若年性認知症サポーターの廃止をつげる突然の手紙
今日、横須賀市からこんな手紙が届きました。*市議としてのフジノ宛ではなくて、個人の藤野英明宛です。
若年性認知症支援者各位
横須賀市福祉部健康長寿課長
若年性認知症支援者の名称変更と説明会のご案内
残暑の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。
日頃から、本市の高齢者福祉業務にご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
本市では、令和元年より認知症の人と家族を見守り、支援する認知症オレンジパートナーの養成を行っております。
認知症オレンジパートナーは若年性認知症支援者と研修内容や活動内容が重複している部分があるため、 『若年性認知症支援者』の名称は廃止し、『認知症オレンジパートナー』に統合します。
本来、認知症オレンジパートナーとなるには別途研修を受講して頂く必要がありますが、若年性認知症支援者講座を受講された方は、認知症オレンジパートナーに移行させて頂きます。
(以下、略)
要するに、
- 若年性認知症サポーター(若年性認知症支援者)を実質的に廃止する
- 今後は認知症オレンジサポーターに一本化する
という突然の通知でした。
市議としてフジノは事前の説明を何も受けておらず、本当に驚きました。
確かに、高齢者の認知症を支援する認知症オレンジパートナーの養成をスタートし、年々順調に数が増えていっています。
けれども横須賀市が送ってきた手紙に記されていた
「認知症オレンジパートナーは若年性認知症支援者(若年性認知症サポーター)と研修内容や活動内容が重複している部分がある」
ことは、若年性認知症サポーターを廃止する理由にはなりません。
そもそも若年性認知症サポーターの養成が事業化されたこれまでの経緯をフジノはじかに知っています。
そのフジノからすると、全く説明になっていません。
横須賀市議会会議録検索システムに「若年性認知症」という単語を入れて検索すると、横須賀市議会で最初に若年性認知症について取り上げたのはフジノです。
誰よりも早くから若年性認知症について取り上げてきたフジノは、今回の廃止に納得ができません。
そこで今日のブログでこれまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
高齢での認知症とは異なるニーズがあり独自の支援が必要な若年性認知症
そもそも若年性認知症とは何でしょうか?
フジノの過去のブログ記事や下のサイトに詳しくまとめられています。
簡略化して説明すると・・・
高齢になってから発症する認知症と症状そのものはほぼ同様ですが、特に65才未満で発症した場合に『若年性認知症』と呼んでいます。
それには理由があります。
働き盛りの20〜30代で発症すると、生活は一変します。
家族の経済的な中心として働いてきた40〜50代が発症した場合には家族全体の生活も激変します。こどもが成人していない場合も多く、認知症を発症した親のことを理解できずに苦しむこともあります。
認知症そのものの困難に加えて、家族全体が危機に陥ることもあります。
このように、高齢で発症する認知症とは異なるニーズがある一方で、若くても認知症になることが社会的にあまり知られていません。
つまり、
「若年性認知症は独自のニーズがあり高齢の認知症とは異なる独自の取り組みが必要だ」
とフジノは訴えてきました。
国や県よりも早く、若年性認知症への独自の支援に取り組んできた横須賀市
横須賀では、このような現実に対して早くから家族の方々が声をあげてきてくれました!
