国による障がいのある方々の求人条件「自力で通勤可能」「介助者なし」を新聞各紙が厳しく批判しました
10月26日の東京新聞は、1面トップで以下のように報じました。
国の省庁が、障がいのある方々を求人する際に、応募資格として「自力で通勤できる」「介助者なしで業務遂行が可能」などの条件をつけていたことに当事者団体が抗議、「不適切だった」と応募資格から削除したとのことです。
国、障害者に不適切求人
財務省など「介助者なし」条件/関係団体が抗議、削除
中央省庁の障害者雇用水増し問題が発覚した後の九~十月、財務省や国税庁などが障害者の職員を求人する際、応募資格に「自力で通勤できる」「介護者なしで業務遂行が可能」との条件を付けていたことが二十五日、分かった。
障害者団体が「介助があれば通勤や勤務が可能な人を排除しており、差別だ」と抗議。
これを受け両省庁などは「不適切だった」として応募資格から削除した。
水増し問題を巡っては、政府の検証委員会が中央省庁での障害者雇用や共生の理念に対する意識の低さを指摘したばかり。
八月に水増しが発覚した後も障害者差別解消法に反するような求人が続けられていたことで、問題の根深さが浮き彫りになった形だ。
こうした求人は、確認できた範囲だけでも過去に農林水産省、防衛省、原子力規制庁、個人情報保護委員会の四機関でもあり、このうち原子力規制庁、個人情報保護委員会は「他省庁を参考にした」としている。
所管の厚生労働省と人事院は今回の求人について「不適切」との見解を示した。
人事院は水増し問題を受けて新たに策定するガイドラインに配慮項目を盛り込む方針。
今回「自力通勤」「介護者なしでの業務遂行が可能」との条件で求人を出していたのは、財務省、国税庁のほか、関東信越国税局、東京税関の計四機関。
いずれも事務補助をする非常勤職員の募集で、財務省は十月十五日から同省のホームページなどで掲載。
雇用数の不適切計上が昨年度に約千百人と最多だった国税庁は、不足した障害者数を補う目的で九月下旬に掲載を始めた。
財務省は「差別意識はなかったが、認識不足だった」と釈明。国税庁は「職員が送迎するのは厳しいという趣旨だった」、関東信越国税局と東京税関は「本省庁の指示だった」としている。
東京新聞政治部のツイッターアカウントでも厳しく批判をしています。
同じく、神奈川新聞も以下のように大きく報道しました。
これらの報道を読んで、フジノは少しホッとしました。
全国メディアもようやく『障害者差別解消法』『合理的配慮』について理解してくれるようになったかと感じたのです。
問題提起から10年経って、ようやくメディアが取り上げてくれるようになりました。
この際、全国的に膿が出されることを願ってやみません。
横須賀市は来年新たに「障害者ワークステーション」という取り組みをスタートします
実はつい先日もフジノは問題提起をしたばかりです。
2018年9月議会の教育福祉常任委員会(9月6日)において、福祉部は報告を行ないました。
◎障害者ワークステーションよこすかの導入について 【人事課(研修・厚生担当)、障害福祉課】
- 導入目的
障害者の一般就労へのステップアップを支援するため、市役所内に知的障害者及び精神障害者の方(以下「障害者スタッフ」という)が働ける職場を設置します。また、行政として障害者雇用の推進モデルを示します。
- 事業内容
障害者スタッフが事務作業をする場所(ワークステーション)を開設し、ジョブコーチの支援のもと、庁内で職員が行なっている事務を集約し作業を行ないます。 - 概要
(1)体制
障害者スタッフ:非常勤職員3名
ジョブコーチ:再任用職員1名、非常勤職員1名
(2)取扱業務
主な業務:庁内の文書等を集配する逓送業務、シュレッダー処理・運搬業務
その他業務:封入封かん業務、ラベル等のシール貼り、PCデータ入力等、全庁から受託した業務
(3)開設年月日:平成31年5月1日
(4)設置場所:市役所本庁舎1号館5階(行政管理課内) - スケジュール
- 報道発表(平成30年9月)
- 広報よこすか1月号に非常勤職員(障害者スタッフ、ジョブコーチ)採用募集記事掲載(平成31年1月)
- 採用試験(平成31年1月~3月)
- ジョブコーチ採用(平成31年4月)
- 「障害者ワークステーションよこすか」開設準備(平成31年4月)
- 障害者スタッフ採用(平成31年5月)
