うわまち病院の現地建て替えを願う方々の「誤解」について説明を続けています
8月31日に一般質問を行なってからほぼ毎日、うわまち病院を現地で建て替えたいという想いを持つたくさんの方々と意見交換をしてきました。
そもそもフジノと上地市長は、移転を繰り返し主張する会派(研政など)が複数あった市議会の中で、たった2人きりで『現地建て替え』を訴えてきました。
医療を提供する上で交通至便であること、医療従事者のみなさまにとっても好立地であること、津波災害などに強い防災拠点病院としての位置づけ、130年に及ぶ長年の歴史、地域経済への波及、など様々な観点から「移転はありえない」と訴えてきました。
市議会議員と市長と今でこそ立場は変わりましたが、僕たちは2人とも現地で建て替えられないことを心から悲しんでいますし、内心忸怩たる想いです。
だから、移転に反対しておられる方々のお気持ちや、時に厳しい非難のお声も、とても切ない気持ちでお聞きしています。
ただ、もう『市長』という立場になった今、上地さんには議員時代のようには発言できません。
何故ならば、行政の最高責任者だからです。影響力が大きすぎるからです。
しかし僕は違います。無会派でひとりきりで活動しているいち市議に過ぎないフジノは、今も自由に発言ができます。
何かを発言しても、フジノひとりの責任です。
だから、上地市長や行政のみなさんが発言しづらいことは、フジノが責任をもってご説明したいと思います。
そもそも6年前に、うわまち病院の建て替えを提案したのはフジノであり、建て替えの責任者だと自覚しています。
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しばしば市民の方々からは
「あらかじめ移転が決まっていて、後付で『できない理由』ばかりあげるな」
とお叱りをいただきますが、それは完全な誤解です。
現地建て替え派だったフジノは、「なんとかして現地で建て替えができないか」というシミュレーションをたくさん行なってもらいました。
今、市民説明会などでお話をしている内容というのは、みなさまと同じように「なんとかして現地で建て替えができないか」を一生懸命探してシミュレーションした結果をお伝えしているのです。
フジノも、市長はじめ行政の職員のみなさんたちも、『できない理由』を喜んで説明しているのではありません。
つまり、現地で建て替えができる方法を必死に探したけれど、いろいろな法的規制などによってダメだという結論に至ってしまった。そのフジノたちの追体験をしていただいているのです。
国の政治が悪いことが多くて政治そのものへの不信があるのは分かります。
けれども、命を守る為のこのまちの大切な病院を、あなたと同じくこのまちに暮らしているひとりの人間として全力で守ろうとしているのです。
どうか、政治や行政へのイメージから来る不信感や、決めつけで耳を閉ざさないでほしいのです。
誤った情報や噂話などの雑音に耳を貸すのではなくて、正確な情報や医療需要の変化など現実が大きく変化していることをご理解いただきたいのです。
少なくともフジノはこのまちで死ぬまで暮らしていくひとりとして、全身全霊を賭けて、2025年の新病院オープンを絶対に実現させる覚悟です。
「看護学校をどこかに移転して、その敷地を使って建て替えをすれば良いじゃないか」とのご意見について
今日のブログ記事では、しばしば頂くご意見のうち、
- うわまち病院の隣にある市立看護専門学校をどこかへ移転して、その跡地に新病棟を建てれば良いじゃないか
というご提案にお答えしたいと思います。
分かりやすさを大切にする為に、詳細な点はカットして説明します。
移転後の新病院は、全てを新しくする訳です。
しかし、ここでは市民の方からのご意見にしたがって、
「あくまでも『最も老朽化が進んでいる2つの建物』だけを建て替えれば良い」
との仮定のお話をします。
特に老朽化が激しい建物 | のべ床面積 |
---|---|
外来棟 | 4477㎡ |
本館 | 7312㎡ |
合計 | 1万1789㎡ |
この2つの建物を壊して、最先端の技術を使って高層ビル型の新病棟に建て替えてはどうか、とのご意見をいただくことが本当に多くあります。
提案されている建物 | のべ床面積 |
---|---|
旧看護師宿舎 | 683㎡ |
市立看護専門学校 | 3067㎡ |
合計 | 3690㎡ |
一方、その建て替えの土地としては、旧看護師宿舎を壊して、(少し乱暴で納得できないのですが)市立看護専門学校を移転させてしまえば良いと言われます。
確かに、地図の図面だけでご覧になると、土地の広さは同じくらいに見えると思います。
ですから、市民の方々がこうしたご意見をおっしゃることは個人的にはよく理解できます。
残念ながら不可能な3つの理由/第1の理由:「開発行為にあたる」ので道路拡幅が必要です
仮に、『旧看護師宿舎+市立看護専門学校』を更地にしたとします。
そして、先行して『外来棟+本館』だけをその更地に建設をするとします。
