(前の記事から続いています)
新型コロナウイルス感染症の感染者情報の自治体による公表がアウティングになっている
市長へ行なう一般質問の3問目は、感染症パンデミック下においても『人権』が軽んじられてはならないというテーマを取り上げます。
感染症法では、感染予防に役立つ個人情報は積極的に公開しなければならないと義務付けています。
一方で、個人情報の保護に留意しなければならないとも明記しています。
つまり、行き過ぎた個人情報の公開によって人権侵害が起こることを想定して、感染症法は条文が作られているのです。
しかし現在のコロナ禍では、厚生労働省が示した公表基準(2019年に作成した基準を参考にするよう自治体に通知しています)はあくまでも目安に過ぎません。
その為、現状では自治体ごとにバラバラな項目が公表されています。
ちなみに横須賀市では10項目が公表されています。
そんな状況の中で、いわゆる性的マイノリティとされる当事者の方々は、自治体によってアウティングされる危機に追い込まれています。
例えば、戸籍を変更しないで生活しているトランスジェンダーの方はたくさん居られます。
学校や職場では、女性として生きているトランスジェンダーの女性が新型コロナウイルス感染症に感染してしまった場合、自治体の感染者情報では男性と公表されてしまいます。
カミングアウトできず(せず)に暮らしてきた方々はコロナのダメージだけでなく、性自認をアウティングされてしまい、元の生活に戻ることはとても難しくなってしまいます。
こうした現実を受けて、5月の段階で『LGBT法連合会』が個人情報の公表については極めて慎重であるようにと全国の自治体に要請しました。
けれども、多くの自治体が性別を公表しています。
横須賀市でも性別を公表しています。
そもそも性別を公表することで、感染予防に効果はありますか?本当に必要な情報ですか?
フジノは違うと考えています。
(実際、静岡県は本人同意が無い限り、性別は非公表としています)
そこで以下の質問を行なうことにしました。
(1)本市はこれまで感染者情報として性別の公表を続けてきたが、性別の公表がアウティングにつながることをきちんと議論した上で、公表を続けてきたのか。もしそうならば、性別を公表することと決めた理由は何か。
(2)個人情報の保護に留意することを定めた感染症法からも、アウティングを禁止した横須賀市男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例からも、今後の感染者情報における性別の公表はあくまでも本人同意に基づくものとすべきではないか。また、やむを得ず公表する場合でも、市ホームページやSNS、報道発表においては、あくまでも本人の思いに添った内容で公表すべきではないか。
新型コロナウイルス感染症の診断をしたドクターは、都道府県知事・保健所設置市の市長らに発生届を提出しなければなりません。
この発生届をもとに、どの項目を公表するかという基準を改めて作り直す為に政府は9月1日に新たなワーキングチームを設置しました。
11月をめどに中間とりまとめを公表する予定です。
けれども11月を待たずに、横須賀市としてすぐ取り組むべきです。
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本来であれば、性的マイノリティ当事者の方々についてだけでなく、個人情報の公表のあり方については広く取り上げるべきテーマです。
ただ、一般質問がわずか20分間という制限があり、今回はやむなく性的マイノリティ当事者の方々について取り上げました。
コロナ禍での感染者・家族・医療従事者への差別・偏見・誹謗中傷はひどいものがあります。
この状況は人々の不安感の高まりから起こっている可能性が高く、政治はもっとしっかりとリスクコミュニケーションを行なうべきだとフジノは考えています。