2012年3月27日・本会議での討論(災害廃棄物の実効的処理の促進を求める意見書案への反対討論)

意見書案第3号への反対討論

意見書案第3号「災害廃棄物の実効的処理の促進を求める意見書の提出について」に、反対の立場から討論を行ないます。

反対する理由を3点申し上げます。




第1に、今回提出された意見書案では、その冒頭で

「被災地の復興は全ての国民の願いであるが、その最大の障害になっているのが災害廃棄物の処理である」

また

「災害廃棄物の処理は東北復興の第一義的課題であり、一刻も早くその処理を進めることが必要である」

と記しています。

しかし「最大の障害は災害廃棄物の処理である」という『現実認識』には僕は賛成することができません。

まず、その理由を申し上げます。

被災した地域の首長たちの中には、むしろ正反対のことを言っておられる方々が多く存在しています。

ここで3名の首長のコメントを例に挙げて申し上げます。

国土交通省の意に反して急な崖をのぼる階段を設置したことで児童88人を救った「運命の避難階段」を作ったことで有名になった岩手県岩泉町の伊達勝身町長はこのように述べています。

現場からは納得できないことが多々ある。がれき処理もそうだ。あと2年で片付けるという政府の公約が危ぶまれているというが、無理して早く片付けなくてはいけないんだろうか。

山にしておいて10年、20年かけて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。

もともと使ってない土地がいっぱいあり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこにあるのか。

次に、岩手県陸前高田市の戸羽太市長はこのように述べています。

市内にがれき処理の施設を作れば雇用も生まれるし、自分たちで全て処理できます。

このことを県に相談したら「現行の法律にないため、いろいろな手続きがあるので無理です」と門前払いを食らいました。

千年に一度の大災害なのだから前例がないに決まっていますよ。

自分たちでがれきを処理すれば雇用も生まれるし、護岸工事の基礎材にも使えるのに、門前払いを食らったのです。

最後に、世界に向けてYoutubeでSOSを発信したビデオが全世界で40万人以上の方が視聴したことから、TIME誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた福島県南相馬市の桜井勝延(さくらいかつのぶ)市長は、このように述べています。

とにかく南相馬市は護岸工事を行ないたいのです。南相馬で出た災害がれきを護岸工事の基礎工事に使いたいのです。

長さ18キロの防潮堤を作るのに南相馬の災害がれきでは足りないので、三陸からもがれきを持ってきたい。

これを県と国に言ったのですが「うちの所管じゃない」と言われ、環境省、国土交通省、厚生労働省、総務省、どこに行っても受け入れてくれませんでした。

地元では必要ながれきなのに、それをわざわざ広域処理するために税金を使って何台もの10トン積みトラックが全国を走り回り、我々の地元では護岸工事の為に新しく大量のコンクリートなどを買い入れないとならないのです。

こうした被災地の首長の言葉に耳を傾けると分かることは、政府がムリにがれき処理を広域化して行なう為に被災地の意向を無視して復興を阻害していることです。

従いまして、僕の『現状認識』として復興の最大の障害になっているのは現地の声に耳を傾けずに広域処理にこだわり続ける『政府の方針』であるというものです。




第2に、意見書案の中で挙げられている4つの国への要望項目について申し上げます。

技術的指針の明確化など必要な措置を講じるように求めた2番目と、処理費用は直接的・間接的なものを問わず国が全額保障することとした3番目には賛成します。

けれども、1番目と4番目には賛成できません。

1番目には

「放射性物質を含んだ災害廃棄物の受け入れには地域住民の理解が不可欠である為、健康被害への安全基準の精度を高め、住民の不安解消に努めること」

とあります。

また、4番には

「災害廃棄物の風評被害を防ぐため十分な情報開示・提供を行ない、地域住民の理解促進に努め、万が一風評被害が発生した場合には国が全額保障すること」

とあります。

先日、僕はウクライナから来日したチェルノブイリ原発事故の被害を調査し続けている世界的な権威であるユーリー・バンダジェフスキー博士による議員向けの院内特別勉強会に参加しました。

そこで博士が強く主張したことは「放射性物質を含んだ災害廃棄物にはいくら基準を設けても安全だという値は無いのだ」ということでした。

放射性物質が含まれた災害廃棄物を拡散することは『実害』としての健康被害を生み出すものであり、そこで起こる被害は風評では無く『実害』そのものです。

市民の健康と安全を守る為にも、放射性物質は決して拡散してはならないという原則からも、2番目と4番目の項目には賛成できません。




第3に、最後に申し上げたいのですが、今後、震災からの復興を加速する為に横須賀市議会として政府に対して求めていくべきことは次の3つだと僕は考えています。

  1. 被災地の首長の多くが批判している政府の今の姿勢を改めて現地のニーズを細やかに汲みとって迅速に対応すること

  2. がれき処理の予算は1兆700億円の税金が投入されますが、平成26年3月までと支給期限を短く限定した為に使い勝手が悪いと被災地から不評を買っている補助金の支給方法を見直すこと

  3. 政府が進めるがれき広域処理では被災した地元への経済効果も雇用創出も見込めないので、被災地への経済効果、被災した方々への雇用創出に寄与する形の支援策へ転換すること

以上3つの理由により、意見書案に反対します。

被災地の復興を1日も早く実現し、傷つきながらも人々が新たな生活を歩みだしていけるように支援することは日本国民全員の共通の願いです。

しかし、その為の手段は決してがれきの処理だけでは無いのです。

現在、政府が推し進めている「がれきを受け入れなければ非国民だ」というキャンペーンは明らかに間違っています。

その点を申し添えて、僕の反対討論を終わります。