最新版「猫と暮らそう」にもペットロスのコーナーが加わりました
横須賀市動物愛護センターが発行している『猫と暮らそう』というパンフレットがあります。
猫を飼う市民のみなさまに向けて、あらゆる手続き・飼い方・生涯でかかる費用・不妊手術料の補助・災害時の備え等あらゆる情報を網羅していてオススメです。
(犬を飼う市民のみなさまに向けたパンフレット『犬と暮らそう』もあります)
紙のパンフレットは動物愛護センター・行政センターで配布しています。PDFファイルは横須賀市公式ホームページに掲載されています。
約4年ごとに内容を見直しているのですが、このたび『猫と暮らそう』の最新版(2023年度版)の配布がスタートしました。
今回の最新版から、フジノが提案した項目を追加してもらうことができました。
それは『ペットロス』と『ペットロスの時の相談先』についてです。
『ペットロス・・・最期について考える』
長い間、一緒に過ごしてきたかけがえのない時間も、必ず終わりがやってきます。
とても悲しいことで、飼い主さんの心にぽっかりと空いた穴に、耐えられない人もいるかもしれません。
けれど、それは飼い主として様々な困難を乗り越えて最後まで責任をはたした、飼い猫にとって大好きな飼い主と最後まで一緒にいることができた、幸せな時間の終着点です。
あなたの猫は、あなたと過ごすことができて、幸せだったのです。
別れを迎えた後、日々過ごす中でつらかったり悲しかったりしたときに、話を聞いてもらえる窓口があります。もし必要と感じたら電話してみてください。
- 横須賀市保健所精神保健福祉相談:046-822-4336 (月~金8時30分~17時、土・日・祝日・年末年始を除く)
- 横須賀こころの電話:046-830-5407 (平日16時~23時、土・日・祝日9時~23時、※毎月第2水曜日16時~翌朝6時)
パンフレット『犬と暮らそう、最後まで一緒に』を2020年に改訂した時に横須賀市では初めて『ペットロス』とその相談先について記述してもらいました。
当時は原稿の〆切ギリギリで新たな記述を追加した為に、ささやかなスペースにわずかな記述がなされただけでした。
けれども今回はしっかりと1ページの半分を使って、かつ『ペットロス』という単語も明記してもらい分かりやすくなりました。
コロナ禍を体験した我が国では、動物たちは今まで以上に家族の一員として人間とともに暮らすようになりました。
家族としての心の距離感が近くなればなるほどに、家族としての動物が亡くなると、深刻な悲嘆反応が起こることも多くなります。それはとても自然なことです。
けれども我が国では、一部の熱意ある獣医を除いて、獣医科病院や精神科病院やメンタルクリニックでは『ペットロス』をまず扱ってもらえません。
しかし『ペットロス』が原因で数ヶ月から数年にわたって深刻なうつ症状やうつ病になってしまう人は、年間19.7万人から53.8万人にのぼるとの研究があります。
(伊藤秀倫、『ペットロス いつか来る「その日」のために』文藝春秋、2023年)
これだけ多くの人々のグリーフ(悲嘆)に適切なアプローチをせずにいることは、政治の無策としか言いようがありません。
かねてからフジノは「世間がきちんと目を向けない為に公認されずにいる悲しみに対して、横須賀市としてグリーフケア(悲嘆へのケア)に取り組むべきだ」と考えてきました。
当然ながら『ペットロス』もそのひとつです。
横須賀市保健所の精神保健福祉相談では、専門の精神保健福祉相談員があなたからのお話をじっくりお聞かせいただきます。
保健所が夕方で閉じた後の時間帯は、横須賀こころの電話の相談員があなたからのお話をお聞かせいただきます。
どうかその悲しみやつらさをお話していただけないでしょうか。
心よりお待ちしております。
2019年に交わした約束を、横須賀市は守ってくれました
実はこのパンフレットへの記述の追加は、フジノが2019年9月議会の本会議で上地市長に提案したことでした。
『ペットロス』に苦しむ人がたくさんいるにもかかわらず何の支援も無いままに放置されている現状を少しでも改善したくて、せめて横須賀市のパンフレットに記述をしてほしいと提案しました。
上地市長は検討すると即答して下さり、翌年2020年に改訂したパンフレット『犬と暮らそう、最後まで一緒に』は〆切間際の原稿の中に相談先を掲載してくれました。
つい先日、保健所生活衛生課(=横須賀市動物愛護センター)から連絡をもらいました。
「パンフレット『猫と暮らそう』を改訂して、動物愛護センターと行政センターで配布を始めました。フジノ議員からご提案いただいていた『ペットロス』についての記述を、『犬と暮らそう』に続いて大変遅くなりましたが、ついに盛り込むことができました」
そう、2019年に交わした約束を4年ごしで実現してくれたのです。
当時はパンフレット『猫と暮らそう』の改訂作業が終わったばかりだったので、書き加えることができなかったのです。
その時に「次の改訂の時には必ず『ペットロス』について記します」と約束してくれたのです。
課長が異動で交代しても、4年も経っていても、しっかりと引き継いで下さっていたことに心から感謝を申し上げたいです。横須賀市、がんばっています。
生活衛生課・動物愛護センターのみなさま、いつも丁寧で献身的な仕事ぶりに感謝しています。ありがとうございました。
置き去りにされているわが国の「ペットロス」
フジノの問題意識は、初めて2017年に委員会で『ペットロス』について触れた時から全く変わっていません。
メディアでは『ペットロス』について報じられる機会が増えたにもかかわらず、この国の悲嘆への支援(グリーフケア)の状況がほとんど変わっていないからです。
いくつかの最新の文献にあたっても、やはり『ペットロス』を診察すると銘打っている精神科病院や獣医科医院はほぼ存在していません。
そんな中で2つの先進的な取り組みをご紹介したいです。
まず、獣医科の側からのアプローチです。
帝京科学大学附属動物病院『家庭の心のケア科』=ペットロスに悩む元飼い主たちのカウンセリングを実施している
次に、精神科の側からのアプローチです。
2023年現在では、日本で唯一の『ペットロス』を項目に掲げているメンタルクリニックではないかと言われています。
あいわクリニック(横山章光院長)
精神保健福祉士でもあるフジノからみなさまに知っていただきたいことは、『ペットロス』そのものは病気ではなくて、誰にでも起こるふつうの悲しみの反応であるということです。
けれども、人間の家族の死の場合ではあたりまえに亡くなった家族のことを誰かと語りあったり、涙を流したりといった、悲しみが癒やされていくプロセスを送れないことがしばしばあります。
さらには、心無い言葉に傷つけられることもしばしばあります。
そうした結果、心身の不調が長期間にわたって続くこともあるのが『ペットロス』なのです。
- 深い悲しみ
- 孤独感
- 後悔
- 罪悪感
- 睡眠障害
- 消化器症状
- 食欲異常
- 頭痛
- 無気力状態
はじめは誰にでも起こる悲しみの反応であったものが、やがて癒やされることが無いままに心身の不調が長期化していくと、それは病気になってしまいます。
上に挙げた2か所のようなに専門的な治療期間で診察を受けるのも大切なことですが、本来であれば、身近な人がその悲しみを受け止めていただけたら良いのにと願っています。
そうは言っても誰もが忙しく他人にかまっていられないような今の日本社会です。
そんな時はどうかパンフレットに記載してある『保健所の精神保健福祉相談』『横須賀こころの電話』などをどんどん頼っていただきたいです。
家族としての動物を失った悲しみは、決しておかしなことではありません。
どうかその悲しみやつらさをお話していただけないでしょうか。
心よりお待ちしております。