はじめに
藤野 英明です。
今回の一般質問で述べる出生前診断という単語は、妊婦健診も含む広い意味では無く、胎児に『先天的異常』、特に常染色体異常の中でも最も頻度の高いダウン症候群があるか否かを診断する『狭義の出生前診断』、具体的には絨毛検査、母体血清マーカー試験、羊水検査などを指します。
また、出生前診断で分かる病気・障がいは多数ありますが、今回はあえてダウン症候群にしぼって質疑を進めます。
知的障がいの1つであるダウン症候群の平均的な出生率は約1000人に1人ですが、妊婦の年齢が高くなるにつれて発生頻度が高くなっていきます。
妊婦が30歳になると700人に1人、35歳で300人に1人、40歳で87人に1人、45歳で16人に1人、というように。
我が国の初産の平均年齢は30才を超えて、毎年、晩産化している中で、出生前診断を受ける人とその結果を受けて人工妊娠中絶を選ぶ人が共に増えています。
横浜市大附属病院の調査では、300医療機関に調査した結果、胎児に何らかの異常が見つかったことによる中絶は、1985~89年は約800件でしたが、2005~2009年は約6000件と7.5倍に急増しています。
特に、新型出生前診断がスタートしてからこの3年間で胎児に障がいがあると確定した妊婦の94%が中絶をしています。
我が国が人工妊娠中絶を合法化したのは世界的にも早く1948年ですが、法律上、中絶を認める要件を『性暴力による妊娠』『経済的な理由』の2つに限定しています。
1970年代と80年代に、障がいがあることを理由に中絶を認めるいわゆる『胎児条項』を新設する改正法案が出されると
「障がい者を胎児の段階から抹殺する優性思想だ」
「本来生まれてくるべきでは無かった命として扱うことは現に生きている障がい者の存在そのものの否定だ」
といった激しい反対運動が起こりました。
その結果、現在でも母体保護法に『胎児条項』はありません。
しかし現実的には医療機関では法律を拡大解釈して人工妊娠中絶を実施しています。
このねじれは、障がいのある方・中絶を選択せざるをえない方の双方に深い傷をもたらす一因となっています。
「中絶は憲法の保障する基本的人権である」
と判決を出しました。
現在も中絶そのものへ賛否の論争は続いていますが、日本のように障がい者の権利と中絶が関連付けられることは、ほぼありません。
世界的にも、1975年の『国際婦人年世界会議』をはじめ、1980年に日本も署名した『婦人差別撤廃条約』や、1995年の北京で開催された『世界女性会議』においても
そもそもこどもを産むか産まないかは、国家が介入したり、法で規制すべき問題でなく、個人およびカップルの選択に任されるべきで『リプロダクティブ・ライツ』という基本的人権である、との価値観が確認されています。
僕自身の立場も申し上げます。
と僕は考えています。
また、
と考えています。
また、後程触れますが、ダウン症候群の方とそのご家族に行なった調査結果では、アメリカでも日本でも幸福度が極めて高い傾向があります。
「障がい=不幸」は大きな誤解です。
にもかかわらず、胎児に障がいがあるとの出生前診断を理由に中絶を選択せざるをえない方が我が国で多数おられることは、日本の障がい保健医療福祉があまりにも不十分な為に世間のイメージとして「障がい=不幸なこと」との誤解が蔓延してしまっていることが原因だと考えています。
我が国の福祉が改善されない限り、出生前診断によって中絶を選択せざるを得ない人は今後も増え続けるはずです。
しかし、ねじれや課題は放置されたままなので、我が国では障がいのある人々も、中絶をせざるをえなかった女性も、ともに深く傷つく現実が続くだろうと予想しています。
こうした現実を僕はこのまちだけでも変えたい、と強く願っています。
今回の質問もそのような長年の願いから行なうものです。
それでは質問に入ります。
1.10年以上前から市立うわまち病院で実施されてきた羊水検査の実施を一旦やめて、全市的に議論を行なう必要性について
(1)市長は羊水検査の実施を知っていたか。
11月18日、県内他市の議員と意見交換をしていた時に、そのまちの公立病院が新たに羊水検査を導入する条例改正を行なうにあたり、議員向けの説明資料で、『他都市の公立病院で羊水検査を実施している事例』として、本市の市立うわまち病院が記されていることを知りました。
かねてから出生前診断に強い関心を持ってきたものの、市立2病院は狭義の出生前診断を実施してこなかったと考えていた為、それを知り、非常に驚きました。
さっそく担当課に確認したのですが、国から本市に移管された平成15年にはすでに市立うわまち病院では羊水検査を実施しており、カルテの保存年限である10年間を調査したところ、現在まで11名が羊水検査を受けていました。
病院側が積極的に検査を勧めたことはなく、あくまで妊婦側から希望があれば断らないという形で検査を実施してきたのとのことです。
出生前診断は重要なテーマですが、これまで市議会に報告された形跡はありません。
市立病院の活動を報告する『病院年報』にも記載がありません。
こうしたことから議会の議事録にも、議論の記録はありません。
公立病院であるにもかかわらず、議会も行政も知らされず、病院関係者しか知らずに出生前診断を実施してきたとすれば大変な問題です。
そこで伺います。
【質問1】
市長は今回の僕の発言通告書が提出される前から、うわまち病院で羊水検査が実施されてきたことを知っていましたか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(2)羊水検査をいったん中止する必要性
明治以来「産めよ増やせよ」を国策に富国強兵をすすめ、1948年には爆発的に増えた人口を抑制する為に中絶を合法化し、進めるなど、我が国では妊娠・中絶は『女性の権利』とはほど遠いものでした。
さらに富国強兵・経済成長に貢献しない障がい者は排除すべきとの『優生思想』も広く流布されました。
こうした歴史を持つ上に、我が国では中絶が合法の一方で刑法には今も堕胎罪があるなど法制度にもねじれがあり、生命倫理、胎児の権利、女性の権利など様々な課題があり、わが国では出生前診断とその結果による中絶に対して国民のコンセンサスは得られていません。
もちろん本市においても市民的なコンセンサスはありません。
こうした状況下で、約10年でわずか11名といえども市立うわまち病院が羊水検査を実施してきたことは勇み足です。
さらに羊水検査には流産を起こすリスクがあります。
