「ごみ屋敷対策検討協議会」が最終回となりました
今日は『ごみ屋敷対策検討協議会』が開かれました。
全ての議論が終わり、正式に12月議会へ条例案を提出することとなりました。そこで今回をもって、条例案についての協議は今回で終了することになりました。
(*新たに協議を必要とする事態の変化が起こった場合には協議会を再開します)
フジノは委員構成の変更によって途中からメンバーになったのですが、全会派から出されている委員のみなさんと共同で議案を検討する作業はとても良い経験になりました。
パブリックコメントで頂いたご意見への回答を作成しました
今回は、まず先月実施したパブリックコメント手続きで市民の方々から頂いたご意見に対する回答を作成しました。
横須賀市議会では『議員提出の条例案』についても、『市長提出の条例案』と同じようにパブリックコメントを行なうことと定めています。
そこで、『ごみ屋敷対策検討条例』案(*)についても10月6日〜26日までの20日間、ご意見を募集しました。
(*)正式名称は『(仮称)横須賀市不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例(案)』です。
3名の方から21件のご意見を頂きました。
項目 | 件数 |
---|---|
目的(第1条) | なし |
定義(第2条) | 5件 |
市の責務(第3条) | 1件 |
居住者等の責務(第4条) | なし |
支援(第5条) | 2件 |
調査及び報告(第6条) | なし |
調査結果等の提供等(第7条) | 1件 |
立入調査等(第8条) | なし |
指導又は勧告(第9条) | なし |
命令(第10条) | なし |
公表(第11条) | なし |
代執行(第12条) | なし |
横須賀市生活環境保全審議会(第13条) | なし |
その他の事項(第14条) | なし |
その他 | 12件 |
合計 | 21件 |
これまであらゆるパブリックコメントでの『行政側の回答』を読むたびに、フジノは不満を持つことばかりでした。
市民側が出している意見や疑問に対して「回答が真正面から向き合っていない!」と感じたり、「いくつもの意見に対して全く同じ文章で答えて不誠実だ!」と感じたり。
けれども今回『回答する側』に初めて立って、そうした回答にならざるを得ない理由もよく分かりました。
回答作成のプロセスはこんな感じでした。
頂いたひとつひとつのご意見を熟読し、回答を各委員が自分なりに考えます。
それらを各委員が持ち寄って議論をして、議会事務局と回答素案を作ります(前回の協議会まで)。
その回答素案に対して、各部局(今回の場合は福祉部・健康部・資源循環部の各担当課)の見解をもらいます。
同時に、法令審査担当部門からも意見を伺います。
こうして各部と法令審査担当からの意見が戻ってきます(今日の会議の数日前に届き、各委員が事前に熟読し検討します)。
これをもとにさらに議論をして、今日、回答を決定しました。
こうした多くのプロセスを経て完成させる訳ですね。
さらに、回答を読んだ全ての方に誤解を一切与えないような文言にしなければならないことや、他の法律や制度とそごが生じないように複数の視点で赤ペンが入る訳ですね。
そうした結果、頂いたご意見やご質問への回答はどうしても抽象的かつ人間味があまり感じられないものになってしまう、ということが分かりました...。
フジノ自身、今回決定したパブリックコメントで頂いたご意見ご質問への回答の作成者のひとりという責任ある立場なのですが、この回答で完全に納得しているかと言えば、できていません。
納得はいかないけれども、法的には正しくて回答としては全メンバーの合意を得られている正式なものです。フジノもこの回答を支持しています。
つまり、感情論と法務とは全く別の次元のものである訳です。
回答をご覧になった市民の方は、フジノがふだん感じているようなお気持ちになるかもしれません。
けれども、個人の想い(もっと具体的な言葉で分かりやすくしたい、などふだん感じてきたこと)を全て反映させた回答にすることは現時点ではとても難しいことが分かりました。
これは、今回協議会のメンバーにならなければ分からないことでした。
改めて、この協議会とは全く別の場で、いつか必ずパブリックコメント手続きについては問題提起をしていきたいという気持ちが強くなりました。
いつか感情論と法務の融合ができないかと感じています。
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回答は、議会ホームページで発表されます。
条例案は「パブリックコメントで公表した素案のまま」と決定しました
パブリックコメントで頂いたご意見への回答が決まり、条例案についての最終的な議論を行ないました。
その結果、パブリックコメント手続きの際に公表した素案のまま、条例案とすることに決定しました。
この条例案は、議員提出議案として12月議会に正式に提出することとなります。
全会派から協議会メンバーが参加して条例案を作成しましたので、基本的には全会一致(全議員が賛成することです)で可決される予定です。
