おはようございます。藤野英明です。
1.障がいのある方々の本市職員の採用について
今月実施した本市職員採用試験(身体障害者対象)の募集において、新たに設けられた2つの受験資格が、全国的に大きな問題となりました。
- 「活字印刷文による出題に対応できる人(点字、拡大印刷、ワープロ使用等の対応はできません)」
- 「口頭による会話が可能な人」
という条件です。
これらは視覚障がいのある方々と聴覚・音声・言語機能に障がいのある方々を明らかに受験から排除する内容です。
その為、全国の障がいのある方々や団体に衝撃を与え、たくさんの抗議文が送られました。
事態を重く見た本市はすぐに対応を行ない、
「あくまでも事務的な文章表現のミスだったが、障がいのある方々の雇用が後退した印象を与え、受験希望者を狭める結果となったことを謝罪し、受験資格を昨年度と同じ表現に戻して年度内に再び採用試験を実施する」
と発表しました。
僕は、本市が率直にミスを認めて謝罪と迅速な改善を行なったことは評価します。
しかし、そもそも『横須賀市人権都市宣言』を昨年行なったばかりの本市において、こうした配慮に欠ける事務執行が市役所内部では問題視されなかったという事実は、障がいのある方々に対する人権意識の低さを示しています。
そこで『横須賀市人権都市宣言』の理念を実体のあるものにする為に、数点の質問を行ないます。
(1)障がいのある方々の人権に関する研修を徹底する必要性について
今年ついに国連の障害者権利条約が発効しました。
わが国はすでに署名国となっている以上、本条約に反する行為をしないことが期待されます。
条約は国内の一般法よりも上位の位置づけですから、本条約の内容を自治体職員が理解することは当然の社会的要請です。
特に、最も核となる概念である『合理的配慮』の理解は非常に重要です。
今年度、本市は全ての施策に人権の観点を導入する為の『人権施策推進指針』を策定中ですが、この『合理的配慮』が組み込まれなければ全く無意味なものとなってしまいます。
そこで市長にうかがいます。
【質問1】
今回のような問題の再発防止と人権意識を高める為にも、国連の障害者権利条約をはじめとする、障がいのある方々の人権に関する研修を全職員を対象に徹底して行なうべきではないでしょうか。
お答え下さい。
(2)今年度中の再試験にあたり受験資格を昨年度と同じに戻しても、なお改善が必要な問題点について
問題となった今年の受験資格だけでなく、昨年までの受験資格にも、改善すべき問題点が存在していました。
次に挙げる問題点は、今年度の再試験からすぐに改善していくべきです。
第1に、視覚障がいのある方々に対する問題点についてです。
点字は視覚に障がいのある方々の情報アクセスの手段として不可欠であり、都道府県と政令指定都市の一般事務に限っても23自治体が点字での試験を実施していますが、本市はこれまで点字による試験を行なっていません。
【質問2】
これは『障がいを理由とした受験機会の排除』で明らかな差別であり、即刻改善して点字受験を行なうべきではないでしょうか。
また、視覚障がいのある方々にも点字を使えない人もおり、情報アクセスの手段として、音声読み上げソフトの入ったパソコンの利用が近年とても増えてきています。
音声パソコンの利用による情報アクセスやコミュニケーションは採用試験や採用後の勤務において決して『過度の負担』とは言えず、
本市が問題の読み取りと回答に際して音声パソコンの利用を認めていないのは『合理的配慮の欠如』にあたる差別です。
【質問3】
したがって、本市の採用試験においても音声パソコンの使用を認めるべきではないでしょうか。
第2に『聴覚や言語に障がいのある方々に対する問題点』についてです。
聴覚や言語に障がいのある方々は電話でのコミュニケーションはできませんが、本市のペーパー版の受験案内には電話番号しか記されていませんでした。
【質問4】
本市ホームページでの受験案内には問合せ先としてFAX番号とメールアドレスも記されていたのですから、当然の配慮として、ペーパー版にもこれらを記すべきではないでしょうか。
第3に『障がいの種別を分けている問題』についてです。
そもそも『一般事務(身体障害者対象)』のように、身体障がい・知的障がい・精神障がいなどと障がいをその種別で分けて採用試験を実施していることは問題です。
今後は障がい種別によって分けないのだという3障がい一元化を謳った障害者自立支援法の理念に照らしても、本市が身体障がいのある方々だけを雇用しているのは間違っています。
【質問5】
今回の採用試験において、精神障がいのある方々や知的障がいのある方々が排除された具体的な理由は何故でしょうか。