また後ほど述べますが、現在の支援体制では不十分です。
この3つの理由から、羊水検査を一旦中止すべきです。
そして、公立病院として今後も検査を続けるべきか否か、続けるならどのような体制が望ましいか、本市全体で1度議論をすべきです。
特に、市内で障がいのあるこどもを産み育ててきた親の会の方々とは、積極的に意見交換・議論をする機会を持つべきだと強く提案します。
そこで伺います。
【質問2】
羊水検査の一旦中止、全市的な議論の必要性などについて市長はどのようにお考えか、お聞かせ下さい。
(→市長の答弁へ)
2.今後も羊水検査を継続するならば、検査を受けることを迷っている段階から妊婦・配偶者らを支援する体制づくりを行なう必要性について
すでに自らの立場を述べたとおりで、僕はただ「羊水検査をやめろ」と批判しているのではありません。
今の日本はすさまじく情報過多の社会で、妊婦らは圧倒的な量の出生前診断の情報にさらされています。どれが正しくどれが誤っているか、個人では判断できません。
インターネット上には営利目的の出生前診断の広告があふれており、日本の学会が定めたガイドラインは完全に無視され、年齢制限なし、医師の紹介状も不要、採血する医療機関をワンクリックで予約してその血液を海外の宛先に送れば、検査結果だけが送り返されてきます。
こうした検査法には妊婦を守る体制が一切ありません。
一方、出生前診断は『妊婦の心理面』や『胎児との愛着形成』に大きな影響を与えることが分かっています。
儲けだけが目当てで妊婦の心身を一切守らない『出生前診断ビジネス』に対して、責任ある公立病院こそがしっかりとした情報提供体制と安全・安心を担保する支援体制を構築した上で、検査を行なうべきだと僕は考えています。
前問で議論の必要性を訴えましたが、もしも一定のコンセンサスが得られた時には、本当の意味で妊婦を守る体制を構築した上で検査を再開することこそ、うわまち病院の役割だと考えています。
そこで本市が羊水検査を継続するならば、現在の在り方への疑問点や改善すべき点を指摘します。
(1)検査希望者について
現在、うわまち病院では、羊水検査は希望者が全員受けられます。
【質問3】
日本産科婦人科学会が定めた『出生前に行なわれる遺伝学的検査および診断に関する見解』の7つの実施要件に限定するといった条件を一切つけていないのは何故でしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(2)日帰り検査について
検査そのものの危険性をもっと重視すべきです。
そもそもダウン症候群の新生児は約1,000人に1人の割合で生まれますが、羊水検査による流産の割合はそれよりも高く約1,000人に3人です。
検査は10分ほどで終わるとは言え、当日には出血や羊水漏れや子宮収縮が起こることもあり、妊婦と胎児の安全の為、さらにカウンセリングも実施する為に、1泊2日を推奨している病院もあります。
【質問4】
一方、うわまち病院では日帰り検査を実施してきました。
施術実績も少ない中で、日帰り実施で、胎児と妊婦の安全を確実に守れると断言できるのでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
出生前診断は、胎児の命や家族の運命を左右する、非常にセンシティブな検査です。
そこで日本医学会『医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン』では
と定めています。
また、日本産科婦人科学会『出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解』でも
と定めており、実施においては両者を遵守しなければなりません。
遺伝カウンセリングとは、検査を受けるべきか迷っている段階から検査後まで一貫して情報提供と心理・社会的支援をする為に臨床遺伝専門医として認定を受けた医師、もしくは大学院に設置された専門コースで養成された認定遺伝カウンセラーが行ないます。
検査の意味や限界などの説明、診断される病気について、同じ病気を抱える人たちの現状やサポート体制を伝えることで誤解や情報不足による不安を解消し、妊婦の心のケアをしていきます。
特に中絶手術後は精神的なダメージや母体への負担が大きく、精神的な問題は1度のカウンセリングや薬の処方では完治できない場合がほとんどの為、専門家による長期的な関わりが必要です。
しかし全国的な人材不足の為、カウンセリングをせずに出生前診断を行なっている施設が多い現状があります。
(3)臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー新規雇用の必要性
うわまち病院にも臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーがいません。
両学会が求める専門家が不在のままの検査実施は、支援体制として不十分です。
そこで伺います。
【質問5】
臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーを早急に新たに雇用もしくは養成して、十分な支援体制を構築すべきではないでしょうか。お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(4)遺伝カウンセリング実施機関の紹介
現在、うわまち病院では遺伝カウンセリングが受けられないので「希望があれば」遺伝カウンセリングを受けられる医療機関を紹介している、とのことです。
けれどもそのような消極的な姿勢では妊婦を守ることはできません。
【質問6】
ガイドラインを守り、妊婦らの精神的なケアや支援、適切な情報提供の為に「必ず」遺伝カウンセリング実施医療機関に紹介する方針へと変更すべきではないでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(5)結果判明までの期間中の支援体制
羊水検査は結果が出るまで2〜3週間ほどかかります。
この期間の妊婦の精神的なストレスは極めて高いことが知られています。
【質問7】
結果が出るまでの期間、うわまち病院では妊婦に対して誰がどのような支援を行なっているのでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(6)検査結果の伝達時の体制
【質問8】
検査結果は直接伝えているとのことですが、染色体異常との結果が出た時には、妊婦・配偶者に対して具体的に誰がどのように結果を伝えているのでしょうか。