- 「障害者ワークステーションよこすか」運用開始(平成31年5月1日)
新たに横須賀市がスタートさせる『障害者ワークステーション』に対して、市議会はおおむね評価し、歓迎しました。
「雇用の場」が増えるだけで喜んでいてはダメです
しかしフジノは、募集の在り方について問題提起をしました。
2018年9月6日・教育福祉常任委員会での質疑
フジノの質問
福祉部・総務部が連名で出していただいた『障害者ワークステーションよこすかの導入』について、数点伺います。
『受験資格』と『欠格事項』について確認をします。
『障害者ワークステーションよこすか』の導入は率直に評価したいです。
ただ、今回の障がい者スタッフの募集対象を知的障がいのある方と精神障がいのある方に限定した理由は、どういった観点からなのでしょうか。
また、いわゆる発達障がいのある方や難病の方はどうして対象から外れたのでしょうか。お答え下さい。
障害福祉課長の答弁
まず、知的と精神の障がいの方に限定したところですが、身体の障がいの方については、もうすでに雇用されているという部分がございますので、今回その雇用されていない分野について対象としたというところでございます。
それから、発達障がいなどにつきましては、特に排除しているというわけではございませんので、もし御応募があれば、選考の対象にはなってくるということになるのかと思います。
フジノの質問
発達障がいのある方は、発達障がい者手帳というものはありませんので、精神障害者保健福祉手帳ということになると思うのですが、ここの説明資料の書き方ですと、知的障がい者及び精神障がい者の方と明記されてしまっていますので、限定されている、排除されていると他の障がいのある方は感じると思います。
ですから、記載の内容、募集要項には丁寧に書いていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
障害福祉課長の答弁
その辺は担当の総務部と協識したいと思います。
フジノの質問
来年2019年1月から3月にかけて採用蹴験を行なうとのスケジュールですが、募集にあたっての受験資格はどのように設定するのでしょうか。
まず『年齢の制限』はあるのでしょうか。
また、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していることが条件になるのでしょうか。
さらに、他都市では『介助者なしに嘱託員としての職務の遂行が可能な者であること』や、民間企業へのステップアップを希望する者であることを条件に課している事例もあります。
本市では受験資格はどのように設定するのか、お考えをお聞かせ下さい。
障害福祉課長の答弁
非常勤職員として採用いたしますので、年齢制限は他の非常勤職員と同様65歳未満の方ということになります。
それから、条件といたしましては、機須賀の就労生活援助センターと連携して、その後の一般就労への支援等を進めていきたいと思っておりますので、そちらに登録していただくということを条件として考えております。
フジノの質問
繰り返しになりますが、他都市が設定しているような療育手帳あるいは精神障害者保健福祉手帳の取得、また、介護者無しに嘱託員としての職務の遂行が可能であることといった特段の条件は課さないということでよろしいでしょうか。
障害福祉課長の答弁
一般就労へのステッブアップというところを最初の目標にしておりますので、なかなか介助者のない方というのは、現実の問題として難しいのかなとは思います。
フジノの質問
そうすると、今回の募集では、他都市が行なっているように『介助者なしに嘱託員としての職務の遂行が可能な者であること』というのを入れるということだと受けとめました。
手帳の取得に関してはいかがですか。改めてお聞かせ下さい。
障害福祉課長の答弁
現状考えておりますのは、療養手帳または精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているということを一応要件として考えております。
フジノの質問
より重い方からサポートをということなのだと思うのですが、精神障害者保健福祉手帳の取得者の少なさ、一方で自立支援医療を受けておられる方の多さを考えると、これはかねてから障害福祉課とは問題意識共有をしてきましたが、精神障がいが実際にあっても手帳は取得していない方が多数おられるという状況があります。
