入園希望者の減少を理由にすでに地元地域に大楠幼稚園の廃止を提案
今日開かれた教育委員会定例会では、教育委員会による大楠幼稚園の廃止に向けた動きが報告されました。
これまでも横須賀市教育委員会は、市立幼稚園2園の廃止を進めてきました。
その結果、今年2022年3月31日をもって市立諏訪幼稚園が廃止されました。
唯一残された公立幼稚園である市立大楠幼稚園は、横須賀市と地元地域との協定書の存在が2016年に明らかになり、廃止時期は未定とするとの方針転換がなされました。
しかし本日、2年続けて定員の半数を下回り、今年度は入園児童数が一桁となったことを理由に、地元地域に対して具体的な廃止時期の提案や説明会を行なうなどすでに大楠幼稚園の廃止に向けて動き出していることが報告されました。
フジノには突然の報告で、驚きました。
市議会に対しては、2018年2月26日の本会議での教育長答弁(「大楠幼稚園については、西地区の幼児教育・保育の状況を考慮した上で、今後廃園時期を決めてまいります」」以来、公の場での説明は1度もありませんでしたから。
配布された資料の内容をそのまま転載します。
◎大楠幼稚園について
1.経緯
平成28年5月の教育委員会定例会において、市立幼稚園の閉園時期については、市立幼稚園を取り巻く状況に応じて別途定めることとしていました。
市立諏訪幼稚園は、中央こども園の開設に合わせて令和3年度末に閉園しましたが、市立大楠幼稚園については、2年続けて入園児童が定員の半数を下回り、また、令和4年度の入園児数が一桁となりました。
年月日 | 会議等 | 概要 |
---|---|---|
H27.8.21 | 教育委員会定例会 | 「市立幼稚園をH30年度末で閉園する」旨を決定しました |
H28.5.27 | 教育委員会定例会 | 横須賀市長坂埋立地対策協議会(現長坂ごみ処理施設対策協議会)との協定書(S51.12締結)の存在が明らかになったため、閉園の時期は、「市立幼稚園を取り巻く状況に応じて別途定める」こととしました |
H28.10.1 | 横須賀市長坂ごみ処理施設対策協議会 | 「保護者や地元町内会との協議の経過報告を役員で確認し、必要があれば意見を伝える」という内容を確認しました |
2.園児数の状況
3.今後の検討について
閉園の検討については、以下のとおり関係者からご意見を伺ったうえで、教育委員会において決定します。
(1)大楠幼稚園関係者連絡会
大楠幼稚園保護者(2名)、地元町内会会長(3名)、大楠幼稚園園長、大楠小学校校長で構成する大楠幼稚園関係者連絡会において、閉園時期等についての意見交換を行います。
・令和4年3月4日 第1回連絡会開催
・令和4年4月28日 第2回連絡会開催
・以降1か月に1回程度開催予定
(2)大楠幼稚園保護者説明会(6月)
大楠幼稚園の閉園時期の検討に関する在園児の保護者説明会を開催します。
(3)未就園児保護者向け説明会(令和4年5月14日開催)
大楠幼稚園の閉園時期の検討に関する説明会を開催しました。
(4)地元町内会への周知(4月下旬から5月上旬頃回覧)
大楠幼稚園の閉園時期の検討に関する文書を作成し、大楠地域の10町内会に対し、回覧を依頼しました。
教育委員会の資料は、以上です。
すでに行なわれた地元への廃園時期の提案や説明会
教育委員会によると、
「地元地域には、令和5年度末の廃止、令和6年度末の廃止、の2つの案を出している。ただ、令和5年度末は急すぎるとの保護者の声があり、教育委員会としては令和6年度末の廃止が現実的ではないか。教育という環境から適切規模が維持できなくなる前に対応したい」
との説明がありました。また、関係者に対する説明会もすでに実施されていました。
・地元町内会への回覧板による周知
→4月下旬から5月上旬にかけて地元10町内会に回覧によって周知したとのこと。
・関係者連絡会(保護者2名、町内会長3名、園長、小学校長)
→すでに3月4日・4月28日に開催し、今後も月1回の頻度で開催予定とのこと。
・未就園児説明会
→5月14日に開催し、5名が出席した
これらに加えて新たに
・保護者説明会
→6月に開催予定
とのことでした。
入園児童数が減少した理由は大楠幼稚園の魅力不足、本当に?
