2023年12月議会・一般質問

1.横須賀市立総合高校入学試験の追試の対象に生理を明確に含める必要性と環境整備について

正式な医学用語では月経と呼んでいますが、本質問においては、月経、月経前症候群、月経痛、月経困難症など「月経とそれに伴う諸症状」を総称して、以下、「生理」と呼びます。

さて、生理は女性の人生や生活の大きな部分を占めており、月に1度のペース、1度の月経期間を5日として計算すると年に60日は月経日があります。

そして月経の前後には様々な心身の変化が起こります。

月経前に起こる身体的・心理的な不調を月経前症候群(以下、PMSと略します)と呼びますが、痛み、むくみ、いらいら、憂鬱、気分変動、涙もろさ、不安などをはじめ、ふだんからある片頭痛やてんかんやぜんそくなど疾患の悪化が起こる方もいます。85~95%の女性が軽度PMSとされ、20~30%の女性が中度PMSと診断されうる、との統計があります。

また、月経に伴って、下腹痛、吐き気、頭痛、疲労、食欲不振、下痢、抑うつなどの「月経困難症」の症状が起こる方は、我が国では約900万人にのぼると言われています。

こうした生理に伴う困難を無視して社会が何も対応をしないことは、女性の機会損失となるだけでなく、社会・経済の大きな損失にもつながります。

そこで我が国では労働基準法において生理休暇制度を規定しています。また世界全体においても、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」を実現する為にも、生理をセンシティブで相談しづらいものとせずに、政府や自治体や企業があらゆる取り組みを実施していくことが求められています。

(1)現在、市立総合高校入学試験の追試の対象に生理が含まれているか否かについて

このような世界的な動きの中で、本市の市立総合高校の入学試験(以下、入試と略します)に目を向けたいと思います。

受験生の人生を大きく左右するのが入試です。

11月17日の毎日新聞によると、全都道府県を調査した結果、公立高校の入試と生理が重なった受験生への対応について「追試の対象となる」と回答したのはわずか15道府県にとどまりました。

「生理は追試の対象とならない」と回答したのは11県でした。

追試とは、病気や事故などで入試を受けられなくなった受験生に、別途、実施される試験のことです。市立総合高校においても、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症を理由とした欠席については、追試の機会を保障しています。

市立総合高校の入試の様々な基準は、基本的には神奈川県教育委員会の基準に準拠したものとなっています。

今回、毎日新聞の調査に対して神奈川県は明確な回答をしませんでした。そこで本市の現状について教育長に伺いたいと思います。 

【質問1】
現在、市立総合高校の入試の追試の対象に、生理は含まれているのでしょうか。

(2)公立高校入試の追試の対象に生理を含めることを可能とする文部科学省通知への本市の対応について

毎年、文部科学省では高校入試での配慮事項などを教育委員会に通知してきました。例えば、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症を理由とした欠席は、追試によって受験生の受験機会を確保するように求めてきました。

しかし生理による欠席への対応は通知に明記されてこなかったことから、さきの毎日新聞調査のように、都道府県ごとに対応が分かれてしまっています。

そこで11月16日に開かれた参議院文教科学委員会でこの問題について問われた盛山文部科学大臣は、

「月経に伴う諸症状を含め、本人に帰責されない健康上の理由で受験できない生徒の受験機会を確保することは重要だ。教育委員会に柔軟な対応を促していく」

と答弁しました。

これは現実に即したとても大切な答弁でした。

メディアによると、答弁を受けて、年内に文部科学省は生理による体調不良での追試を可能とする通知を発出すると報道されました。この動きは女性の機会損失や社会全体の損失を防ぐとともに、ジェンダー平等を実現する非常に重要な決断だと高く評価したいです。

この文部科学省通知を好機として、本市は新たに市立総合高校入試の追試の対象に生理を含めるべきだと僕は考えています。

ただ、先ほど述べたように、市立総合高校の入試の基準は神奈川県教育委員会の基準に準拠したものとなっており、本市教育委員会だけでは決定することができない現状があります。

担当課によると、この通知を受けて神奈川県は、横浜市・川崎市・横須賀市それぞれの教育委員会と対応を協議していく予定であると伺いました。

通知はあくまでも可能とするとの規定なので、追試の対象としないこともできてしまいます。

しかし、これは女性の機会損失や社会・経済的な損失に直結する、そしてジェンダー平等の実現にとって重要な判断となります。市立総合高校入試の追試の対象に生理を明確に位置づける為にも、ぜひ県との協議の場で本市教育委員会として強く訴えていただきたいです。

