被爆2世の方との出会い
1945年8月6日、世界で初めて広島に原子爆弾が投下されました。
そこで8月6日の夜もフジノは平和への祈りを捧げる為に平和モニュメントに向かいました。
横須賀市では1989年に『核兵器廃絶・平和都市宣言』を行ない、平和中央公園に平和モニュメントを設置しています。
この平和モニュメントは毎月1日と、平和に深い関わりのある8月6日・8月9日・8月15日、市政記念日の2月15日に、天空に向けてライトアップを行なっています。
ちょうど上地市長もいらっしゃっていました。
市内外から訪れた方々がたくさんいらっしゃいましたので、平和モニュメントやライトアップの意味などについてふたりでご案内しました。
その時の様子をアップしたフジノのSNSに、市民の方からコメントを頂きました。
ご自身は被爆2世であること、難病などに苦しんでいること、当事者活動などには参加していないこと、横須賀市独自の取り組みがあると心強い、といった想いが記されていました。
被爆2世の方々に今ある支援の存在を知ってほしいと願っています
フジノは市議として何ができるだろうかと考えました。
調べ物をして、過去の議事録を読み、横須賀市の担当課、県の担当課とも意見交換をしました。
その結果、新たな取り組みを議会で提案するというよりは、まずは現時点ですでに行われている被爆2世の方々への支援の取り組みをご案内しようと考えるに至りました。
そう考えた理由は次のとおりです。
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一般的に、被爆2世とは、原爆の放射線による影響を受けた可能性がある被爆者の実子を指しています。
被爆2世が何人くらいいるのか、国は正確には把握していません。全国被爆二世団体連絡協議会は30万~50万人にのぼると推計しています。
一方、被爆2世の方の為の神奈川県による『被爆者のこども健康診断受診証』を交付された方は2023年現在約7000名(このうち横須賀市民は約240名)しかおられません。
神奈川県内にどれだけの被爆2世の方々がおられるか、横須賀市内にどれだけの方がおられるか、統計が存在しない為に正確なことは分かりません。
それでもフジノとしては直感的に「全国に30〜50万人の被爆2世が存在していながら、神奈川県の『受診証』を約7000人しか持っていないのは少ない」と感じています。
そしてその理由は、各種調査や全国の当事者団体が実施したアンケートなどの結果から、被爆2世の多くの方々が差別や偏見を心配して名乗りを上げていないのではないか、と推測しています。
こうしたデータなどからも、全国的にも珍しい神奈川県独自の支援の取り組みもあるのですが、こうした既存の取り組みの存在がまだまだ知られていないのではないか、と感じるに至りました。
神奈川県による被爆2世の方々への取り組みを紹介します
被爆2世の方々は、健康や遺伝に関する不安や悩みを抱えている方が多い、と各種調査の結果から言われています。
しかし、国は被爆2世に対して、原爆の遺伝的影響を認めてはいるのですが、その程度や範囲については科学的に確定されていないという立場を取ってきました。
その為、被爆者援護法の対象に被爆2世は含まずに、別の措置として年1回の健康診断を実施しているだけなのです。
そこで、神奈川県では、被爆2世の方々に対して独自の取り組みを行なっています。
1.被爆者のこども健康診断受診証の交付
親が被爆者健康手帳や第一種健康診断受診者証を持っている神奈川県在住の方に対して、健康診断受診証を交付しています(2023年現在約7000人に交付したとのことです)。
横須賀市は保健所設置市ですので、申請は横須賀市の保健所で受け付けています。
2.健康診断
被爆者のこども健康診断受診証をお持ちの方は、健康管理の為に県が委託した医療機関で年1回の健康診断の費用を助成しています(上限あり)。
3.医療費の助成
被爆者のこども健康診断受診証をお持ちの方は、11の疾病について医療費の助成を受けることができます。
(造血機能障害、肝臓機能障害、細胞増殖機能障害、内分泌腺機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、腎臓機能障害、水晶体混濁による視機能障害、呼吸器機能障害、運動器機能障害、潰瘍による消化器機能障害)
4.相談
神奈川県では、被爆者の方々の相談事業を『神奈川県原爆被災者の会』(被爆者相談センター)に委託しています。
相談員が常駐し、高齢化が進む被爆者の方々の悩み、病院や医師の紹介、健康管理手当などの各手当を受けるための手続き、生活上の悩みごとなどを含め、ご相談に応じています。どうぞお気軽にご相談ください。
神奈川県原爆被災者の会(被爆者相談センター)045-322-8689
こちらでは、被爆2世の方々が抱える健康や遺伝に関する不安や悩みに対しても相談に応じています。
以上4つの取り組みについて、さらに詳しい情報はこちらの神奈川県のホームページをご覧下さい。
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こうした取り組みをどうかご利用いただけますよう、心からお願い致します。
特に、相談は当事者同士(ピア同士)でつながることができる貴重な取り組みです。
フジノはあらゆる分野でのピアサポートに関わってきましたから、当事者(ピア)同士にしか分からない・分かりあえないことがあることを知っています。
どうかつながっていただきたいです。
以下の団体も力になって下さるはずです。
また、受診証の申請など、分からないことがあれば横須賀市保健所が丁寧にご案内させていただきます。
横須賀市の新たな対応
今回、市内の被爆2世の方からのお話をいただいてすぐにフジノは担当課である横須賀市保健所の医事薬事担当と意見交換をしました。
担当課のみなさんは被爆2世の方々の言葉を重く受け止めて下さって、即断即決で行動に移してくれました。
被爆2世の方々に向けた横須賀市ホームページの既設のコーナーを、分かりやすく改善してくれました。こちらです。
原爆被爆者援護対策のページに被爆2世の方への支援が明記されました。
ホームページを改善することは、ささやかな取り組みかもしれません。
けれども、フジノも、そして横須賀市の担当課も、原爆による心身の苦しみが今も続いていることを決して忘れることはありません。
この想いを少しでも行動に移したかったのだ、と受け止めて頂けたらありがたいです。
政治・行政は日頃あなたにとって身近に感じられないかもしれませんが、僕たちはあなたのその苦しみを見過ごしたくはありません。
世代を超えて続く不安や心身の苦しみを忘れません
20年前の初当選以来たびたび記してきたことですが、フジノは中学〜高校時代、被爆1世の方と文通をしていました。
被爆3世の友人が複数いて、差別や偏見、自分やこどもへの健康不安など、様々な想いをたくさん聞かせてもらってきました。
だから今も被爆者の方々の動向や、核兵器についての報道を受け流すことができません。
広島・長崎の被爆2世の方々は「放射線の遺伝的影響が否定できない被爆2世に対し、国は援護立法をなす義務を怠った」として国を相手取った訴訟を行なっています。
広島地裁・長崎地裁では敗訴しましたが、原告側は上訴し、今後も裁判は続いていきます。
この経過もしっかりと見守っていきたいと思います。
今回の取り組みを行なうきっかけとなった方をはじめとする、被爆2世の方々が少しでも安心して暮らせる社会になるように市議としてできることは無いか、引き続き考えていきます。
様々な想いはおありかと思いますが、先程記したとおり、当事者のみなさま同士がどうか積極的につながっていただけたらと心から願っています。
今日ご紹介した支援の取り組みをはじめ、ご質問やご意見がありましたら、メールを頂けるとありがたいです。どうぞよろしくお願い致します。