【質問6】
また、精神障がいのある方々や発達障がいを含む知的障がいのある方々も受験できるようにすべきではないでしょうか。
以上、5点について市長の考えをお聞かせ下さい。
2.自殺予防の総合対策を推進する為に
(1)本市の自殺対策を実態に基づいたより有効な取り組みとする為に、自死遺族の方々に聞き取り調査を行なう必要性について
これまで本市は他都市に先んじていくつもの自殺対策を実践してきました。
しかしこれらは全て『全国的に効果があるとされる一般的な対策』です。
さらに根本的な解決に向けては、『地域の実態に応じた対策』を行なっていく必要があります。
つまり、今後は実態把握とそれに基づいた本市独自の、オーダーメイドの自殺対策が必要なのです。
今年7月、NPOらの自殺実態解析プロジェクトチームによって『自殺実態白書2008』が発表されました。
1000人の声なき声に耳を傾ける調査として、自死遺族の方に平均2時間半をかけて235の設問の聞き取り調査を行なった過去に前例の無い画期的な調査報告書です。
この中で、警察庁から提供された自殺統計原票を集計して2004~2006年に自殺で亡くなった方々の全市区町村ごとの性別・年代・職業・原因・動機ごとに発表されました。
つまり、これを読めば本市ではどんな方がどういった理由で自殺で亡くなっているかが分かるのです。
しかし、本市の自殺の圧倒的多数が「遺書なし」であることが判明しました。
残念ながら、警察庁の自殺統計原票での分析でも本市の実態は把握しきれなかったのです。
そこで、だからこそ、本市の自殺の実態を把握する為の自死遺族の方々への聞き取り調査を行なうことが必要です。
こうした調査は秋田や岩手など熱心な研究者がいるまちでなければ不可能かと思われてきました。
けれども今年、東京都は、約百人の自死遺族に聞き取り調査を行ない、自殺前の状況・動機・年齢・仕事などの関連性を調査し、遺族ケアに結びつけると同時に、実態を反映した対策づくりをする方針を打ち出しました。
本市でもNPOなどの協力を得ながら遺族ケアにも結びつける為にも実態調査を行なうべきです。
そこでうかがいます。
【質問7】
本市も、地域特性を反映した自殺対策を立案すべく、自殺の詳細な実態を調査する為に、ご協力をしていただける自死遺族の方々に聞き取り調査を行なうべきではないでしょうか。
市長の考えをお聞かせください。
(2)『横須賀こころの電話』の今後の在り方について
こころの危機に直面した時に市民の方々が安心して相談できる『横須賀こころの電話』がスタートからまもなく丸4年を迎えます。
これまでの活動の良い部分を守りながらも、さらに改善を行なうことで市民のセーフティネットとしての機能をより高めていくことができると僕は考えています。
そこで今後の在り方について、2点、提案します。
まず第1に『自殺対策推進の為に危機介入ができる専門職の配置』の必要性についてです。
『横須賀こころの電話』の相談員は研修を終えた市民ボランティアです。
「隣人の苦しみの声を同じ立場である市民ボランティアが傾聴する」
という「共助」は非常に重要で、今後もボランティア主体で運営すべきです。
一方、自殺の危機に直面した相談者にも対応できるようにするには市民ボランティアに加えてより専門性の高い人材の配置が必要です。
何故なら、あくまでも一切のアドバイスをせず、ひたすらその声に耳を傾ける『傾聴』が市民ボランティアの役割なのですが
自殺の危機に直面している相談者には傾聴を超えた、専門的な危機介入が必要だからです。
そこでうかがいます。
【質問8】
いざという自殺の危機に専門的知識に基づいて危機介入できる人材を新たに『横須賀こころの電話』に配置すべきではないでしょうか。
お答え下さい。
第2に「自殺の発生が多い曜日と時間帯」を意識した受付時間の拡大の必要性についてです。
『こころの電話』は現在、平日夕方5時から深夜0時まで、土日祝日は朝9時から深夜0時まで、年中無休でオープンしています。
24時間化を目指してきましたが、慢性的な人材不足の為、実現のめどがたっていません。
そこで、従来の24時間化を目指すという方針を転換して、まずは自殺のハイリスクな曜日・時間帯に特化して受付時間を拡大すべきではないでしょうか。
自殺が明らかに多い曜日や時間帯というものが存在します。
例えば平成15年の厚生労働省の統計では、最も自殺が多いのは男女共に「月曜日」、次いで火曜日が多く、逆に最も少ないのは土曜日です。
また、時間帯別では男女ともに「早朝の5時台と6時台」が最も多く、次いで男性では「深夜0時台」が多いのです。
