「よこすか市議会だより」、けさ発行されました
本日11月27日、『よこすか市議会だより』34号が発行されました。
新聞折り込みですが、市議会のホームページからもご覧いただけます。
フジノの記事は「不妊症・不育症の治療費助成を改善すべき」と訴えた質問です
2019年9月定例議会でフジノは大きく2つの質問を行ないました。
1つ目の質問である『小動物火葬施設の在り方について』は新聞やタウン紙でも大きく報道されました。
そこで「もう1つの質問を全戸配布される『議会だより』で市民のみなさまに知ってほしい」と思い、記事に選びました。
不妊症・不育症の治療費助成を改善すべきと訴えた質問です。
本会議で行なった質問は、実はとても長いです。
再質問でもこの質問に関連するやりとりに最も長い時間を使いました。
そこで260文字では表現しきれないとても強い想いを知っていただく為に、2018年予算議会・フジノの質問を改めて掲載します。
2019年9月18日・本会議・市長への質問
2.事実上、お金がない人は治療を受けられない仕組みとなっている現在の特定不妊治療・不育症治療費助成事業を改善する必要性及び勤労者生活資金融資制度の広報を改善する必要性について
以前から不妊症・不育症について質問を重ねてきましたが、今回は本市の助成事業を改善する必要性について伺います。
そもそも不妊・不育の当事者はマイノリティー扱いをされていますが、我が国では6組に1組が不妊カップルです。
また、2017年に生まれた子どもの17人に1人が生殖補助医療のおかげで生まれました。
もはや国全体のテーマなのですが、専門的な相談支援も極めて不足しています。そこで、本市は今年4月から『横須賀市不妊・不育専門相談センター』を設置しました。
現在、毎月平均30件の御相談をいただいており、相談ニーズの高さが証明されました。
相談の次にやるべきことは『治療を受けたい方々への本気の支援』です。
治療費があまりにも高額な為に治療を受けられない方々がたくさんおられることから、すでに本市では特定不妊治療費助成事業と不育症治療費助成事業を設けて治療費を助成してきました。
けれども、毎年指摘してきたのですが、この利用件数が伸びていません。
何故なら制度設計に明確な欠点があり、お金を持っている方々しか治療に行かれないようになっているからです。
例えば、不妊治療では体外受精・顕微授精などを受ければ、費用負担は1周期当たり40万円から60万円もかかります。
本市の事業はどちらもまず自腹で、自費で、治療費を病院やクリニックに支払った後に市に申請をすると、後日助成金がもらえるという仕組みです。
つまり、あらかじめ高額な治療費を用意できなければそもそも治療を受けることができないのです。
さらに全額助成ではありません。助成金額は初回だけが30万円で、2回目以降は15万円までとなっており、実際の治療費には全く足りておりません。
着床前診断を認めていない日本では不妊治療をしても流産してしまう割合も高いので、治療は何年にも及ぶ傾向があります。
しかし、助成を受けられる回数は39歳までの方は6回、40歳以上の方は3回までと限定されており、やはり実際の治療費には全く足りておりません。
もう1つ、横須賀市と中央労金が提携して融資を行なっている『横須賀市勤労者生活資金融資制度』という事業があります。
融資のメニューに新たに2017年4月から特定不妊治療・不育症治療費も加わりました。
本市の助成事業とあわせて使えるので、助成金で足りない部分はこの融資を頼ることになります。
しかし、2年半の融資実績はゼロです。
この理由も明らかです。
一見有利な借り入れに見えるのですが、利用条件を読むとがっかりさせられます。
金利は平成31年度は1.9%、融資上限額は500万円、返済期間は最大10年とありますが、実際には中央労働金庫所定の保証協会の保証を受けられる方に限定されています。さらに、金利も保証料として上乗せされ、実際の利率は2.6%から3.1%です。
さらに、安定継続した年収(前年税込み年収)が150万円以上あることを条件にしています。
つまり、年収150万円以下の方は門前払いしているのです。
結局どちらの制度もお金のない人は補助も受けられないし、借り入れも受けられません。
「お金が無い人は治療をするな」というとてもネガティブなメッセージを発しているのです。
そこで市長に伺います。
【質問5】
治療を希望する市民の方にあらかじめ指定医療機関のみで使えるバウチャーやクーポン券をお渡しすることで、事前に多額の現金を用意しなくとも受診できるように改善すべきではないでしょうか。
