座間市9遺体事件を受けて徹底的な防止対策を提案しました
今日の本会議では、座間市9遺体事件を受けて徹底的な防止対策を市長に提案しました。
以下に、市長との質疑応答を掲載します。
長文ですが、答弁では上地市長の本音の想いが語られていますので、どうか最後までご覧下さい。
フジノの質問
座間市で起こった9遺体事件について
10月31日、座間市のアパートで9人の遺体が発見され、死体遺棄と殺人の疑いで容疑者が逮捕されました。
「死にたい」とSNSに書き込んでいた人々を言葉巧みに誘い出しては殺害していた可能性が高くなってきました。
「本当に死のうと考えている人はいなかった」と容疑者が供述した旨の報道がありましたが、自殺対策の分野においては「死にたい」という言葉は「苦しい」「助けてほしい」「生きたい」を意味していると捉えられてきました。
つまり、被害者はみな生きたかったはずです。
今回の事件を受けて僕たち支援者側は、SNS上の「死にたい」、つまり「苦しい」「助けてほしい」という声に共感し寄り添う取り組みができていなかったことを真摯に反省すべきです。
すでに政府は関係閣僚会議を開いて対策を検討していますが、国の対策だけでは足りません。
何故ならば、犠牲者のお1人はこのまちに暮らし、福祉の世界で働きながら音楽を愛していた前途ある若者だったからです。
彼が暮らした横須賀市は、全国に先駆けて自殺対策に取り組み、近年は犠牲者数を減らしつつあったものの、これまでの様々な取り組みでは、被害者の生きづらさを拭えなかったわけです。
僕自身、その責任の重さを痛感していますが、本市の政治・行政はこの事件の当事者であるという強い意識を持つ必要があります。
そこで伺います。
被害者の暮らしていたまちの市長として、結果として本市が生きづらさに寄り添うことができなかったことに対してどのようにお考えでしょうか、お答え下さい。
市長の答弁
まず、座間市の事件の被害者の生きづらさに寄り添うことができなかったことについてです。
亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げます。
結果的に生きづらさに寄り添えなかったことは、非常に残念に感じています。
それとともに、加害者には強い憤りを感じます。
フジノの質問
『誰も一人にさせないまち』が最終目標である本市は、今、この瞬間もSNS上にあふれている生きづらさに共感し、寄り添えるようになる為の新たな取り組みが必要です。
今回、容疑者と被害者のやりとりに使われたSNSを運営するツイッター社は、自殺や自傷行為の助長や扇動を禁じる旨の項目をルールに追加しましたが、この対応には多くの批判が寄せられています。
何故ならば、「死にたい」という気持ちを持つ圧倒的多数の人々が存在している現実は、その気持ちを書き込める場所を無くしても変わらないからです。
むしろ本市は、本音を書きやすいSNSを相談支援の新たな手段として積極的に取り入れていくべきです。
すでに本市が実施している面接・電話・Eメールでの相談だけでは届かない若い世代にとって、SNSは圧倒的にハードルが低く、その助けを求める声に対応できる可能性があります。
そこで伺います。
生きづらさの声に即時に対応できるように、SNSによる相談体制を新たに構築すべきではないでしょうか。
市長の答弁
次に、SNSによる相談体制の構築についてです。
導入については、まず国のモデル事業における成果と課題など、教育委員会と協力して研究する必要があると考えます。
フジノの質問
さらに、現在、若い世代に最も浸透しているLINEと連携し、具体的な取り組みを実施すべきです。
長野県とLINE社は、LINEを利用した子どものいじめ・自殺対策に関する連携協定を締結して、9月に2週間、LINEを用いた相談を実施しました。
11月18日に中間報告が公表されましたが、わずか2週間で547件の相談に乗ることができ、前年度1年間の電話相談259件を大きく上回る成果を上げました。
さらに、来年度からLINE社は、全国の自治体とともに新たに全国SNSカウンセリング協議会を立ち上げて、LINEを通じたいじめ・自殺対策を初めとするSNSカウンセリングを研究し、実践していくと発表しました。
この取り組みは、児童・生徒の相談を受けている教育委員会なども一緒に本市全体で進めていく価値があります。
そこで伺います。
新たにスタートする全国SNSカウンセリング協議会に本市は率先して参加すべきではないでしょうか。
市長の答弁
次に、全国SNSカウンセリング協議会への参加についてです。
本市としては、まず全国SNSカウンセリング協議会の主催するセミナーに参加する予定です。