そこで「月曜日」と「火曜日」の「深夜から明け方」まで新たに受付時間を拡大することで、限られた人材でも自殺対策に重点を置いた役割を果たすことができます。
そこで市長にうかがいます。
【質問9】
『横須賀こころの電話』の受付時間を「自殺のハイリスクな曜日や時間帯」などに拡大していくべきではないでしょうか。
お答え下さい。
(3)『消費生活センター業務の見直し』を中止し、相談体制を強化する必要性について
本市は財政健全化を進める為に『集中改革プラン』を作り、あらゆる取り組みの見直しや廃止を進めていますが
今年新たに加えられた
『消費生活センター業務の見直し(消費生活相談の委託化、職員の削減など)』
は中止すべきです。
消費生活センターは、多重債務問題をはじめとする消費者行政の最前線であり、これを委託したり、職員を削減するのは問題です。
国は地方自治体に対して相談窓口のさらなる整備・強化を求めています。
福田前内閣においては消費者庁の設置が提案され、内閣府も来年度予算の概算要求において地方消費者行政の支援策として約80億円を盛り込んでいます。
また、自殺の主要原因でもある多重債務問題が深刻化している為、昨年4月に内閣に設置された多重債務者対策本部は『多重債務問題改善プログラム』を策定し、自治体に相談窓口の対応の充実を求めました。
さらに毎年このプログラムの進捗状況をチェックしていく有識者会議も今年6月の報告において、第1番目に「丁寧に事情を聞いてアドバイスを行なう相談窓口の整備・強化」を挙げました。
加えて、相談窓口で多重債務相談にあたる相談員の待遇を改善していく必要があるとの意見も付されました。
本市の相談員も、非常勤の職員です。
また、先の質問でも述べましたが、本市の遺書があった自殺のうち、動機・原因の1位は「経済・生活問題」でした。
こうした状況をふまえると、消費生活センターの機能はむしろ高めていかねばなりません。
そこで市長にうかがいます。
【質問10】
『集中改革プラン』に追加された『消費生活センター業務の見直し』は中止すべきではないでしょうか。
また、多重債務に苦しんでいる方々は、債務整理の問題以外にも生活上の様々な困難を抱えていることが多いのですが
たとえ消費生活センターに相談には来れても、他の様々な部署での手続きや処理さえ自分1人ではできないほど憔悴しきっていることがあります。
そんな時、相談員が相談者に一緒についていき、1つずつ窓口をまわり、様々な手続きを同行支援するべきです。
同行支援は問題解決に効果が高いのですが現在の本市では実現していません。
そこで市長にうかがいます。
【質問11】
同行支援ができるような相談体制へと消費生活センターの機能強化を行なうべきではないでしょうか。
以上2点についてお答え下さい。
(4)『街頭キャンペーン』を今後も継続する必要性と、さらに内容や方法を改善する必要性について
『自殺総合対策大綱』では国民1人1人の気づきと見守りを促す為に毎年9月10日から1週間を『自殺予防週間』として、幅広い国民の参加による啓発事業を実施することとしています。
本市でも自殺予防週間に3日間、横須賀中央、追浜、久里浜の3駅で初の街頭キャンペーンを行ないました。
自殺予防週間を告知するのぼりを立てて、自殺対策連絡協議会のメンバーや市民ボランティアが本市の自殺対策シンボルマークであるカタバミを印刷したおそろいのTシャツを着て相談先一覧のリーフレットを配布しました。
初日は蒲谷市長も市民にマイクで語りかけ、リーフレットの配布も行なって下さいました。
自死遺族の方々にもボランティアとして参加していただき、連日、予定を大幅に上回る早さでリーフレットを配布しおわり、街頭キャンペーンは大成功に終わりました。
そこで3点質問します。
【質問12】
まず、街頭キャンペーンに先頭に立って参加して下さった蒲谷市長の、率直な感想をお聞かせください。
次に、継続の必要性についてです。
『自殺総合対策大綱』(第2の6)においても対策は中長期的視点に立ち継続的に進める必要があると謳われています。
街頭キャンペーンも単発ではなく毎年継続して行なってこそ市民の理解が得られるはずです。
また、わが国では誤解と偏見によってタブー視されてきた自殺について、まちかどでオープンな形でキャンペーンを行なうことで自死遺族の方々が大切な方を亡くしたつらさや悲しみを語ることができる風土へと変えていく効果があり、とても重要です。
そこで市長にうかがいます。
【質問13】
自殺予防週間の街頭キャンペーンは今後も継続していくべきではないでしょうか。
