「性暴力被害の実態」を高橋恭子教授(性暴力対応ネットワークStaRTかながわ事務局長、県立保健福祉大学社会福祉学科長)にお話しいただきました/犯罪被害者等基本条例検討協議会

犯罪被害者等基本条例づくりがハードスケジュールで続いています

『犯罪被害者等基本条例』を作る為に、かつてないほどハードなスケジュールで検討協議会を進めています。

犯罪被害に遭った当事者の方々の生の声を徹底してお聴きすべく『外部委員』としてお招きしてお話を伺う、というプロセスを重ねてきました。

現在も外部委員へのヒアリングを行ないながら、同時進行で条例案を1条ずつ検討しています。

犯罪被害者等基本条例検討協議会に出席する藤野英明
犯罪被害者等基本条例検討協議会に出席するフジノ

本日の検討協議会は、高橋恭子教授を外部委員としてお招きしました。

性暴力被害の支援者であり研究者でもある高橋恭子教授をお招きしました

今回の条例では、特に性暴力の被害(法的な犯罪か否かを問わない)に遭った方々の支援に力を入れたいという強い想いがあります。

世間のみなさまからは、高橋恭子先生といえば、まず『神奈川県立保健福祉大学の社会福祉学科の学科長』として知られていると思います。

けれどもフジノたちは、性暴力の被害者支援に取り組んでおられる支援者として高橋先生をぜひお招きしたいと願っていました。

高橋先生は性暴力対応ネットワーク『StaRTかながわ』の事務局長でもいらっしゃいます。

StaRTかながわ-スタートかながわ-
スタートかながわトップ StaRTかながわ(スタートかながわ)は性暴力被害者の支援活動をしている人たちの交流および連携促進の場です。

『StaRTかながわ』のStaRTは『Stand up against Rape Together』の頭文字だそうです。

StaRTかながわの主な活動
  1. 県内の性暴力の被害者支援に関わる活動をしている人たちの交流および連携の促進
  2. 被害者の視点を中心にした、性暴力対応ワンストップ・センター設立を含む、地域を基盤とした包括的な性暴力の被害者支援体制のあり方の提言
  3. アドボケイト・医療従事者・その他の支援者・関係者の養成及び研修
  4. 性暴力被害に関する研究調査活動
  5. 性暴力被害に関する情報発信

2014年に横須賀市内で性暴力についてのシンポジウムが開催されたのですが、その時にも『StaRTかながわ』は横須賀市とともに後援団体として力を貸して下さいました。

『みんなで考えよう「性暴力」のこと』おしらせチラシより
『みんなで考えよう「性暴力」のこと』おしらせチラシより

(※さらに、高橋先生にはフジノの進める『性的な多様性の尊重』の政策にもお力を貸していただいてきました。男女二元論だった『男女共同参画条例』を『男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例』に全面改正する時に、男女共同参画審議会の委員としてご尽力いただいたおひとりなのです。フジノはお世話になりっぱなしです・・・)。

性暴力の「誤った神話」を否定して「実際の姿」について語っていただきました

性暴力にはいくつもの『誤った神話』があります。

その内容をここにフジノが書くことで、誤った神話がまた刷り込まれてしまう可能性があるので、書きません。

性暴力被害とは
性暴力被害とは

被害を受けるのは女性だけではありません。

2017年の刑法改正によって、ようやく『強制性交等罪』(旧・強姦罪)の被害者に男性も加わりました。

それまでは『強制わいせつ罪』にしか問うことができなかったのです。

この刑法改正は現実に合った形に一歩近づいた訳ですが、まだまだ不十分な為にさらなる改正が必要です。

男性の被害については2018年から統計データにも正式に計上されるようになりました。

被害は全ての年齢層で起こります。

また、乳幼児から被害は起こっており、どの年齢層においても被害が起こっています。

性暴力の被害は全ての年齢層で起こっています
性暴力の被害は全ての年齢層で起こっています

幼い頃に被害に遭った人は、まず他人に話すことができません。

そもそも何が起こっているのか分からない幼い頃に、加害者(実父や養父などをはじめとする身近な人物)に言いくるめられてしまい「話すことで家庭が壊れてしまうのではないか」「自分が責められるのではないか」という不安に追い込まれます。

