国勢調査で同性パートナーは総務省によって存在しないものに修正されている現実
5年に1度行なわれる国勢調査。
横須賀市でも9月14日から調査員が全ての世帯を訪問して調査票の配布をスタートしました。
実はこの国勢調査、自分の意思で選んだ選択肢を本人の同意もなく国が勝手に修正している事実が2010年の国会審議で明らかになっています。
同性パートナーのおふたりが『世帯主』『配偶者』と選んだ場合、『配偶者』という選択肢を『誤記』と判断して、勝手に『他の親族』(いとこやおじやおばを意味する選択肢)に修正してしまっているのです。
10年前にも5年前にもフジノは取り上げましたが、国の最重要統計と位置づけられており正確さが何よりも求められているにもかかわらず、この総務省統計局による改ざんは深刻な問題です。
長年にわたって様々な団体や学識経験者が改善を求めて活動を続けてきてくれました。
今回も『レインボー国勢調査プロジェクト』として9つの団体が声をあげてくれています。
- 特定非営利活動法人 EMA日本
- 自治体にパートナーシップ制度を求める会
- NPO法人 東京レインボープライド
- 同性パートナーシップ・ネット
- 認定NPO法人 虹色ダイバーシティ
- 一般社団法人 fair
- 認定NPO法人 ぷれいす東京
- セクシュアルマイノリティのためのコミュニティスペース LOUD(ラウド)
- 一般社団法人 Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に
決して諦めずにありのままに書いて提出してほしいのです
8月25日には稲田朋美総務大臣が今回の国勢調査でも修正を続けることを明言しました。
しかし、当事者のみなさまには諦めないでほしいのです。
実は、超党派の国会議員で設立されている『LGBT議員連盟』の総会が9月8日に開かれたのですが、新たな動きがありました。
国勢調査の集計結果には反映されないことは変わらないとしても、同性パートナーが配偶者と選んだ数は追うことができると初めて総務省統計局の担当者によって示唆されたのです。
フジノの知人友人の多くがこうした情報を知らないまま、
「どうせ提出しても勝手に修正されてしまうのでは回答しても意味が無い」
「そもそも提出しない」
とおっしゃる方が大半です。
そこで、本会議の場で改めて横須賀市の基本姿勢を上地市長から明言していただきました。
10月に実施される国勢調査において本市は決して調査票を修正することはありえないこと、同性パートナーの方々にありのままに回答してほしいことを市長が明言する必要性について
今年は5年に1度の国勢調査の年ですが、その目的は日本に住む全ての人と世帯に関する正確な情報を収集して、今後の政策立案につなげることです。
しかし、国の最も重要な統計調査と位置づけられて正確な情報が求められているのに、総務省統計局は同性パートナーの方々の関係性を勝手に修正している問題が2010年の国会質疑で明らかになりました。
調査票には、世帯全員の氏名と性別、世帯主との続き柄、例えば『世帯主または代表者』『世帯主の配偶者』『子』などを選んで記入します。
同性パートナーの方々は、おひとりが『世帯主』を選んで、もう一方の方が『配偶者』と記入することになります。
それを総務省は本人の承諾もなく『誤記』(あやまり)として扱い、『配偶者』を選んだものを『他の親族』へと変更しているのです。
『他の親族』とはおじやおばやいとこを指す続き柄ですから、修正によって事実を反映しない誤った統計となります。
続き柄を勝手に修正してきた理由を総務省は、我が国では同性婚が認められていないからだと述べています。
しかし、異性同士であれば事実婚であっても、1920年から『配偶者』として集計し公表してきました。
調査票の『配偶者の有無』の欄には
「(婚姻の)届け出の有無に関係なく記入して下さい」
と記されており、異性パートナーは事実婚の場合でも法律婚と同じ扱いをされています。
婚姻届を出していない・法律上の結婚ではないという点で同性パートナーと同じであり、総務省の説明は矛盾しています。
長年、当事者団体や有識者は是正を求める活動を続けてきましたが、8月末に総務大臣が今回の調査でも方針は変えないと明言しました。
6月末現在で本市を含む51自治体がパートナーシップ制度を導入し、利用したカップルが1052組にものぼる中で、当事者を国勢調査の上で見えない存在にするのは調査の目的にも反しています。
統計法では回答義務を定めていますが、正確に回答しても国が結果を捻じ曲げてしまうことから全国の当事者の方々はそもそも調査には回答しない、と述べています。
ところで、調査の実務を担当するのは市町村なので、改めて本市の担当課と意見交換をして確認をしたことがあります。
