「月刊みんなねっと」2019年9月号の特集に原稿依頼を受けました
このたび、『月刊みんなねっと』という雑誌から特集記事に原稿を書いてほしいというご依頼をいただきました。
『みんなねっと』とは精神障がいのある方の家族会の全国組織です。
『月刊みんなねっと』はその名のとおり『みんなねっと』の会報です
フジノはもう数年前からあらゆる原稿依頼をお断りしてきました。
けれども、発行元である『みんなねっと』は個人的に特別な存在なので、喜んでお引き受けしました。
かつてフジノは毎月むさぼるように『月刊ぜんかれん』(※『月刊みんなねっと』の前身です。ブログ記事の最後に詳しくご紹介しました)を読んでいました。
今でも全冊取ってあります。
かつて自分がその記事のひとつひとつに救われたように、もしもフジノの文章が読んでいただけるのであれば『全家連』への恩返しになるのかもしれないと感じて、お引き受けすることにしました。
特集テーマは「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」についてです
依頼されたテーマは、国が進めようとしている『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム』についてです。
下の画像が目次です。
特集の第1記事は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課の得津馨課長へのインタビュー取材です。
第2記事が、地方議員であるフジノです。
この特集の構成をお聴きした時に編集部がフジノに原稿を依頼した意図を考えてみました。
国(厚生労働省の担当課長)の説明を受けて、実際に地域の現場ではどう取り組まれているのかを書いてほしいのではないかと受け止めました。
そこで、昨年度から『協議の場』(=横須賀市精神保健福祉連絡協議会)を立ち上げた横須賀市の取り組みについて書こうと決めました。
「病院の世紀」の終わりが必然であることを強く訴えることにしました
後日たまたま編集部とのやりとりをしている時に、すでに第1記事はゲラまで完成していることを知りました。
無理やりお願いして、厚生労働省の課長のインタビューを読ませていただきました。
4ページの記事の大半が、11の事業の説明に費やされていました。
読み終えたフジノは率直にこう感じました。
「社会的入院を解消するこれまでの取り組みがあまりにも進んでいないから、ただ『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム』なんて新しい名前をつけただけじゃないか」
「11事業を全て実施したとしても『地域包括ケアシステム』が構築できるとは思えない」
これでは記事を読んだ家族会のみなさまはきっとフジノと同じようにしか感じないだろうと思いました。
2003年にスタートした『精神障害者退院促進事業』があまりうまくいかなかったから看板をかけかえただけじゃないか・・・そんなふうに落胆してしまうのではないかと感じました。
そこで、ほとんど完成していたフジノの原稿は書き直すことにしました。
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そもそも『地域包括ケアシステム』とは国が言い出したことではありません。
20〜30年前から全国各地の想いのある方々(医療・介護・市民)が同時多発的に取り組んでいたものを、国が採用したものです。
この『地域包括ケアシステム』についてみなさまに正確に知ってほしい、とフジノは強く願っています。
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例えば、横須賀市のご高齢の方々を対象にした『地域包括ケア』は全国的にも高い評価を受けています。
約20年以上前から『やすらぎの会』という、がんサバイバーを中心とした市民団体の素晴らしい活動があります。
そのおかげで、横須賀市医師会もご高齢の方々が住み慣れた地域で暮らし続けて在宅での看取りまで過ごせるようにという取り組みに力を入れています。
行政である横須賀市と強力なタッグを組んで、全国に先駆けて積極的に進めてきたのです。
いろいろな成果がありますが、最も有名な成果の1つが在宅死亡率(自宅で亡くなる方の割合)が中核市では全国1位になったことです。
フジノもまた横須賀市議会の中で誰よりも早く『地域包括ケア』に言及し、ご高齢の方々の地域包括ケアシステム構築の為に様々な提案をしてきました。
市民団体であれ、医師会の方であれ、行政の担当課の職員であれ、こうした取り組みを進めてきた中心メンバーは、みな、ひとつの哲学を持っていたと感じています。