もともと治療のほとんどが保険適用外であるため、本市から医療機関への清算が迅速に実施されれば何の問題もないはずです。治療を希望する市民の方が多額の現金を工面しなくとも済む体制をつくることができないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【質問6】
助成額の低さや助成回数の制限は、治療を受けたくとも受けられない方々を生み出しています。ただでさえ社会の理解がない中で苦しんでおられる方々に対して、お金の心配だけはさせないでほしいのです。
本市にとって子どもがたくさん生まれることは数十万円の支出増加とは比べられない長期的なメリットを得ることになります。子どもを産みたい人が可能な限り治療を受けられるように、治療費は全額助成すべきではないでしょうか。
【質問7】
また、実績ゼロが続いている勤労者生活資金融資制度は、8月にようやく横須賀市ホームページに掲載されたものの、4月からスタートした『不妊・不育専門相談センター』のリーフレットにも掲載されていません。
リーフレットに印刷するのはもちろん、もっとこの情報を必要としている方々をターゲットとした情報発信方法に改善していただきたいのですが、いかがでしょうか。お答え下さい。
市長の答弁
【質問5への答弁】
次に、特定不妊・不育症助成制度へのバウチャーについてです。
議員御提案のバウチャーとは、市が助成する公費負担分を引きかえ券やクーポンとしてあらかじめお渡しし、病院の窓口で医療費を支払う際に、この引きかえ券などを提示することで公費負担分を差し引いた額のみを支払うことができ、治療を受ける方の負担を軽減するものと理解をしています。
議員の御提案は大変有効なものと思いますが、特定不妊治療費助成は国庫補助の対象になっており、要綱で治療終了後の申請となっているために、治療途中でバウチャーなどの利用は今のところ難しい状況なのではないかと考えます。
また、不育症への助成について医療機関に伺ったところ、自治体により制度が異なるため、事務が煩雑になっており、現段階ではバウチャーなどへの対応は難しいとの御意見をいただきました。
【質問6への答弁】
次に、治療費の全額補助についてです。
不妊症や不育症の治療は御夫婦の生活全てにおいて大きな負担がかかることは認識していますが、現段階で医療費の全額補助は困難ではないかと考えます。
議員がおっしゃるとおり、今や赤ちゃんの17人に1人は体外受精で誕生している時代ですから、この問題は我が国全体の少子化対策への取り組みの観点からも、ナショナルミニマムとして国が対応していくべきものではないかと考えます。
今後も国の動向を注視するとともに、市としては悩みを抱えている御夫婦に寄り添い、少しでもお力になれるように相談支援体制を強化してまいります。
【質問7への答弁】
次に、勤労者生活資金貸付制度の発信方法についてです。
現状においても御相談をいただいたときなどに制度の御案内を行っておりますが、議員御指摘のとおり、十分とは言えない状況です。
今後は、御提案のリーフレットへの掲載とあわせ、チラシを医療機関に配架していただくなど、必要な方に情報がしっかりと届くように周知してまいりたいと思います。
(ここから一問一答形式での再質問を掲載します)
フジノの再質問
市長、御答弁ありがとうございました。
再質問は順番を変えて、不妊症・不育症治療費助成について行いたいと思います。
あらかじめ多額の資金を用意しなくとも治療が受けられるようにしていただきたい。そうすることで、所得が厳しい方の状況、治療を受けられない状況を改善できる、そういう御提案をさせていただきました。
そこで、市長にはまずどれくらい我が国の国民の生活が厳しいかをぜひ知っていただきたいと思い、データを読み上げさせていただきます。
2人以上世帯の年代別の貯蓄額の中央値、平均値というのは高いお金をもらっている人が入ってしまうと一気に平均が上がってしまうので、人数が一番多い中央値を申し上げます。
世帯の年代別の貯蓄額の中央値と、貯蓄がない人の割合について申し上げます。
20代、貯蓄中央額111万円、貯蓄なし32.2%。
30代、貯蓄中央値382万円、貯蓄なし17.5%、
40代、貯蓄中央値550万円、貯蓄なし22.6%、
不妊症も不育症も年齢は関係ありませんから、20代でも40代でも起こります。
一方で、貯蓄なしの世帯が20代は32%、30代は18%、40代では23%にものぼります。
これは全国単位で見たデータですから、本市の市民の所得の厳しさを考えると、この割合はさらに高まると推測されます。