そこで教育長に伺います。 

【質問2】
文部科学省通知への対応に関する神奈川県との協議の場において、本市は生理による欠席を追試の対象に含めるべきと強く訴えるべきではないでしょうか。

(3)生徒たちが欠席理由を生理であると申告しやすい環境整備の必要性について

今回の質問を作るにあたって最も心配したことは、思春期の受験生が欠席理由を生理であると果たして申告できるだろうか、ということでした。

有識者たちも、今回の盛山文部科学大臣の答弁を受けて、その方針を高く評価しつつも、現状では生理の症状が重い生徒の大部分が体調不良を申し出ることができていない、と指摘しています。

思春期の生徒たちが自ら生理による体調不良を申し出るのはとても勇気がいることです。

だからこそ、制度のあり方を変えて自治体が追試を認めると明確に打ち出すことそのものが、生徒たちに「生理で苦しいときに無理しなくていい」というメッセージを送ることにつながるとその意義を説いています。

実務としては、入試を欠席する際、受験生は中学校に欠席の連絡をし、中学校が高校に欠席の連絡をしてくれる形になります。つまり、生理による欠席であると申告する相手は、保護者や中学校の先生となります。

そこで複数の中学生に、受験を欠席せざるをえないとしてその理由を生理だからと保護者や先生に素直に言えるかどうかを尋ねてみました。

その結果、ほとんどの中学生が無理だと思うと答えました。先生以前に母親にも言えないと述べた生徒もいました。これが実態だと思います。

そこで、市立総合高校入試の追試の対象に生理を含めることが実現するか否かを問わず、生理は誰にでも起こる極めて自然でごく当たり前のことで、決してひとりで抱え込むべきではない、つらい時には率直に保護者や先生にそれを伝えても良いのだ、と生徒たちが感じることができる環境整備が必要です。

そこで教育長に伺います。

【質問3】
生徒たちが欠席理由を生理であると申告しやすい環境整備が必要ではないでしょうか。

2.施行5年目を前に「横須賀市男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例」にアウティングの禁止を明記する改正を行う必要性について

上地市長が当選したからこそ実現したことの1つに、多様な性のあり方を横須賀市が明確に条例に位置づけたことがあげられます。

誰も一人にさせないまちを目指し、性別、性的指向、性自認等にかかわらず、全ての人が主体的に行動できる社会を形成する為に「横須賀市男女共同参画推進条例」を「横須賀市男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例(以下、本市条例と略します)」に改正し、2019年4月1日に施行しました。

条例改正の提案者として僕は審議会の全ての議論に立ち会い、1つ1つの条文に思い入れを持ってきましたし、全会一致で可決された本市条例を誇りに感じています。

しかし全ての条例は常に時代に即した内容へブラッシュアップし、改善していく必要があります。本市条例も来年で5年目を迎える訳で、改めてゼロベースで検証をしてみました。

そして、全国の類似の条例と比較などをした結果、2023年現在、本市条例に欠けていると感じたことは、アウティングを明確に禁止する条文です。

アウティングとは本人の同意なく性的指向や性自認を第三者に暴露するもので、暴露する側が無意識や軽い気持ちであっても暴露された人の居場所や命も奪いかねない重大な人権侵害です。実際に2015年には、同級生に性的指向を暴露された大学院生が自殺に追い込まれてしまったことが社会問題となりました。

本市においても審議会でのやりとりの中で、我が国のジェンダー研究の第一人者である金井よしこ委員から「カミングアウトの自由とアウティングの禁止」を明記すべきだとご提案をいただきました。そして盛り込まれたのが、基本理念を明記した第3条(6)です。

条文を読み上げると、「性的指向、性自認等に関する公表の自由が個人の権利として保障されること」です。当時の議論をはっきりと僕は覚えています。

だからこそ、僕も、横須賀市も、この第3条(6)をもって「カミングアウトの自由とアウティングの禁止」を基本理念に明記したと考えてきました。

例えば、本市条例を市民のみなさまにご案内する為のパンフレットにおいても「この条例改正の主な特徴としてカミングアウトの権利・アウティングの禁止を新たに加えました」と紹介しています。

また、今年からスタートした第6次横須賀市男女共同参画プランにおいてもカミングアウトとアウティングについてページを割いて説明しており、アウティングの禁止をお伝えしています。