条例の全文をご紹介します
せっかくの機会ですので、今回作成しました条例案の全文をご紹介いたします。
行政用語をなるべく使わないようにしたものの、どうしても法律にはこのように書かねばならないというルールがありますので、なかなか読みづらいかとは思います。
(仮称) 横須賀市不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例
(目的)
第1条 この条例は、不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための措置に関し必要な事項を定めることにより、その状態の解消、予防及び再発防止を推進するとともに、堆積者が抱える生活上の諸課題の解決に向けた支援を行い、もって市民が安全で安心して暮らせる快適な生活環境を確保することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)建築物等 建築基準法(昭和25年法律 第 201号)第2条第1号に規定する建築物及びその敷地(物の堆積又は放置(以下「物の堆積等」という。)が当該敷地に隣接する私道その他の土地にわたる場合は、当該私道その他の土地を含む。)をいう。
(2)不良な生活環境 物の堆積等に起因する害虫、ねずみ又は悪臭の発生、火災の発生、物の崩落のおそれその他これらに準ずる影響により、当該物の堆積等がされた建築物等又はその近隣における生活環境が損なわれている状態をいう。
(3)堆積者 物の堆積等をすることにより、建築物等における不良な生活環境を生じさせている者 (事業者を除く。)をいう。
(4)居住者等 建築物等の居住者、所有者又は管理者をいう。
(市の責務)
第3条 市は、地域社会と協力して、堆積者が抱える生活上の諸課題の解決に必要な支援を推進するとともに、不良な生活環境の解消及び発生の防止に必要な措置を講ずるものとする。
(居住者等の責務)
第4条 居住者等は、その居住し、所有し、又は管理する建築物等において不良な生活環境を生じさせないように努めなければならない。
2 居住者等は、不良な生活環境を生じさせたときは、自ら、速やかにその状態の解消に努めなければならない。
(支援)
第5条 市長は、不良な生活環境にあり、又はそのおそれがある建築物等について、その堆積者が 、自ら、当該不良な生活環境を解消することができるよう、当該不良な生活環境の解消に必要な支援を行うことができる。
2 市長は、不良な生活環境を堆積者が自ら解消することが困難であると認める場合は、一般廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第 137号)第2条第2項に規定する一般廃棄物(事業活動に伴って生じたものを除く。)をいう。以下同じ。)に該当する堆積物の排出の支援を行うことができる。この場合 において、市長は、あらかじめ堆積者に対し必要な説明を行い、その同意を得なければならない。
3 市長は、前項の規定により排出された一般廃棄物の収集、運搬及び処分を行うものとする。この場合において、当該一般廃棄物は、市長が指定する市の施設に搬入された一般廃棄物とみなして、手数料条例(平成12年横須賀市条例第9号)第6条及び別表第5の規定を適用する。
(調査及び報告)
第6条 市長は、支援の実施に必要な限度において、建築物等における物の堆積等の状態、当該建築物等の使用又は 管理の状況、所有関係その他必要な事項について、調査をし、又は当該建築物等の 居住者等及び堆積者の関係者に対して報告を求めることができる。
2 市長は、前項の規定による調査又は報告の結果、建築物等における不良な生活環境の解消を図るために必要があると認める場合は、官公署に対し、物の堆積等がされた建築物等の所有関係又は堆積者の親族関係、福祉保健に関する制度の利用状況その他の堆積者に関する事項に関して、報告を求めることができる。
(調査結果等の提供等)
第7条 市長は、市と地域住民、関係する行政機関その他の関係者とが協力して支援を行うに当たって必要があると認める場合は、それらの者に対し、当該支援の実施に必要な範囲内で、前条の規定による調査又は報告の結果を提供することができる。
2 前項の規定による調査又は報告の結果の提供を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員又はその職員)又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、当該支援の実施に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(立入調査等)
第8条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、不良な生活環境にあり、又はそのおそれがあると思われる建築物等について、その指定する職員又はその委任した者に立入調査をさせ、又は堆積者その他の関係者に質問させることができる。