2つの建物の間には、赤い線を引きましたが、これは『法律上の境界線』でそれぞれの土地の用途も定められています。
土地 | 用途 |
---|---|
旧看護師宿舎+市立看護専門学校』 | 学校 |
外来棟+本館 | 病院 |
学校の建物を解体するのも、病院の建物を『解体』することそのものは『開発行為』にはあたりません。できます。
『開発行為』にあたると、現在は約5m幅しかない進入路を15mに広げなければなりません(9mではありません)。
仮に建物を『解体』できたとしても、実は不可能な理由があります。
今は『法的な境界線』によって2つの用途(学校と病院)に分かれている訳です。
この『学校』を廃止して『病院』に用途を変更することは、法律的に開発行為にあたってしまうのです。
あくまでも図面で手続きをするだけのことなのですが、その時点でそれは開発行為に該当します。
学校の土地を病院に用途を変更することは開発行為に該当する
=進入路を15mに拡幅しなければならない
=拡幅には10年以上かかる
=医療ニーズが一気に高まる2025年の新病院スタートにまにあわない
=看護学校の土地を使った新病院建設はムリ
なのです。。。
第2の理由:看護学校のまわりはレッドゾーン指定の見込みが高く防災対策(=開発行為)が必要
第2の理由は、看護専門学校の敷地は崖地がぐるりと取り囲んでいることです。
どうか思い出して下さい。そもそも現地で建て替えができない理由は、うわまち病院のまわりがぐるりと崖に囲まれているからです。
その崖は今イエローゾーン指定をされていますが、県が現在指定を進めているレッドゾーンにほぼ全域が指定される見込みです。
レッドゾーンに指定された場合は、徹底した防災対策工事が必要となります。
防災対策工事を行なうには、進入路の拡幅が必要です。進入路の拡幅には10年以上がかかり、医療ニーズの高まりに応えられなくなってしまいます。
看護専門学校の敷地のまわりにも、レッドゾーンに指定される見込みの崖地に取り囲まれています。
ですから、現地建て替えができな理由と全く同じ理由で、たとえ看護専門学校の敷地を使おうとしても、それは不可能なのです。
第3の理由:日照権(日影)の問題で高い建物はまず不可能です
第3の理由は、今日は時間の都合で書けません。
けれども、とても大切な事柄なので後日改めて丁寧に記したいと思います。
それは、『高度制限』と『日照権』の問題です。
上町地区は、下の画像のとおりで、2004年以降、緑色のゾーンには15m以上の建物は建てられなくなりました
2004年よりも前に建てられたものはさかのぼって取り壊すということはありません。
けれども今、この地域に15m以上の建物を建てるのは基本的に不可能なのです。
あくまでも空想の世界になるのですが・・・
仮に「どうしても公益性が高いから看護専門学校の敷地に、外来棟と本館の機能を持ち、1ベッドあたり8〜9㎡以上の最新の医療機能のある建物を高層ビルで作れ」ということになったとします。
15m以上の建物を建てられない上町地区で、あえてこのような『特例』を認めるか否かは、『建築審査会』で議論をすることになります。
しかし、新たに15m以上の建物を建てる『特例』を認めるには、高層ビルによって日陰になる全ての家屋にお住まいの方々の日照権の問題があります。
確実に、日影ができます。
1日の大半が日影になるような状況を、病院建て替えで作る高層ビルの為に『受認』して下さる市民の方々はいらっしゃるでしょうか。
そもそも『受認』できない方々がおられれば、『建築審査会』に特例を求めるテーマとしてかける自体がとても難しくなります。
「やってみなければ分からない」
というご意見もしばしば移転反対を訴える方々から伺いますが、本当にそうでしょうか?
今まで毎日太陽があたって暮らせていたのが、看護学校の敷地にあえて高層ビルを建てることで現地建て替えをするというムリな条件の為に、全員が『受認』して下さるでしょうか。
フジノは、かつて実家が日照権のトラブルに巻き込まれたことがあります。毎日、太陽が当たっていた暮らしはいくらお金を積まれたとしても手放したくありませんでした。
つまり、フジノの結論としては、そもそも第1・第2の理由で現実的に不可能だけれども、さらに日照権の問題を考えれば移転建て替えを上回る公益性は『看護学校の敷地を使っての高層ビル構想』には無いと考えています。
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以上の3つの理由から看護学校の敷地を使っての高層ビル高層は、不可能なのです。
本当に申し訳なく感じています。
繰り返しになりますが、フジノにできることは上町のみなさまに移転はしたけれども2025年オープンの新病院が完成して良かったと感じていただける最高の病院を作ることです。
そして、跡地の再開発を上町のみなさんの声をお聞きしながらより良いものにしていくことです。
その為に、これからも全身全霊を賭けて取り組んでまいります。