また、結果を聞いた妊婦らの精神的なショックの受け止めや支援はどのように行なっているのでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(7)横須賀版受容ネットの立ち上げの必要性
羊水検査は妊娠第16〜17週に実施することが多いのですが、一方、人工妊娠中絶が可能な時期は第22週までなので、検査結果が出てからわずか2〜3週間で大きな決断を迫られることになります。
その為、妊婦の孤独感は極めて強いものがあります。
妊婦・配偶者の不安に寄り添って、どのような疑問にも応え正確な情報を提供し得る体制が必要です。
僕はその一助として、妊婦をはじめ、支援に当たる産科医療従事者に、ダウン症候群のあるこどもたち、その成長、家族の心理、本市の療育体制・障がい福祉サービスの現状などをリアルに知っていただくべきだと考えています。
2011年のアメリカの複数の研究から、障がいのある本人、兄弟姉妹、親に行なった調査の結果、本人の99%が「日々の生活が幸せだ」と答え、きょうだいの97%と親の99%が「ダウン症の家族を愛している」と答え、家族の幸福感の高さや人生の充実感、物事を本質に即して考える傾向などが報告されています。
さらに、発言通告書を提出した11月24日の朝日新聞1面で、日本で初めて行なわれた当事者への調査結果が報じられました。
厚生労働省の研究班によるとダウン症候群の人の9割以上が「毎日幸せ」と感じているとのことでした。
世間一般に漠然と持たれている「障がい=不幸」「障がいのある子どもを育てることは苦しい」といった出生前診断を受ける根拠となったイメージは多くの場合、事実とは異なっていると日米の研究結果が示しています。
こうした本当の姿を知ってもらう為に、『障がいのあるこどもたちの親の会』の方々に依頼して、生の声に触れる機会を本市がシステムとして提供すべきです。
福岡市に素晴らしい先進事例があります。
1999年、ダウン症候群のこどもを持つ親と福岡市立子ども病院や市内の産科医ら専門家が『ダウン症等受容支援ネットワーク福岡(略称・受容ネット)』を立ち上げました。
親の会と連携して、地域でダウン症候群の告知を受けた妊婦・母親がいると聞けば、希望によって話をしにいくピアカウンセリングシステムを作り、福岡市全域をほぼカバーしています。
本市も『受容ネット』の横須賀版を作るべきです。
障がいに対する世間の画一的なイメージしか持たないままに人工妊娠中絶に追い込まれるのではなく、妊婦らが現実の姿に基づいて将来のイメージを持った上で判断できる機会を提供すべきです。
そして、うわまち病院の妊婦に限らず、本市の妊婦は誰でも『横須賀版受容ネット』の支援を受けられるようにすべきです。
そこで伺います。
【質問9】
市長はこの提案をどうお考えでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(8)市立病院と市役所各部局との連携の必要性
支援に当たる産科医療従事者に、日ごろから療育・障がい福祉の現状を正確に知っていただくべきです。
こども育成部こども青少年支援課や療育相談センター、教育委員会支援教育課などは、こどもたちが生まれた後の療育体制を知ってもらう為に、福祉部障害福祉課などは、障がい福祉サービスや様々な制度について知ってもらう為に、積極的に情報提供すべきです。
さらに、療育相談センターや特別支援学校の見学や顔の見える関係づくりの機会も積極的に提供すべきです。
【質問10】
市長はどのようにお考えかお聞かせ下さい。
(→市長の答弁へ)
(9)中絶を選択せざるを得なかった方々のケアの重要性
出生前診断に基づいて人工妊娠中絶を選択した妊婦の罪悪感や孤独感や悲嘆はとても強く、他の死産や人工死産の方の集まりにも一切参加できず、しっかりとケアをしなければ長期にわたり深刻なダメージを受け続けるとの研究報告がすでに多数あります。
また、中絶手術を受けた女性がその経験を同じ立場、ピアの女性と語り合う場が不可欠ですが、僕は必死に探したものの日本では1カ所しか見つけられませんでした。圧倒的に支援の機会が足りません。
そこで市長に伺います。
【質問11】
検査後に人工妊娠中絶が実施される可能性も踏まえて、グリーフケアなどの支援体制づくりが必要ではないでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
3.女性の選択権(リプロダクティブ・チョイス)を確立することと障がいのある人の尊厳が守られることが両立する 社会の実現を目指す必要性について
(1)全ての妊婦が出生前診断で葛藤することに市立病院への「遺伝科」設置で対応すべき
ダウン症候群以外にも現在すでに様々な病気・障がいの診断が可能となっていますが、医学の進歩で今後はさらに多くの病気が出生前に診断されるようになります。
その結果、遠くない将来に遺伝学的検査によって、全ての妊婦が出産するかしないかの葛藤に巻き込まれる可能性が極めて高いと言えます。
ドイツが国内1,500ヶ所に設置している妊娠葛藤相談所のように、出生前診断で陽性の判定を受けた方が相談できる公的な場の設置が早急に必要だと僕は考えています。
【質問12】
そこで、出生前診断と遺伝カウンセリングのプロで構成される『遺伝科』を市立病院に新たに設置すべきだと僕は提案します。
市長の考えをお聞かせ下さい。
(→市長の答弁へ)
【質問13】
また、病院管理者とも管理運営協議会等でぜひ意見交換をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(2)リプロダクティブライツ、チョイスを実践できるまちへ
中絶が基本的人権といえども、権利を行使したからといって喜びや充足感はありません。
あくまでもその時その女性にとって産むことよりも中絶がましな選択肢にすぎなかっただけです。
そしてそのリプロダクティブライツ、チョイスは、様々な情報提供や遺伝カウンセリングなどの手厚い支援のもとであくまでも本人の自己決定としてなされるべきです。
しかし日本では、女性の選択権や意思決定権がいまだ確立されているとは言えず、妊娠、出産、中絶も妊婦本人の意思だけでなく、配偶者や婚家に対する配慮や周囲の有形無形の圧力によって意思決定せざるを得ないことが多い、と僕は感じています。
【質問14】
市長はどうお考えでしょうか。
