横須賀市立2病院・横須賀の救急隊は「多様な性」を保障しています
これまでフジノの質疑を通して、横須賀市の救急隊・横須賀市立2病院は『多様な性』を保障する姿勢をはっきりと打ち出してきました。
2015年3月2日の本会議、2015年6月11日の本会議での質疑を行なった結果、2015年9月には、横須賀市立2病院は、同性パートナーの意識不明時の手術同意書に『法的な家族』と同じく同性パートナーが署名できることを『指針』に明確に記しました。
『指針』の正式な文書名は、横須賀市立市民病院・うわまち病院の『患者本人及びその家族等に説明と同意を行なう際の同意書署名等に関する指針』です。
横須賀市立2病院では『説明と同意を行なう際の同意書』にサインできるのは
- 意識がある場合は、患者本人
- 意識がない場合は、家族等(等には『同性パートナー』も当然含まれています)
さらに2016年3月1日・本会議での質疑によって、「同性パートナーが事故や急病で救急搬送された時に、救急隊・市立2病院ともに同性パートナーからの情報照会にお答えする」との答弁を得ました。
『同性パートナー』への医療における緊急時の情報照会に対する対応
- 横須賀市の消防局救急隊は、同性パートナーの救急搬送や入院時に容体や安否についての『情報照会』に対して、お答えをしています。
- 横須賀市の市立2病院も同じく、同性パートナーの救急搬送や入院時に容体や安否についての『情報照会』に対して、お答えをしています。
*電話による個人情報の照会は、同性パートナーであろうと無かろうと全ての場合において個人情報保護法からお答えをしておりません。
こうしたニュースは全国をかけめぐり、多くの人々に希望をもたらしました。
その後、横須賀市立病院の『指針』をもとに、明文化するところも少しずつ増えてきました(例えば、毎日新聞2017年4月22日記事をご参照下さい)。
横須賀市の取り組みが全国のお手本となって広まりつつあるのです。
市立2病院だけでなく、市内全ての医療関係者が「研修」を受けて知識と理解を深める必要があります
一方、2016年8月に某紙によって誤った報道がなされました。
この記事をきっかけに、Yahooニュースにも取り上げられたり、同性パートナーに関する問題の専門家である永井至文さんの連載『ヨミドクター』で問題提起までなされてしまうという事件に発展してしまいました。
しかし、ピンチはチャンスです。
こうした報道は、横須賀市の性的な多様性を保障する取り組みをさらに知っていただく為の良い機会だとフジノは受け止めました。
そしてフジノは2016年9月議会で以下の質疑を行ない、事実関係をただすとともに、改めて『指針』が実際に活かされる為に市立2病院をはじめ市内の医療関係者にSOGIに関する正しい情報と知識の啓発を行なってほしいと提案しました。
2016年9月7日・教育福祉常任委員会での質疑
フジノの質問
健康部市立病院担当課に質問します。
同性パートナーの意識不明時の手術同意書への署名などを明確化した市立2病院による『指針』について、現場におられる全ての医療従事者の皆さんに浸透させていく必要性について伺います。
(中略)
『指針』が浸透していなければ、現場での実際の運用とは異なる事態が起こってしまうことが懸念されます。
『指針』と運用が異なることは、絶対にあってはならないと思います。
そこで、伺います。
指定管理者である地域医療振興協会が新たにつくった指針が現場レベルまで確実に浸透しているとお感じでしょうか、お答えください。
市立病院担当課長の答弁
『指針』作成後は、まずは各所属長に対して、その『指針』を周知をし、所属長からその下にある医師であり、看護師であり、事務員でありというところに対して周知をしております。
また、あと院内で電子データでマニュアル集等ございますので、その中にも『指針』を掲示しておりますので、いつでも誰でも見れるということになっておりますから、とりあえずは一度御認識はいただいているのかなというふうには思っておりますけれども、ただ今両病院とも、今後さらに周知をすべく、研修等を開いていきたいというふうに考えているところでございます。
フジノの質問
ぜひ『指針』が運用と全く変わらないレベルまで研修を進めていただきたいと思います。
続いての質問なのですが、この『指針』に限らずに、医療に対していわゆる性的マイノリティーとされる方々は、非常にハードルが高いという思いを抱いておられます。実際に研究によっては、受診行動が低いというデータもあります。
そこで、市立病院に勤務する医師・看護師を初めとするあらゆる職種の皆さんに、僕は性的マイノリティーと呼びたくはないので、SOGIに関する正確な知識と、それから接遇のあり方について学んでほしいと考えますが、いかがでしょうか。
市立病院担当課長の答弁