出席した教育委員会委員から
「入園児童数が減ったのは、人口減少によるこどもの数が減ったことが原因なのか?」
と質問がありました。それに対して教育委員会事務局からは
「大楠幼稚園の近くの佐島の丘開発によってこの地域は人口が増えており、市内の他地域に比べて少子化は緩やかだ。その中でも大楠幼稚園の入園者数は減っている。
それは、令和元年10月からスタートした幼児教育・保育の無償化が大きいのではないか。月謝が3歳以上は無料となり、幼児教育・保育の選択肢が広がった。
大楠幼稚園の位置する西地区には、私立幼稚園が2園、長井にこども園が2園、太田和にこども園が1園ある。幼稚園には公立と市立で価格差があったが、無償化によって選択肢が広がり、他の園に希望者が流れたのではないか」
という趣旨の回答がありました。
フジノはこれを聞きながら、人口減少下での民間(私立)幼稚園のすさまじい経営努力を見聞きしてきたので
「市立幼稚園の持つ良さや魅力を横須賀市が積極的に発信してこなかったことこそが本当の減少の原因ではないか?」
と強く感じたのでした(例えば大楠幼稚園の公式ホームページをご覧いただければ、民間幼稚園との情報発信の質と量の差が一目瞭然です)。
一部の保護者の方から「閉園しないでほしい」との声があったとのことでした。
本当に「公立幼稚園ゼロの横須賀市」で良いのですか?
フジノは、強い危機感を抱いています。
これまでも
「幼稚園の教育基準はすでに私立幼稚園に蓄積されている」
とか
「かつては公立幼稚園が障がいのあるこどもを受け入れてきたが今ではほとんどの幼稚園が受け入れている」
といった言説で、全国で公立幼稚園がどんどん廃止されてきました。
民間でできることは民間に任せて、公は手を引くという動きが全国規模で広まっています。
けれども本当に公立幼稚園は廃止して良いのでしょうか。
それ以前に、そもそも大楠幼稚園が廃止されそうになっていること、横須賀市から公立幼稚園がゼロになろうとしていることをどれだけの市民のみなさまが知っているのでしょうか。
フジノは今日も、本市の幼児教育・保育のプロである方と意見交換をしたのですが
「本来ならば諏訪幼稚園を廃止すべきではなかった。認定こども園を設置するのは良いが、やはり公立幼稚園を公の役割として1園は残すべき」
とのご意見をいただいたばかりです。
フジノも同感です(諏訪幼稚園を廃止する条例には最後までひとりだけ反対しました)。
公立幼稚園が持つ意義は本当に無くなったのでしょうか。
私立幼稚園のみなさまがすさまじい努力をしておられるのは百も承知ですが、公の責任を全て民間に委ねてしまって良いのでしょうか。
特に残念なのは、幼稚園から小学校へ進学する時のつまずきである『小1ギャップ』を解消する為に取り組んできた『幼小連携』についてです。
大楠幼稚園と大楠小学校は同じ敷地の中にあり、こどもたちはいつでもお互いを見ることができます。
幼稚園のこどもたちは小学生の先輩たちの姿を、小学生たちはかつて自分が通っていた幼稚園を、そばに感じあっています。
それなのに選ばれなかった=入園希望者数が増えなかったということは、横須賀市の幼小連携の取り組みが失敗だった、ということではありませんか?
こうした取り組みを改善もせずに、幼児教育・保育の無償化のおかげで他の私立幼稚園やこども園という選択肢ができたからそちらに流れた、なんて分析をしている場合なのでしょうか。
もっと教育委員会は、自分たちのしてきたことを見直すべきではないでしょうか。
フジノには「廃止をしたい」という結論がまずあって、有効な改善をしてこなかったように感じられます。
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もう1つの市立幼稚園だった諏訪幼稚園を廃止する条例に反対したのは、議会でフジノだけでした。
だから今回の大楠幼稚園の廃止に反対するのも、きっとフジノだけかもしれません。
でも、市民のみなさまはどうお考えですか?
市民のみなさまは「横須賀市は公立幼稚園ゼロ」で良いとお考えですか?
どうかあなたの声をお聞かせ下さい。よろしくお願い致します。