2012年3月23日・予算決算常任委員会での討論(議案15号への賛成討論)

特別会計国民健康保険費予算への賛成討論

議案第15号・横須賀市特別会計国民健康保険費予算に対して、賛成する立場からの討論を行ないます。




これまで僕は、2008年度から3年間にわたって特別会計国民健康保険費の予算決算全てに反対を続けてきました。

それをこのたび2012年度予算案では賛成へと立場を変えるに至った理由を表明したいと思います。

まず、これまで反対し続けてきた理由を申し上げますと

2009年3月3日本会議での反対討論において述べたとおり

1款3項3目『病床転換支援金』の存在に反対だからです。

国は、入院治療の必要が無いにもかかわらず退院することができない、いわゆる『社会的入院』の状態のご高齢の方々が減らないのは、全国に35万ベットある『療養病床』がいけないのだと決めつけました。

そして、『療養病床の再編』という政策を打ち出して、医療保険型の『療養病床』はその数を減らし、介護保険型の『療養病床』は制度そのものを廃止してしまうことにしました。

(厚生労働省の資料より)



その方法として、『療養病床』を老人保健施設や特別養護老人ホームへと転換させる為に『病床転換助成事業』を国は始めました。

『療養病床』を他の施設に転換する医療機関に対して財政的に支援して、交付金を出すのです。

この交付金の財源を生み出す為に作られたのが、僕が問題視してきた『病床転換支援金』です。

(厚生労働省の資料より)


2008年4月から『高齢者の医療の確保に関する法律』によって、国は、全ての保険者に対して「病床転換支援金」を社会保険診療報酬支払基金へ拠出するように義務づけました。

その為、本市の国民健康保険からも毎年、「病床転換支援金」を支出してきたのです。

しかし、そもそも「療養病床」は悪ではありません。

僕は、みずからの家族の入院を通して体験した現実の「療養病床」の姿やたくさんの同じ境遇の方々との出会いを通じて、いかに「療養病床」が必要なものであるかを確信しています。

『療養病床』は『社会的入院』を生み出しているどころか、脳出血や様々な障がいによって植物状態などの慢性期になりながらも必死に生きているたくさんの人々の大切な受け皿になっています。

問題なのはむしろ、そうした重度の方々が住みなれた地域や自宅では決して暮らすことができない、在宅サービスの圧倒的な不足や地域包括ケアが実現していない国の福祉への取り組み不足にこそあるのです。




国が『療養病床』をターゲットにしたのは医療費を抑制したいという単なる財政の観点からであったことは、すでに、決定に関与した元官僚の発言や多くの研究から明らかになっています。

地域での受け皿が全く整備されていないままに『療養病床』を無くせば、今以上に多くの『介護難民』を国が生み出すことになります。

それは介護保険制度を設立したときの理念にも反して、家族による介護を固定化・永続化するもので、方針として全く間違った政策です。

また、僕たちが暮らしている神奈川県の現状について言えば、そもそも人口あたりの「療養病床」の数は全国で最も少ないのです。

『神奈川県医療費適正化計画』によれば、人口10万人あたりの療養病床数は全国では281.2床に対して、神奈川県は142.7床と全都道府県の中で最も少ないのです。

(神奈川県医療費適正化計画より)



さらに「療養病床」に入院しておられる方々は重度の方々が多く、国の指摘するような「社会的入院」の状態とは全く逆であることが県のデータから明らかになっています。

「療養病床」は必要な存在であり、むしろ国がすすめてきた「療養病床」を廃止する為の「病床転換支援事業」こそが間違っています。

こうした信念に基づいて、僕は2009年3月の反対討論で、例え国の方針に基づくものであるとは言えども本市の国民健康保険費に本来あるべきではない「病床転換支援金」が計上される限りは今後、全ての予算・決算案に反対していくことを表明しました。

実際に、横須賀市は2008年度は300万円、2009年度は450万円、2010年度は310万円を「病床転換支援金」として計上した為、僕は反対をしてきました。

(2010年度・国民健康保険費・当初予算説明資料より)


これがこれまでの経緯です。

続いて、その後の状況変化について申し上げます。

2010年12月に厚生労働省が発表したのですが「療養病床」の転換が見込みよりも進まなかった為に交付金は、ほとんど使われることがありませんでした。

保険者から集めた「病床転換支援金」をプールしている社会保険診療報酬支払基金にはなんと65億円もの剰余金が生じていることが判明しました。

この為、厚生労働省は「病床転換支援金」の徴収を2010年度分から停止しました。

横須賀市も2010年度当初予算案で計上していた310万円を補正予算でマイナスをかけて、支出ゼロにしました。

翌年2011年度は、横須賀市は当初予算案の段階から「病床転換支援金」を計上しませんでした。

さらにこの予算議会に提案された2012年度当初予算案においても「病床転換支援金」は計上しませんでした。

ただ、国はこれまでの方針を変えること無く、2012年度以降は新たな介護療養病床の設置は認めないこととし、さらに現在存在するものについては期限を6年間延長して、2017年度末までに廃止することとしています。

このような国の方針としての問題は残っていますが、本市に限って言えば予算計上がなされなくなった以上、国の間違った政策である「病床転換支援事業」に横須賀市が加担している形式的事実は存在しなくなりました。

さらに、この予算議会に福祉部から報告された「第5期介護保険事業計画」において計画期間中の介護保険3施設の整備計画が発表されましたが

本市は3年後も「介護療養型医療施設」のベット数は現在のベット数を維持して、変わらず90床のままとされました。

(第5期介護保険事業計画より)



国は2017年度末で廃止すると主張しているものの、本市は少なくとも2014年度までの3年間は「療養病床」を廃止したり転換を進めることはない、という姿勢が明確になりました。

今後、国は「療養病床」の廃止に向けてさらに追加的支援策を講じるとのことですが、その具体的な指示は一切なされておらず、現時点で本市の2012年度予算案には反映されていません。

このように、2つの状況の変化から、

つまり

  1. 2012年度予算案に「病床転換支援金」が計上されなかったこと
  2. 第5期介護保険事業計画において介護療養型医療施設のベット数を減らさないと明記されたこと

から、これまで反対してきた理由が存在しなくなったと判断するに至りました。



そこでこれまでの立場を変えて、新年度予算案には賛成することにいたしました。

以上をもちまして、議案第15号への賛成討論とします。

ありがとうございました。