2010年度当初予算案に対するフジノの「反対討論」
藤野英明です。
議案第21号に反対する立場から討論を行います。
議案第21号は、本市の『一般会計』の新年度予算案です。
『一般会計』とは、『特別会計』や『企業会計』など他の予算とは異なり、市長の政策的な姿勢が最も強く打ち出されるものです。
さらに、この予算は吉田市長が初めて組んだ予算案ですから、誰もが希望を感じられる『新しい横須賀』の実現に向けた吉田市長の姿勢が強く反映された予算案でなければならないはずです。
そして、この予算案を通じて、市民のみなさまとの契約である『マニフェスト』と選挙を通じて訴えた『公約』を共に実現していくものでなければならないはずです。
しかし、僕は4つの理由から、この予算案に反対します。
第1の反対理由:吉田市長にはハコモノ3兄弟への抜本改革を行なう意思がない
まず、第1の理由は、予算議会冒頭の市長との質疑を通じて、「吉田市長はもはやハコモノ3兄弟への抜本的な改革を行わないことがハッキリしたから」です。
吉田市長は「ハコモノづくりから人づくり」へと訴えておきながら、当選した後は説明責任も果たさないままに方針を変えました。
直営で運営しているハコモノに指定管理者制度を導入したり、公募をしてこなかった指定管理者を公募にするなどの方針を本会議で僕から質問を受けて初めて説明するという始末です。
選挙の大きな争点であったハコモノについての対策を方針転換したということは、市民のみなさまにとってとても重要なことがらであったにも関わらず、市長がみずからこれを発表することはありませんでした。
説明責任を果そうという姿勢はどこにいったのでしょうか。
しかも、このような表面的な対応では、仮に実現できたとしても毎年約7000万円のコスト削減しかできないことも分かりました。
さらにもっとひどいことに、このコスト削減は吉田市長のこの4年間の任期中には実現できないのです。
すでに公約違反であることは明らかですが、公約違反である以前に倫理的に問題を感じます。
この任期中には実現できないにも関わらず、さも自分が当選すれば改革が実現するかのように選挙で堂々と訴えておられたことに激しい失望を感じます。
そんな吉田市長のもとで作られた今回の予算案においては、ハコモノ3兄弟への支出は今までの市長たちと同じく巨額の赤字が垂れ流さたままです。
その穴埋めは市民のみなさまの税金です。
これは市民のみなさまへの明らかな裏切りです。
第2の反対理由:いのちを守る横須賀をうたいながら吉田市長には高齢者福祉への取り組みが全く足りない
第2の理由は、『いのちを守る横須賀』をうたいながら、高齢の方々とそのご家族のいのちと暮らしを守る為に必要な取り組みが見えないからです。
特別養護老人ホームの待機者は約2,000人にものぼりますが、待機の長い列を減らすための施設の整備に向けた前市長以上の新たな動きは全く見えません。
しかもその施設整備への補助は、他都市と比べて2分の1以下という情けない状況です。
もしも他のまちで暮らしていたならば待機の列も短かったのに。
そして仮に入所先や入院先が見つかったとしても、ふるさとであるこのまちを離れなければならない方々がとても多いというのが現実です。
このまちで長年暮らしてきたご高齢の方々が人生の後半になって大切にされないまちになっています。
さらに、施設を整備するには介護に携わる人材が不可欠ですが、本市においても介護人材は極めて不足しております。
もちろん、スタートから丸十年が経つ介護保険制度そのものの問題点の多さが根本にあります。
しかし、介護保険の保険者は横須賀市です。
ならば、横須賀市独自での新たな介護人材育成や資格があるにも関わらず介護職を離れた方々の復職に向けた対策などを積極的に打ち出すべきです。
そうした動きは新年度予算案には特にありません。
こうした横須賀市の『介護の貧困』は、施設サービスだけでなく、在宅でのサービスについても極めて不十分です。
ゼロのままの夜間対応型訪問介護事業所についても対策を質しましたが、その答弁を聞いた限りでは夜間訪問介護の実現はこのままではムリでしょう。
