藤野英明です。
2つの議案に対して、反対討論を行ないます。
「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例制定について」への反対討論
「議案第69号・放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例制定について」に反対する立場からの討論を行ないます。
【反対理由その1】
第1の理由は、『子ども・子育て支援新制度』における『放課後児童健全育成事業』の、そもそもの位置づけに反対だからです。
『放課後児童健全育成事業』、通称・学童保育は、『子ども・子育て支援新制度』では、市町村が行なう『地域子ども・子育て支援事業』に位置づけられています。
これはそもそも民主党政権の2010年10月に発表された『子ども・子育て新システムの基本制度案要項』において、学童保育の位置づけが『子ども・子育て支援事業』に位置づけられ、『個人に対する給付』ではなく、『事業者に対する補助』という位置づけになってしまいました。
議論がスタートした当初は、「保育所や幼稚園と同列に学童保育を位置づけるべきだ」との議論があり、僕はそれを強く期待していました。
しかし、最終的には『市町村事業』へ押し込まれてしまいました。
これが政権が変わった後も、現在の『子ども・子育て支援新制度』に引き継がれているのです。
しかし僕は、『全ての子ども・子育て家庭を対象とした基礎的な給付』である『子ども・子育て支援給付』に位置づけるべきだ、と考えていました。
つまり、子ども手当、こども園給付、地域型保育給付と同じ位置づけで、学童保育の利用を望む全ての児童・保護者が権利として受けられる制度にすべきだ、と考えてきました。
以上のことから、僕はそもそも『子ども・子育て支援新制度』における学童保育の制度的位置づけに賛成ができませんので、それに基づいた本市の基準を定める条例案にも賛成ができません。
【反対理由その2】
第2の理由は、本条例案では附則を設けており、児童1人あたりの専用区画の面積(横須賀市が新たに定める最低基準は児童1人あたり1.65平方メートル)に関する規定について、当分の間、経過措置を設けるとしているからです。
第9条2
専用区画の面積は、児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上でなければならない。
附則2
この条例の施行の際現に存する放課後児童健全育成事業所については、当分の問、第9条第2項の規定は適用しない。
これは「おおむね5年間」との答弁が委員会ではありましたが、こどもの健やかな発育に必要な面積の確保をしない学童クラブを最大5年間放置できることになってしまうのです。
そもそも保育所の場合は2〜5才の児童の1人あたり最低基準は、1.98平方メートルである中で、学童クラブの最低基準は児童1人あたり1.65平方メートルと狭い訳です。
1.65平方メートルという基準は、学童クラブの面積要件として不十分だと僕は考えています。
本来であれば、横須賀市は積極的な人的・財政的な支援を教育委員会とともに行なって基準を高めるように誘導していくべきところを、逆に5年間猶予するというのはこどもたちの健やかな発育に悪影響であり、認めることはできません。
【反対理由その3】
第3の理由は、本条例案では、長年の課題である「指導員の方々の低賃金と雇用状況の改善」が期待できないからです。
【反対理由その4】
第4の理由は、「指導員の雇用条件の改善」ができなければ、本市の学童クラブは保護者のみなさんによって民設民営で運営されている為、運営委員会の保護者の方々が労働基準法違反による訴訟リスクを回避できない状況が放置されてしまうからです。
以上4つの理由から、議案第69号に反対します。
家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例について」の反対討論
「議案第70号・家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例について」に反対する立場から討論を行ないます。
僕は、『小規模保育事業B型』に反対しています。
反対の理由は、『保育の質』の低下を懸念しているからです。
どんなに保育のプロである保育士のみなさんが全力を尽くしても、それでも乳幼児の死亡や事故が起こります。
現状では、保育施設で発生した事故について、全治30日以上のけがや死亡に関しては、発生場所や発生状況を自治体が厚生労働省に報告する制度が設けられています。
しかし、そのデータは単に集めて公表されているだけで、事故が起こった原因の分析や再発防止策には活用されていない現状があります。
そこでようやく今年9月9日に、内閣府・厚生労働省・文部科学省が合同で有識者会議を開き、保育事故再発防止データベースを新たに作り、専門家が事故原因の究明や再発防止策を考える案が提案されました。
このように、保育の現場での事故の原因究明や再発防止策はいまだ全く進んでいない現状があります。
かつて2010年9月に、本市内の家庭保育福祉員が保育中の生後4ヶ月の男の子が亡くなる、という痛ましい出来事がありました。
現在もご遺族と本市との間では訴訟が継続しております。
当時、僕はご遺族であるお母さまから、じかに悲しみの声をお聴きしました。
それ以来、家庭保育福祉員に限らず、保育所での保育など、あらゆる「保育の質を上げること」を自らの大切な課題として取り組んできました。
教育福祉常任委員会在籍中は、繰り返し『保育の質』を高める為の提案を行ってきました。
しかし、今回の国の『子ども子育て支援新制度』では、『保育の量』を拡大することが最優先されています。
小規模保育事業にはA・B・Cの3つの類型がありますが、職員全員が保育士ではなくとも良いB型があります。
繰り返しますが、保育のプロである保育士のみなさんが全力を尽くしてもそれでも乳幼児の死亡や事故が起こるのです。プロでは無い方々を保育の場に配置することは、『保育の質』を下げることであり、僕は認めません。
国の基準では「保育従事者のうち半数以上は保育士とする」とありますが、今回の議案第70号、条例案中の第31条(職員)では、「保育従事者のうち4分の3以上は保育士とする」と国基準を上回るものとしました。その理由は、委員会での質疑によれば「保育の質の確保の為」とのことでした。
しかしそれでも、短大や専門学校にて2年間の養成課程と国家試験の合格を経て初めてなれる正式な保育士とは異なり、『その他保育に従事する職員』を4分の1配置すれば良いという職員配置基準には、納得できません。
『その他保育に従事する職員』になるには、市長が行なう研修を修了した者とされており、明らかに保育のプロである保育士との差があります。
したがいまして、『保育の質』を高めることがこどもたちの幸せにつながるのだと信じてきた僕にとって、この小規模保育事業B型を認めることはできず、その基準を定めた条例案にも反対します。
以上で2つの議案への、僕の反対討論を終わります。
(討論は以上です)
市議会の採決の結果
フジノの反対討論もむなしく、採決の結果、賛成多数で2議案とも可決・成立しました。