「戦争法案の廃案を求める意見書提出を求める請願」への賛成討論
藤野英明です。
請願第6号「憲法に違反する『安全保障関連法案』の廃案を求める意見書」の提出について、に賛成の立場から討論を行ないます。
昨年97才で亡くなった僕の祖父は、帝国海軍の軍人でした。
おじいちゃんこだった僕は、幼い頃からいつも休みのたびに祖父の家を訪れて可愛がってもらいました。
そして祖父が戦争をとおして体験したあらゆる出来事をいつも聞かせてもらいました。
聞かせてもらったお話には、ひとつも武勇伝なんてものはありませんでした。
遠く離れたアジアの海で、戦闘行為が行われていない真っ暗な夜の軍艦の甲板で見回りをしていた戦友が海に落ちてしまい、みんなで必死に探したけれど、複雑な海流のせいで最後まで戦友の遺体はどうしても見つからなかったというお話。
祖父は、日本に帰った後にご遺族に戦友の亡骸を届ける役目を負ったこともあります。
けれどもたいていの場合、白木の箱には1つも骨が入っていないまま、戦友が亡くなった現地の石や、本人の物か分からない御骨のかけらを入れて渡すしかなかったというお話。
悲しく、虚しく、切ないお話ばかりでした。
ある日、僕は
「戦争は本当に怖いね」「もう戦争は起きないの」
と祖父に不安の気持ちを伝えました。
すると祖父は
「日本はもう絶対に戦争をしないと決めたんだよ」
と言って、ある文章を読んで聞かせてくれました。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
日本国憲法の前文と九条でした。
初めてこの文章を教えてもらったのはいくつのことだったのか、覚えていません。
けれども今もはっきり覚えていることがあります。
「なんて素晴らしいんだ、日本国憲法は」
という、誇らしい気持ちです。
それから30年ほど経った今も同じ気持ちでいます。
特に憲法9条は、先の戦争への反省を踏まえた世界に誇れる素晴らしい条文だと感じています。
祖父が話してくれた悲惨な出来事の数々に加え、無数の文献を読み漁り、日本と多くの国々の人々のすさまじい犠牲の上にようやくこうした憲法を手に入れ、平和への道を歩んできたのだと学びました。
今年は戦後70年ですが、先人達のたゆまぬ努力によって70年間も1度も戦争をしていない日本を僕は誇りに感じます。
僕は、憲法で高らかに宣言された恒久の平和を求める努力を祖父の想いを受け継ぐひとりの人間として続けたい。
しかし、昨年7月1日、政府は『集団的自衛権』の行使を容認する閣議決定をしました。
『集団的自衛権』は他の国と戦争することを意味しますから、戦争放棄、戦力不保持を明記した憲法9条に明らかに違反しています。
僕が大学で憲法を正式に学んだのは一般教養科目だけでしたが、憲法9条を純粋に読めば、兵器を保有してもダメだし、戦うことすら認めていません。
徹底した非武装・非暴力の思想がその根っこにあると受け止めています。
そもそも我が国が『集団的自衛権』を行使できないことは、戦後どの政権においても一貫した政府の『公式解釈』でした。
当然ながら多くの法学者が、この憲法違反を厳しく批判しました。
憲法の前文には、
とあります。
ですから、憲法に明らかに反する『政府解釈』はあるまじきもので、国民は我が国を守るために
この『政府解釈』を『排除』すべきだと僕は信じています。
しかし、特定秘密保護法を強行採決した政府は、憲法違反の『解釈改憲』に続いて、さらには自衛隊が海外での武力行使を可能にする『安全保障関連11法案』を国会に提出しました。
その後の流れはみなさまがご存知の通りです。
各種の世論調査では国民の8割が法案の中身がわからないと答え、6割が反対を表明し、ほぼ全ての憲法学者が憲法違反だといい、衆議院では、質疑のたびに政府答弁が二転三転したあげく80回以上議事がストップし、理事会が要求した資料も提出されないまま委員会で強行採決され、さらに7月16日の本会議では与党のみが、記名ではなく起立で採決しました。
参議院に議論の場を移してからも、政府答弁は日によって変わりあらゆる法学者は憲法違反を指摘し続け、国民は不安を感じ、
世論調査でも反対の声が多数を占めています。
それでも政府は強行採決に突き進んでいます。
このような異常事態に対して、僕は危機感を抱いています。
そして多くの国民も同じ想いを抱いているからこそ、今年の夏は記録的猛暑だったにもかかわらず毎日、国会前に反対の声をあげる人々が集まり続けました。
さらに8月30日には国会前に12万人も集まり、強行採決間近と言われるここ数日は国会の周囲に常に反対の人々がたくさん集まっています。
僕の友達も足を運んでいます。
みんな仕事が終わった後、くたくたになりながら国会に声をあげにいっています。
国会前で反対の声をあげている人々の大半はどこにでもいるふつうに暮らしている学生、会社員、若いカップル、親子連れです。
大切な休息の時間や行楽に時間を割くことよりも人としての本能、平和を求める想いが足を運ばずにはいられないのだと思います。
僕もこの『戦争法案』は憲法違反であり、廃案にすべきだと確信しています。
国会前に毎週集まり、直接民主主義を体現している学生たち『SEALDs』のみなさんが合言葉のように叫ぶ言葉があります。
「30年後、戦後100周年をみんなで祝おうぜ」
ぜひその為にも、この法案を廃案にしたい。
1度も戦争することが無いまま日本が戦後100年を迎える為に、我々政治家は先頭を切って働くべきだと思います。
さて、僕は有権者のみなさまに選挙で選ばれて、横須賀市議会議員を拝命し、非常勤特別職公務員として13年余にわたって働いてまいりました。
非常勤特別職は、当然ながら『公務員』であります。
そもそもここ公務員はみな日本国憲法第99条に規定された『憲法尊重擁護義務』を有しています。
日本国憲法第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。
つまり、政治家は『公務員』であり、必ず憲法を守らねばならない『義務』があります。
憲法を守ることは政治家の使命であります。
したがいまして、僕はそもそも『憲法違反である法案』を認めることは職務上、絶対にできません。
今国会に政府が提出している『安全保障関連法案』の内容は明らかに憲法違反であり、即刻廃案にすべきであると確信しております。
今回、多くの市民の方々から署名とともに提出された請願は、まさに我々政治家に対して
「政治家は憲法を守るのが本分でありその職務を全うせよ」
という有権者の当然の声だと受け止めました。
憲法を守るのが義務である政治家としてこの請願に賛成する以外の選択肢はそもそも存在しえないと確信しております。
先輩・同僚議員のみなさま、憲法第99条に従うのは我々に与えられた『義務』です。
(事実誤認に基づいた不適切な発言があった為、一部削除いたします。ご不快なお気持ちにさせてしまった関係者のみなさまに、心からお詫び申し上げます。この経緯についてこちらに詳しく記しましたのでご覧下さい)
そして公務員としての『憲法尊重擁護義務』にしたがってこの請願に賛成をして下さいますよう、心から深くお願いを申し上げます。
先輩・同僚議員のみなさま、どうか賛成票を投じて下さい。
最も市民にとって身近であり、最も市民の声を聴いている地方議員の矜持をお示し下さい。
よろしくお願いいたします。