貯蓄ゼロの世帯では、例えば子どもができない不妊症、あるいは妊娠しても流産を繰り返してしまう不育症の治療を受ける、そもそもの現金が用意できないのです。
これに対してはどのように対応するべきだというふうに市長はお考えでしょうか、お聞かせ下さい。
上地市長の答弁
そうおっしゃられても、不妊症の方だけに今お金がないから何かをするということの意味は、おっしゃる意味は、気持ちはわかるのですが、とするならば、違うような状況に置かれている人たちに対して、今お金がないから何かしなければならない。
これは病気と同じだと思う。すごくお金がかかるという意味で。
そこに前もってお金を渡すということと多分それは同じことなのではないかというふうに思うのです。
ですから、おっしゃる意味がよくわかるのですが、そこまで踏み込むということが、果たして財政上の問題で私たちはいいのか。
これは恐らくナショナルミニマムではないかというふうに少なくとも私は感じています。
そこに踏み込むと、どこまで同じような状況の中で、あるいは不妊症ではない中で、どこまで踏み込んでいったらいいのかという問題に、大きくそういう問題を惹起していく可能性がある。
その意味で、現段階では、本市の財政から考えたら、そこに踏み込むべきではないというふうに、踏み込むべきではないというか、踏み込むことはできないというふうに考えています。
フジノの再質問
市長の御意見、共感するところもあります。
本来はナショナルミニマムとして国がまず取り組むべきこと、けれども、国が不妊症治療のほうは国庫補助が出ていますし、取り組みがあるのですけれども、市として独自にやってきた部分も多くある。
それから、さらに市が支出増になるのはなかなか難しい、ほかの病気との公平性を考えると難しいという御意見でした。
けれども、今、本市が人口の減少に悩み、そして人口の減少は避けられない中であっても、子どもを産みたい、そう思う方々がおられる。
そして、子どもを産んでいただくということは、大変本市にとってもありがたいことで、国全体にとってもありがたいことで、他の病気と比べることは一切できないのですけれども、ぜひこの点は本市、そして我が国全体にとってもプラスになる取り組みであるということから、ぜひ再検討していただきたいというふうに思っています。
特に、先ほど国の動向を見ていくという御発言があったのですけれども、動向を見るだけではなくて、『全額補助』についても『前払い方式』についても、中核市長会や市長会に対して積極的に物を申していっていただきたいというふうにも考えるのですが、市長はどのようにお考えか、お聞かせ下さい。
上地市長の答弁
そこはまた手法の問題なのだけれども、中核市長会とか全国市長会で言うべき問題ではないと私は思っています、個人的に。
少子化という問題、この間もちらっとお話をしたのですが、お金がない、今言ったように、所得が若い人で貧富の差がふえてきたというだけでは、何度も言うようにないと思っているのです。
以前も申したように、沖縄、あんなに貧しい地域でもどんどん子どもができている。
それは地域社会全体で、ごめんなさい、そういう方たちを見放すという意味ではないのです。
ただ、少子化対策が金銭的な合理性だけで果たして語るべきものなのかということに対して、大きな疑問を持っている私としては、この問題はナショナルミニマム、今みたいに、国が制度、そして地域の社会は地域で解決していく、今みたいな助け合いの社会だとか、地域のきずなをつくって子ども全体を育てるという役割分担のすみ分けが私はあると思っている。
そういうことをあるべきだということを中核市や国に対して申し上げることはできますが、制度として何かするということは、私は市長としてはなじまないというふうに感じています。
これは、それを検討しないという訳ではないのですが、これから先どのような時代になっていくかによって考え方は変化していくと思いますが、現状ではそういうふうに考えています。
フジノの再質問
この点については市長と意見が一致することができず、大変残念に感じます。
不育症の治療費助成事業のクーポン券の医療機関に問い合わせをしていただいた御答弁について、改めて伺います。
不育症の治療費助成事業については、不妊症の国が定めている要綱による取り組みと違って、本市の場合、指定医療機関というと新横浜に1カ所ある有名なドクターがおられるあの医療機関しか無い訳ですが、横須賀市がバウチャーやクーポン券を、つまり金券に当たるものをお渡しすることで、そして本市が使用後可能な限り早くその治療費を振り込む、あるいは支払うということであれば、事務的な負担増というのはそこまで考えられないというふうに思うのです。