2 前項の規定による立入調査又は質問を行う職員又はその委任をした者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入調査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(指導又は勧告)
第9条 市長は、第5条に規定する支援をした場合において、なお不良な生活環境が解消していない と認めたときは、堆積者に対して、不良な生活環境を解消するよう指導をすることができる。
2 市長は、前項の規定による指導をした場合において、なお不良な生活環境が解消していないと認めるときは、堆積者に対して、期限を定めて不良な生活環境を解消するための措置をとるべきことを勧告することができる。
(命令)
第10条 市長は、前条第2項の規定による勧告をした場合において、なお不良な生活環境が解消していないと認めるときは、堆積者に対して、期限を定めて不良な生活環境を解消するための措置をとるべきことを命ずることができる。
2 市長は、前項の規定により命令を行うときは、あらかじめ第13条第1項に規定する審議会に諮問し、意見を聴かなければならない。
(公表)
第11条 市長は、前条第1項の規定による命令を受けた者(以下「義務者」という。)が、正当な理由なくその命令に係る措置をとらなかったときは、次に掲げる事項を公表することができる。
(1)命令に従わない者の住所及び氏名
(2)命令の対象である建築物等の所在地
(3)不良な生活環境の内容
(4)命令の内容
(5)その他市長が必要と認める事項
(代執行)
第12条 市長は、第10条第1項の規定により必要な措置を命じた場合において、義務者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の規定により、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれを行わせることができる。
2 市長は、前項の規定により代執行を行うときは、あらかじめ次条第1項に規定する審議会の意見を聴かなければならない。
(横須賀市生活環境保全審議会)
第13条 この条例の規定によりその権限に属せしめられた事項を審議させるため、本市に地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定による附属機関として、横須賀市生活環境保全審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
2 審議会は、建築物等における不良な生活環境の解消に関し、市長に意見を述べることができる。
3 審議会は、委員7人以内をもって組織する。
4 前項に定めるもののほか、審議会の運営について必要な事項は、規則で定める。
5 審議会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(その他の事項)
第14条 この条例に規定するもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成30年4月1日から施行する。
以上です。
条例が可決されれば来年4月からスタートします
12月議会で可決された後、条例の効力が正式にスタート(施行と呼びます)するのは来年4月1日からとなります。
この条例が成立したからといって、ごみ屋敷と呼ばれる状態が一瞬で解決することはありません。
解決に向けては、一定の年月が必要なことはこれまでと変わりません。
けれども条例が定められることにより担当部署が定まり、かつ支援と措置に向けた流れがはっきりと位置づけられることになります。
その点については条例が無かった時とは全く異なります。
何故、一定の年月が必要かと言えば、同様の条例を定めている他のまちと同じく、福祉的なアプローチをまず優先しているからです。
認知症や精神疾患など様々な理由によって、ごみ屋敷という状態から自ら抜け出せなくなってしまった方へのアプローチを行なっていきます。
つまり、認知症や精神疾患などのある方々への支援を、保健師やケースワーカーの訪問など積極的に行なっていくのです。
その上で、ご本人がごみ屋敷の状態を解消できるように積極的なサポートを行なっていきます。
こうした支援を行なっても残念ながら事態が解決に向かわなかった場合、『勧告』『命令』『公表』という段階を踏んでいきます。
それでもなお働きかけに応じない場合に初めて『代執行』という強制力が行使されることになります。
市内にはすでに10件を超えるごみ屋敷状態として把握されているものがあります(すでに福祉的な支援が行なわれているケースもあります)。
今すぐの解決を求める近隣の方々にとってはこのプロセスがとてももどかしく感じられると思います。
けれども、横須賀市議会では全会派および無会派議員の一致した考えとして『福祉的な支援』が優先されるべきだと判断しました。
すみやかに条例が可決されて、さらに積極的な支援が実施され、そしてごみ屋敷という状態が可能な限り早く解決に向かうことを願っています。