もしも同感であれば、どのような対策が必要とお考えでしょうか。お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
(3)産むと決意した妊婦を守り、こどもが健やかに育てる社会へ
社会福祉が貧困なこの国で、診断を受けても「産みたい」と望む妊婦を本市は心から祝福し、全力で守らねばなりません。
そして産まれた子どもは本市全体で健やかに育んでいかねばなりません。
その為にも政治・行政が療育と障がい福祉の体制をさらに充実させ、差別や偏見の除去を徹底的に行なうことが不可欠です。
【質問15】
その為に市長はどのように取り組んでいくのでしょうか。
お答え下さい。
(→市長の答弁へ)
市長の答弁
ご質問、ありがとうございました。
まず、私自身の立場を申し上げておきますと、女性個人の選択肢は用意されるべきだと考えていますが、一方でこれが『マス・スクリーニング』と呼ばれる社会の選択につながるようなことがあっては断じてならないと、そういう立場から答弁をさせていただきます。
【答弁1】
まず、うわまち病院で平成15年から羊水検査を実施していたことを承知していたのか、というご質問をいただきましたが、私は今回初めて知りました。
【答弁2】
次に、うわまち病院で羊水検査を今後も続けるべきか否か、本市全体で一度議論してはどうか、というご質問をいただきました。
うわまち病院では羊水検査の問い合わせがあった場合、目的・方法・リスク・結果等について丁寧に説明し、家族で話し合われたうえで、希望される方にだけ実施をしています。
これまで通り、丁寧な説明をしたうえで、希望される方には検査を実施していきたいと思います。
【答弁3】
次に、日本産婦人科学会の7つの実施要件に限定していないのは何故か、というご質問をいただきました。
うわまち病院では、この7つの実施要件に該当しない方が希望した場合には、学会の実施要件に該当しないことを丁寧に説明しています。
ただ、それでも検査を受けたいと希望された場合には、お断りできないと考えています。
なお、これまで該当しない方に対して検査を行なったことはありません。
【答弁4】
次に、日帰りでの羊水検査の安全性について、ご質問をいただきました。
うわまち病院では妊婦と胎児の安全性を第一に、検査を行なってからしばらくは病院内で安静にしていただき、その後、超音波検査をして異常が無いことを医師が確認してから帰宅していただいています。
また、帰宅後、少しでも異常を感じた場合には、すぐに対応できるようにしています。
【答弁5】
次に、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーを新たに雇用し、充分な支援体制を構築すべきではないか、というご質問をいただきました。
臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーの雇用については、取得している医師が少ないことから難しいところですが、うわまち病院でも産婦人科の医師だけで無く、必要に応じて小児科の医師のサポートも受けて支援にあたっています。
また、希望があれば臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーが在籍している医療機関を紹介しています。
【答弁6】
次に、ガイドラインを遵守し、適切な情報提供の為、必ず遺伝カウンセリングを紹介する方針に変更すべきではないか、というご質問をいただきました。
うわまち病院では、ガイドラインについて充分に説明をした上で、臨床遺伝専門医等がいないことをご理解いただいています。
その際、臨床遺伝専門医等を希望される方には、専門医が在籍している医療機関を紹介しています。
【答弁7】
次に、検査結果が出るまでの期間、うわまち病院ではどのような対応をしているのか、というご質問をいただきました。
うわまち病院では検査を受ける前に充分な説明を行なっていますが、不安等により医師に聞きたいことがある場合には、いつでも病院まで連絡するよう伝えています。
【答弁8】
次に、染色体異常という結果を具体的に、誰がどのように伝えているのか、またその精神的なショックに対し、どのような支援をしているのか、というご質問をいただきました。
うわまち病院では、これまでに染色体異常という検査結果は出ていません。
今後、そのようなケースが生じた場合は、担当医が検査結果を伝えることになりますが、ご本人やご家族に対しては、担当医をはじめ病院職員により丁寧な対応を心がけて支援にあたります。
【答弁9】
次に、妊婦さん、配偶者が障がいに対する現実の姿に基づいて将来をイメージできる機会を提供すべきではないか、というご質問をいただきました。
妊婦の皆さんが、障がいに対する画一的なイメージに捉われない判断を行なう為に、本市としてどのような支援が可能であるか、研究してまいります。
【答弁10】
次に、産科医療従事者に、療育・障がい福祉の現状を知ってもらう為、療育体制・障がい福祉サービス等の制度について、積極的に情報提供すべきではないか、というご質問をいただきました。
妊婦さんや配偶者の不安を解消する為に、産科医療従事者が本市の療育体制・障がい福祉サービス制度などを正確に理解しておくことは大切であると考えています。
本市では発達支援に関する制度や相談機関を紹介するガイドブックを各医療機関に送付するなど情報提供を行なっていますが、さらなる積極的な情報提供に努めてまいります。
【答弁11】
次に、今後は人工妊娠中絶が実施される可能性も考えた上でのグリーフケアなどの支援体制づくりが必要ではないか、というご質問をいただきました。
出生前診断の直後から、妊婦さんは混乱と不安の中で決断を迫られる上、中絶を選択した場合は、赤ちゃんとの別れを体験しなければなりません。
そのような苦しみに寄り添い、支えてくれるサポートは重要であり、医療機関などで行なわれるカウンセリングと一体的に支援することが望ましいと考えています。
【答弁12】
次に、市立2病院に遺伝科を設置してはどうか、というご質問をいただきました。
遺伝科を設置する為には、臨床遺伝専門医を確保し、設備を整えるだけでなく、研究も行なえるような大学病院等の専門性の高い病院でなければ難しいと考えています。
【答弁13】
(市長、答弁せず)
【答弁14】
次に、女性の選択権の現状と対策についてご質問をいただきました。
妊娠や出産などの意思決定は、女性の今後の人生に重大な影響を及ぼすものであり、配偶者や家族はその女性の意思を支持し支え続ける存在であるべきだと考えています。