ただ、全国SNSカウンセリング協議会は自治体の参加は想定していないようなので、今後の状況を見て、加入について考えていきたいと思います。
フジノの質問
また、現在策定中の自殺対策計画に明記して実施方法を検討していくべきではないでしょうか、お答え下さい。
市長の答弁
次に、自殺対策計画にSNSによる相談体制構築を明記し検討することについてですが、自殺対策計画の策定に当たって、SNSによる相談体制を構築することは非常に重要であるというふうに考えています。
国・県との連携も含めた相談体制の構築について、自殺対策計画に位置づけるように、自殺対策計画策定委員会で検討したいと思います。
フジノの質問
座間市9遺体事件への見解と新たな取り組みの必要性について問いました。
御答弁いただいて、まず見解については、全く同じ思いです。
加害者対策というのは国にしかできない方向性だと思いますので、そこは国にお任せしたいと、正直なところ考えております。
ただ、被害者対策、被害者になる前の生きづらさ対策というのは、市保健所を持っている我がまちにできることだと思います。
少し議論させて下さい。
多くの若者が生きづらさを今抱えておられます。
もちろん経済的、社会的なさまざまな原因があるので、1つ、2つ挙げるというのは難しいと思いますが、上地市長は若者の生きづらさの原因はどのようなところにあるというふうにお感じでしょうか。
市長の答弁
本質的な意味で、いつも悩むところなのです。
家族主義が崩壊して、個人主義が発達して世の中が展開していったという事実の中で、この社会をどう捉えて、建て直すことはできないけれども、今おっしゃったものがどうなっていくのかというのが、いまだに私には読めないのです。
生きづらさというのは多分そういうことなのだろうと。
あらゆる物があふれ、価値観も多様化した中で、自分のアイデンティティーが築けないのではないか、よりどころがないのではないか。
端的に言って、自分を愛せない、自己主張、自己確認ができない社会になってしまったと、実はネガティブに今の社会を考えています。
強くてしっかりした人はどんどん進んでいくのでしょうけれども、どちらがいいとか悪いかではなくて、そうでない人も世の中にはかなり居る訳です。
その中で、自己確認できない人たちというのは多分これからもどんどん増えていくだろうと。
それがSNSなど様々なツールができていますから、そこに走っていくというのは、社会が変わっていく以上、仕方がないと思っています。
政治家である以上、これをどのように捉えて、何をしなければいけないかというのは、私はすごく重大な課題だというふうに捉えています。
地域主権主義者からすれば、国家の問題ではなくて横須賀市全体でどう捉えなければいけないのか。
横須賀市に生まれた人がどのように育って、どのように幸せになっていくかということを考えなければいけないといった時に、この問題は非常に大きな問題だというふうに思っています。
「誰も一人にさせないまち」と口では言いながら、ありとあらゆるツール、それからありとあらゆる考えをもっともっと勉強しなければいけないと思っています。
どうしたらこの社会が健全で、今おっしゃったような若い人たちが出ないようにできるかというのは自分が考えていかなければいけない。
これは今も考えて続けているところです。
一朝一夕にその答えは出せませんし、なぜ生きづらいかというのは分かりません。
いつの時代でも生きづらいと感じた時代があるだろうし、その時代にはぐれてしまった、あるいは道を外してしまった人たちはいつも生きづらい訳です。
その答えはいまだに出ない状態ですが、でも少なくともそれを改善していかなければいけない使命は持っているというふうに理解しています。
フジノの質問
市長、お答えありがとうございました。
同感です。個人主義の極めて高度な発達によって、人々はきずなを確実に失っていると思います。
それは家族が居ても同じだと思います。
本市の自殺犠牲者を分析していくと、同居者ありというほうが多いことからも、家族の存在が決してきずなにつながるものではないということも感じております。
そのような中、政治・行政が家族のかわりになれないか。
実際に具体的にかわりになるというよりは、セーフティネットをつくることで、家族や同居者がいてもきずなを感じられない方にサポートができないかという観点から伺いたいと思います。
本市に相談できる手段はいくつもあるのです。本当にいくつもあるのです。
素晴らしい本市の相談体制だと思っていますが、届いていない。今回のような若い世代には特に届いていない。
