前市長が作った「施設配置適正化計画」は、廃止されました
前回の『FM戦略プラン審査特別委員会』についてフジノがブログを書いた後で、市民の方から質問をいただきました。
「『FM戦略プラン』とは何なのか?」
「何故『FM戦略プラン』を作るのか?」
そこで、これまでの経緯をかんたんに説明しますね。
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前市長時代の2015年1月に『施設配置適正化計画』というものが作られました。
市の施設の統廃合を示したもので、2052年度までの38年間にわたる計画です。
人口構造・経済・財政など社会のシステムが変化した中で、これまではどれほど市民のみなさまに愛されて利用されてきた施設であっても、従来のように維持・補修・更新していくことは財政的に不可能です。
けれども、ピンチは大きなチャンスです。
身近な地域に必ず1つずつあった施設を統合せざるをえないかわりに、1つの建物の中にあらゆる機能がビルトインされた複合施設でより市民のみなさまに愛されるような施設に変えていくことなどができる可能性があります。
全国の自治体が直面している問題ですが、市民のみなさまとともに知恵をしぼって、新たなまちづくりに成功しているところもあります。
しかし、計画づくりの途中で審議会は紛糾し、完成した計画は期待を大きく裏切るものでした。
新たなまちづくりどころか、市民のみなさまにとって必要な公共施設をとにかく廃止・統合することが強く打ち出された単なる『スクラップ計画』でした。
そして、この計画にもとづいて実際に廃止された『婦人会館』のように、地域のみなさまから愛されていた歴史的価値のある存在さえ、「存続してほしい」というたくさんの声も無視されました。
このように、市議会だけでなく、市民のみなさまの声も聞かずに作られたこの計画には反対の声がとても強く、市長選挙でも大きな争点となりました。
この計画の見直しを訴えた上地市長が当選し、昨年9月の所信表明演説においてもこの計画の凍結(実際は『廃止』です)と新たなプランの策定が打ち出されました。
上地市長の所信表明演説(2017年9月4日・本会議)より
ファシリティマネジメントの推進についてです。
私自身、議員時代に、もう10年以上も前からファシリティマネジメントの重要性を訴え続けてきましたので、今後の人口減少社会に向けて、公共施設をどうしていくべきかしっかりと考えていく必要があると認識しています。
しかし、個別施設の面積削減をクローズアップした現行の計画では、市民の皆様の理解は得られないと思いますし、私自身も納得できるものではありません。
現行の計画は凍結し、1度立ち止まって精査した上で、例えば、中心市街地等での再開発との連携や、地域コミュニティの再生に寄与するような公共施設の更新や再編のあり方、将来像などについての戦略的なプランを策定してまいります。
こうして前市長が作った『施設配置適正化計画』は廃止されて、所信表明で上地市長が述べたとおりに、新たなプランづくりがスタートしています。
この新たなプランの名前を『FM戦略プラン』といいます。
そして市議会としても「今度のプランは徹底的に議論してより良いものにしていきたい」という強い想いから、『特別委員会』を設置しました。
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以上がこれまでの経緯となります。
財政部から「骨子素案」が示されました
本日、第2回となる『FM戦略プラン審査特別委員会』が開かれました。
前回は正副委員長を決める為の開催で、今回から実質的な議論がスタートしました。
今回は、財政部から『FM戦略プラン骨子素案』が示されました。
行政の計画づくりの手順としては、まず『骨子』を作ります。その『骨子』を作る為の『たたき台』にあたるのが『素案』です。
つまり、『計画のもとのもと』になるものがこの『骨子素案』となります。
全文を掲載しましたので、こちらからぜひご覧下さいね。
フジノは「徹底した市民参画による新たなプランづくりを」と訴えました
議会側は強い反対を続けてきたにもかかわらず、最終的には前計画の策定を止められませんでした。
したがって前計画の失敗には、議会側にも一定の責任があるとフジノは考えています。
だから、「新たなプランづくりでは絶対に前計画の失敗は繰り返さないぞ」という想いを強く抱いています。
この想いは他の委員のみなさんも同じだったのではないかと考えています。
多くの委員が様々な観点から『骨子素案』について質疑を行ないました。
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フジノもいろいろな角度から提案を行なったのですが、そのうちの1つをご紹介します。
「徹底した市民参画による新たなプランづくりを行なうべきだ」というものです。
FM戦略プラン審査特別委員会(2018年3月5日の質疑)
フジノの質問
FM戦略プラン推進の基本方針について伺います。
今回、基本方針として5つ挙げていただきました。
ここに新たに加えていただきたいという想いがあります。
まず、僕自身は「前の計画が失敗だった」と受けとめているのですが、それは議会だけではなく多くの市民の方から共感が得られなかったことにあるのではないかと受けとめています。
そこで、率直な反省に立って、基本方針にも次のような内容をぜひ加えていただけないでしょうか。
それは、「市民と行政がともに問題意識を共有し、横須賀市の未来の姿を市民と行政がともに描く計画とする」といったような内容、これをぜひ検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
施設配置適正化担当課長の答弁
今ご提案いただいたものは少し持ち帰って今後考えさせていただきたいと思います。
フジノの質問