それは「地域包括ケアへの移行は歴史的な必然である」という信念です。
国にやらされているのではなくて、歴史的な必然を加速させる為に取り組んでいるのだという使命感です。
こうした想いを文献によって理論化して下さったのが猪飼周平先生の著書『病院の世紀の理論』です(必読書です。ぜひ!)。
20世紀は病院中心の『病院の世紀』でした。
けれども歴史的な必然の中で『病院の世紀』が終わり、世界史的な展開として『地域包括ケア』の時代へと向かっているのです。
この信念を強く持って、市民団体・医師会・行政のコアメンバーは(もちろんフジノも)『地域包括ケアシステム』への移行を積極的に進めてきたのです。
つまり、『地域包括ケアシステム』とは単なる事業ではありません。
紙面の都合はあるとは思いますが、厚生労働省の課長のインタビューを読む限りでは地域包括ケアシステムが単なる11事業に矮小化されてしまっています。
「ぜんぜん違うのに!」
と強く感じました。
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『病院主体』から『地域主体』への移行という『歴史的な必然』を、『ご高齢の方々』から対象をどんどん広げていくのは当然のことです。
『精神障がいのある方々』へ対象を広げるのはもちろんのこと、フジノは『医療的ケアが必要なこどもたち』を対象とした『小児在宅ケア』も横須賀市議会で提案してきました。
そこで、フジノの原稿の半分は「何故、『地域包括ケアシステム』への移行が必然なのか」を記すことにしました。
次に、先程ご紹介した横須賀市のご高齢の方々を対象とした『地域包括ケア』の取り組みをご紹介することにしました。
さらに、『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム』を11事業をただ実施することではない、と強く訴えました。
国の政策であっても、現場がどんどん声をあげて事業を増やしたり改善していくことができますし、絶対に声をあげていかねばなりません。
こうしてフジノの4ページは完成しました。
ご関心のある方はぜひ『月刊みんなねっと』をお買い求め下さい。1冊300円です。
特に、家族会などに入会していない、精神障がいのある方の家族のみなさま(ケアラーのみなさま)は、この機会に『みんなねっと』とつながっていただけたら嬉しいです。
どうかお願い致します。
「みんなねっと」=精神障がいのある方の家族会の全国組織
最後に、フジノと『みんなねっと』の関わりについて記します。これはあくまでもフジノの一方的な思い入れに過ぎません。
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『みんなねっと』(正式名称・公益社団法人全国精神保健福祉会連合会)は、精神障がいのある方々の家族会の全国団体があります。
全国には約1200の家族会があって、約3万人の方々が活動をしています。
(家族会の会員数との人数差は、『みんなねっと』の会員にはなっていない方もいるからです)
各地域の家族会は、都道府県ごとに都道府県連合会に属しています。
その47の都道府県連合会をまとめているのが、この『みんなねっと』です。
「みんなねっと」とフジノの関わり
精神障がいに関わりのある団体といえば、皆さんご存知の『コンボ』(正式名称・認定NPO法人地域精神保健福祉機構)がありますよね。
『リカバリー全国フォーラム』を毎年開催していて、2010年からはフジノが理事を務めています。
実は、この『みんなねっと』と『コンボ』。
元々は1つの団体でした。
それが『全家連(ぜんかれん)』(正式名称・全国精神障害者家族会連合会)です。
大学時代のフジノは『全家連』によって人生を救われたといっても過言ではありません。
だから、同じルーツを持つこの2つの団体を今もとても大切に想っています。
『みんなねっと』の全国大会が神奈川近辺で開催されれば参加します。
精神保健医療福祉に関する法制度などの政府への要望や、社会的な出来事への訴えやメディアへのプレスリリースなどを、『みんなねっと』と『コンボ』と共同で提出できたらいいなと願っています。
2007年4月に『全家連』が解散に至った経緯は単なるいち会員だったフジノには分かりません。ネットではいろいろな情報が出ているので当時の厚生労働省と役員たちの問題があったことはうっすらと承知しています。
いろいろな課題はあるかと思いますが、両団体ともに世代交代も進みました。問題を起こした元役員たちも年齢的には引退またはまもなく引退なのではないかと思います。
個人的にはいつかまた2つの団体が1つになれたらいいのにと願っています。