市職員と募集で選ばれた市民の方が研修を受けた後に調査員となります。
本市ではその研修の際に、全ての市民の方々に「ありのままに書いて下さい」とお願いするよう研修しているとのことです。
つまり、同性パートナーのみなさんに対しても「ご本人たちの認識のまま記入して下さい」とお願いするよう研修をしているとのことです。
また、調査員や本市がご本人の許可なく勝手に続き柄を修正することは法令上もありえないこと、この件についてはコールセンターに問い合わせが来ることが予想されるがその際にも「ありのままで書いてほしい」とお答えする旨の見解を頂きました。
国のかたくなな姿勢ばかりがメディアで報じられてしまうので、残念ながら本市の調査への基本的な姿勢は当事者のみなさまには全く知られていません。
すでに本市の国勢調査の取り組みはスタートしています。
9月20日まで調査員が各世帯を訪問して調査票を配布します。
回答期間は10月7日までと調査票への回答が目の前に迫っている今、ぜひ上地市長に同性パートナーのみなさまに向けて改めて本市の基本姿勢をお伝えしていただきたいのです。
【質問1】
国とは異なり、本市では同性パートナーの方々が「世帯主」「配偶者」と記入した場合に市の担当課も調査員も「配偶者」を「他の親族」に修正することは決してありえない、と明言していただけないでしょうか。
【質問2】
そして同性パートナーの方々に対して、本市の国勢調査の調査票にはご本人の認識のままにぜひ回答していただきたい、と明言していただけないでしょうか。
上地市長の答弁
国勢調査の同性パートナーの取り扱いについて併せてお答えをいたします。
まず、提出いただいた調査票の記載内容について、市と担当課・調査員が修正することは、全くありません。
また、お話しのように、お伝えしなければならないということの意味で、記入にあたっては世帯のままの状況を認識のまま回答してください、ということをお伝えしたいと思います。
フジノの再質問
本市の基本姿勢、上地市長、強く明らかにしていただきました。
これはもともと同性パートナーの方に限らず、全ての方にありのままに書いてほしいというのが本市の基本姿勢である、と。
国がどうあろうと、本市はそう望んでいるということをぜひ広く市民のみなさまに知っていただきたいと思います。
これは追加の情報なんですが、1つ注目すべき動きがありました。
これは同性パートナーのみなさんにぜひ知っていただきたいということです。
9月8日に超党派の国会議員からなる『LGBT議員連盟』が総会を開きました。
そこでこの問題について議連のメンバーと総務省統計局の担当者との意見交換が行なわれました。
その際、担当者が新たな発言をされました。
元データをそのまま集計して発表することは、大臣の発表の通り、ありません。
ただ、配偶者と同性パートナーが選択した記入状況については検討の余地がある、とお答えになりました。
つまり、事務処理上、同性パートナーで配偶者と記入した人がどれくらい居るかという状況を追うことが、史上初めて示唆された訳です。
このような動きもあることから、当事者のみなさまには、決して諦めずに調査票をありのままに書いていただきたい。
特に本市は上地市長が、明言していただいている。
絶対にありのままに書いていただきたいし、絶対に本市は改ざんをしない。
そして、新たな動きもあることから、あるいは将来、過去の調査票をもとに集計し直される可能性もあるから、ぜひ出していただきたい、と。
改めて市長、「ぜひ出していただきたい」と皆さんに訴えていただけないでしょうか。
上地市長の答弁
ぜひありのままに書いていただきたい。修正することは、ありません。
アナーキーでニヒリストの私が言うんですから、間違いなく全てをありのままに書いていただければ、というふうに思います。
上地市長が明言したとおりで、横須賀市は研修においても「ありのままにご回答ください」と調査員がお伝えするようにしています。
また、そもそも法令上も横須賀市の担当課も調査員も現場レベルで修正するようなことはありえません。
このことをどうか知っていていただきたいのです。
横須賀市は、パートナーシップ宣誓証明書制度をもつ自治体として、様々な家族の形が当たり前だと考えています。
そして様々な家族の形が当たり前の現在であるにもかかわらず、総務省による現在の集計・結果の発表のあり方は時代遅れで実態を正確に反映したものとなっていません。
けれども、長年の当事者・団体・有識者の方々の活動によって、集計方法が改善される可能性が必ずあります。
だから、どうか今諦めずに「自らの信じるままに回答し提出してほしい」とフジノは願っています。
必ずこの現実は変わっていきます。
ぜひ回答をして、ぜひ提出をなさって下さいm(_ _)m
(一般質問の全文はこちらから)