フジノが「不育症」と関わり始めて丸6年が経ちました
フジノが『不育症』に関わり始めてから、早いものですでに丸6年が経ちました。
それでも今も『不育症』について新たな知見を学ぶたびに、いつも感じることが2つあります。
第1に、こどもがもたらされることそのものが数々の奇跡のおかげなのだということ。
第2に、わが国は、妊娠・出産をあまりにも軽んじている社会だということ。
年齢 | 流産率 |
---|---|
平均 | 15% |
35歳 | 20% |
40歳 | 40% |
42歳 | 50% |
平均すると全ての妊娠のうち、15%が自然流産に至っています。つまり、4人に1人が流産を体験していると言えます。
流産の回数 | 連続して流産する確率 |
---|---|
2回 | 4.2% |
3回以上 | 0.88% |
毎年3.1万人の『不育症』の患者さんが新たに出現しています。
全員が治療を受けている訳ではないので、自らが『不育症』だとは知らないままの人も多いので、その人数は増えていきます。
「これはものすごく多いな」と驚く方がほとんどではないでしょうか。
しかし、研究者の方は、「単細胞生物ならともかく、人間のような複雑な生き物が創られるのに15%の流産にとどまっているのは奇跡だ」と言います。
フジノも学べば学ぶほど、この研究者の言葉が実感されてなりません。
妊娠・出産は、幸運と奇跡の連続によってもたらされているもので、生まれてくる赤ちゃんはみな『奇跡の賜物』だと感じずにはいられません。
祝福につつまれた出産の一方で、はじめに記したように4人に1人が流産を体験しています。
専門家ならばみな知っているこの事実を、全く市民の方々はご存じないと思います。
これだけ『少子化』を問題だと政府は大騒ぎしておきながら、本当に基本的な大切な情報を周知していません。
あなたのまわりで、誰にも言えずに赤ちゃんを喪った悲しみを抱えている人が実はたくさんいらっしゃいます。
だから、心無い言葉で本当にたくさんの方々が傷つけられているのです。
情けない国だと感じずにはいられません。
●
残念ながら、自然流産を止めることはできません。
全ての生き物には『自然淘汰』という現象があり、自然流産は生き物の世界に存在する淘汰の1つだと考えられています。
けれども大切な赤ちゃんを喪ったこの悲しみを支えることは、フジノにとって大切な仕事のひとつです。
そしてもう1つ、自然流産ではなくて、病的な流産(=『不育症』)と闘う妊婦さんとドクターを支援することはフジノの重要な仕事です。
『不育症』は適切な治療をすれば、85%が無事に出産に至るというデータが得られています。
不育症の治療成績 | |
---|---|
アスピリン | 87.6% |
アスピリン+ヘパリン | 84.5% |
だから、『不育症』のことをひとりでも多くの方々に知っていただくこと、そして治療を受けやすい環境を作っていくことがフジノに与えられた使命だと考えています。
これまでもたくさんの提案を行なってきました。
高額な検査費用・治療費用に対して、横須賀市独自で補助制度を作ることも実現しました。
横須賀で始めた取り組みを、神奈川県全体に広める為の提案を行ない、県の保健医療計画に記させることも実現しました。
いまだに市内に指定医療機関が無い現状を改善する為の提案もしてきました。
もちろん、つい先日(10月4日)の教育福祉常任委員会(こども育成部の予算審査)でも、フジノは横須賀市の『不育症』支援の在り方について取り上げました。
せっかく独自の補助制度を作ったのですが、実際の患者数に対して圧倒的に補助を利用している人が少ない現状に対して、検査費・治療費の助成の方法をもっと利用しやすくする為の工夫が必要だからです。
これからもずっと取り上げていきますし、機会をみつけてひとりでも多くの市民の方々に『不育症』の存在と治療について語り続けていきます。
市民のみなさまを対象に「不育症講演会」を開催しました
今日は、横須賀市主催で『不育症講演会』を開催しました。
ひとりでも多くの市民のみなさまに『不育症』を知っていただくことがとても重要だとフジノは考えています。
その為に、地道ではあってもこうした講演会を何度も何度も開いていくことが大切です。
講師を務めていただいたのは、横須賀市の不育症支援にずっと力を貸して下さっている杉俊孝先生(杉ウィメンズクリニック不育症研究所所長)です。
杉 俊隆 先生
杉ウイメンズクリニック不育症研究所院長
1985年、慶應義塾大学医学部卒業。
慶應義塾大学医学部産婦人科、アメリカ・インディアナポリス メソジスト生殖移植免疫センター主任研究員、東海大学医学部産婦人科学教室准教授等を経て、2009 年、杉ウイメンズクリニック開設
杉先生のお話は、熱意ある語り口で何度うかがっても学びがあります。
ただでさえ日本中から診察を受ける為にたくさんの方々が新横浜の杉ウィメンズクリニックを訪れる、多忙な毎日です。
初診の予約を取るのも大変で、厳しかった時期は4ヶ月待ち、ふだんでも2ヶ月待ちの状態が続いています。
それでも、日本全国を飛び回って、『不育症』の存在を知ってもらい、治療をすれば無事に赤ちゃんを持つことができるという事実を啓発して下さっています。
心から感謝をしております。
さらに工夫ができること「生の声を伝えてほしい」
ただ、来場者アンケートにもあえて記したのですが、次回以降はぜひ当事者の生の声も講演会で聞かせてほしいとフジノは提案しました。
- 低用量アスピリン療法には保険が効かないが、治療にはいくらかかるのか。
- ヘパリンの在宅自己注射は12時間おきに2回自分で注射しなければならないが、どれくらい大変なのか
- 自分の産婦人科の主治医が不育症治療に理解が無い場合、アスピリン服薬やヘパリン注射を続けられるのか
など、実際の治療に取り組み始める前に知りたいことはたくさんあると思うのです。
それを語ることができるのは、杉先生ではなくて『不育症そだってねっと』をはじめとする当事者のみなさんが最適だと思います。
フジノが今後『啓発活動』について横須賀市に対して求めることは、当事者の声を伝えることです。
もちろんまだまだ全く『不育症』そのものが知られていない中で、杉先生のようなリーダーの存在も不可欠です。
けれども、わがまちの不育症治療費助成をご利用いただいて無事に出産できた方々もすでにいらっしゃいます。
そうした方々にぜひ生の声をお話していただきたいと願っています。
知らないままに流産を繰り返して悲しい想いを重ねてしまうことを終わりにして、治療によって新たな生命と出会える方々を増やしたい。
妊娠・出産は奇跡の連続によって実現するけれど、政治・行政の努力で改善できることは全てやるべきです。
これからも全力を尽くしていきますので、どうか当事者のみなさまも力を貸して下さい。どうかよろしくお願いいたします。