その中で手帳を要件としてしまうと、多くの方が排除されてしまうのではないかと受けとめます。
もともと募集が3名と大変少ない人数ですので、募集しても倍率はものすごく高いものになると思うのですが、受験資格の段階で排除されることを可能な限りハードルを下げていただきたいと要望します。
福祉部・総務部でぜひ話し合っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
障害福祉課長の答弁
総務部と話し合ってみたいと思います。
フジノの質問
続いて、受験できない者として『欠格事項』を設ける予定はあるのでしょうか。
他都市の事例では、成年被後見人・被保佐人は受験できないとしています。
しかし、成年後見制度はそもそも財産管理能力の評価に特化したものであって、欠格条項としている他都市はおかしいと、僕は問題だと受けとめています。
成年後見制度は、権利擁護、ノーマライゼーションや社会的包摂を目指したものであり、成年彼後見人や被補佐人であることを理由に権利を制限することは社会的排除に当たり、国が進める障害者雇用促進政策などとの矛盾に当たるとの指摘もあります。
かねて僕も障がいのある方々の欠格条項の廃止の質疑を行なってきた立場です。
新たに導入される『障害者ワークステーションよこすか』には、成年後見制度を利用しているか否かを欠格条項として入れるべきではないと考えています。
福祉部はどのようにお考えでしょうか。 お聞かせ下さい。
障害福祉課長の答弁
今、御質問の中で福祉部としてどうお考えになるかということでしたが、非常勤職員の採用の条件につきましては私どもで意見を述べる立場にございませんので、総務部が判断することだと思います。
フジノの質問
課長、福祉部が総務部と一緒にやっていく取り組みですし、障がい福祉の専門は障害福祉課ですから、総務部に対して意見は言っていただくべき立場だと思うのです。
「言う立場に無い」というのは少し違うのではないかと思いますが、いかがですか。
障害福祉課長の答弁
少し言い方が悪かったのかもしれませんが、非常勤職員としてこういう条件ということを、市全体の中で人事課、総務部のほうで定めておりますので、その条件に沿うか沿わないかということになろうかと思います。
ただ、委員おっしゃったとおり、総務部と福祉部で話をする、協議をするということは十分可能かと思います。
フジノの質問
少なくとも本委員会で、僕が今申し上げた御提案については、総務部に必ず伝えていただきたいと思います。
これがフジノが行なった問題提起です。
横須賀市は「介助者なし」「自力で通勤可能」などを条件とすべきではない
東京新聞と神奈川新聞の報道に、フジノは本当にホッとしました。
今までフジノは横須賀市議会ではたったひとりきりでこの問題に取り組んできました。
明らかな差別なのに、この10年間、問題提起をしても共感や理解を得られたことはありませんでした。10年経ってようやくメディアも理解してくれるようになりました。
わが国には、障がいのある方々の求人に様々な条件を課して実質的には採用しない(させない)という『欠格条項』が本当にたくさんあります。
こうした差別的な対応を1つずつ無くすことも、フジノの大切な仕事です。
横須賀市が新たにスタートさせる『障害者ワークステーション』の取り組みそのものは、正しいです。やるべきです。
しかしそこに差別的な条件をつけることは、間違っています。
障害者差別解消法や合理的配慮の理念を受け止めれば、横須賀市が取るべき対応は差別的な条件を全て無くすことです。
フジノの質問は、決して特別な内容ではありません。
だからフジノは、それを議会で指摘しました。
それなのに今回も、担当部である福祉部はフジノの質問に対して共感してくれませんでした。本当に残念です。
ただ、福祉部は、採用を担当する総務部と協議することだけは約束をしてくれました。
その協議の結果、これから横須賀市はどのような対応を取るのか、フジノはしっかりとチェックしていきます。
どうか当事者のみなさん、ご家族のみなさん、関係者のみなさん、横須賀市の動きを注視していて下さい。
後日談:翌日の各紙も一斉に報道しました
東京新聞の報道を受けて、この日の夕刊、翌日10月27日で各紙が一斉に報道しました。