けれども残念ながら、自治体関係者の法制執務支援をしている一般社団法人地方自治研究機構の調査研究をはじめ、研究者やマスメディアから、本市条例の今の条文ではアウティングの禁止を読み取れない、つまり本市条例はアウティング禁止を明記していると認識されていないのです。

同機構の調査によるとアウティング禁止を明記している条例があるのは全国で26自治体とされており、本市は含まれていません。

例えば神奈川県では、逗子市だけがアウティング禁止を明記した条例を持つとされています。

そこで僕はこの26自治体の条例全てに目を通したのですが、確かに本市条例の第3条(6)よりもさらに踏み込んだ表現がなされていました。

カミングアウトの権利を規定した上で、カミングアウトの強制を禁止するとともにアウティングを禁止する具体的な条文が記されています。

例えば、「何人も性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も強制し、もしくは禁止し、または本人の意に反して公にしてはならない」、といった条文や、アウティングを具体的に定義して禁止している条例もありました。


逗子市の場合は「何人も他人の性的指向又は性自認に関して、公表を強制し、もしくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない」としています。
 
確かに分かりやすさにおいても具体性においても、本市条例の第3条(6)と26自治体の条文との違いは明白でした。

具体的に分かりやすく定義し、または禁止する内容を明示することは、いわゆる性的マイノリティとされる当事者の方々にとっても分かりやすく、安心につながるものです。
 
またアウティングの禁止が分かりやすく明示されることによって、これまでも取り組んできたことではありますが、苦情や救済の申し出など被害者救済にもつながりやすくなるはずです。


こうしたことから僕は、本市条例を改正すべきだと考えます。

例えば、現行の第3条(6)は「カミングアウトの自由」を規定したものと位置づけ直して、新たに(7)として「アウティングの禁止」を具体的かつ分かりやすい表現で加える。

または「性別等による人権侵害の禁止」を明記した第8条に、新たに第2項として「アウティングの禁止」を加える、などの改正が必要です。

誰も一人にさせない街を目指している上地市長だからこそ実現した本市条例ですが、改めて市としてアウティング禁止を明確にすることで、当事者のみなさんと社会全体に対して、本市の強力なメッセージを発信すべきです。

そこで伺います。

【質問4】
「横須賀市男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例」にアウティングの禁止を分かりやすくかつ具体的に明記する条例改正を行うべきではないでしょうか。

3.制度開始5年目を前に横須賀市パートナーシップ宣誓証明制度をさらに改善する必要性について

上地市長が当選したからこそ実現したもう1つの大きな改革が、パートナーシップ宣誓証明制度です。

婚姻の平等が認められていない我が国において様々な不平等に苦しめられている同性パートナーをはじめとする方々に、本市は同性カップル・同性パートナーを公的に認める大きな社会的うねりを起こしました。
 
2019年4月に開始したこの取り組みも来年5年目を迎えますが、先の本市条例と同じく、時代に即したバージョンアップが必要であり、ゼロベースで検証しました。
 
そこで今回3点について改善を提案します。


その実現によって必ずより良い制度になると考えています。

(1) パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員を扶養手当の対象とすべきではないか

2018年12月定例議会での一般質問において、僕は本市職員がパートナーシップ宣誓証明書を取得した際の福利厚生や人事制度のあり方について質問しました。
 
その結果、上地市長の強いリーダーシップによって、結婚休暇に相当するパートナーシップ休暇が実現し、結婚祝い金、葬祭扶助金の支給も実現しました。
 
しかし、残念ながらいまだ実現していないのが、扶養手当の支給です。
 
当時、僕の質問に対する市長の答弁は

「事実婚の場合の扶養手当については事実婚が客観的な事実として確認できれば、その他の認定の為の条件は法律婚と同様として支給対象としています。パートナーシップ制度を利用した職員に対して扶養手当を支給することについては、事実婚と同様に支給できるのか
検討していきたいと考えています」

と前向きなものでした。
 
けれどもその後、残念ながら実現に至っておりません。

いわゆる性的マイノリティとされる当事者の市職員も含めて全員が等しく扱われ、自分らしく働くことのできる環境整備が不可欠です。
 
世間ではこの取り組みに追い風が吹いています。

11月10日、神奈川県が、同性パートナーがいる県職員についても来年4月から事実婚と同様に扶養手当の対象とすることを発表しました。重要な決断を行ったと評価したいです。