しかし、残念ながら周囲の様々な憶測や心配が、結果的にご本人にとって圧力となってしまう現実があることも承知をしています。
これは社会全体の問題であり、すぐに解決できるものでは無いと思いますが、正しい知識の普及啓発と、サポート体制の構築を目指すことで、妊婦さんやご家族の皆さんを孤立させることの無い地域社会を実現させていくことが必要と考えています。
【答弁15】
次に、療育体制と障がい福祉体制をさらに充実させ、差別や偏見を徹底的に除去する為の取り組みについて、ご質問をいただきました。
障がいのある子どもが、差別や偏見を受けること無く、充実した療育、福祉体制の中で成長していくことは、大変重要だと考えています。
また、障がいのある子どもが健やかに成長していく為には、ひとりひとりの市民が障がいに対する理解を深めることが何より重要であると考えています。
本市では一般市民向けの講演会を開催したり、ガイドブックを作製するなど、障がいに対する啓発活動を行なっていますが、障がいのある子どもたちが差別を受けることなく成長できるよう、制度と市民の意識づくりに努めてまいります。
以上です。
フジノの再質問
市長、御答弁ありがとうございました。
ただ、御答弁いただけていない質問がいくつかありますので、まず先にその確認をします。
全市的な議論をしていくべきではないかという点について、どのようにお考えでしょうか。
また、特に『親の会』と議論・意見交換をすべきという点についてはどのようにお考えでしょうか、お聞かせ下さい。
市長の答弁
全市的な議論というのを、何をもってできたかできないかというのは、なかなか定義することは難しいと思いますし、こういった倫理的な側面のある案件についての議論というのは、実はなかなか終わりを見出すのも難しいというふうに思っています。
ですので、市としてはこれまでどおり丁寧な説明をした上で、希望される方に検査を実施していきたいというふうに考えています。
また、もう1ついただいたのが、様々な当事者の方の意見を聞くべきではないかというお話ですが、『障害児・者の親の会』などさまざまな意見はぜひ聞いていきたいというふうに思います。
フジノの再質問
それから、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー新規雇用あるいは養成の必要性については、つまり新規雇用するのかしないのか、養成するのかしないのか、これはどちらなのでしょうか。
市長の答弁
遺伝科の設置ということが難しい中では、養成をするということもなかなか難しいと思っています。
フジノの再質問
それから、遺伝科の設置について、病院管理者とも意見交換をしてほしいということについてはどのようにお考えでしょうか。
市長の答弁
そもそも遺伝科の設置ということについては、臨床遺伝専門医等を確保して設備を整え、また研究的なバックアップも必要になる中で、横須賀市では難しいと思っています。
ですので、こういったことについて管理者と相談をする予定はありません。
フジノの再質問
それでは改めて再質問に入ります。
まず、羊水検査が市立病院であるうわまち病院で実施されてきたことを、市長もそして議会人である僕も知らなかったということは、大変に残念なことだと思います。
そこで、ぜひ市長に申し上げたいのは、このようなことが2度と無いように、あくまでも公立病院ですから議会も行政も全容をきちんと知ることができるように、病院とも意思疎通を図り、情報提供に努めるよう要請をしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
市長の答弁
羊水検査については、当然何らかの形でみなさんが情報にアクセスできるようにしておくべきだったと思っていますが、ただ全ての検査、いろいろな検査手法も日進月歩で進んでいますので、それを変更のたび求めるというのは難しいと思います。
フジノの再質問
市長、全ての検査を求めている訳では決してありません。
このような社会的な議論が起きているような検査などについては、報告すべきというふうに受けとめています。
改めてお考えをお聞かせください。
市長の答弁
こういった情報にはアクセスできるようにしておくべきだったというふうに思っていますし、これからはそのように改善したいと思います。
フジノの再質問
今回の質問で最も僕が重視しているのは妊婦の健康を守ること、そして胎児も当然守ることです。
その中で、様々な検査方法、出生前診断方法がありますが、羊水検査は大変侵襲的であります。
侵襲的というのは少し言葉が難しいですが、羊水を取る為に針を使っておなかに穴をあける、つまり母体に傷をつけるという意味で侵襲的という言葉を使っています。
そして、流産のリスクがある。
ですから僕はできる限り羊水検査をやりたくない。
やらざるを得ないならば、遺伝カウンセリング体制をとったり、日帰りではなくて、せいぜいどんなに短くとも1泊2日は安静をとるべきだというふうに考えています。
そんな中で、羊水検査を今までどおり実施するという判断を市長がされた。
つまり「中止しない」というふうにお答えになったというのは、僕は無批判に継続するというお答えに聞こえてしまいました。
妊婦・胎児を守る立場に立てば、一旦中止するべきではないかというふうに思いますがいかがでしょうか。
市長の答弁
私としては、検査方法として当然リスクはあることは承知していますが、すでに確立しているものですので、特段中止する必要性というのは感じていません。
フジノの再質問
本当に確立されているものとお考えですか。
先ほどおっしゃったマススクリーニングには僕も大反対ですが、新型出生前診断がきちんとした遺伝カウンセリング体制のもとで行なわれてその件数が増えていく。
こちらは針で穴をあけたりしませんから、非侵襲的検査というのですけれども、非侵襲的検査が増えていくほど、羊水検査のような侵襲的検査、流産のリスクがある検査は減っていく傾向があります。
羊水検査のような危ない検査はなるべくやらないほうが良い。
市長は、さっきマススクリーニングの問題について指摘されて、僕も全く同感ですが、ただマススクリーニングで行なわれている手法の1つであるNIPTなどは、きちんとした体制で行なえば、羊水検査自体の数は減っていく訳です。
ですから、しっかりとした体制を持って検査も実施していくことで、母体にダメージが少ないやり方ができるのではないかというふうに考えています。