啓発の重要性や今回の成功を考えれば継続は当然のこととして、今後の実施方法を改善していく必要があります。
例えば、今回はわずか3日間、夕方2時間だけ行なった日程を来年度は1週間毎日とし、朝の通勤通学時間にも行なう。
また、京浜急行3駅だけの開催場所を来年度はJRも含めた市内全駅で行なう。
さらには、マイクでの呼びかけを市職員だけでなく、あらかじめ自殺の正確な理解をうながす講習会を開催した上で市民ボランティアの方々にもマイクで呼びかけていただくなど
より効果の高いものに改善していくべきです。
そこで市長にうかがいます。
【質問14】
今後の街頭キャンペーンは内容や方法などをさらに改善して行なうべきではないでしょうか。
お答え下さい。
3.すでに介護が必要な高齢の方々への福祉の在り方について
市長は『新世紀ビジョン』の将来像の1つに『長寿を楽しめる社会』を掲げていますが
生活習慣病の予防、疾病の早期発見・早期治療など、健康寿命を伸ばす為の介護予防に重点を置いています。
これから高齢になる方々が健康で活躍できることは大切です。
しかし一方で、今すでに重度の介護が必要な方々や在宅介護が難しい方々への取り組みは十分でしょうか。
国は厳しい財政難を理由に、公的な福祉施設の増設を抑え、病院とベット数を減らし、命を守る為のリハビリまでもカットしてきました。
厚生労働省は、特別養護老人ホームなどの施設は重度の介護が必要な方々への重点化をはかる、としていますが
介護報酬を低く抑えすぎて人材確保もできない現状では全く実現不可能だと僕は考えています。
実際、「気管切開」や「胃ろう」などをしている方々は医師や看護師が足りず対応できない為、施設から入所を拒否されていますし、『リハビリ難民』や『介護難民』はさらに増えていくでしょう。
では、自宅での介護でのりきれるかといえば、必要なサービスは多いのに支給限度額が低い為、限度額を超えた費用は家族が負担したり、家族が必死に介護をしており、家計も心身も疲弊し、追いつめられています。
しかし、たとえ国の政策が劣悪なものでも介護保険は市町村が保険者です。
本市は『長寿が楽しめる社会』を実現すべくできることがたくさんあります。
そこで、本市の現状についてうかがいます。
【質問15】
本市の特別養護老人ホームへの、入所を待機している方々の数は現在、何人にのぼるのでしょうか。
1人の方が複数の施設に申請をしている場合は名寄せを行なって、実数でお答え下さい。
【質問16】
また、待機をしている方々が入所できるまで平均的な待機年数は何年なのでしょうか。
以上2点についてお答えください。
(2)重度の介護を要する高齢の方々とそのご家族も安心して暮らせる社会の実現に向けて
現在、本市は第4期の『よこすか高齢者保健福祉計画(介護保険事業計画を含む)』を策定中です。
2011年度までの3ヵ年のサービス量や特別養護老人ホームなどの施設整備の数値目標が記されます。
そこで市長にうかがいます。
今後、高齢の方々の数そのものが増えていき、要介護の方々の数も、施設の待機者数も増えていきますが
【質問17】
現在策定中の第4期計画における施設整備案によって入所待ちの待機者を全て解消できるのでしょうか。
お答え下さい。
これで僕の1回目の質問を終わります。
~市長の答弁は後日、掲載します~
後日談:新聞各紙が報じてくれました
神奈川新聞が、一般質問を1問1答でとりあげるコーナーでフジノの一般質問をとりあげてくれました。
今回、3つの質問を行なった中で(1.障がいのある方々の職員採用試験、2.自殺予防対策、3.高齢の方々の福祉について)
2つも取りあげていただいたことにこころから感謝しています。
特に、障がいのある方々の採用試験についての問題は他の新聞各社が総裁選挙や次期総選挙のお祭り騒ぎに浮かれる中で、以前にも報道して下さいました。
全体の中では小さな話題かもしれないけれど、障がいのある方々だけでなく、ともに暮らしやすいまちづくりを目指している僕たちにとっては本当に大切な課題であるということをご理解していただけたからこその報道だったと思います。
本当にありがとうございました。
また、特別養護老人ホームへの入所を希望しながらも叶わず待機をさせられている方々、いわゆる待機者の問題もとりあげてくれました。
本当に地味な問題なのですが、命がかかっている大切な問題です。
こうした世間に理解されづらい問題をあえてフジノは大切にしているのですが、神奈川新聞はそうした「地味だけれど市民生活には重要なこと」を取り上げて下さって、ありがたいなと感じました。
さらに、10月17日(金)のタウンニュース紙も1面でとりあげてくれました。