LINEを活用した福祉の相談窓口開設にあたって事前に細心の注意をもって準備すべき点について
藤野英明です。
議案第169号・令和3年度横須賀市一般会計補正予算(第11号)中『LINEを活用した福祉の相談窓口開設』について質疑を行ないます。
以下、この取り組みを『LINE福祉相談』と呼びます。
今回このLINE福祉相談開設について改めて補正予算が提出された経緯を振り返ると、担当課としては10月からスタートさせようとしていた取り組みを、さきの9月議会で僕が問題提起をして、待ったをかけました。
何故ならば、そもそも3月の予算議会で示された原案では今年度予算の新規事業の目玉と言える取り組みであったのが、大きく姿を変えてスタートしてしまう直前だったからです。
LINE福祉相談の原案は、市民と行政のタッチポイントを増やす為に、また行政サービスが必要なのにつながらない人が行政につながりやすくなる為に、LINEを使用して福祉相談を受けるという素晴らしい取り組みでした。
しかし、LINE社が起こした個人情報保護の問題から、
「地方公共団体はLINE社の公式アカウントをそのまま利用しての相談業務はできない」
と政府がガイドラインを発出しました。
このガイドラインを受けて担当課は、原案の形でのスタートをいったん諦めてしまいました。
つまり、個人情報が含まれた形での相談はやめて、一般的な福祉情報を発信する取り組みに方針を変更して10月からスタートすることにしてしまったのです。
しかしこれでは全く効果が見込めないと考えた僕は、ガイドラインに沿った形で個人情報を扱えるよう対策を取った上で、原案の形に戻して実施してほしい、その実現には新たな予算が必要となるけれど、人の命に関わる問題だからと上地市長に訴えました。
それに対して上地市長は、10月スタートをいったんストップさせて、そして原案で目指した姿を実現する為に再検討を行なうと答弁してくれました。
市長の決断を受けて、地域福祉課長をはじめ、担当課のみなさんはこんなにも短い限られた期間の中で、全力を尽くして対応してくれました。
そして今回、まさに9月議会での提案どおり、原案の形へと取り組みが大きく改善されて補正予算として提出されたのです。
ホッとするとともに、深く感謝しています。
これまで市役所に相談する機会の全く無かった方々がコロナ禍で新たな見えない貧困に追い込まれてしまいましたが、市役所の日曜開庁に加えて、このLINE福祉相談窓口の開設によって、新たに相談につながる機会をもたらすはずです。
さらに、コロナ禍が収束した後においても、電話や対面での相談の習慣の無い、ふだんから家族や友人とのやりとりにはLINEなどSNSしか使わない世代の市民の方々と、行政の新たなタッチポイントの役割を果たし、福祉サービスが必要な方の相談窓口として大切な役割を必ず果たすはずです。
市民の命と暮らしが守られる素晴らしい取り組みになると確信しています。
上地市長、そして地域福祉課のみなさん、改めて本当にありがとうございます。
さて、それほどまでに重要な役割を果たす取り組みだからこそ、来年2022年2月のスタート前に、細心の注意をもって準備しておくべき対応があります。
それは、このLINE福祉相談に
「死にたい」「今すぐ自殺してしまいたい」
などの助けを求めてこられる方が必ず一定数おられると想定して対応しておくことです。
そもそもこのLINE福祉相談は、いのちの電話のようなホットライン的存在ではありません。
それでもあらゆる相談窓口には、必ず緊急性・即時性の高い助けを求めるメッセージが送られてくるものであり、本市のLINE福祉相談も例外にはなりえません。
この点についてはすでに担当課とも意見交換をしてきましたが、本市を頼って「死にたい」と助けを求めた方がサポートを受けられずに自殺へ追い込まれてしまった、そんな事態を絶対に避ける為にも、本市があらかじめ取っておくべき対応について、市長のお考えを伺います。
まず、事前の徹底した周知の必要性についてです。
LINE福祉相談のスタートにあたって、プレスリリースや市民向けの広報(広報よこすかや本市HP、取り組みをお知らせするチラシなど各種媒体)を出す際は、そもそもこのLINE福祉相談の役割は「死にたい」という想いに追い込まれた方への
