることで誰に得になるのだろう。ただおもしろみとして載せているとしか思えない。
そこにWHOのメディアガイドラインのような、自殺だけが選択肢として残されていたのでは無いのだよ、というようなガイダンスなんていうのは一切無い。つまり、「病気の親を抱えている40代の息子は、追い込まれたら自殺するのだな」という選択肢を世間に示しているようにしか思えない。
そういう報道の無遠慮さというのを、自分たちが出しているということをメディアも自覚していないのだと思うのです。
そういう意味で、『自殺対策連絡会』の場で、本当に困難事例を検証していったりして、ああいう場というのは他に無いと思うのです。そこにメディアの方に参加していただいて、それで自分の会社に持って帰っていただくという、すごく大事な取り組みだと思うのですが、御検討いただけないでしょうか。
保健所健康づくり課長の答弁
今までメンバーを選ぶ1つの視点というのですか、それは市民が訪れるような相談機関、相談機関の長の人たちに集まっていただくといった視点で、直接市民と接する方々をお呼びしていたというのが現実問題としてございます。
かねてから御提案のあった、自死遺族の代表の方ですとか、メディアの方というのは、また少しその視点とは違う視点になりますので、その辺は今までの視点で進めてまいりましたが、また見直すことも必要だと思いますので、御意見を参考にしたいと思います。
上の質問をするまでに、自殺対策を所管する課長は3人交代していました。時の流れは早いものです。
人事異動によって、新たな方が課長に昇進されました。
市長の答弁を書くのは、実際のところ、まずは課長です。そこに市長が副市長や部局長らと協議をした末に、筆を入れていきます。
2015年予算議会、ここでの質疑でついに決定的な答弁が述べられました。
2015年3月2日・予算議会・市長への質疑
フジノの質問
(4)自殺に追い込まれる犠牲者をさらに減少すべく、指令塔である自殺対策連絡会のメンバーを大きく変更する必要性について。
2006年にスタートした『自殺対策連絡協議会』は、2013年に名称を『自殺対策連絡会』に変更しましたが、委員構成はあくまでも支援を提供する側だけにとどめられ、変更は全くありません。
本市の犠牲者数を10年間で約2割程度減少することには成功したものの、犠牲者70人台から80人台の壁を打ち破るためには、新たな対策が必要です。
これまでも提案してきましたが、実質的な指令塔であるこの『連絡会』のあり方をまず変えねばなりません。
支援を提供する側に限定した現在の委員構成を変えて、新たに当事者、支援を受ける側も委員とすべきです。
県、政令指定都市の自殺対策の会議にはこうしたメンバーが参加していますし、本市が僕の提案をかたくなに許否し続ける理由はありません。
特に自死遺族の方々やいわゆるサバイバーの方々を加えるべきではないでしょうか。
また、当然ながら公募委員として市民も入れるべきではないでしょうか。
(以下、略)
市長の答弁
『自殺対策連絡会』のメンバーを変更する必要性について御質問をいただきました。
『自殺対策連絡会』は市内の関係機関が連携を強化し、現状や課題を踏まえ、自殺対策の情報を共有するため、年に2回開催しています。
今後は遺族や自殺未遂者の方などの話を聞く場を設けることを考えていきます。
フジノはこの答弁を受けて、質問を止めることにしました。自死遺族を委員にする、という確信が得られたからです。
市長の答弁は絶対です。行政はその答弁を命令として受け止めて、実際に動き出します。
答弁をもとに行政は具体的な検討に入ります。人選、依頼、いろいろな作業が行なわれていきます。
こうして1年3ヶ月が経ちました。
それが今日の『自殺対策連絡会』です。
やはり提案は間違っていなかった。これからさらに自殺対策を進めていきます
委員に就任して下さったのは、全国自死遺族総合支援センターの鈴木副代表です。
実は、『かながわ自殺対策会議』(神奈川県の自殺対策連絡協議会』です)の委員にも就任して下さっています。
まさに適任な方が就任して下さいました。
今日の会議でも、さっそくいくつもの発言を行なって下さいました。
こうした自死遺族による生の声は、これまでの『横須賀市自殺対策連絡会』には無かったものです。他の委員にもとても刺激を与えることになるはずです。
まさに13年越しのフジノの提案は間違っていなかったことが分かりました。
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国の『自殺対策官民連携協働会議』や神奈川県の『かながわ自殺対策会議』を欠かさず傍聴し続けてきたフジノですが、それらの場でも自死遺族の声は軽んじられているとフジノは感じています。
けれども、横須賀市では絶対にそんなことは許しません。フジノが絶対に許しません。
このまちの自殺対策をさらに進めていく為に、ご遺族の声を積極的に取り組みに反映させていくのがフジノの使命です。
自死遺族は単にケアされる存在ではありません。
とてつもなく大きな悲しみや痛みをもとに、同じ苦しみを他の人には2度と経験させたくないという強い想いを持っています。
その声は、必ず自殺対策を前に進めていきます。