足りないサービスがあれば、介護人材の育成と同じく事業所そのものの育成にも保険者として取り組むべきですが、そうした動きも全くありません。
施設サービスも在宅サービスも不十分です。
これでは公的な責任を放棄して、このまちのご高齢の方々とご家族に「貯金を全て使いきるまで自分たちで勝手に乗り切れ」と横須賀市が宣言しているのと同じです。
第3の反対理由:「市民主体」を売りに当選したはずの吉田市長は、完全に「市民不在」でごみ処理施設の建設予定地を長坂と決定したこと
第3に、新しい横須賀は「市民主体」のまちづくりと言いながら、完全に市民不在で『ごみ処理施設の建設予定地』を長坂と決めつけたことです。
「自分のまちのことは自分たち市民が決めるのだ」と市民主体を日頃は訴えておきながら、この問題では行政主体だと対応を使い分ける。
そんな市長の言行不一致ぶりには呆れて物が言えません。
第4の反対理由:コンパクトシティ化に逆行する横須賀新港埠頭への新たなまちづくりを行なうこと
第4に、人口減少期の少子超高齢社会における今後の横須賀の姿は『コンパクトシティのまちづくり』を目指しながら、その方針とは全く逆に、まちなかではなくやや離れた横須賀新港埠頭に新たなまちづくりを進めることです。
これを進めていけば、さらに都市のスプロール化が進み、横須賀中央周辺の商店街はますますさびれていくでしょう。
地域経済の活性化を損なう施策には反対です。
これら4点に対して僕は徹底して市長の姿勢に反対ですが、本会議および全ての委員会での質疑をお聞きするにつけても残念ながら、僕の想いをくつがえすような、「どうしてもこの案でなければならないのだ」という市長の強い想いやリーダーシップもまた観られませんでした。
市民のみなさまの多くは、吉田市長の強いリーダーシップを期待していたはずです。
例え、行政内部の職員たちと激しい摩擦が起ころうとも前例にとらわれずに、市民の支持を背景に改革を進めていく。
議会との間で政策について対立が起こっても、正しい政策と信じるものであるならば徹底して議論する。
いざとなれば議会側の修正案に対しては拒否権を発動して、市長として『再議』を求める。
それぐらいの強い信念を持って横須賀市を良い方向へと進めていくような気概は吉田市長からは、これまで全くといってよいほど感じられません。
行政内部に対しても、市議会に対しても、摩擦を避けるための安易な対応ばかりが目立ちました。
官僚答弁の繰り返しと、前例踏襲ばかりです。
脱ハコモノ行政、いのちを守る横須賀、地域経済の活性化、市民主体のまちづくり。
この重要な4点が新年度予算案では実現できるとは僕には考えられませんでした。
したがって、市民のみなさまとの契約であるマニフェストを実現することを徹底する立場からも、選挙の時に約束した公約を実現することを追求する立場からも、今回の予算案に僕が賛成することは不可能です。
市長のマニフェスト実現を信じて『勝手連』として選挙を闘った僕であっても反対せざるをえないこの予算案ですから
今回、『修正動議』と『組み換え動議』が議会側から出されたことは、その内容において立場は異なるものの、心情的にとても共感できるものです。
僕は予算案全体に反対するという全否定の姿勢ですが、議会側の修正案では予算の一部についてだけの修正です。
これは予算案を否決すればを会期の延長も避けれらず、4月の新年度に入っても税金の使い道が定まらず、市民生活に影響が出てしまうことから「それは避けねばならない」という議会側の良識が働いたものだと受け止めております。
そうした議会の良識を思えば、予算案の全否定である僕の反対討論について、先輩・同僚議員のみなさまに同調を求めるのは難しいことも理解しております。
したがいまして、本来であれば討論の最後は先輩・同僚議員のみなさまに対して同調を求める言葉を申し上げて終えるべきものですが、今回はあくまでも僕の反対理由を述べることにとどめて、以上をもちまして、僕の反対討論を終わります。
ありがとうございました。
(反対討論の全文は以上です)
最終的な横須賀市議会の判断
新年度予算案に対する最終的な市議会による結論は、『修正案が可決』となりました。
さらに、『附帯決議』も行われました。