そうした研究が何も無いまま、一旦立ちどまることもないまま無批判に、国立病院から市立病院に移管された後も、議会にも市にも報告がないままに取り組みが進められてきた検査を一旦とめて、リスクとメリット、それから支援体制をしっかり考えるべきだというふうに僕は訴えているのです。
改めて市長のお考えをお聞かせ下さい。
市長の答弁
新たな検査体制等が、あるいは検査手法等が可能かどうかということの研さんも含めて、病院の中では取り組まれるべきだというふうに思っていますが、ただやはり選択の1つとして、そういった検査を受けたいという患者が来たときに、しっかりと対応できるようにしておく必要があると私は考えています。
フジノの再質問
それを公立病院があえて行なわなければならない理由は何でしょうか。
市長の答弁
当然市としてそれを用意しておく、そういった選択肢を用意しておくということです。
フジノの再質問
それでは僕がインターネット上にあふれていると批判したものと大して変わりないというふうに感じます。
公立病院の役割は、徹底して守ることではないですか。
特に小児医療など難しいものについては、市の繰出金も出していますし、公立病院が行うべきことは、議論の分かれている羊水検査をすることではなくて、まずは母体を守ることだというふうに受けとめています。
希望があるから行なうというのは、医療者のおごりだと私は考えています。技術がある、できるから行う、それはあってはいけないことだと思います。
公立病院ですから、行政、議会がコントロールできる病院です。その病院がこのようなやり方を無自覚に行なっているとすれば、それは市民サービスではありません。
もう1度市長のお考えをお聞かせください。
市長の答弁
現場の医師が無自覚に行っているかどうかというのは、私は今回確認することはできませんでしたが、基本的にはガイドラインというものを十分に説明した上で、その後の市として対応できること、できないことということについても説明をした上で、検査を受けるかどうかという話をしていますので、私としては不十分なまま羊水検査を行なっているというふうな環境にあるとは思っていません。
フジノの再質問
ガイドラインを御説明した上で、市のできないことも説明しているというふうにおっしゃいましたが、まず現状ガイドラインが守られていないのです。
遺伝カウンセリングもできていません。
その中で、市がこれを続けることは、聞かなくてもこれは医療者の無自覚なおごりだと私は思います。
今回質問をあえてしているのも、日本ダウン症協会は、あらゆる出生前診断に反対もしていません。
長い歴史の中でいろいろな意見を議論してきました。
けれども国としては議論を避けて、逃げてきた。母体保護法と刑法の間にはねじれがある。
こうしてずっと議論を先送りしてきたせいで、多くの妊婦の方々、障がいのある方々が苦しんでいる。
せめて横須賀だけでも議論を先送りせずに、一定程度のコンセンサスを得られるようにすべきだと思います。
先ほど、どこまで議論をすれば議論したことになるかわからないとおっしゃいました。僕も正直わかりません。
けれども、今うわまち病院で行なわれています。
羊水検査というのは、基本的には中絶も視野に入れた上で行なう検査のことを指しています。
たとえ妊婦の方がそうではないとおっしゃったとしても、頭の中には必ずそれがあるものです。
子どもの健康な姿を見たいという思いの裏には、健康でなかった場合には人工妊娠中絶も視野に入れるというのが羊水検査です。
ですから、それがこのまま今うわまち病院で行なわれているということを、一旦立ちどまって、本市はそれを公立病院が行なうべきなのかということを議論すべきだと思います。
少し足を伸ばせば、横浜市立大学附属病院にはNIPTもできる、きちんとした取り組みができる大きな病院があります。県立こども医療センターで遺伝カウンセリングも受けられます。
けれどもあえて身近なうわまち病院で行なう必要性があるとしたら、充実した支援体制があり、自分がふだんから受けている産科医師や助産師の方や看護師の方々からアドバイスを受けられるから受ける、初めてそのとき公立病院が行なう意義があると思うのです。
けれども、今全くそういう議論がないままに、妊婦が希望したら行ないます、説明はしたけれども十分な支援体制もありません、でも妊婦は必死だからとにかくやってくださいと言われたら行なう、それは市長、無責任です。
ぜひお考え直しいただきたいと思いますがいかがですか。
市長の答弁
私としては、丁寧な説明をこれまで心がけてきたからこそ、10年間で11名という患者の数だったのだろうと、これは想像ですけれども思っています。
私としても、そうした認定遺伝カウンセラーのカウンセリングを受けたいという話があれば、少し足を伸ばしていただく必要がどうしても出てきてしまいますが、そういった医療機関を紹介するべきだというふうに思っています。
ですので、11名の方も何らかの事情があったのだろうというふうに推測しますし、そうした中で市としての選択肢を用意しておくことは、やはり大事なことではないかというふうに思っています。
フジノの再質問
丁寧な説明だったから11名だったのでは、決してありません。
まず、第4次医療法が改正されるまで、病院において広告をすることは極めて限定されていました。
また、横須賀市立うわまち病院のホームページのどこを見ても、羊水検査について記述があるところを見つけることはできません。また、病院年報を見ても見つけることができません。
今回、たまたま他の市の行政が調べて、そして他都市事例として調査したから分かっただけのことで、この他都市が調べなかったら永遠に分からなかったと思うのです。
知らなかったから受診した人数も少ないだけ、知られていないから受けている人が少ないだけなのです。
市長、これはまずいです。
丁寧な説明をしたから11名だった訳では決してないと思います。
中には丁寧な説明をした結果、思いとどまった方もいるかもしれませんが、これは広告宣伝していないからです。
他の民間病院では、羊水検査をしている場合には謳っています。
そして、逆にこのような11年間で10名しか施術実績がないのに、その中でおなかに穿刺を差し込む、流産のリスクがあるような検査を続けることは、道義的にも許されるとは思えないのです。
それを選択肢として用意するのが市のあるべき姿だと、市長がお考えだとしたら、それは市長が「子どもが主役になれるまち」とおっしゃっていることとは全く反すると思うのですがいかがですか。
市長の答弁