同様の仕組みはすでに11都府県で実施されています。
 
本市に話を戻すと「検討をしていく」と市長答弁を頂いてからまる5年になります。今こそ市長に政治決断をしていただきたいです。そこで伺います。 

【質問5】
パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員を扶養手当の対象とすべきではないでしょうか。

(2) パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員に出産補助、育児、忌引、介護など各種休暇を取得できるようにすべきではないか

2018年12月定例議会で提案したものの扶養手当と同じく実現していないのが、出産補助、育児、介護、忌引などの各種休暇の取得についてです。
 
結婚休暇に相当するパートナーシップ休暇は実現しました。


しかし、その他の各種休暇については、異性であれば事実婚でも取得が認められているにもかかわらず、パートナーシップ宣誓証明制度を利用した市職員の取得が認められていません。


認めない合理的な理由は見当たらず、このまま放置すれば、市による差別的な待遇にあたると強く危惧しています。

神奈川県は同性パートナーがいる県職員に対しても、出産補助、育児、介護などの休暇を来年4月から取得できるようにするとのことです。

県職員と同様に、同じ公務員である本市職員も待遇が平等に改善されるべきです。

この積み残した課題についても、市長の政治決断が求められています。そこで伺います。

【質問6】 
パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員に、出産補助、育児、介護、忌引など各種休暇を取得できるようにすべきではないでしょうか。

(3) パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員が死亡退職した際、パートナーに対して退職手当を支給すべきではないか

昨年11月、東京都はパートナーシップ宣誓制度導入に伴い、あらゆる福利厚生制度を同性パートナーに拡げました。

これがきっかけとなり、今年5月には東京23区の給与制度などを調整する特別区人事厚生事務組合が23区に対して、区職員に対しても同性パートナーも配偶者と同等とみなして支給するように、通知を出しました。

こうした新たな動きの中で、僕が最も強く取りあげたいのが、在職死亡時の退職手当の支給についてです。
 
本市職員をはじめとする公務員は、激甚化する自然災害等をはじめ市民のみなさまの命を守る為に職務を遂行する中で命を落としてしまうことがありえます。

その際、配偶者や家族のその後の暮らしを少しでも支えていく為に、在職死亡時の退職手当の支給が存在しています。

大切な人の命にかわるものではありませんが、それでもこの手当の存在はその人が存在したことの証とも言える、極めて重要な手当です。
 
しかし現在、パートナーシップ宣誓証明制度を利用した方々が支給対象に含まれていません。
 
本市の「職員退職手当条例」第2条によると「死亡による退職の場合にはその遺族に支給する」と定めています。

第21条ではその遺族の範囲及び順位を定めていますが、第1順位を配偶者とし、「届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む」と定義しています。
 
この「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に本市パートナーシップ宣誓証明制度を利用した方も含まれると判断し、現状を改善すべきです。
 
全会一致で可決・施行されている「横須賀市男女共同参画及び多様な性を尊重する社会実現のための条例」第8条では

「全ての人は、いかなる場合においても、性別等による差別的な取り扱い及び暴力による人権侵害を行ってはならない」

と規定しています。この性別等による差別的な待遇の中に同性パートナーであることによる差別が含まれることは自明の理であります。
 
また、すでに本市ではパートナーシップ宣誓証明制度を利用していれば、市営住宅の入居が可能であり、また結婚休暇に相当するパートナーシップ休暇の取得もでき、結婚祝い金も葬祭扶助金の支給もなされています。

さらに本市は来年1月から県内初のファミリーシップ制度をスタートして、パートナーだけでなくそのこどもたちも含めた家族まるごとの暮らしやすさの保障を進めていくことを打ち出しました。
 
以上のように、東京都および23区の動向、本市条例第8条に基づく差別的な取り扱いの禁止、パートナーシップ宣誓証明制度に基づいて制度の利用者を事実婚と同等の取り扱いを継続してきたこと、さらに家族まるごとの暮らしやすさの保障を進める本市の姿勢などを踏まえれば、職員退職手当条例の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」にパートナーシップ宣誓証明制度利用者が含まれるとの判断が妥当です。
 
命をかけてまで働くべきではありませんが、それでも公務員という立場上、一身の危険を顧みずに職務を遂行せざるを得ない現実を考えれば、残された家族の為にも在職死亡時の退職手当の存在は大きな安心感につながります。

可能な限り早く対象とすべきです。

そこで伺います。

【質問7】
パートナーシップ宣誓証明制度を利用した本市職員が死亡退職した際、パートナーに対して退職手当を支給すべきではないでしょうか。