やがて思春期になって、自分の身に起こっている行為が性暴力被害だということを明確に認識すると、心身の不調が起こります。誰にも話せず、家が安全な場所でない為に保健室登校や家出をする、早く死んでしまいたいと考えるようになる人もいます。

また、自分を守る為に『解離』という症状を起こす人がたくさんいます。日常生活への影響は計り知れません。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する方もとても多いです。

アメリカの調査では、自然災害に遭った人の約3%がPTSDを発症します。戦争などの戦闘を経験した人の50%弱がPTSDを発症します。レイプをされた人の約60%がPTSDを発症します。

つまり戦争に行くよりも大きな心身のダメージを受けるのがレイプなのです。

こうしたデータを挙げていけばきりがありません(こちらのNHKのサイトもわかりやすく説明がなされています)。

だから、被害を届け出ない人が約8割もいます。

「届けるという気持ちにさえなれなかった」という表現がより正確なのかもしれません。

警察が公的に認知した犯罪の件数を大きく上回る性暴力被害が起こっています。

例えば、法務省が行なっている『犯罪被害実態(暗数)調査』があります。これは全国の16才以上の方にアンケート調査等を行なって実態を把握しようという試みです。

性暴力の被害にあっても届け出ない人が約8割もいます
性暴力の被害にあっても届け出ない人が約8割もいます

性暴力の被害にあったのに自らの受けた傷を「それほど重大ではない」と思い込むことで、自分自身を納得させようとする心理が働いてしまうのです。実際には受けた心身のダメージはとても大きいにもかかわらず・・・。

その大きな理由は、加害者が「身近な人間」であるからです。

内閣府「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象とした支援状況調査」報告書・2020年3月
内閣府「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象とした支援状況調査」報告書・2020年3月

職場の上司や同僚や部下、学校の教師やクラスメートや部活の先輩後輩、親や義理の親、きょうだいなどが、加害者である為に被害を訴えれば居場所を失なってしまう、という心理が働きます。

会社・学校・家に居づらくなってしまう。

だから、被害を訴えることはなく「それほど大したことではない」と自分に思い込ませるのです。

性暴力被害を絶対に許してはならないと感じるデータはその他にも数倍にのぼる自殺率・自殺未遂率などいくらでもあります。

高橋先生にはそうした実態について、検討協議会のメンバーにお話していただきました。

フジノ自身は10代の頃から性暴力の被害に遭った方から相談を受けてきたこともあって、これまでずっと被害者支援に取り組むセンターや団体とのつながりを持ってきました。

長年ずっとフジノが「犯罪被害に遭った方々を支援する条例を作りたい」と願ってきた理由の大きな要素でもあります。

2019年の選挙でもずっと訴えてきました。

こうした性暴力被害の実態を知れば、政治家ならば(いや政治家でなくとも)必ず現実を変えたいと願うはずです。

高橋先生のおかげで他の議員のみなさまにも知ってもらえたことは本当に良かったです。

性暴力被害に遭った方々の支援に必要なこと
性暴力被害に遭った方々の支援に必要なこと

高橋恭子先生、本日は本当にありがとうございました。必ず条例に活かしていきます。

センシティブな内容と匿名性が求められる為にブログで報告できませんでした

これまで検討協議会ではたくさんの被害当事者の方々を外部委員としてお招きしてきました。

とてもセンシティブな内容であること、また匿名性が求められることから、これまでブログでは外部委員の方々のお話を報告することができませんでした。申し訳ございません。

今日は公人に準ずる方のお話ということもあり、ブログで少しご紹介することができました。

魂をこめた条例を必ず作りあげます

これからも急ピッチで条例の文案を詰めていくことになります。

条例の文章そのものはそっけない文章にならざるを得ないのですが、被害に遭った方々の声をしっかり受け止めた上で文案を競技しています。

絶対に意味のある条例にしたい。

そう願いながら毎回会議に臨んでいます。

本来ならば犯罪が無くなることが理想ですが、今目の前で起こっている犯罪の被害から当事者の方の苦しみを少しだけでも減らせるように全力を尽くしたいです。

性暴力被害とは

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