ここは本当に推測の中での議論になりますけれども、妊婦、特に初産ともなれば、あるいは例えば高齢出産等になれば、自分のおなかの子どもの状態というのが気になっていく。
そうした中で、時代的にはさまざまな情報があふれて、自分が今妊婦健診で通っている医療機関が、そういった羊水検査等の検査を行なっているかというのは、当然気になる話だというふうに思います。
そうした中で、うわまち病院としては、希望があれば相談に乗って、できることできないことを整理した上で患者にお示ししてきていますから、そこまで道義的に批判を受けるような体制で実施しているとは、私は思っていません。
フジノの再質問
我が国が署名している婦人差別撤廃条約ではこううたっています。
「個人及び夫婦は、子どもの数、出産間隔を自由かつ責任を持って決定し、そのための情報と手段を持つ権利を有する」
これはつまり仮に産むにせよ、産まないにせよ、適切な情報提供体制そして真に社会的支援体制がなければならないということを、世界的に約束したという条約だと受けとめています。そして日本政府もこれに署名した。
当然、我がまちにもこの条約の網というのはかかっている訳です。
そして羊水検査をやっているということは、もう既にこの条約の中で書かれている取り組みに、横須賀市もかかわりを持っているということなのです。
羊水検査はパーフェクトな検査ではありませんし、それをさらに支援体制が十分でないまま行なうというのは、許されるべきことではないというふうに思っています。
市長は、認定遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医を養成しないというふうにおっしゃいました。
この理由は何故ですか。何故こうした存在を養成しないのでしょうか。
僕が少し調べただけでも、臨床遺伝専門医は市内5カ所の病院、診療所にいらっしゃいます。
何故、民間の診療所・病院ができることが、これだけ高い医療の質を誇るうわまち病院にできないのでしょうか。
市長の答弁
遺伝科というものの設置があって初めてこういった総合病院での臨床遺伝専門医等の威力が発揮されるというふうに思っていますが、遺伝科の設置には大きなハードルがあると思っていますので、結果としては臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの養成もすることはない、というふうに思っています。
フジノの再質問
遺伝科の設置が前提だからというのは、どなたがお決めになったことですか。
市長ですか。それとも病院管理者との何か話し合いを持ってお考えになったことですか。
市長の答弁
遺伝科の設置は難しいというのは、私も答弁調整の中で状況を把握して、これはなかなか難しいというふうに判断いたしました。
また、臨床遺伝専門医の医師そのものがやはり少ない。県内でも今は69人しかいない。
認定遺伝カウンセラーとなるとさらに県内では10人しかない。
そういう状況下で、こういった医師の方の確保というのは難しいだろうという認識です。
フジノの再質問
理解できません。
うわまち病院には全国で2カ所しかないがんに対する治療機器を導入したりしています。先進的な取り組みをしてきたのが市立うわまち病院です。
機器を買うのは簡単ですけれども、医療は人であるはずです。
そして、今県内の臨床遺伝専門医の数と認定遺伝カウンセラーの数をおっしゃっていただきました。
この状況は僕ももちろん承知しております。
認定遺伝カウンセラーは2014年11月現在、全国レベルで見ても161人、確かに大変少ないです。だからこそ横須賀はやるのではないですか。
求めている人がこのまちには必ずいます。
そして、横浜やあるいは遠くの町へ、これは羊水検査に限らず、様々な検査、出生前診断をしてから、また全然知らない、かかりつけ医ではない産婦人科に行ったりして、そしてそこで遺伝カウンセリングを受ける。
わずか2週間の中で、自分のこれまでの妊婦健診や来歴を一切知らない人にゼロから全てをお話しして、わかってもらって、そこで中絶するか否かを決めるなどということは、普通はできないです。
そして、僕は必ず遺伝カウンセリングができる機関を紹介する方針に変えよというふうに申し上げましたが、それもしないというふうに、多分お答えいただいたのではないかと思っています。
何故そのような無責任なことが言えるのかが全く理解できません。
必ず出生前診断を受ける人の数は増えていきます。実際問題として増えています。
そのような状況の中で、後追いではありますが、横須賀市立うわまち病院が専門的な支援体制をつくっていくことこそが、市民への選択肢として提供するにふさわしいのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
市長の答弁
現状では臨床遺伝専門医がいないこと、認定遺伝カウンセラーがいないこと、そういったこともつまびらかにお話ししていますし、そういった医療機関が横浜市内を初め県内には5病院あるというようなことも情報提供していますので、私としては今、例えば遺伝科の設置であるとか、あるいは臨床遺伝専門医の雇用ということよりも、そういったさらに専門性の高い医療機関への御紹介ということのほうが妥当なのではないかと思います。
フジノの再質問
そのような姿勢は、母子ともに、妊婦、胎児ともに守っていくという姿勢とはとても受けとめられず、大変残念です。
今後もこの問題についてはお話をぜひ続けていきたいと思います。
支援体制の確立については平行線なので、唯一歩み寄れるかもしれないダウン症候群の方々の現実の姿を知ってもらうことについて、改めて意見交換、議論したいというふうに思います。
こうした姿を知ってもらうことの重要性は、先ほど御答弁いただきました。
どのようなことができるか研究したいというふうに御答弁いただきました。
どのような支援ができるかを研究するに当たって、ぜひ福岡の受容ネットを調べていただきたいというふうに思いますがいかがでしょうか。
市長の答弁
調べてみたいと思います。
フジノの再質問
そして調べるだけではなくて、今も横須賀市は障がいのある方に理解を求めるガイドブックをつくったばかりですし、そうした啓発はさらに進めていくことになると思うのです。
ただ本はただの本でしかなく、ホームページに掲載している情報は、ただのホームページに載っている情報に過ぎません。
実際にお子さんを育ててこられたお母さん方の、産んだ、育てたお母さん方の生の声や幸せそうな姿を、実際にピアの立場として妊婦の方やお母さんに会って、そして声を聞いてほしい。そういう場もぜひ作ってほしいというふうに思うのです。