今申し上げたことなので即答は難しいと思うのですが、やはり基本的な方針の中に、市民とともにつくる計画であるということ、それからもう1点御提案させていただきたいのですが、市民の理解と満足度を高める計画とすることを方針に明記していただきたいと思います。
これは自明の理だと議会も行政も考えていることだと思うのですが、あえて明文化することで、市民のみなさまにプランを御提示する時に、このプランというのは前を向いて、ダウンサイジングはするが、これによって皆さんの暮らしがより豊かになる、より良いものになる。これは行政、議会だけがつくったのではなくて一緒につくっていくものなのだ、ということをぜひ打ち出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
財政部長の答弁
横須賀市の『基本構想』の中に、市民協働によるまちづくりというのが位置づけられているのは委員ご承知のとおりだと思います。
今回のプランの中でも、当然、市民の理解と満足度を高める。市民とともにつくるという思想は重要な視点だと思います。
基本方針の中の1、2、3、4、5、6に位置づけるのか、はたまた総論に位置づけるのか、どういう位置づけるになるか分かりませんが、御意見の点については、中でもう1度議論させていただきたいと考えています。
フジノの質問
同じ趣旨から、今度は説明資料をごらんいただきたいのですが、説明資料の1ページをごらんください。
計画策定スケジュールについてです。
大変わかりやすいスケジュール一覧になっているのですが、市民参画について記述が薄い。
この予定表からでは、市民参画の機会が『公募市民』と『パブリックコメント』ぐらいしか受けとめられない。
先ほど基本方針に入れていただきたいと言ったことと同じ趣旨なのですが、計画策定の段階から市民への広報が積極的になされるべきと考えています。
計画をつくっていることをお知らせしていただきたいですし、定期的に進捗状況もニュース的に発信をしてほしいと思っています。
そして、計画策定スケジュールにも市民参画の機会を盛り込んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
施設配置適正化担当課長の答弁
確かにそのとおりだと思います。
ホームページ等では少しずつ発信しておりますが、今委員からいただいた意見のように少し考えていきたいと思っています。
フジノの質問
続いて、やはり同じ趣旨からの質問なのですが、有識者会議での議論、これは非常に大事なものだと思います。当然、傍聴もできるとは思います。
ただ、やはり議論をリアルタイムでどなたでも観られる、またその時間帯に来ることができなければ議事録の公開が可能な限り早く行なわれる、またはインターネットで会議の様子の録画を公開する、そういった形で可能な限りリアルタイムで情報を市民のみなさまと共有できるようにしたい。
というのも、計画策定の期間は大変短いです。
そして、このまちの未来を決める10年間ものプランをつくります。
当然つくった後で「知らなかったよ」ということにはなりますし、どんなに広報してもそれは起きることですが、可能な限り行政側は全部情報を出してほしいと思っているのです。
市民と一緒につくっていくプランにしたいと思っているのです。
今までの審議会の在り方とはだいぶ離れてしまうかもしれないのですが、とにかく議事録を早く出す、そして定期的に情報発信をする。
また、検討委員会の様子も動画などの形で可能な限り早く見られるようにしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
施設配置適正化担当課長の答弁
情報の開示は確かに重要だと思いますので、できる限り早く開示すべきだと思っています。
議事録につきましては、各委員の確認が必要になりますので、確認ができ次第、公関するようにしたいと思っております。
動画については、現時点でどうするかというのはお答えが難しいと思っております。
フジノの質問
それから、市民参画のあり方というのはどういったものがよいのかというのは、事前にいろいろなことを意見交換させていただきました。
例えば出前トークは絶対やられるでしょうし、前市長の呼び方ではありますが車座会議のように市民の方に集まっていただいて意見を積極的に聞かせてほしいという場を開いていくと思います。
こういったものもお考えいただいた後には計画策定スケジュールに明記していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
施設配置適正化担当課長の答弁
この計画づくりの中での市民の方々への説明ということもありますが、計画からリーディングプランに至るまでの過程というものも大事なのかと思っております。
そういった段階で市民の方の意見を聞いて、例えば更新・再編の際に、どういった施設を複合化していくのかというようなことも検討が必要だと思っております。
そういった点については、リーディングプランの第7章に少し書いてありますが、計画の中に更新・再編の検討手順、検討時期というものの中で少し考えてスケジュールに入れていきたいと思っています。
この他にも、
- 全国でブームになっている図書館を複合化してまちのにぎわいづくりに利用するようなことは、結論有りきで進めるべきではない。
- 隣市や半島内の各市町が美術館を持っている中で、美術館を本市が本当に持ち続ける必要があるのか、検討を行なっていくべきだ。
- 10年もの長期にわたる計画は必ず経済社会状況の変化が起こるものであり、細やかな進捗管理と定期的な見直しをしていくべきだ。
などの提案をしました。
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次回の特別委員会は、2018年5月18日(金)です。
この1ヶ月間を利用して、さらに市民のみなさまとともに在るべき横須賀の姿を考えて、市民の多くの声を『FM戦略プラン』に反映させていきたいと思います。