(今日のブログ記事は横須賀市の公式見解でもうわまち病院の公式見解でもありません。藤野英明個人の責任で記しています)
5月22日にうわまち病院勤務の看護師が「抗原検査」で「陽性」と診断・発表されました
5月22日付けで、横須賀市立うわまち病院に勤務する看護師が『抗原検査』の結果、『陽性』と診断されました。
うわまち病院は公式サイトで発表しました。
発生届を受けた横須賀市も『陽性』と発表しました。
繰り返しになりますが、この方は微熱があったことを受けて『抗原検査』を受けて『陽性』と診断されました。
しかし翌23日うわまち病院から「PCR検査」の結果「陰性」だったと発表されました
しかし事態は急転します。
翌23日、うわまち病院から公式に以下の発表がなされました。
『PCR検査』を行なった結果、当該看護師の方をはじめ、濃厚接触者として検査を受けた17名全員が『陰性』と診断されたのです。
昨日と全く逆の結果が出てしまいました。
これを受けて、多くの市民の方(特にうわまち病院に通院・入院している方とそのご家族)からたくさんのお叱りを頂きました。
みなさま、院内感染のリスクを恐れたのです。
通院しておられる方も入院しておられる方もみなさまとても不安だったと思います。
また、いったん『陽性』と診断されて公表までされた看護師の方のお気持ちを想って「横須賀市は謝罪して名誉回復をせよ」という厳しいお言葉もフジノは頂きました。
そこで、何故このような事態が起こったのかをフジノなりにご説明したいと思います。
簡単でスピーディーに結果が出る「抗原検査」ですがデメリットもあります
市民のみなさまは『PCR検査』の結果が出るまでに数時間かかることをご存知だと思います。
他のまちで検査件数が増えない理由に高度なPCR検査に充てられる人材が足りないということが挙げられます。
その一方で、『抗原検査』には特別な検査機器が必要ありません。
さらに約30分と短時間で結果が出ることから「早く利用を認めてほしい」という声が出ていました。
そこでアメリカでは5月10日から新型コロナウイルス感染症に対して『抗原検査』を導入しました。
日本も、厚生労働省が5月13日に『ガイドライン』を公表し、同日から『抗原検査』を導入しました。
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ところで、市民のみなさまの多くが『抗原検査』を受けたことがあるはずなのです。
実は、インフルエンザの陽性・陰性を検査するのに使われているのが『抗原検査』なのです。
ただ、インフルエンザウイルスの検査はかなりの確率で『偽陰性』や『偽陽性』が出てしまいます。
つまり、感染していないのに『陽性』と結果が出たり、感染しているのに『陰性』と結果が出てしまうのです。
その為、導入前から「新型コロナウイルス感染症でも『抗原検査』は『PCR検査』と比べて正確性はかなり劣るはずだ」との指摘がありました。
そもそも検査の種類ごとにそれぞれにメリットとデメリットがあるのです。
『PCR検査』が優れていて『抗原検査』が劣っている、ということではそもそもありません。
厚生労働省「ガイドライン」に基づき、発生届の受理と発表がなされました
5月13日付けで厚生労働省が正式発表した『SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン』です。
実物を画像で貼り付けます。
フジノが黄色の蛍光ペンを引いた通りで、厚生労働省は
「新型コロナウイルス感染症は、感染症法において『指定感染症』として定められており、本キットにより新型コロナウイルス感染症患者と診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届ける必要がある」
と明記しています。
うわまち病院では患者さんの対応にあたっている看護師の方が微熱などの症状を示していたことから『抗原検査』を行ないました。
『抗原検査』が『陽性』と結果を示した為、厚生労働省『ガイドライン』に従って『確定診断』と判断し、感染症法に基づいて保健所に届出をしました。
法定の手続きに基づいて保健所は届出を受理しました。
そして、公表するに至ったという訳です。
これが5月22日までの経緯です。
「ガイドライン」でも「抗原検査」と「PCR検査」の併用を強調しています
厚生労働省の『ガイドライン』においても『抗原検査』の限界を指摘しています。
上に記した通り、『PCR検査』よりも正確性は劣る為、『PCR検査』を補う検査という位置付けになります。
その為、「当面は、『PCR検査』と『抗原検査』を併用して使用」と明記しています。
うわまち病院もこの『ガイドライン』に沿って『PCR検査』を同時に実施したと思われます。
ただ、『PCR検査』の結果が出るには数時間を要します(検査した時間帯によっては結果は翌日になります)。
そして5月23日、『PCR検査』の結果が判明した為に『陰性』と発表した、というのが経緯となります。
これが全ての経緯になります。
この問題を今後起こさない為にはどうすべきなのか
現在、うわまち病院と横須賀市保健所の間で協議が行なわれており、明日5月25日には対応が決まり発表されることになると思います。
改めて、国の『ガイドライン』に対してもとても重大な問題提起がなされたと受け止めています。
『抗原検査』が『PCR検査』の補助的な位置づけならば、『抗原検査』の結果だけで『確定診断』とせよ、という『ガイドライン』には矛盾があります。
市民の方からご指摘いただいたように、陽性だと言われて公表までされた看護師の方の心身のダメージは計り知れないものがあると思います。
今後ご本人に寄り添ってそのダメージの回復の為に横須賀市もうわまち病院も心を砕かねばならないと思います。
また、院内感染のご不安を抱かれた、うわまち病院に通院・入院しておられるご本人・ご家族に丁寧にご説明していく必要があります。
とはいうものの、法的には横須賀市保健所にもうわまち病院にも対応の間違いは何もありません。
フジノとしては、改めて『ガイドライン』の記述(確定診断とする)を変更すべきではないかと思います。
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市民のみなさまにおかれましては、何故、診断が昨日と今日で変わったのかについての背景をぜひ知っていただきたいと願っております。
後日追記:5月25日に横須賀市が以下の発表を行ないました
翌25日に、横須賀市HPにて公式に以下の発表が行なわれました。
正式に『陰性』がアナウンスされました。
そっけない文章に「あんまりじゃないか」とお感じになれる方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、法的には横須賀市保健所にもうわまち病院にも問題はありませんので、現時点では事実をご報告するのみにとどまりました。
これからどのような対応を取っていくべきかについては、保健所内でも議論が続けられています。