そこも視野に入れて、先ほど『親の会』との意見交換はしていただけるということだったので、ぜひそういった提案が議会であったのだということも投げていただきたいのですがいかがでしょうか。
市長の答弁
やはり療育や福祉の体制の中で、先輩と言っていいと思うのですが、先輩保護者の方の意見というのは、大変プラスになると私も思っています。
現状は様々な支援団体がある中で、そういった先輩保護者の方へのアクセスがしやすい時代になってきていますけれども、ぜひ障害児・者の親の会の皆さんなどにもお話を聞いてみたいと思います。
フジノの再質問
いや、アクセスは全くできないです。
みなさんの周りで、今度妊娠した、子どもが生まれるという人に、障がいのある方々と実際にしゃべったことがあるという生の体験を持っているかどうか、ぜひ聞いてみていただきたいのです。
今、学校で児童・生徒の皆さんは、障がいのある児童・生徒の方と接する機会がふえているかもしれませんが、今、親になる世代の方々は、どこまで実際に接した経験があるのか、まずその時点から怪しいです。
加えて、同級生として育っただけではなくて、自分の子どもとして持つ、そして一緒に暮らしていく、そういう声を聞く機会などある訳ないではないですか。
アクセスしやすいと言いますけれども、それはさっき申し上げたホームページやインターネットで見られるというだけなのです。
ですから生の声を聞く機会をぜひ設けてほしいと申し上げているのは、そういう意味なのです。
ですから、繰り返しになりますが、『親の会』のみなさんに、生の声を、ピアとして、市長がおっしゃったように先輩として聞ける場をぜひつくってもらえるように投げかけていただけないかというふうに思うのです。
『受容ネット』みたいな正式な存在にならなくても結構です。
横須賀市は出生前診断を受けた方には、受けたいと思っている方には、必ず親の会のみなさんの声を聞ける場を提供しますというような形を、ぜひ作っていただきたいと思っているのです。
これは僕の構想に過ぎませんが、市長、改めて答弁をお願いします。
市長の答弁
少し議論がかみ合わない理由はよくわかったのですが、私は出生後であれば、障害のあるお子さんが出生された御家族の方々の受容のプロセスというものは、地域全体で守らなければいけないですし、『親の会』等ともつなげなければいけないし、つなげやすい環境は整っているという思いで、私は答弁いたしました。
ただ、議員の質問は出生前のお話ということでしたが、どういう形でそれをやればいいのかというのは、極めて難しいと思いますので、まずは本当に『親の会』のみなさんの御意見を聞いていきたいというふうに思います。
フジノの再質問
最初にみずからの立場を申し上げたとおりで、女性の基本的人権であるリプロダクティブライツ、そしてチョイスは守られるべきだと思っています。
そして同時に、障がいのある人々の生の姿を知っていただけば、人工妊娠中絶をする人も減るのではないかというふうにも思っております。
その上で、生の声、生の姿をあらかじめ知っていただいて、そもそも出生前診断を受けるのか否かを悩んでいる状態からアプローチできるように、ぜひしていただきたいというふうに思うのです。
ほとんどの妊婦は、子どもがおなかにできたということの喜びの中にあって、そして健康であるといいというような気持ちで出生前検査を受けると思うのですが、その後、陽性あるいは染色体異常があるといったときに、あらゆる混乱の中に追い込まれます。
そのときにサポートする体制を、横須賀市が提供しなくてどうするのでしょうか。
病院に任せきりにするのは絶対に良くないというふうに思います。
そして公立病院を持っていて、療育も行なっていて、障がい福祉も行なっていて、そして子育て支援、生涯を一貫した療育から障がいに関する体制をとり始めた横須賀市だからこそできる支援というのがあると思うのです。
ぜひそこを研究し続けていただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
市長の答弁
出生前診断についての研究はぜひ進めていきたいと思います。
しかし、やはり留意しなければいけないのは、決して出生前診断の件数が増えるのは良いことではないというふうには思っていて、私としては妊娠当初から、お子さんをつくるというところから、その子どもを受け入れるプロセスというのを大事にすべきだというふうに思っていますので、生まれてきたお子さんがどういう状態か、それをどう受け入れていくかといったプロセスについて、特に行政として寄り添う必要性を強く感じてはいます。
けれども、出生前診断ということをいたずらに広げる、そういった選択肢がたくさんあるということは、やはり倫理的な問題がすごく多く取り巻くところだというふうに思います。ぜひそのあり方については、市としても研究は進めていきたいと思います。
フジノの再質問
市長のナイーブな御回答の一方で、現実はインターネットで出生前診断と入れればいくらでも広告が出てきます。
それをつぶせる、対抗できるのは公立病院です。
公立病院の産科がしっかりとした体制をつくって、そのようなインターネットなど絶対に使わないのだというふうに、妊婦の方、配偶者の方にわかってもらうことです。
僕は、出生前診断自体が増えること自体は構わないと思っています。
それは先ほど申し上げた婦人差別撤廃条約にも書かれている女性の権利ですから。
僕はそうではなくて、出生前診断を行なた、障がいがあるとわかった、でも障がいがあってもなくても関係ない、幸せに育てていける、幸せな暮らしができるのだという生の姿を知ってもらいたいと思っているのです。
それが無いままであれば、市長のおっしゃるようにただ中絶が増えるだけだから出生前診断は行なわないほうがいいというふうな話になります。
僕は、改めて公立病院が出生前診断をやる意義・意味を考えてほしいと思います。
子どもにも選ばれるまちを市長はうたっています。その中に障がいのある子どもが必ず入っていてほしいと願っています。
その意味で、ぜひ今回の質問は、最初の一歩だと思っています。
これからも命の倫理観について、もちろん議論していきたいですし、そして女性の基本的人権を守っていくことについても、議論を深めていきたいと思いますので、これからもぜひ議論をさせていっていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。