今の『指針』を周知し浸透させるという意味では、まずその本来の部分が分かっていないと何にもなりませんので、その辺もあわせて指定管理者の方にはお話をしたいと思います。
2016年8月に誤報を流した某新聞社も、この「『指針』どおりに運用される為に研修を重ねていく」との答弁を引き出したこの質疑を改めて正しい形で報じてくれました。
横須賀市は「市立2病院の医療関係者を対象にした研修を開催する」との約束をしてくれましたが、その答弁どおり、市立2病院は『指針』を浸透させる為の研修を実施してくれました。
さらにフジノは
「市立2病院だけでなく市内医療機関全体のSOGIに関する体制を調査してほしい」「市立2病院と同じ対応を取るように市内医療機関全体にも働きかけてほしい」
と提案し、前向きな答弁を受けました。
まさに、ピンチはチャンスになったのでした。
そして今日「研修」が開かれました
それから1年が経った今日。
ついに、市内の医療関係者向けの研修が開かれました。
市内の医療機関で働く人ならば誰でも参加できる、という、まさにフジノが求めた市立2病院だけでなく全ての医療機関向けの研修が開催されたのです。
市民部長
健康部長
医療機関向け性的マイノリティ講座の開催について
性的マイノリティ(性同一性障害などの性的少数者)に関する基礎知識を学び、性的マイノリティの方々への差別や偏見をなくすなどの理解を深めるため、「医療機関向け性的 マイノリティ講座」を開催しますので、お知らせいたします。
記
- 日時等
2017年10月18日(水)午後6時〜7時
横須賀市立うわまち病院南館5階 リハビリテーションセンター - 対象
市内医療機関従事者(約60人) - 講師
『ダイビーノン』代表 飯田 亮瑠(いいだ あきる)氏 - 内容
性同一性障がいの当事者としての体験談を交えて、性的マイノリティに関する基礎知識等の講演をされます。
今夜の講師は、2年前にも横須賀で講師を務めて下さったセクシュアルヘルスアドバイザーの飯田亮瑠さん(ダイビーノン代表)です。
前回は教育委員会主催の講座だったのですが、今夜は健康部と市民部による共催の講座となります。飯田さん、今回もありがとうございます!
さらに、今夜は開会のあいさつを永妻和子・副市長が行なって下さいました。
永妻副市長は、フジノが横須賀市議会でSOGIに関する提案を始めた約10年前、教育長として市役所内の誰よりも早く当事者の方々にお会いして頂いた方です。
当事者の生の声に耳を傾けてほしい、というフジノの提案に対して、積極的に対応して下さいました。
それ以来、SOGIに関わる課題に最も理解が深く、教育長として横須賀の取り組みを前進させてくれたキーパーソンです。
その永妻さんが今では副市長として、全ての医療機関従事者向けの研修で開会のあいさつをしておられるのはフジノにとって感動でした。
今夜の参加者数は60人の定員を上回って62名でした。
職種も様々で、うわまち病院の管理者である沼田裕一院長先生をはじめ、看護師長、看護師、理学療法士、実際に救急車を運転して下さる方々、事務職など多岐にわたりました。
これからも継続して回数を重ねて受講者を増やして実践的な内容にしていくことが必要です
こうして、第1回の今夜の研修は成功に終わりました。
しかし、本来は2時間かけて行なう研修内容を(忙しい医療関係者のみなさまのご都合に配慮して)1時間の短縮バージョンで行なわざるをえませんでした。
内容的には『概論』にとどまらざるをえませんでした。
医療現場で実際に困っている生の声を、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・アセクシュアルなど様々な立場からお伝えする実践的な研修が必要です。
また、単に講師が教えるような一方通行の講義形式では無くて、医療従事者のみなさまに実際の場面をロールプレイングしていただくような形も必要です。
何よりも市内の医療従事者の総数に対して62名では少なすぎます。
今夜の成功に満足は全くしておりません。
これからも継続して回数を重ねていくことで受講者を増やしていくこと、さらに内容を実践的なものにしていくことが不可欠です。
横須賀の医療は『性的な多様性』を保障していると、当事者のみなさまに実感していただけるように、これからも取り組みをさらに進めていきます。
どうか当事者のみなさまからのご意見をお待ちしております。
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講師を引き受けて下さった飯田亮瑠さん、ありがとうございました。
会場を提供して下さった沼田祐一院長先生、ありがとうございました。
本日の開催を実現して下さった市民部人権・男女共同参画課と健康部市立病院担当のみなさん、ありがとうございました。
そして、ご参加下さった医療関係者のみなさま、ありがとうございました。
これからもどうかお力をお貸し下さいますよう、よろしくお願いいたします。