そこで、相談先を書いた「よこすか心のホットライン」という小冊子を置いてほしいと大学にお願いしたり、なかなか普通の場所ではとりづらいので、トイレに置いてほしいとか、いろいろな提案をしてきました。
啓発の方法は、今までの保健所の方法だけではない方法というのも考えていく必要があると思います。
例えば若い世代に啓発の方法を考えていただく。
今までの方法も継続しながら、新たな啓発の方法を考えていって、そして相談体制があることをまず知らせていく。
そういった取り組みも必要ではないかというふうに考えるのですが、市長は啓発体制の変更というか、新たな視点の導入についてどのようにお感じでしょうか。
市長の答弁
時代に合った新たな啓発というものは必要だというふうに考えています。
ただ、SNSのことなのですが、どうやって啓発していくか。
例えばいのちの電話のようなものにつながっていくのか。
だけれども、それはなりすましもあるだろうし、果たして助けることができるのかといろいろな問題があると思うのです。
ただ、そういう問題を惹起することは必要で、これからいろいろ検討していかなければいけない重要な課題であるというふうに考えています。
どんどん世の中は広がっていきますから、どこまでできるかというのは多分課題だと思いますが、それは時代のニーズに合わせて検討していかなければならないものだというふうに考えています。
フジノの質問
自分自身がEメールあるいはSNSで相談を毎日受けていて、昨晩も深夜まで相談を受けていました。
おっしゃるとおりで、1度始めてしまえばずっとつながっていくし、その生きづらさは一体いつになったら解消されていくのだろうと。
1度つながった方とは10年ぐらいつながっていくというふうな状況で、SNSに本市が乗り出せるのか。
いろいろな心配は確かにあります。
今は僕自身が僕だけの責任で行なっていることだけれども、本市保健所が例えばSNSを使って相談を受けるということになった場合、本来であれば深夜帯に行なっていただきたいけれども、深夜帯にそういう相談を行なえる体制があるのか、作っていくことができるのかとか、いろいろ考えねばならない点はたくさんあると思います。
でも、それを乗り越えていかねば、変化している社会に対応していくというのも同時にできないと考えておりますので、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。
また、もう1つの視点を提示したいと思います。
これは国・県とのパイプが太い上地市長だからこそ御提案できることなのです。
今回、多くの被害者は、精神科医療にすでにつながっていました。
横須賀市の方もそうだというふうに仄聞しております。
みんな精神科医療につながっているけれども、救われていない。
これは何でかというと、日本の精神科医療の不十分さ、薬処方中心主義で、そして入院中心主義であるということ。薬を出しておしまい、入院しておしまい、これが日本全体で変わらない限りは、横須賀市がいくら相談を聞いても変わらないのです。
そして薬が出され続けていけば、副反応も起こり、不要な入院も増えていく。
先進諸国では、もう入院はさせないと入院病棟をなくしていっている。
薬中心主義からマインドフルネスという言葉がありますけれども、認知行動療法などの薬ではない取り組みへとどんどんシフトしていっている。
日本だけは、入院している人の数は減らない。
こういう状況を変えていかなければ、結局何も変わらない。精神科医療にアクセスしていたにもかかわらず生きづらさは全く消えない。
こういった問題提起をぜひ上地市長、機会があるごとに国や県にしていただきたいのです。
我々がどんなに医療政策に携わりたいと思っても、できるのは地域医療政策のみで、精神科医療などは神奈川県の保健医療福祉計画にきちんと位置づけられていますが、やはり県の権限、そしてさらに言えば厚生労働省の権限であって、精神保健医療、特に精神科医療にはタッチできない。
そこで、機会を捉えて、今の日本の精神科医療でいいのかと、このまま進む方向でいいのかということをぜひ問題提起していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
市長の答弁
同じ視点を私も実は持っていますので、機会を通じて、その方面でできることがあれば、県、国に対しては申し入れを、いろいろな意味で注意を喚起していきたいというふうに思います。
フジノの質問
ありがとうございます。
新たなSNS体制の構築やLINE社との取り組みについては、セミナーに参加していただいたり、自殺対策計画に明記するよう検討も進めていただけるとのことなので、この質問については以上とします。