犯罪被害者等への理解を求める為の講演会
ある日突然あなたは犯罪被害に遭う。
そして、昨日までの世界とは全てが変わってしまう。
これは現実に起きていることです。犯罪被害に遭った方々は本当に苦しんでおられる。
そうした状況を少しでも変えたくて、2006年からフジノは犯罪被害者等基本条例を作ることを提案してきました。
悲願が叶って、条例を作ることができたのが2021年12月のことでした。
そして本日は、長年にわたって開催を提案してきた犯罪被害についての講演会を実施することができました。
特に今回は犯罪被害者等基本条例が施行されてから初めての講演会でした。
無事に開催できたことをフジノは心からホッとしています。
川名壮志さんによる講演
本日のスピーカーである川名壮志さんは、犯罪被害に関する著作を何冊も出しておられます。
講演の内容は、上に挙げた2冊に基づく内容でしたので、ご関心のある方はお読みいただけたらと思います。
被害者の隣人としての川名壮志さん
今回の講師である川名壮志さんは、毎日新聞夕刊編集部の副編集長であり、犯罪被害についての著書を何冊も出版しておられるメディアの人です。
犯罪被害について市民のみなさまに理解を求める講演会のスピーカーが、何故マスメディアの人間なのか?
当然の疑問だと思います。
実は川名さんは、佐世保小6女児同級生殺人事件の被害者であるAちゃんとそのお父さん(ご遺族)と共に暮らしてきたと言えるくらいに近い関係にありました。
つまり、単にメディアの人というよりも、被害に遭った方にとって地域での『隣人』という立場と呼ぶことができます。
隣人としての川名壮志さんがどのように激動の日々を過ごしたか。
それを市民のみなさまにお聞きいただきたい、というのが今日の講演会の目的です。
そして、あなたの『隣人』が犯罪被害に遭った時にどのように過ごすのか、隣人としてどのように接していくのか、ということを考えるきっかけにしていただきたいと考えました。
講演会を終えて、その願いは参加者のみなさまには届いたと感じました。
次の課題は、ここに参加していただけなかった99%以上の市民のみなさまに、いかに関心を持っていただくか、ですね。
啓発には本当に地味で地道な取り組みが必要ですが、絶対に諦めずにこれからも努力を続けていきたいです。
講師の川名さん、担当課の地域安全課のみなさん、本当にありがとうございました。これからも引き続きよろしくお願いします。
ここから先は、講演会を終えてフジノが率直に感じたことを書きたいと思います。
当事者に語っていただく難しさ
条例を作る提案をしてきたのもフジノですし、講演会を開催することを提案してきたのフジノですが、
実は講演会を開催してみて、改めてこの問題特有の難しさを感じたというのが本音でした。
本来であれば、市民のみなさまに犯罪被害に遭った時の気持ちや体験をリアルに知っていただく為には、講演のスピーカーとして当事者の方をお招きするのが一番良い、とフジノは考えています。
けれども、難しさがあります。例えば、
- つらい体験、痛ましい想いを多数の聴衆の前で語ることは、さらにダメージを受けることになることから、なかなかスピーカーになって下さる方がいらっしゃらない
- 社会的に有名ではない、本当にふつうに暮らしてきた方が犯罪被害に遭う訳ですが、講演会を開催すると、もともとこのテーマに関心のある方にしか参加来ていただけない
などです。
さらに、象徴的なエピソードがあります。
かつてフジノが提案して実現した市民向け講演会・市職員向け研修(2015年6月)の講師をつとめて下さったAさん。
Aさんには、横須賀市議会が犯罪被害者等基本条例を策定する為のワーキングチームの場にも、フジノから依頼して外部委員としてお話をしていただきました。
ワーキングチームでのやりとりが終わった後、数年ぶりに再会いしたAさんといろいろなお話をしました。
その時、Aさんがこんなことをおっしゃったのです。
「実は、あの頃の記憶がほとんど無いんです。もちろんフジノさんのことを憶えていますし、横須賀に来たことも憶えています。
でも、事件があって、裁判があって、被害者支援の取り組みにかかわって、依頼を受けて講演したりしたのですが、その日々の記憶が今になって振り返ると雲がかかったみたいにあいまいなんです」
つらい出来事を人前で語るということは、自ら心の深い部分を傷つけることなのかもしれません。
こうしたやりとりからも、犯罪被害に遭った方々にスピーカーになってもらいたい、という願いを持ちながらも、同時にフジノは、そんなつらい体験をさせる必要は無い、という想いも持っています。
とても難しい課題です。
来年度以降もこうした講演会を必ず開催していくべきですが、同時に、当事者の方にスピーカーとしてお招きできるかどうかは悩ましい課題で有り続けると思います。
財政当局からみた優先度の問題
ところでそうした想いとは別に、今日の開催を迎えるまでには、長い道のりがありました。
講演会は、フジノが長年にわたって求めてきたものでした。
過去に2回(市民向けと市職員向け)だけ開催することができましたが、その後7年以上ずっと実施されてこなかったのです。
そして犯罪被害者等基本条例が成立してついに周知啓発の為に講演会が開けると思ったら、なんと今度は財政難を理由に単独での開催を財政当局が難色を示すという事態になってしまいました。
そこで2022年3月4日の委員会でフジノは、開催に向けて担当課を後押しする質問を行なったのでした。
フジノの質問
続いて、やはり周知啓発事業についてなのですが、予算化されている項目には入っていないけれど説明資料には掲載されている『講演会』についてです。
過去にも犯罪被害に遭った当事者の方に市民向け講演会を開催していただき、その反響はすさまじいものがありました。
前・市民部長の議会答弁でも「本当に心が揺り動かされた」という言葉がありました。
僕はぜひ当事者の生の声を『犯罪被害者週間』などに開催してほしいという思いを持っているのですが、予算には計上されていないということで、そうした講演会について行なう御予定はあるのかどうかをお聞かせいただければと思います。
地域安全課長の答弁
我々、当初、単独の講演会を予定しておりましたが、なかなか予算の確保が難しくて、結果として予算がつかなかったという状況があります。
今、悩んでいますのは、初年度ですので、何かしらの形で、講演会なり研修会なりの形を取りたいとは思っています。
地域安全課の中で『防犯事業』がありますので、その中での例えば講演会であるとか研修会、そこの場をお借りして行わせていただくとか
あと神奈川県でも事業がありまして、もしかするとそこでエントリーすると講師の派遣等していただけるかもしれない、という話がありますので
何かしらの形では行いたいと思っておりますが、少し具体的な御回答をここですることができない、申し訳ないです。
フジノの質問
課長のお気持ち、そして予算要求していただいたということ、本当にありがたく感じています。
委員会の一員ではありますが、僕からもこれは強く要望があったと財務課にお伝えいただきたいですし、県の取組にエントリーをして、ぜひ講師の派遣を受けていただきたいと思います。
こうして、担当課のナイス判断によって、神奈川県の事業にエントリーをして、横須賀市安全・安心まちづくり推進連絡協議会の主催、神奈川県と県警の横須賀3所轄と横須賀市の共催という形で実現に至ったのです。
財政が厳しいからといって、フジノは財政当局の姿勢を強く批判せざるをえません。
議会主導で条例を作り施行した初年度でさえも予算をつけない、というのは、率直に条例を軽視していると言わざるをえません。
来年度も、再来年度も、フジノはしっかりと財政当局の姿勢をチェックして、担当課とともに被害者理解の為の啓発講演会を開催できるように取り組んでいきたいです。