この問題、かつて委員会でも取り上げさせていただき、改めて本会議で市長が交代したこともあり質問させていただいたのですが、ぜひ事務負担が具体的にどのようにふえるのか、もう少し詳しく聞いていただいて、そしてクーポンあるいはバウチャーが使えないのかというのをぜひ相談していただけないかと重ねてお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
上地市長の答弁
もう一度調査をしてみたいと思います。
大切なのは全体から見て公平であるのか、公正であるのかということが、一番私は大切だと思っていますので、その観点からもう一度検討してみたいというふうに思います。
フジノの再質問
ありがとうございます。ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
それから、この不育症治療費助成事業、不妊症治療費助成事業の対象の拡大についても強く要望したいというふうに思うのです。
現在の助成制度では、対象を戸籍上の御夫婦で、いずれかが横須賀市内に住所を有することと、法的な婚姻関係に限定しています。
けれども、本市は多様な家族のあり方を尊重する立場から4月1日から横須賀市パートナーシップ制度をスタートさせました。
いわゆる事実婚の状態にある方々も本市はパートナー関係であることを公的に認めています。
そこで、ぜひ本市の特定不妊治療費助成事業と不育症治療費助成事業の対象として、パートナーシップ宣誓証明書の交付を受けた方々も加えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
上地市長の答弁
それは私も全くそのとおりだと思っています。
あらゆる偏見、差別があってはならない。
パートナーシップ制度を市はとりましたので、ぜひおっしゃるとおり、検討していきたいというふうに思っています。
フジノの再質問
労金と横須賀市が行っている勤労者生活資金融資制度についてもお伺いしたいと思います。
先ほど申し上げたとおりに、年収が150万円以上なければならない。
そうなると、例えば障害年金で暮らしておられる方、生活保護世帯の方々、そもそも不妊症治療・不育症治療なんて絶対にアクセスできない訳です。
そうすると、排除が生まれるというふうに私は思っています。
かねてから市長は公平性というふうにおっしゃっておられます。
けれども、不妊症治療費助成事業、不育症治療費助成事業というものができた時点で、他の疾患とは一旦切り離されて特別扱いされているのはもう事実です。
その新しい制度をつくったときに、これ今お金が用意できないから、あるいは年収が無いからということで補助も助成も受けられない。融資も受けられないという、新たな排除が生まれてしまっている現状はおかしいと思うのです。
そこで、ぜひ労金とこの制度、融資制度そのものの改善についても検討していただけないかと思うのですが、いかがでしょうか。
上地市長の答弁
ぜひそれは検討して、発信が十分だとは思えなかったので、そもそも勤労者生活資金貸付制度とは、みんな勤労者なのにこの制度そのものがよくわからないのだけれども、我々だってみんな勤労者な訳だから、この制度そのものがどういうことでできたのかよくわからないけれども、多分そのことを皆さん御存じないと思うので、ぜひその意味では発信をしていきたいというふうに思っています。
フジノの再質問
ありがとうございます。
以上が本会議での質疑応答の引用でした。
つまり、記事には載せられなかった再質問では、こんなに新たな問題提起質疑を行なっていた訳です。
- そもそも『多額の現金』を用意できなければ高度生殖医療(不妊症・不育症の治療)を受けることができない現実が目の前にあることを政治が変えねばならない
この想いからフジノは今ある制度の問題点と改善方法を様々な観点から質問しました。
残念ながら国の動きと同じく上地市長はほぼゼロ回答でした。
現在、日本では不妊症治療も不育症治療も健康保険の対象外にしています。これがまずとてもおかしいです。
超少子社会を少しでも改善したければ、こどもを授かりたいと強く願う方々を丁寧に支えていくことが必要です。
それに対して、上地市長は「国が動くべき」という考え方です。フジノは「国が動かないなら市が動くべき」という考え方です。
260文字の記事には載せられなかった、こうした上地市長とフジノの信念のぶつかりあいもぜひ知って下さいね。