家族会による講演会が複数回にわたって開催されてきました。
こうした当事者の声に動かされた横須賀市は、初期には側面からの支援を行なってきました。家族会の講演会活動などをサポートしてきたのです。
そして、2013年度には初めて若年性認知症への取り組みが予算化されました。
一方、フジノは若年性認知症に特化したサポーター(若年性認知症サポーター)を養成する必要性を訴えてきました。
そして、2012年予算議会で初めて前向きな答弁がなされました。
翌2013年度から『若年性認知症サポーター養成講座』がスタートしたのです。
さらに、若年性認知症サポーター(若年性認知症支援者)の『支援者連絡会』『意見交換会』も設置されました。
まだまだ国や県の取り組みがほとんど無かった頃です。
当時(2013年)の出来事で今でもフジノがよく憶えているのは、神奈川県のある審議会で
「いち市町村にできることは限られている」
と専門家が発言したことでした。
審議会の傍聴席でフジノは「横須賀市は違う!」と心の中で強く反論したのでした。
このように、思い入れの深いテーマです。
フジノ自身も2013年に若年性認知症サポーター養成研修を受講して支援者登録をしていました。
その為、今回の支援者宛の手紙が届いたのです。
市議会議員としてはこの件について正式な報告は受けていません。何故、議会に報告も無いままに廃止したのか、理解できません。
議会質疑への答弁でも行政側は必要性を答弁してきました
2013年度の初予算化以来、歴代の福祉部は若年性認知症への支援の必要性を強く唱えてきました。
フジノは横須賀市のこの姿勢をとても頼もしく感じてきました。
例えば、2016年9月29日の教育福祉常任委員会では高橋英昭議員と福祉部の質疑ではこのようなやりとりがありました。
Q.高橋英昭委員の質問
若年性認知症連絡会及び支援者講座の開催ということで、認知症の中でも若年性というところを分けて開催しています。
具体的な若年性認知症の方に関する支援というのは、前段のページの認知症の地域支援のところ、そこで一括して行われているというような解釈でよろしいでしょうか。
A.高齢福祉課長の答弁
若年性の認知症の方につきましては、御高齢者の認知症と違う様々な課題がございます。
その為に、あえて若年性の認知症の方だけにお集まりいただく連絡会、支援者の講座ということで、若年性の認知症固有の問題を検討するということで、他の一般の高齢者の認知症とは違う扱いも必要だということで、あえて若年性認知症の方を対象にした事業を実施しているところでございます。
Q.高橋英昭委員の質問
それはまさにそうだと思います。
実際の支援の中身というのも、前段のページの地域支援の中に総括して入っているのでしょうけれども、かなり通常の認知症とは違ったパターンの支援をやられているということで、理解してよろしいでしょうか。
A.高齢福祉課長の答弁
一般の方とは違う、例えば催し等、家族との交流、例えば一緒に食事、カレーライスをつくるとか、若い家族の悩みを聞くとか、高齢者にはないような特有の悩みもございます。
あとは、家庭の収入の問題等、様々な課題に個別に相談に乗りまして、そういう特有の問題の解決に力をかさせていただければというふうに考えております。
Q.高橋英昭委員の質問
高齢者の方の認知症も世話をする家族の方は非常に大変だと思うのですけども、若年性の認知症、私も知っている方はいるのですけれども、家族の方に聞くと、身体は非常にまだ活発に動くときに認知症になると、家庭内でそれこそ非常に面倒を見ていても、悲惨なことといいますか、自分でも認知症だとなかなか理解できない方などもいて、非常に家庭内の暴力につながったりですとか、かなり深刻な状況に発展しているようなパターンが多分多いと思うのですね。
そういった家族の支援、心のケアも含めて、やっているというような今状況なのでしょうか。
A.高齢福祉課長の答弁
御本人様のそういう抱えている問題ももちろん、御家族様の抱えている問題を一緒に、市のほうで共通に相談に乗って、対策を考えるということがこちらの事業の主な重要な目的であると考えております。
Q.高橋英昭委員の質問
わかりました。
継続して、ぜひ御家族の方に支援いただきたいと思います。
高齢福祉課長(現在の健康長寿課長)ご自身が、
- 若年性認知症には、高齢の方の認知症とは異なるニーズがある
- その為に若年性認知症に特化した支援策も必要だ
と答弁しておられます。全く同感です。
2020年度までの取り組みを定めた「高齢者保健福祉計画」にも明記されているのに
さらに『横須賀高齢者保健福祉計画(第7期介護保険事業計画を含む)』にも取り組みが明記されています。
このような行政計画に明記された取り組みは、計画期間はよほどの事態の変化が無い限り、事業を継続することになっています(計画行政と呼びます)。
現在の計画期間は『平成30年度(2018年度)から令和2年度(2020年度)』までです。2021年3月末まで続く計画です。
つまり、来年3月末までは『若年性認知症支援者(若年性認知症サポーター養成)講座の開催』は続けねばならないのです。
計画期間中に、計画に明記した取り組みを、あえて廃止するような事態の変化があったならば、しっかりと行政は説明しなければなりません。
廃止理由の説明が今までの説明と矛盾しており全く受け入れられません
けれども送られてきた手紙の文章では、オレンジパートナーと重なる内容だから、というこれまで行政側が行なってきた説明とは全く異なることが記されていました。説明になっていません。
若年性認知症の独自のニーズがあるからこそ、横須賀市は国よりも県よりも先んじて若年性認知症サポーターの養成をスタートしたはずです。
どうして廃止しなければならないのか、もっときちんとした説明が必要です。
特に、若年性認知症の当事者・家族への支援が後退するようなことは絶対にあってはなりません。
今回のいきなりの廃止の連絡は、フジノには全く受け入れることができません。