即時の緊急対応はできない性質のものであることを、あらかじめ丁寧に周知する必要があります。
また、24時間365日の対応ではなくて、返信はあくまでも平日の市役所が開庁している時間帯しかできず、それ以外の平日夜間や土日祝日は定型文による自動返信しかなされないことを、やはりあらかじめ丁寧に周知する必要があります。
これにより、まずは一定数の方のご理解は得られるはずです。そこで伺います。
【質問1】
本市のLINE福祉相談の性質をぜひあらかじめ丁寧に周知していただきたいのですが、いかがでしょうか。
ただ、この事前の周知をどれだけ丁寧にアナウンスしても、孤独と孤立へ追い込まれてしまった方の中には藁にもすがる思いで本市LINE福祉相談へと緊急性の高いメッセージを送信して助けを求める方がおられる可能性は高いです。
むしろそうしたメッセージは必ず来るとの前提であらかじめ適切な対応を決めておくべきです。
そこでまずは、市役所が開庁している時間内の対応について伺います。
【質問2】
市役所の開庁時間内に「今から死ぬ」などの緊急性の高いメッセージを受けた場合については、LINEの返信を担当する地域福祉課は、自殺対策に取り組む保健所健康づくり課と即時に連携して一丸となって対応できるように、あらかじめ対応方法などを協議しておく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
次に、市役所が閉庁している場合の対応について伺います。
本市のLINE福祉相談は24時間365日対応では無い為、市役所の閉庁時間や土日祝日の場合は相談者には定型文が自動返信されます。
この自動返信の内容は、他の相談機関へスムーズにつながることができる、丁寧なご案内となるように検討していただきたいのです。
例えば、24時間365日対応でLINE相談を行なっている取り組み(例.NPO法人あなたのいばしょによる「あなたのいばしょチャット相談」など)や、
平日夜間や土日等もLINE相談を行なっている取り組み(例.NPO法人自殺対策支援センターライフリンクによる「生きづらびっと」、NPO法人東京メンタルヘルス・スクエアによる「こころのほっとチャット」など)があることをぜひお伝えいただきたいです。
また、年齢に応じた相談の取り組み(例.NPO法人BONDプロジェクトによる「10代20代の女の子専用LINE」、NPO法人チャイルドライン支援センターによる18才以下の子どもの為のチャット相談「チャイルドラインチャット相談」など)もあります。
そして、それぞれの相談機関にリンクを貼って、相談者の方がワンクリックでつながることができるようにぜひしていただきたいのです。
【質問3】
本市を頼って「死にたい」とSOSを発信してくれた相談者の方が自動返信を読んで諦めてしまうのではなくて、ただちにつながることができる他の機関へ再びSOSを発信していただける内容となるようにぜひ工夫をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
最後に、市役所がオープンしたのちにはメッセージを送って下さった相談者の方に必ずフォローの対応が必要です。
今回の補正予算案で提案されている仕様では、相談者の方がLINE福祉相談に発信した内容はログとして記録に残るとお聞きしています。
【質問4】
そこで、自動返信をしたメッセージについて、その内容が「死にたい」といった緊急性の高い内容であった場合には、必ず市役所側は開庁後に即時に返信して、相談者の方のフォローをしていただきたいのです。
もちろん安否確認の意味もあります。
しかしそれ以上に
「横須賀市は決してあなたをひとりにしない」
「決して手を離さない」
ということをお伝えするとともに、相談者の方とのつながりを作ってほしいのです。
そして、必要な支援を提供できるようにぜひしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
以上4点について、市長からの答弁をお聞きすることを通じて、新たにスタートするLINE福祉相談のいざという時の対応を議会のみなさまと共有させていただく機会とさせていただければと思います。
よろしくお願いいたします。